2006年11月 7日
(下)前置詞ATを使いこなす4つのポイント
★ 抽象的概念・業務を指す AT
She's still at work.(彼女はまだ仕事中)に見られるとおり、前置詞 AT は抽象的概念を表す名詞Xと一緒になることで、位置関係を示す地点・場所と言うよりは、「Xが行われる世界」「Xの世界」を表すことがあります。
例をいくつか挙げてみます。
✓ My children are still at school.(子どもたちはまだ学校だ)
✓The CEO is still at the airport.(社長はまだ空港だ)
✓ Hundreds of small fishing vessels were at sea when the tsunami hit.(津波に襲われた時、無数の小型漁船が海に出ていた)
これらのケースでは、どこにいるのかという場所の問題と言うよりは、何のためにそこにいるのかに焦点が合わさっていると言えます。ここで言う at school は、学校で授業を受けたり、休み時間に遊んだりといった普通学校で行われる事柄を指し、at the airport も、搭乗手続を済ませ、待合室で待機し、飛行機に乗り込むといった事柄を指し、また、at sea も海での操業を指しているのです。
一般的抽象的な話であることは、例えば、at sea につき、より具体的な話になると前置詞自体、海中の話なら IN、海上のことなら ON という具合に、違うものに変わることにも示されています。もし「大規模な油田が海にある」と言いたいなら
We have vast oil reserves in the sea.
ですし、「海で巨大な氷山にぶつかった」というケースなら、
We hit a huge iceberg on the sea.
という言い方になります。
同様に、at war(戦争中だ)というフレーズも、前置詞が変わります。「その二つの国が戦争をしている、交戦中だ」と言いたいなら、
The two countries are at war.
ですが、「主要都市がすべてその戦争で破壊された」ということを言う場合は、
All of the major cities were destroyed in the war.
となり、ここでは、AT ではなく、IN が使われます。
この手のものは大体決まっていますが、間違うと、実におかしな感じになります。例えば、「アメリカ大使館で係官がわれわれのパスポートを確認した上でビザを発給した」と言いたいとして、
× An officer in the U.S. embassy checked our passports and gave us a visa.
という言い方をすると、「アメリカ大使館内にいる係官が」という響きになってしまいます。これを言うとしたら、
An officer at the U. S. embassy checked our passports and gave us a visa.
でしょう。これなら「アメリカ大使館の係官」」という感じを伝える言い方になります。
★ 動詞との組み合わせが問題になる AT
前置詞 AT は、一定の動詞との組み合わせでは、他の前置詞 TO との組み合わせと違う意味を与えます。
例えば、契約書案を見た上司がそれを気に入らず、書類を弁護士の方にポンと放り投げたとした場合、これを表すのは toss to somebody という言い方ですから、こうなります。
Frustrated, my boss tossed the document to the attorney and asked her to redraft it.
ここで前置詞を間違えて、前置詞 TO の代わりに AT を使ったとしましょう。こうです。
My boss tossed the document at the attorney.
この場合は、完全に意味が異なり、「うちの上司が書類を弁護士に投げつけた」ということになってしまいます。
この種の動詞の場合は、その動詞の表している動作・作用、例えば、ここでの「ポンと放る』行為が AT を介して、特定の対象に向けられている様子をはっきりさせるのです。したがって、誰かが laughed with me という場合なら、一緒に笑ったという和やかな場面なのに、誰かが laughed at me となれば、こっちがいわば「嘲笑の標的」として笑いの対象になるわけですから、まるで感じが違ってきます。
実は、この AT と組み合わさることでそこでの AT の目的語が標的ないし攻撃対象としての性格を帯びる感じは形容詞の場合にもあり、例えば、mad at 誰々、angry at 誰々、 cross at 誰々というふうに、ある人が誰かに対して怒っている状態を表す際に前置詞 AT が使われます。
★ アメリカ英語とイギリス英語の違い
アメリカ英語とイギリス英語における AT の扱いでまっさきに頭に浮かぶのは、自分の内線番号を言うときの違いです。
「私の内線番号は1234ですので、ご用の折にはこちらまで」という趣旨のことを言いたい場合、アメリカ英語だと、こう言います。
You can reach me at extension 12345.
ところが、同じことを言うのに、イギリス英語だと on を使って、
You can reach me on extension 12345.
になります。
一般に、前置詞 ON は、(抽象的ながら)何か「接地面」があるイメージですから、アメリカ人にとっては、電話線の末端にある抽象的な点であるものが、イギリス人にとっての内線は、電話線上にあるものと観念されているのでしょうか。
もう一つの大きな違いは、「週末に」と言うとき、アメリカ英語だと over the weekend なのに、イギリス英語だと at the weekend だということでしょう。例えば、「週末は病気で寝込んでいた」と言いたい場合、こうなります。
I was sick over the weekend.(アメリカ式)
I was ill at the weekend.(イギリス式)
なお、イギリス人にとっての sick は気分が悪くて戻すような状態を指しますから、普通の病気で調子が悪い状態は ill で表します。
これも強いて解釈すれば、アメリカ人にとっての週末は、土日という「プラットフォーム」上の日々であるのに対して、イギリス人にとっては、土日という一単位の時間的区切りと感じられるのかも知れません。
ことのついでに、もう一つ違いを挙げると、例えば「クリスマス前後の時期」は、アメリカ英語だと、over Christmasですが、同じことをイギリス人は at Christmas と言います。ですから、「(アメリカから派遣されている)外国人社員のほとんどがクリスマスの時期はアメリカに戻る』と言いたいなら、こうなります。(この expat は、expatriate つまり本国から派遣されて外国で勤務している社員を縮めた言い方です)
Most expats are returning to the States over Christmas.
イギリス系の会社で、同じことをイギリス人が言うとしたら、普通、こうです。
Most expats are returning to the UK at Christmas.
なお「クリスマスの日に」という場合は、アメリカでもイギリスでも on Christmas day になります。
★ まとめ
場所や地名を挙げる場合、立体的空間をイメージしながら言うなら前置詞は in Tokyo というふうに IN を使いますが、縦・横・奥行きのない抽象的な点や線上の経由点あるいは終点のイメージで言うときは、at the corner のように、AT を使います。
時間に関わる表現においては、AT は、at 9 o'clock, at noon という具合に、24時間で表される時間軸上の一点を言うときに使います。
また、at sea、at war などのように、場所を示すと言うよりは、そこで何が行われるかという角度からものを言う場合に、前置詞 AT が組み合わさることがあります。
一方、shout at somebody(その人に向かったわめく)と shout to somebody(その人に向かって大きな声で呼びかける)の違いに見られるとおり、前置詞 AT は一定の動詞との組み合わせ上、「標的」ないし「そこでの動作・作用が直接向けられている対象」という色合いを強めるのに使われます。


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