2006年12月25日
THATがらみの失敗(英語の落とし穴の26)
これまで落とし穴シリーズでは、動詞、前置詞など品詞をベースにして、うっかりはまる落とし穴を取りあげてきましたが、今回は、THAT を省略できるか否かで迷う学習者向けにポイントを整理してみました。
このあたりの迷いを「失敗」と決めつけるのはちょっと気が引けますが、やはり普通に英語を使っている人からすれば、省略される THAT がいちいち入っていると違和感があるもので、逆に、あるべきところに THAT がないのも気になるものです。
そこで、今回は、「普通はこうしているよ」という見地に立って、省略するケースを4つ取りあげ、次いで、省略しないケースを4つご紹介します。
なお、この手のTHATが省略されるのは、主として話し言葉の世界のことです。言わなくても話し手の方で簡単に補充できるから、いちいち言ってくれなくてもいいよという感じになるのでしょう。他面、フォーマルというほどではなくても、ニュースその他報道関係だと、けっこう丁寧にこの種の THAT が入っていることが目を引きます。おそらくは、視聴者や読者に余計な負担をかけずに、すっと頭に入るようにという心遣いなのでしょう。
★ THATを一般に省略するケース4つ
その1: decide, know, say, think, write 等の「よく使う」動詞のあとの THAT
ちょっと休むようにした方がいいと決めました。
△ I decided that I should try to get some rest.
○ I decided I should try to get some rest.
名詞節(主語と述語動詞のそろっているセンテンスで、主語となったり、目的語となったりして、名詞の役割を果たすもの)を導くためのTHATは、「誰々がこういうことを言った」「その人の考えはこうだ」ということを伝える動詞に続くときは普通、省略されます。この種の動詞としては、know, say, think, writeなどがありますが、学習者用の辞典を見ると、know (that), say (that)と書いてあるので、省略しうることを確認できます。
一般にTHAT節が続く場合でも冒頭のTHATが省略されない動詞としては、assert, allege, explain, complain, maintain, emphasize が挙げられます。一応、どれも単なる say と比べて場合、プラスアルファ的ニュアンスがあり、その意味でただの say よりは内容を伴っており、そこが違うとも言えます。
そうは言っても、主観的「語感」の問題なので、assert that とボールドで用例法を示し、THATを省略するなという指示をしている辞典があるかと思えば、assert (that)と省略できることを示す辞典もあるという具合で見方は分かれます。学習者としては、すべてにTHATを入れるというのも一つのやり方です。
なお、スピーキングの場合のルールということになりますが、I know that...などの場合、that の前に休止符を打つ感じでちょっと息を止めることについては、 こちらの記事が参考になると思います。
その2: 「よく使うタイプの形容詞」に続く THAT
2ヶ月も彼女が電話してこないというのは何かおかしいですね。
△ It's strange that she hasn't called in two months.
○ It's strange she hasn't called in two months.
形容詞を THAT 節が修飾している場合、その形容詞が funny, glad, happy, strange, surprised などのように日常的によく使われるものであるときは、THATを落とすのが普通です。
これも動詞の話と同じで、どの形容詞がよく使うものであり、従って、THATを省略できるかは辞書によって違うくらいで、迷います。自分では、原則として THAT を入れず、It is questionable that...のように、普段、あまり使わない形容詞のときは、THAT を付けています。
その3: 限定用法の関係詞節における THAT
読めと言われたレポートを見たかい。900ページ以上もあるよ。
△ Have you seen the report that we were assigned? It has more than 900 pages!
○ Have you seen the report we were assigned? It has more than 900 pages!
設例の that we were assigned の部分はどの本かを特定するために必要な情報で削除できません。限定用法の関係詞節と呼ばれるものですが、こういった関係詞節におけるTHATが目的語であるとき(we were assigned that というふうに読み替えることができるとき)は省略できます。
そこで設例を見ると、the book イコール we were assigned the book という関係があり、しかもthe book の「身代わり」となっている THAT は、動詞 assigned の目的語ですから、設例は通常、THAT を省略するケースであることがわかります。
その4: 定型句での THAT
データが正しいとすれば、この分析モデルが正しくないか不完全だということになりますね。
△ Assuming that the data are correct, the analytical model is either incorrect or incomplete.
○ Assuming the data are correct, the analytical model is either incorrect or incomplete.
定型的な言回しでの THAT は、いちいち入れなくても、THAT があるとわかっているので、この ASSUMING THATでのTHATのように、普通は省略されます。
SO...THAT という定型句的な言回しも同じで、実際、Macmillan English Dictionary の SO の項を引くと、見出しからして、 so...(that) と、that を省略して使えることがわかるようになっています。そして、そこでの例文も、Everything's changed so much I can hardly recognize the place. (すべてが変わってしまっており、自分でもどこだかわからないほどになっている)というふうに、much のうしろに入っている that が省略されています。
ここで言う「普通」とはインフォーマルな、つまり気張る必要のない普段の会話のことですから、書き言葉では省略しません。
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★ THAT を省略しないケース4つ
その1: 名詞を同格のTHAT節が修飾している場合、このTHAT節を導くための冒頭のTHATは省略しません
私はこのプロジェクトが実行可能でないという経営陣の見方に同調できません。
× I disagree with management's view the project is not feasible.
○ I disagree with management's view that the project is not feasible.
I said とか I decided のように、通常、そのあとに名詞節が来るとわかっている動詞で切り出したときは、THAT がなくても見当はつきます。しかし、名詞を修飾するTHAT 節となると、名詞自体さまざまなものがあり得ますし、述語部分が長いとなると、THATを入れて、「ここから先が今の名詞の説明です」と聞き手に合図してやらないとメッセージがうまく伝わらなくなってしまいます。というわけで、ここでは THAT は不可欠の部品と扱われます。
ところで、鋭い読者の方は、設例の I disagree with management's view that the project is not feasible. での that the project is not feasible と、THATを省略するケースの「その3:限定用法の関係詞節におけるTHAT」で取りあげた、Have you seen the report that we were assigned? での that we were assigned とが、どう違うんだと思われたことでしょう。
両者の違いは、that the project is not feasible が view と同格の名詞節であるのに対して、that we were assigned の方が report を先行詞とする形容詞節であることにあります。このことは、that の部分を which で置き換えてテストするとわかります。
I disagree with management's view WHICH the project is not feasible.
これは変です。ですから、名詞節です。
Have you seen the report WHICH we were assigned?
これは違和感なく通じます。したがって、形容詞節です。
名詞節と形容詞節を見分けた上、然るべく使いわける必要などそうそうあるものではありませんが、このWHICHで置き換えるというテスト法、こういうときには威力があります(Geoffery Broughton の Penguin English Grammar A-Z for Advanced Students で紹介されていた方法)。ただ、難点は「違和感」の有る無しなど、ある程度以上英語に慣れていないと判断できるないことでしょう。
その2: 複数の THAT節があるときは、THATを省略しません
以上でご説明しようとしたのは、昨年度の実績が50年前に貨車が始まって以来最高の業績であったこと、健全な財務体質のおかげで膨大な資金を研究開発に投じてきたこと、それに強力な新製品候補をいくつも抱えているということです。
× I've attempted to explain here last year was the strongest year ever in our 50-year history, our strong balance sheet has enabled us to make massive investment in research and development, and we have a strong pipeline of new products.
○ I've attempted to explain here that last year was the strongest year ever in our 50-year history, that our strong balance sheet has enabled us to make massive investment in research and development, and that we have a strong pipeline of new products.
複数の THAT 節を並べる場合に、それを導入する THAT が省略されてしまっては、節目がわからなくなりますから、こういった場合は、省略することなく、必ず THAT を入れます。
その3: 受動態では THAT は省略しない
3ヶ月内に販売目標を達成できなかったらこの製品は打ち切られることもあると聞かされた。
× We were told the product may be discontinued if the sales target is not met within three months.
○ We were told that the product may be discontinued if the sales target is not met within three months.
これは、Longman Grammar of Spoken and Written English での調査結果によるものです。おそらく受動態は会話体ではそうは使わないものだけに、受動態の動詞を使うときは、話し手も気を使って、THATを入れることで聞き手の頭にすんなり入るようにしているのでしょう。
その4: 動詞とthat節の間に名詞や代名詞が入るときは、THATを省略しない
先方には、法的手段に訴える他ない旨を既に知らせてある
× We have already notified them we would have no choice but to resort to legal channels.
◯ We have already notified them that we would have no choice but to resort to legal channels.
ここでは、We have already notified them we would...とすると、notifiedという動詞のうしろに them という余計なものが入っているので、ここから先がnotifyされた内容ですよと合図するものがないとわからなくなってしまいます。

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Comments
先生こんにちは。
「失敗例の3: 名詞に続くTHATを省略してしまう
名詞をTHAT節が修飾しているセンテンスでは、このTHAT節を導くための冒頭のTHATを省略することはできません。」
名詞(management's view)をthat節が修飾しているというご説明は不適切だと思います。「失敗例の4」の後半で同格の名詞節について触れられているので、問題はないのかもしれませんが、「名詞とthat節が導く名詞節とは対等(いわゆる同格)の関係にあるのでthatは省略できません」といった説明の方が適切だと考えますが、いかがなものでしょうか。
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せっかく寄せてくださった、このコメント、実は、スパムと区分され、長いこと公開されていませんでした。スパムとして排除されたものを念のため見直していて、2007年1月14日に発見いたしました。時機を失してしまい、申し訳ないことです。
- kimura88
- 2006年12月25日 13:41

日向先生、毎回毎回かゆいところに手が届くご解説感謝しております。いつもプリントアウトして学習させて頂いています。
さて、「英語の落とし穴シリーズ」につき出版を検討中とのことですが、雑記帳の内容に加筆修正という形式を取られるのでしょうか。出版が待ち遠しいです。
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[返信]
せっかく寄せてくださった、このコメント、実は、スパムと区分され、公開されていませんでした。スパムとして排除されたものを念のため見直していて、2007年1月14日に発見いたしました。時機を失してしまい、申し訳ないことです。
お尋ねの件ですが、要点だけ英文法的な出版物にしてもらえたらと思っています。いずれにしろ、多少の加筆や並べ替えはするつもりです。