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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年10月28日

(上)形容詞がらみの失敗(英語の落とし穴の21)

形容詞がらみの失敗でビギナーにありがちのものの一つに、どちらか一方しか使えない限定詞というものに意識が行かず、the car, my car と言える以上、 (これは誤用です→)The my car is cool. でもいいっかとやってしまうケースがあります。

そこで、今回は、限定詞というものに重点を置きながら、ビギナーに多い、形容詞がらみの失敗例を特集します。全部で9つありますが、きょうは前半の4つをお届けします。

失敗例の1 形容詞の並べ方には順番があることを見落としてしまう。(その1)

例えば …

この一点を除いて、他の品はすべて新品です。

× Except for this one, the all other items are brand new.

○ Except for this one, all the other items are brand new.

昔は上の "all" や "the" のようなものは形容詞ということでひとまとめにされていましたが、1980年代の半ばに Quirk、Greenbaum、Leech、Svartvik という当代一流の英語学者たちが A Comprehensive Grammar of the English Language という文法書でこの種の形容詞やら代名詞やら冠詞を整理して、determiner(限定詞)という新たなジャンルを設けました。

この限定詞という区分がありがたいと感じられるのは、なぜ two my children がおかしくて、my two children と言うべきなのかを英語の用法を分析すると、「名詞に先行する部分の中での順番が決まっているから」と説明できることです。

こうした順番は、その限定詞が、相互の優先順が決まっている以下の三つのスロットのどれに属しているかで決まります。

名詞に先行するスロット中、最初のスロットには、all なのか some なのかと数量を限定するもの
     ↓
第2スロットが冠詞あるいは this/these といった指示代名詞 や my/our などの所有格形容詞のグループ
     ↓
形容詞/名詞の直前の第3スロットが基数/序数

表形式で限定詞の並び順をまとめると以下のとおりです。

determinertable.jpg

ポイントの1は、第3スロットに属するものについては、同種のものを複数使えるので、for the next two minutes (今から2分間)といった言い方ができるのに、あとで詳しく説明するとおり、第1スロットと第2スロットに区分されるものは、同一スロット内では一つしか使えないことです。相互に排他的なのです。第1スロットにある言葉で言えば、all half the employees は駄目です。どちらか一つに決める必要があります。第2スロットについて言えば、my the best song などという言い方はできず、my best song か、the best song のどちらかにしなければなりません。同様に、all the our employees といった言い方も駄目です。

一方、違うスロットに属していれば一緒に使えますから、第2スロットの his と第3スロットの many を一緒にして、his many friends という言い方はできます。

この限定詞の世界が学校でどう教えられているのか知りませんが、英語を使う上での常識がカバーされており、重要な一角だと思います。例えば、定冠詞の the と指示代名詞の this などは、一緒に使えません。

なぜかと言えば、"this" は意味的に the プラス here であり、"that" は the プラス there ということですから、the this bookとかthe that book、あるいは、this the book、that the book など は意味的にダブったものが含まれるので、どちらかにしろという理屈になるためです。 同じ理屈で、特定の本を指す the book と、「私のものだ」という形で特定している my book も、機能的にダブるので、my the book だとか、the my book は不可となります。

一つの限定詞を使っていったん絞り込んだら、屋上屋を重ねるようなことをするなという発想があるわけで、次の例も、ダブリはいかんというルールの表れです。

× We thank you for all your help you have given us.

○ We thank you for all the help you have given us.(ご助力に感謝します)

ここでのhelpは(冒頭のthatが省略されている)that you have given usという関係詞節で既に限定されていますから、これに重ねてyourという所有格の形容詞で限定することはできません。どうしても your を使いたかったら、We thank you for all your help. で十分ということです。


失敗例の2 形容詞の並べ方には順番があることを見落としてしまう。(その2)

例えば …

彼女は長くて美しい黒髪の持ち主だ。

× She has black long beautiful hair.

○ She has beautiful long black hair.


失敗しないにようにするには …

名詞に先行する形容詞がいくつかある場合、厳格なルールというほどではないものの、概ね以下の順番で並ぶとされています。(下の e.g. は「例えば」の略号です)

(1)主観的な形容が最初 e.g. beautiful long straight light brown hair
(2)次は、大小長短といった大きさ・長さ e.g. beautiful long straight light brown hair
(3)次に新旧の別 e.g. a boring old man
(4)その後が形状 e.g. and old square black table
(5)色 e.g. red Italian leather driving gloves
(6)原産国 e.g. Italian leather driving gloves
(7)材質 e.g. Italian leather driving gloves
(8)用途 e.g. Italian leather driving gloves

この順番に即して考えると、設例の場合、まずは beautiful が来て、次に、long、最後が black の順になります。

そもそも形容詞が上のように8つも並ぶこと自体、異常で、普通は二つ、せいぜいが三つというところですから、神経質になる必要はありませんし、私だって、こんな順番、暗記しているわけではありません。

ただ、以下の三つのルールは頭に入っているので、万が一、形容詞を並べて使うような場面では、あわてずに済んでいます。そのルールの1は、expensive leather boots(高価な革ブーツ)のように、形容詞として使われている名詞は、名詞の直前に置かれるというルールです。

ルールの2として、こうした形容詞代わりの名詞が二つ並ぶときは、8種の形容詞の並び順が適用されます。そこで、材質の方が用途より先に来ますから、gas stainless pipe ではなく、stainless gas pipeとなります。

ルールの3は、大雑把に上の並び順をおぼえておくための自己流の「暗記言葉」で、Quality and CoCa というものを手がかりに思い出すようにしています。最初に来るのが、質その他の主観的判断ですから、Quality。そして 次に来る色は Color で、黒髪/金髪、革靴/運動靴といった一般的分類は Category (consisting of や relating to で置き換えることができる形容詞)ですから、それぞれの最初の二文字をとって、CoCa とし、Quality and CoCa をオマジナイ代わりに使うという寸法です。

例えば、「彼女は黒光りのする運転手付きリムジンで登場した」と言いたいなら、

She showed up in a shiny black chauffeured limousine.

というふうに、shiny (← Quality)、black (← Color)、chauffeured (← Category) と並べることになります。

なお形容詞の並び順を取りあげた記事としては、以前に 「かわいそうな小さな冥王星:日本語と英語の形容詞の並び順」という記事を書いています。よろしかったらのぞいてみてください。


失敗例の3 形容詞をTO不定詞ではなく、前置詞なしのING形で受けてしまう。

例えば …

われわれは御社のカタログと価格表を見ることに関心があります(=御社のカタログと価格表を拝見できればと存じます)。

× We're interested seeing your catalog and prices.

○ We're interested to see your catalog and prices.

失敗しないようにするには …

形容詞につき、その内容を膨らますために修飾語句を続ける場合は、普通、TO不定詞節を使います。ING形で受けるケースもありますが、その場合は、上の誤用例のように直接ING形を続けずに、所定の(形容詞ごとに組み合わせが決まっている)前置詞を入れてからING形を入れます。設例の場合であれば、We're interested in seeing...となります。

なお設例のように「興味があるので、何々したい」と相手に告げる場合、実際に言ったり、書いたりするときは、直接的なものの言い方を弱めるためにWOULDを入れて、We would be interested to see your...という形で使うのが一般です。


失敗例の4 名詞を形容するMUCHを肯定文の中で使ってしまう。

例えば …

彼女はお金をたくさん持っている。

× She has much money.

○ She has a lot of money.

失敗しないないようにするには …

不可算名詞につき量のあることを示す MUCH は普通、設例のような肯定文の中では使わず、

Does she have much money?(彼女はたくさん金を持っているだろうか)あるいは

She doesn't have much money.(彼女はあまりたくさんお金を持っていない)

というふうに、もっぱら疑問文や否定文の中で使います。

可算名詞につき数があることを示す MANYも同じで、

Do you have many classical CDs?(クラシックのCDをたくさんもってらっしゃいますか)、

I don't have many classical CDs. (私はクラシックのCDはたくさんは持っていません)

とは言えても、× I have many classical CDs.とは言わず、

I have a lot of classical CDs.

と言うのが普通とされます。

例外的に MUCH は(MANY もそうですが)AS, SO, TOOと一緒であれば肯定文の中でも使えます。例を挙げると、こういうことです。

Her husband didn't have as much money as she did.(彼女の夫は彼女が持っているほどのお金は持っていなかった)

She felt guilty that she had so much money. (彼女はあまりにたくさん金があって、罪の意識を感じていた)

She drinks too much.(彼女はあまりにたくさん飲む)

MUCH や MANY は一般に肯定文の中で使わないという上の説明をご覧になって、I liked it very much. とか Thank you very much. と言うじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、これらは副詞として使われているケースで、名詞を限定するものとしては使われていません。

Michael Swan の Practical English Usage は、MUCHとMANYは、so, as, too と一緒のとき以外は、肯定文の中では使わないのが一般だとした上で、ただし、硬い文章でなら、使うことができるとして、以下の例を挙げています。

Much has been written about...(…についてはこれまでずいぶんと書かれてきている)
In the opinion of many economists...(多くのエコノミストの見るところ…)


[つづく]

Ó
  Ó
   Ó
    Ó

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Comments

一昨日はanotherに関するご回答をありがとうございました。勉強になります。

さて、第2スロット群について2点ほど教えていただきたいことがございます。
①表に未記載の「either」は第2スロットでよろしいでしょうか?
②「ほぼ同じ」の意味で「much the same」と言いますが、このmuchとtheの共存と語順についてはどのように解釈すればよろしいのでしょうか?

個人的には、②のmuchは副詞で限定詞ではないため、第2スロットの排他ルールに違反していないと考えておりますが、double(第1スロット)とthe(第2スロット)を用いた「double the amount」という表現を思い出したので少し気になりました。

以上、ご教授いただけたら幸いです。お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。

[返信]

either, neitherは、冠詞と同じスロットです。the same は名詞の代用品としてのpro-formとされ、一体として処理されるべきもののようです。

他のどのサイトよりもわかりやすく大変勉強になりました。限定詞については現在の学校英語でしっかりと教えるべきと思います。
ところで、限定詞をスロット別にまとめた表の中に、「another」が見当たりませんでした。「another」は限定詞と認識しておりますが、(そうだとしたら)どのスロットに属するのでしょうか?「another=an+other」という性格から、第2、第3スロットにまたがっていて一筋縄でいかないような気がしますが・・・。
ご教授のほどよろしくお願いいたします。

[返信]

anotherは、nextなどのgeneral ordinalsと同じ扱いとなり、predeterminerとして、第3スロットに入ります。なにか、取りこぼしがあったら遠慮なく教えてください。

並べると結構おもしろいですね。
いろいろ並べ替えたりしてぶつぶつやってみました。
"beautiful long straight light brown hair"
では、"light"は"hair"じゃなく"brown"のほうを形容をしていますが、たまに色を形容しているのかそのあとの名詞を形容しているのかわからないものって結構あるなぁと思いました。

[返信]

同感、同感。文法学者の本って、ときにウヌッと思ったりもするものの、light brown hair の2メーター以内に近寄れないまま一生を終わる御仁も多いかと思うと、まあ、言わせておいてやれという気持ちにもなります。

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