2006年10月15日
CatalogとPamphletなどの違い
このビジネス英語雑記帳に時おりコメントを寄せてくださる la_barmaid さんのブログに、先日、 「うさぎとウサギは違う」という記事が掲載されました。例えば、rabbit と hare の組み合わせのように、英語圏ではまるで違う生物と認識されているのに、日本では、どちらも「うさぎ」ないし「ウサギ」として一緒くたにされているものを7項目取りあげ、その異同を解説してくださっています。
この「英会話らばっ」というブログはおもしろくてためになるので、足しげく通っているのですが、特にこの記事は名詞を軸とする objects の世界と捉える英語の世界と動詞を軸とする relationship の世界と捉える日本語の世界の違いがよく現れており、考えさせられました(英語が名詞中心の言語であることについては 名詞中心の英語は個人主義の表れをご覧ください)。随所で見られる、カッ、スパッ的な鋭いコメントも魅力です。
la_barmaid さんらしいのは、欧米人にとっては、全然ちがうものなのに、日本人は、そういった違いを聞かされたところで、聞き流しがちで、そのまま忘れてしまうが、「しかし、これは日本人特有の無関心という気はする。 似ているものは、決して同じではない」と鋭く指摘した上、そんないい加減なことでは、「日本人」と「中国人」は同じだという話になってしまうじゃないか、「 呼び名を変えるだけで、別のものとして認識される」ということに気をつけるべきではないかと説いてらっしゃいます。
このla_barmaid さんの記事を読みながら、ピーターパンのフック船長が恐れているのは、「ワニ」の "crocodile"であって、「わに」の "alligator" ではないと知り、勉強になるなあと感心したり、手品師が取り出す白鳩は dove であって、pigeon ではないといった記述を読んで「そう言えばそうだよなあ」と共感をおぼえたわけですが、その一方で、日本人のビジネス英語使いもけっこういい加減なものだと思い出しました。そのいい例が、あまり差を意識することもなく、みなさん、使ってらっしゃる、brochure、catalog、pamphlet です。そこで、今回は、こういったものの違いを見ていき、ついでに親戚筋の leaflet, flyer, handbill, insert の異同も取りあげておきます。
★ Pamphlet と Brochure
日本語ではたしかに「会社案内のパンフレット」という言い方があります。しかし、このような会社の概要や製品・サービスの紹介が載っている印刷物を思い浮かべながら、英語で相手に pamphlet と言っても、「会社案内」という意味なのだとはわかってくれないでしょう。と言うのは、そういった会社案内的な印刷物は、英語では、company brochure (または corporate brochure) と言うのが普通だからです。したがって、訪問先で相手の会社案内をもらいたい場合は、I'd appreciate it if you could give me a copy of your company brochure. なら通じますが、ここで pamphlet と言っても、先方は何のパンフレットかなと戸惑うことでしょう。現にアメリカの語学学校に入学しようとした人がその学校に出向いて Can I have a pamphlet? と言ったらきょとんとされたという話を聞かされたことがあります。当然、これは brochure です。
それでは、英語で言う pamphlet が何を指すのかと言えば、通常イメージされるのは、数ページ程度の小冊子です。形としては縦長の小冊子 (booklet) というものが多いように思います。内容的には会社案内のような brochure だと当社の沿革、製品・サービスといくつかのトピックをカバーしているのに対して、単一のトピックに絞ってあるのが普通です。例えば、製薬会社がおまけ的に配布する「糖尿病予防の手引き」といったものやDMで送られて来る金融機関のパンフレットなどが典型でしょう。
Google のイメージ検索で、pamphlets と入れて検索すると、実際、以下のようなものが並びます。


一方、brochure は、典型的には、光沢のある紙を表紙と裏表紙に使っており、中の紙もしっかりした上質のものという、体裁のいい印刷物です。サイズはわが国で言うA4クラスが一般的だと思います。会社案内を意味する company brochure という言葉があるぐらいですから、それが一つのジャンルですし、この他、きれいな写真がふんだんに使われている商品説明的なカタログも brochure の一種で、sales brochure と呼ばれています。アニュアルレポートも brochure の一種です。
ネット上、brochure で検索するとこういったものが並びます。

要するに会社案内や豪華カタログのたぐいは brochure だというのが私の理解です。だいたいがデザインされており、「きれい」だという特徴があります。ちなみに、brochure を使ったフレーズとしては、上記の company brochure と sales brochure 以外には、product brochure や marketing brochure というのもよく聞きます。
なお世の中、pamphlet の方が brochure より詳しくて分厚いと説明する人もいらっしゃるようなので、ちょっと補足させてください。例えば、Cambridge International Dictionary of English は、brochure の項では「小ぶりの刊行物で製品や企業に関係する図画や情報が載っているもの」とした上、例として travel brochures (旅行会社が出しているパンフレット)を挙げる一方で、pamphlet の項では、「何かに関する情報または見解が載っている数ぺージの薄い冊子」と説明し、I picked up a free pamphlet on places to visit in the region.(その地方の名所が載っている無料配布のパンフレットをもらっておいた)という例文を挙げています。加えて、Longman Dictionary of Contemporary English は、brochure を a thin book と形容する一方で、pamphlet を a very thin book と "very" を付け加え、しかも 後述の leaflet と同じだとしています。したがって、普通に英語を使う人の間では、pamphlet は brochure より小型のものとされていることがわかります。
(ここで「普通に英語を使う人の間」と断ったのは、UNESCO や図書館関係では、pamphlet は結構大部のものを指したりするからです。すなわちUNESCOの定義では、本文だけで49ページ以上という要件がある書籍との対比で 、5ページ以上、48ページ以下の不定期刊行物をもってpamphlet とし、また、図書館関係では、100ページぐらいのものでも pamphlet に区分しています)
★ Catalog
日本語で言う「カタログ」は辞書によっては、例えば「三省堂国語辞典」では「商品目録」としています。文法具などをすぐ届けてくれる会社として有名なアスクルの、あの分厚い「カタログ」など、まさに商品目録という感じです。通販会社が送りつけてくる分厚い商品カタログも同じです。そこでの特徴は商品がずらりと型番と価格ともども並んでいることでしょうか。典型的にはこんな感じです。

一方、同じ「カタログ」でも、型番や価格も入っているけれど、趣旨が商品の説明というケースもあります。実際、学研の「現代新国語辞典」で「カタログ」を引くと、商品目録という語義に加えて「商品についての説明書」という語義が載っています。われわれが店頭で「これのカタログいただけますか」と言う場合は、分厚いカタログを期待するのではなく、チラシ (flier/flyer) 的な1枚ものをイメージしているわけですが、あれが、ここで言う「商品についての説明書」であり、「カタログ」だということです。
ところが、英語で言うカタログに後者の意味はまずありません。例えば、Peter Strutt の Longman Business English Usage を見ると、こう説明しています。
A catalogue is generally quite large, containing at least 50 pages. It contains a list of goods (possibly together with prices and illustrations) that can be bought from a manufacturer or supplier.(カタログは一般にかなり大型で、少なくとも50ページはある。内容は、メーカーまたはベンダーから仕入れることのできる商品の目録(価格や図版が入っていることもある)である。
最低限50ページというくだりは断定的判断だと思いますが、概ね大部の印刷物で、内容としては商品の一覧だというのはまさにそのとおりです。
何であれ英語で言う catalog/catalogue は、商品名、型番、価格が並ぶ味気ない印刷物であるというのが一般です。実際、brochure のたぐいとは異なり、catalog だといちいちデザインにまで費用をかけないのが普通だと思います。加えて、個人的には catalog というものは、あのアスクルのカタログのようにずしりと重いというイメージを持っています。
この catalog という言葉が入っているビジネス単語を思いつくままに挙げると、平凡なところでは、mail-order catalog, online catalog, home-shopping catalog があり、current catalog(最新かタログ)、parts and supply catalog(部品・消耗品カタログ)、parts and accessory catalog(部品・アクセサリー型録)、replacement parts catalog(取替部品カタログ)などをよく見ます。
こうやって挙げてみると、replacement parts catalog はごく一般的であるのに対して、replacement parts brochure とはまず言わないことに気がつきます。こんなところから何がカタログらしいとされるのか、brochure とは言いにくいのかを見て取ることができるのではないでしょうか。
★ Leaflet, Flyer, Handbill, Insert
これらはいずれも、綴じていない「1枚もの」である点が共通しています。
まず leaflet が他のflyer などと違うのは、下のサンプルのように二つ折りとか三つ折りになっており、しかもきちんとデザインされていることです。商品・サービスの広告、宣伝だけでなく、「生活習慣病について」といった公共広告だとか広報資料として使われているケースが多いのではないでしょうか。

英語圏の人でも、 leaflet を指して、pamphlet と呼ぶ人がいるぐらいですから、厳密には分けにくいのかも知れませんが、強いて違いを言えば、普通、leaflet が無料で配布されているのに対して、pamphlet に区分されるようなものは、小冊子仕立てでお金も余計かかっているせいか、なにがしかのお金を取るケースが多いという点でしょう。あと、pamphlet と呼ばれるような小冊子は、単に折ってあるだけの leaflet と異なり、背中の部分が糸または糊で綴じてあります。
次に flyer (flier という表記もあります)は、完全な1枚もので、以下のサンプルに見られるとおり、いわゆるチラシです。内容としては広告や宣伝が主です。

これを街頭で配れば hand bill と言い、新聞や雑誌などに折り込む格好で配布すれば insert です。
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前付け、後付けは英語で何と訳せばいいのでしょうか?いわゆるbrochureを総合商品カタログに組み込んでいるので、ここでいう前付けをbrochureと訳した場合、後付けの意図をくんだ英訳は何になりますか?backとfrontで訳したくない場合の英訳です。
[返信]
申し訳ありません、「前付け、後付け」自体、ぴんと来ないぐらいで、この分野の用語には慣れておりません。図解英和辞典みたいのがいいのかも知れません。