2006年11月13日
Responsibility vs Liability
中級レベルと上級レベルの人を隔てる壁の一つが同義語の使いわけだと思いますが、その種のものとして、responsibility と liability の違いがあります。積極的に負うのかは別として、いずれの言葉も、もともと本人の立場に照らし、社会的に期待されているものがあり、それに反すると何らかの社会的不利益のあることがうかがわれ、そこに何かしら共通するものがありそうだと感じられる言葉です。実際、英和辞典を引くとどちらも「背任」という訳語が示されています。しかし、当然、違いはあるわけで、責任の話ならどちらを使ってもかまわないということではありません。
この点、初級者レベルだとそれどころの話ではないのでしょうが、中級以上で、特に問題意識が高く、観察力も鋭い人はたいてい、この liability が出て来る文章にぶつかると、responsibility とはどう違うんだということを尋ねるというのが私の経験です。
そこで、今回は、両者が違っている点と共通している点を見て行きたいと思います。
★ Responsibility とLiability はどう違うのか
まず違いですが、普通、responsibility と liability の違いは、liable for something と repsonsible for something はどう違うのかという角度から語られていますので、ひとまずこのアプローチで行きます。
例えば、The Merriam-Webster Dictionary of Synonyms and Antonyms は、responsible という形容詞につき、こう説明しています。
"implies the holding of a specific or formal office, duty, or trust" (具体的ないし正式な役職、責務あるいは信任される立場を有しているという意味合いがある)として、the bureau responsible for revenue collection (歳入の徴収につき責任を負っている部局)という例を出しています。
これに対して、liable の説明はこうです。
"implies an obligation under the law to answer in case of default" (債務不履行の場合に責任を問われる法律上の義務という意味合いがある)とした上で、will not be liable for his ex-wife's debts (離婚した妻の債務につき責任を負うことはない)という例を挙げています。
私が一番よく使っている同義語辞典である S. I. Hayakawa の Choose the Right Word (Harper Resource) では、responsible, accountable, answerable, liable は、いずれも自分が引き受けていることがらに関しては、肯定的評価、否定的評価のいずれであっても、出た結果に対する評価が本人に帰することを指すのだとした上で、responsible につき、以下のような分析をしています。
第一に、やり遂げるのが大変だとか、条件が厳しい職責を果たし、しかるべく権限を他に委ね、かつ、予想外の困難が生じてもそれを克服して仕事をこなせるぐらいに、分別をわきまえているとか、有能である人 (anyone mature or able enough to discharge difficult or exacting duties, to delegate authority wisely, and to perform capably despite unforeseen obstacles) について言うとしています。
ここでなるほどそうだよなと納得したのは、契約書などでよく出て来る "to remedy the breach withing a reasonable period" (相当の期間内に違反を是正する)というフレーズです。日本語で言う「相当の期間」がそうであるように、何をもって reasonable とするかは、いわばオトナの判断が要求されるわけで、世間的なものごとの道理をわかった上で、その道理にしたがって「このぐらい」と判断される期間が reasonable ということになります。他の言葉で置き換えるとすれば、実際にもよく使われている within an appropriate period of time というときの appropriate でしょう。
第二に、 responsible to 誰々という言い方に見られるとおり、より狭い意味では、一定の仕事を課する者とそれを引き受けている者との関係について言われ、この場合は、職責を遂行する者は、その責務を負託した者に対してのみ責任を負うことになる、と説明しています。会社の業務に即して言えば、例えば、「監査部門の責任者は監査委員会に対して責任を負っている」と言いたいなら、The head of Audit is responsible to the Audit Committee. という言い方をしますが、この場合の responsible がその例だということです。考えてみると、この手の responsible は answerable と置き換えることもできます。
第三に、ネガティブな状況においては、responsible は、誰に責任を負わせるべきかの問題となり、例えば、損害賠償請求の裁判における陪審員は、decide whom to hold responsible for the accident (その事故の責任を誰が負うべきかを決定する)のだとしています。たしかに、「裁判所は被告の従業員による違法行為につき被告の責任を認めた」という場合は、The Court held Defendant responsible for its employee's illegal activity. という言い方をしますから、これも納得できます。
続けて、同書は、liability の説明の所では、responsibility の語義の三と重なるのがこの liability だとし、法的には、さらに狭く、金銭賠償の責任を負うことを指すとしています。これも実例に即して考えると、The Court held Defendant liable for the damage.(裁判所はその損害につき被告の責任を認めた)という言い方はごく普通ですから、うなずけます。
おおざっぱに言えば、responsibility が責任一般をカバーするが、liability はその中でも範囲が限定されていて、法的責任について語るときに使われるということであり、最も狭い意味では金銭賠償責任を指すということです。
実際、契約書などでよく見る、「本件製造者は本製品の使用に起因する損失に由来する費用については何らの責任を負わない」という一項はたいていこうなっています。
MANUFACTURER shall not be liable for any expenses incurred due to damage or loss arising from use of the PRODUCT.
こういった場合は、"shall not be responsible for" よりは "shall not be liable for" の方が多数派だと言えます。(後述するとおり、responsible for が法的責任の場合にも使われることはあるわけで、Googleのヒット件数で比較すると、"seller shall not be liable for" がおよそ45000件あるのに対して "seller shall not be responsible for" も約13000件あります)
この他、無過失責任つまり過失がなくとも追及される損害賠償責任などは、strict liability であって、strict responsibility ではありませんし、また、使用者責任つまり事業のために従業員を使っている者は、その授業員が仕事上第三者に損失を与えた場合は、自分に過失がなくても賠償責任を負うという制度も、vicarious liability です。ちなみに、vicariousというのは「他に代わって」という意味で、「代位責任」という訳もあるようです。
★ Responsibility に法的責任という意味はないのか
それでは、 responsibility は法律関係では使わないのかと言うと、これがそうではないのでややこしい限りです。実際、Bryan Garner の A Dictionary of Modern Legal Usage などは、Whereas nonlawyers use this term [=responsibility] in moral senses, lawyers give it legal senses.(法律家以外の人たちはこの言葉につき道義的な意味合いを付するのに対して、法律家は法律的意味合いを持たせている)としているぐらいです。
法律的意味合いを前面に出して responsibility を使うのは、同書が言うように、刑事裁判で有罪と判断される場合や、精神障害等で責任能力なしとされる場合など刑事法関係でよく見ます。例えば、刑事責任年齢つまり刑事責任を問える年齢は age of criminal responsibility ですし、刑事責任無能力は diminished responsibility であり、liability という言葉が使われることはありません。
また刑事法を離れても、English Law Dictionary (Peter Collin Publishing) の responsibility の項には、こんな例文が載っています。
There is no responsibility on the company's part for loss of customer's property.(客の持ち物の紛失につき会社は何らの責任も負わない)
The management accepts full responsibility for loss of goods in storage.(弊社は保管中の物品jについては全責任を負います)
いずれも法的責任の問題であることは明らかなのに、言葉としては liability ではなく、responsibility を使っています。
★ まとめ
広い意味での「責任」を言うときは、一般に responsibility を使い、ときには法的責任までカバーしていることがあると言えそうです。ただ、法的責任でも民事責任、その中でも金銭賠償の責任の話であることが明らかなときはもっぱら liability です。一方、同じ法的責任でも、刑事責任がらみだと liability ではなく、もっぱら responsibility が使われています。
じゃあ、普通の「責任」と「法的責任」はどう分けるのだと言われそうですが、自分の感覚では、法律にしたがって金銭賠償債務を負わされるといった法的不利益を受けたり、あるいは懲役何年といった法的制裁を受けるような場合について言うのが「法的責任」です。

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日向先生、
この記事、大変興味深く読ませていただきました。
専攻の関係上、会計・ビジネスロー関係を勉強してきたので、その中で、「はてさて、自分はどのように解釈してきたのかいな?」と思い返してみました。今、たまたまpaperのリサーチ中で、evaluation of value of contaminated propatyなんてしておりまして、ここでのcleanupの責任はliableやliabilityですね。responsibilityなんて見たことないです。
現在就職活動中ですが、仕事上の責任はjob responsibilityですよね。日々やってもらうことです。これってやはりresponseから出ているんじゃないかなと思うんですよ。つまり、responseが求められているのであって、あえてresponseしないのはダメ、みたいな感じがあります。ある程度の強制力は感じますが、法的な権力は感じず、自主的に動くことが求められている感じがします。
liabilityは逆に、第三者的な公権力の存在がありありと出ていて、例えば、日本流に言えば不法行為をしてしまったとき(civil, criminal両方)最終的には公権力の強制が働くという感じがします。それは、「最終的」なものであって、普通は、契約上のconsiderationの引渡し(債務の履行)やdamageなどの支払いなど、自主的な行為が求められているとは思いますが。最近のコンプライアンスなんていうのもこれでしょうね。使い方の幅は結構ありそうですが。
それと、liabilityは「(債務なども含めて広義で)まずいことが起こった、それからの責任」であって、そのまずいことが起こらなければ、liabilityをかぶる必要がないわけです。そのまずいことに「備えておく」ことは求められていますが(product liabilityや自動車保険のliabilityなど)。responsibilityにこの意味があると、例えば responsibilityなんて知りたくもない、って感じがします。
雑感でした~。
[返信]
地味な記事を読んでくださり、ありがとうございます。おっしゃるとおり、I'm responsible for...と胸を張って言えることがあるのに対して、liable はそういうのがなく、ネガティブですよね。軽い感じでも、You will be liable to income tax. と言われたら落ち込みますものね。
会計・ビジネスローを専攻されたとのこと、引っ張りだこになりそうで、前途洋々ですね。頑張ってください!
なお、例の Other things being equal. は修正の上、関連のコメントは削除しましたので、悪しからずご了承ください。