2006年10月 5日
(下)最低限のライティングとはどの程度か(ビギナー向け)
★ 代名詞と先行詞の呼応におけるありがちな失敗
代名詞がまさにその役割を代行している元の名詞(=先行詞)が単数なら代名詞も単数、先行詞が複数なら代名詞なら単純なルールであり、結局、主語が単数なら動詞も単数という前項と基本的には同じことがポイントです。
(a) 単数形である person, everybody, one, each, either, neither を受けていながら、代名詞が複数形になっていないか
例えば「個々の応募者につき選考委員会のメンバー2名が面接をした」と言いたい場合は、
NOT Each of the applicants were interviewed by two selection committee members.
BUT Each of the applicants was interviewed by two selection committee members.
(b) 複数の要素から成っている主語を受けていながら、代名詞が単数形になっていないか
「その部門の責任者もスタッフも共に社内の者を充当した」と言いたいとして、
NOT Both the unit manager and the support staff was recruited internally.
BUT Both the unit manager and the support staff were recruited internally.注記 staff という単語は個々のメンバーを意識しない場合は、単一グループということで単数扱いになるので、そのことが頭に残っていると、こういった書き方をしてしまう傾向があります。
(c) 単数形の名詞が X or Y, X nor Y, either X or Y, neither X nor Y という格好で並んでいる場合に、それを受けている代名詞が複数形ではないか
例えば、「信用リスクというのは、借り手または取引の相手方がその契約上の義務の履行を怠った場合に生じうる貸倒損失のリスクを指す」と言いたいとして、
NOT Credit risk is the risk of credit losses that can occur if a borrower or a counterparty fails to honour their contractual obligations.
BUT Credit risk is the risk of credit losses that can occur if a borrower or a counterparty fails to honour its contractual obligations,.
(d) 一方が単数形の名詞、他方が複数形の名詞という組み合わせで、X or Ys となっている場合に、代名詞に近い名詞が単数か複数かで決めるというルールを見落としていないか
例えば、「上司もスタッフも先般の変更を知らないままだった」と言いたい場合は、
NOT Neither the supervisor nor the staff members was aware of the recent changes.
BUT Neither the supervisor nor the staff members were aware of the recent changes.
(5)最初の字を大文字にすべき単語の処理を誤っていないか、パンクチュエーションの基本は大丈夫か
★ Capitalization
最初の文字を大文字にする(以下「キャピタライズ」)という決まりはさすがに浸透していて、ビギナーでも、人名や会社名、大学名などを間違って小文字で書いてしまうようなことはないでしょう。この他、とりあえず基本をおさらいしておくと、こんな感じです。
必ずキャピタライズするのは…
√ センテンスの最初の単語。これは引用文の最初の単語も同じです。→ My boss said, "You're fired."(上司が「お前はクビだ」と言った)。一方、同じ引用でもセンテンスとしてではないときは、引用府にくくるだけで、キャピタライズはしません。ですから、CNNも安倍総理につき、「彼の社会政策は、『美しい国、日本』を提唱する域にとどまっている」と述べるに当たり、His social policy does not go far beyond calling for "a beautiful Japan." としています。 "A beautiful Japan" ではありません。
√ 「私」という意味の、あの I
√ 書名などのタイトル × Gone with the wind ○ Gone with the Wind
√ 言語名 × She speaks french. ○ She speaks French.
√ 神その他宗教 × act of god ○ act of God(法律用語で不可抗力に当たる自然災害のこと)
√ ブランド名 × kleenex ○ Kleenex
問題は、キャピタライズすべきかどうか微妙な場合と、キャピタライズしてはいけない場合です。以下、場合分けをしてざっと見ておきます。
(a) キャピタライズすべきかで迷うケース
コロンに続く部分
ビジネスライティング一般の話としては、通常、コロンに続く部分が完全なセンテンスならキャピタライズする一方、そうでなければ、小文字のまま残しています。「事故の原因は明白だ。それは安全規則違反だ」という場合、以下のように二つの書き方ができ、コロンに続く部分が完全なセンテンスか否かでキャピタライズするかどうかが決まります。
The cause of the accident is clear: Safety rules were not followed.
The cause of the accident is clear: violation of safety rules.
大学の科目名
原則としてキャピタライズします。したがって、「経済を専攻した」と言うなら、 I majored in economics. は不可で、 I majored in Economics. と書くことになります。しかし、一つの科目名として、つまり固有名詞としてではなく、「その分野の」という感じで一般的に取りあげるときは、キャピタライズしません。ですから、「言語学関連の科目を取った」と言いたい場合は、I took courses in Linguistics. ではなく、I took courses in linguistics. という書き方をします。同様に、「彼女は経済専攻だよ」と言う場合も、She's an economics major. と書くのが普通で、Economics major ではありません。
Earth
一般に、天体としての地球を語る場合は the Earth で、そうでなく、単に「この地上」「この世界で」という意味合いで使うときは、キャピタライズしていません。例えば、「地球上で今一番幸せなのは私だ」と叫ぶとしたら、I must be the happiest person on earth. であり、こういった場合に Earth とするのは違和感があります。
会社の役職名、部署名
社内での役職名は、それが人の名前と一体になって使われる場合、例えば、「日向常務」というケースでは、Managing Director Hinata と書きます。あと、うしろに付く格好のときも、Mr. Hinata, Managing Director, とするのが多数派です。しかし、これが外部の業界紙だとか新聞などだと、Mr. Hinata, managing director of XYZ, was arrested today for... という格好になります。
注意を要するのは President です。英語の世界では President と言えば、一国の大頭領、特にアメリカの大頭領を意味するのが普通ですから、会社の用語としては避けるのが賢明です。President Abe announced yesterday that... というのは、いくら社内文書でも、こっけいな感じすらします。言い換えとしては、Chief Executive を使えますが、社長の名前は誰でも知っていますから、Mr. 誰々 程度で十分だと考えます。
あと、人の名前に役職名が使われているときも、キャピタライズするのが慣行です。例えば、文脈上誰のことかわかるとして、「副社長が営業会議で20分ぶっ続けでわめき散らした」と言いたいなら、The Executive Vice President ranted for 20 minutes straight at the sales meeting.と書けます。その副社長が John という人だとすれば、John ranted for 20 minutes straight at the sales meeting. と置き換えることができますから、The Executive Vice President が John の代わりであることがわかります。このように置き換えられるということは固有名詞代わりということですから、そこではキャピタライズするという理屈です。
部署名も同様で、社内の文書で、固有名詞のように扱う場面では、キャピタライズしますが(例えば何かのリストで人名と所属部署名を列挙するとき)、そうでなく、一般的な話として「株式営業、債券営業、そして IT の代表者がミーティングに出席した」と書くときは、普通名詞として扱い、Representatives from equity sales, fixed-income sales and IT attended the meeting. とするのが普通です。あと、正式の部署名を省略して使うときも、キャピタライズします。そこで、「修理部門から誰か来るのを待っているところだ」というメールを出すなら、I'm waiting for someone from Maintenance. と書きものです。
社内の研修コース名
それがコースの正式名称であるときは固有名詞として扱い、キャピタライズします。
• Giving Effective Presentations
• Writing Effective Emails
• Learning Negotiation Skills
しかし、単にコースの内容を説明するだけのものは、箇条書きをするときの慣行にしたがい、最初の一文字だけを大文字にします(これは見やすくするためなので、人によっては小文字のままにしています)。
• Giving effective presentations
• Writing effective emails
• Learning negotiation skills
(b) キャピタライズしてはいけないケース
√ 春夏秋冬 × by Spring ○ by spring
√ 特定地域を指さない West, East, North, South × go West ○ go west
√ 接頭辞 × Un-American ○ un-American
√ 普通名詞としての戦争 × the Price Wars of the 1980s ○ the price wars of the 1980s
√ 学位を略称 (B.A.あるいはM.A.)ではなく、書き出すとき × Bachelor's Degree, Master's Degree ○ bachelor's degree, master's degree
★ Commas
カンマについては、代表的なパターン、三つを知っていればひとまず十分です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また、セミコロンやコロンは実務文書ではあまり使いませんが、知っておくと、リーディングのときに助けとなります。詳しいことは こちらををどうぞ。
★ まとめ
ライティングの最低ラインをクリアするためには、以下がポイントとなります。
√ 主語と述語動詞がきちんとそろっているセンテンスを書くこと
√ 二つのセンテンスをつなぐときは、基本的に「カンマ+等位接続詞」を使うこと
√ 単文を羅列したり、重文ばかり使わないようにし、できるだけ複文を使って相手に自分のロジックが見えるよう心がけること
√ 主語と述語動詞、代名詞と先行詞との呼応ないし対応において単数か複数かを常に意識すること
√ キャピタライズする単語を間違わないこと
√ カンマなどの作文作法を守ること
関連資料
ライティングに役立つ記事は こちらにひとまとめにしてあります。よろしかったらのぞいてみてください。
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いつも拝読致しております。
さて、タイプミスだと思いますが、"(c) 単数形の名詞が X or Y, X nor Y, either X or Y, neither X nor Y という格好で並んでいる場合に、それを受けている代名詞が複数形ではないか"の正誤文例がどちらも同じ文です。
[返信]
ありがとうございます。直しておきました。