2006年12月 3日
(6)英語族のためのフランス語&スペイン語入門
今回は、こういうセンテンスを取りあげます。
Please write your address. ⇒ 住所を書いてください。
これのフランス語バージョンとスペイン語バージョンはこうなります。
フランス語 スペイン語Veuillez écrire votre adresse. Escriba, por favor, su dirección.
☞ 英語の作りを研究すると …
Please こそ付いているものの、基本的には Write your address. という命令文です。そこで、こういう事務的なもの言いを要する場面でなければ、普通は、形式的ながら相手に Yes/No を言う選択権を与えて、Can you write your address? といった言い方をします。
☞ フランス語を比べると …
Veuillez écrire votre adresse. は、英訳を補充しながら分解すると、こうなります。
Veuillez (= would you please) + écrire (= to write) + votre (= your) + adresse (= address)
ここでの veuillez は、to wish を意味する動詞 vouloir の不規則な命令形で、訳としては、consider doing something, be good enough という感じが当てはまると思います。
動詞écrireはここでは原形のまま使われていますが、現在形はこう活用します。
je écris
tu écris
il écrit
nous écrivons
vous écrivez
Ils écrivent
-s, -s, -t, -ons, -ez, -ent というパターンを見て取れますから、同じ格好をしている rire (=to laugh) も同じ活用なんだろうなと見当をつけ、実際、ネット上の conjugator でチェックすると、以下のとおりでした。
je ris
tu ris
il rit
nous rions
vous riez
ils rient
英語での your に当たる votre は、けっこう面倒くさいグループの一員です。
まず my, your(「お前の」的なインフォーマルな言い方), his, our, your(「あなたの」的な丁寧な言い方), their は、以下で見るとおり、続く名詞が単数形の男性名詞か、女性名詞かで変わる上、続く名詞が複数形だと、これまた独特の形を取ります。
単数形男性 ⇒ mon, ton, son, votre, notre, leur
単数形女性 ⇒ ma, ta, sa, votre, notre, leur ただ、その女性名詞が amie = girlfriend のように母音で始まる言葉のときは、男性用の mon, ton, son...を代用します。ですから、mon amie (= my girlfriend) のように、mon で始まっていても続く名詞が男性名詞だとは限りません。
複数形 ⇒ mes, tes, ses, nos, vos, leurs(この最後のleurs が鬼門です。単数形のときの leur と似ていますから、書き取りなどのときに、つい、nos, vos, leur 書いて失敗した覚えがあります)
例題で出て来る adresse は女性名詞ですから、「お前の住所」なら ton adresse ですが、見知らぬ救急隊員にそうは言われたくありませんから、丁寧な方の votre を使って、votre adresse と言っています。
☞ スペイン語を比べると …
Escriba, por favor, su dirección. を英訳付きで分解すると、こうなります。
Escriba (= write), por favor (=please), su (=your) dirección (=address).
最初の escriba は、「書く」という意味の動詞 escribir の命令形で、相手が1人なら、escriba 、複数なら、escriban です。そこで、「名前を書け」だったら、Escriba su nombre. か Escriban sus nombres. となります。
おもしろいのは、英語と同じで、基本的には命令文なのに、por favor (= please) をつけることで、丁寧な言い方になる点です。ちなみに、このケースでは、急いでいますから、まだるっこしい感じとなりますが、スペイン語で丁寧にものを頼むときは、よく Tenga la bondad de (= Be good enough to..., Do me the favor of...) を使うと覚えています。したがって、この例は、もっとのんびりした場面なら、Tenga la bondad de escribir su dirección.という言い方によることもできます。
スペイン語版の、my, your, his, our, your, their は、フランス語とちょっとおもむきが違い、こうなります。
続く名詞が単数の男性名詞(例えば本) ⇒ mi libro, tu libro, su libro, nuestro libro, vuestro libro
↑
ご覧のとおり、mi, tu, su までは、下の女性名詞の場合と同じですが、our に相当する nuestro と インフォーマルなyourに当たる vuestro の語尾が tro で終わる点、女性のときと違っています。続く名詞が単数の女性名詞(例えばシャツ) ⇒ mi camisa, tu camisa, su camisa, nuestra camisa, vuestra camisa
↑
最後の nuestra と vuestra がポイントです。続く名詞が複数の男性名詞 ⇒ mis libros, tus libros, sus libros, nuestros libros, vuestros libros
↑
複数なので、mi, tu, su に各々 s が付いて、mis, tus, sus になり、また、neustro と vuestro にも s が付いて nuestros と vuestros になります。前半の mis, tus, sus は、続く名詞が複数形である限り 男性でも女性でも同じですが、nuestro と vuestro だけは変化するので注意を要します。
続く名詞が複数の女性名詞 ⇒ mis camisas, tus camisas, sus camisas, nuestras camisas, vuestras camisas
↑
最後の nuestras と vuestras がカンドコロです。
この中で一番わかりにくいというか、慣れるまでぱっと出て来ないのが su と sus です。何しろ、his, her, 丁寧な you に対応する yourと、それと theirをカバーしていますから、いちいち考えなくてもぱっと出て来るぐらいに練習しておく必要があります。
ただ、自分から、正確を期したいときは、de él を使って、su camisa と言う代わりに、la camisa de él という言い方を使うことができます。同様に、de usted (= your), de ellos (=their、男の), de ellas (=their、女性の)も使います。
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イタリア語では次のようになります。
Per favore, scrivi il tuo indirizzo !
Potresti scrivere il tuo indirizzo ?
Per favore, scriva il suo indirizzo !
Potrebbe scrivere il suo indirizzo ?
どれを使うかはその時の状況と、相手によると思います。
命令文に、"per favore"をつける理由はスペイン語と同じですが、会話で使う場合にはエチケットとしてつけたほうが良いようです。
Potere (=can) の条件法 (potrei/potresti/potrebbe) を使うことで、丁寧な言い方になります。
KH:なるほど、英語と同じで、条件法にすると tentative になり、直接性が薄らぐという発想ですね。スペイン語もたしか 「podría/pudiera なんとか」で丁寧になりますよね。
英語はもちろんですが、フランス語もスペイン語も所有形容詞 (tuo/suo) の前に冠詞がつかないことに驚きました。
イタリア語の場合、"誰のものか" (di chi ?) を限定した場合、例外もありますが、不定冠詞・定冠詞・指示形容詞・不定形容詞が必ずつきます。
KH:英文法の本でも、新しいものだと限定詞 determiner という区分を設け、その中でも冠詞が入るスロットには指示代名詞、所有格の代名詞、不定量を示す言葉なども入りうるけれど、どれかを入れたら他は使えないと説明されています。
不定冠詞と定冠詞の違いは
il suo indirizzo - あなたの"定"住所(他に家はない)
un suo indirizzo - あなたの本宅でも別宅1でも別宅2も、"どれでもいい一つの"住所
KH:これは英語でも同じですね。定冠詞を使うのは、specificであることと相手にもそうとわかっているとき (hearer's knowledge) という2要件が満たされる場合であるのに対して、不定冠詞を使うのは「カテゴリー」の話をするときと説明されますから。
"冠詞はアクセサリーではない"とイタリア語の教師に言われたことがあります。
奥が深いですね。だから面白くもあり!
KH;同感です。冠詞は話し手がどういう理解に立ってその名詞を使おうとしているのかを相手に伝えるツールですから、コミュニケーションの上で重要な要素だと思います。おっしゃるとおり、奥が深く、おもしろい分野だと感じています。力強い援軍の到来、うれしく思います。どうぞこれからもよろしくお願いします。