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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2007年2月20日

(4) 英語族のための5ヶ国語リサーチ

今回は、こういうセンテンスを取りあげます。注釈に、カレンダーや時計を見せながら尋ねよという指示が入っています。

When did you become ill? ⇒ いつ具合が悪くなりましたか?


これのフランス語バージョンとスペイン語バージョンはこうです。

フランス語
スペイン語
 Quand êtes-vous tombé malade ?  ¿Cuándo cayó enfermo/a?

まずは英語がどういう作りになっているのかを確かめてから、これを起点として、フランス語版とスペイン語版と比べ、その上で、イタリア語、ドイツ語、ロシア語がどうなっているかを見て行きます。このうちイタリア語の部分はまだ勉強に手をつけていないので、見物人に徹し、訳文を紹介する程度にとどめます。


________________________________________


☞ 英語の作りを研究すると …

When did you become ill?

ここでは具体的な情報を聞き出すために疑問詞 When をつかっています。その上で、平叙文なら、You became ill. になるものを疑問文にするため、動詞と主語の順番を入れ替えていますが、BE動詞が使われている場合と異なり、助動詞 DO の助けを借りています。英語の特色であると同時に、ビギナーが疑問文で苦労する原因でもあります。

つまり、You are ill. のように BE動詞を使っているセンテンスなら、Are you ill? というふうに、単純に主語と動詞の順番を入れ替えれば済むのに、BE以外の「一般動詞」のときは、語順を入れ替えずに、DO を頭に入れて疑問文を作るというやり方を取るということです。

ちょっとここで基本的なことをおさらいしておきますと、このハンドブックの例文はイギリス赤十字が制作したものなので、当然、イギリス英語にしたがって、ill という言葉を使っている点、注意を要します。アメリカ英語なら sick ということになりますが、イギリス英語だと sick と言うと、単に気分が悪いだけでなく、吐き気がしたり、実際に嘔吐してるような状態を指すことです。


☞ フランス語を比べると …

Quand êtes-vous tombé malade ?

英訳入りで眺めると、こうです。

Quand (=when) êtes-vous tombé (have fallen) malade (ill) ?

英語同様、疑問文にするため順番がひっくり返っていますが、これを直すと、動詞句の部分は、vous êtes tombé で、これは助動詞 être プラス過去分詞で作った passé composé (=present perfect) であることがわかります。

ややこしいことに過去を語るためには、tombais, tombais, tombait, tombions, tombiez, tombaient と活用する imparfait というものも用意されていますが、こちらは、"how things used to be" とか "what was going on" を語るためのもので、ここでの例文のように "what happened" を語るためには、passé composé を使うという理屈です。

おもしろいのは、フランス語の場合、tomber が英語の fall に当たるわけで、"fall ill" という言い方をしている点です。これは次のスペイン語でも同じで、そこでも英語で言うなら、"fall ill" に当たる、caerse (=fall down) + enfermo (= sick, ill) という言い方になっています。たしかに英語でも "fall ill" という言い方はあることはあるのですが、これはいわば文語体といった方がいいぐらいの何かフォーマルな響きがあります。したがって、誰かが She has fallen ill. などと言っていたら、「彼女は病を得て臥せっておられます」みたいな古風な感じがして、笑ってしまう、そんな感じの言い方です。


☞ スペイン語を比べると …

¿Cuándo cayó enfermo/a?

英訳入りでは、こうなります。

¿Cuándo (=when) cayó (= fall) enfermo/a (= ill, sick)?

英語でなら fall ill になる言い方の fall に相当する cayó は、動詞 caerse の過去形です。

ここでもフランス語の場合と同じで、同じ過去のことでも、imperfect で語るのか、preterite (フランス語の passé composé )で語るかの選択があります。そして、ここでもフランス語と同じく、"how things used to be" または "what was going on" を語る場面では、以下の imperfect です。

yo caía
tú caías
él/usted caía
nosotros caíamos
vosotros caíais
ellos/ustedes caían

ところが、ここでは端的に "what happened" を尋ねているので、以下の preterite を使います。

yo caí
tú caíste
él/usted cayó
nosotros caímos
vosotros caísteis
ellos/ustedes cayeron

ご覧のとおり、スペイン語での丁寧な you は3人称単数(ドイツ語のときは3人称複数ですよね)を転用するので、usted cayó という格好になります。

次に形容詞 enfermo/a にスラッシュが入っているのは、スペイン語の場合、形容詞が主語が男性か女性かに応じて形を変える必要があるためです。

質問されている人が女性なら、

¿Cuándo cayó enferma?

になるし、相手が男性なら

¿Cuándo cayó enfermo?

という言い方になるということです。

 

イタリア語バージョンは…

Quando si è ammalato?


スペルが違うものの、音的にはイタリー語も When に当たる言葉は 「クワンド」なんですね。

オンラインの辞典で見ると、ammalato が sick という意味はわかりましたが、イタリー語の場合は、男女の別がないのでしょうか。


ドイツ語バージョンは…

Wann wurden Sie krank?


Wann は英語の When だというのはわかります。次の動詞 wurden は、英語でなら become に相当する動詞 werden の過去形だというのもわかるようになってきました。

現在形が

ich werde
du wirst
er/sie/es wird
wir werden
ihr werdet
sie/Sie werden

というふうに活用される動詞です。

ここで感心というか、フランス語やスペイン語などのロマンス語との違いに気づいたのは過去形の扱いです。上で見たとおり、フランス語の場合は、what happened を語るなら passé composé で、how things used to be や what was going on を語るときは imparfait を使い、また スペイン語の場合は、what happened を語るなら preterite(フランス語の passé composé に相当) で、how things used to be や what was going on を語るときは imperfect でした。

ドイツ語はどう使いわけるのかと言うと、Langenscheidt German Grammar in a Nutshell によると、To talk about the past in German, we almost always use the Pefekt or perfect tense. とした上で、When using auxiliary and modal verbs and in more formal situations, however, the Prteirtum or past simple is prferred. としています。

設例の場合、助動詞はありませんから、よりフォーマルな言い方をしたいということで past simple が使われたと解されます。一般的な perfect tense を使えば、Wann sind Sie krank geworden? (だろうか。不安です。ドイツ語族の方、この部分、間違っていたら教えてください)となるものを、わざわざ Wann wurden Sie krank? という言い方にしたということです。

念のため、動詞 werden を imperfect で使う場合の活用形を見ておきます。

ich wurde
du wurdest
er/sie/es wurde
wir wurden
ihr wurdet
sie/Sie wurden

語幹の wurd に、-e, -est, -e, -en, -et, en を付けただけですから、割と素直な感じで、これなら覚えられます。

でも、ビギナーとしては、sein の活用形はどの道、暗記しておく必要のある助動詞ですし、過去分詞が全部同じ、つまり、

ich bin geworden
du bist geworden
er/sie/es ist geworden
wir sind geworden
ihr seid geworden
sie/Sie sind geworden

と活用する perfect の方が楽です。



ロシア語バージョンは…

Когда вы заболели?


まずはロシア文字(キリル文字)をアルファベットに置き換えてみます。

上の一文の中で、素直に読めないのは以下のとおりです。

г → g
д → d
з → z
б → b
л → l
и → i

ですから、「読み下すと」こうなります。

Kogda bvi zaboleli

英訳入りで並べてみると、

Когда (=when) вы (you) заболели (were ill)

です。

ロシア語の場合、to be に当たる言葉がないので、"you sicked" 的な言い方で、過去を表していることがわかります。ふむふむです。

заболели

が形容詞なのか動詞なのか判然とせず、悩みます。英語なら、very を付けても通れば形容詞というふうに判別法があるのですが、相手がロシア語となるとそうも行きません。

ただ、男性、女性、中性、BbI を含めての複数に対応する動詞の過去形の語尾変化は л, лa, лo, ли ですから、вы に続いて -ли が出て来る以上は、заболели は "fall ill" という意味の動詞の過去形かなと推測がつきます。

そうは言っても、заболеTb という動詞があるのかと気になります。そろそろロシア語辞典を買う時期になってきたようです。




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Comments

>イタリア語バージョンは…
>Quando si è ammalato?

患者さんが女性なら
Quando si è ammalata?
です。

過去分詞の性を主語に一致させる場合、
その末尾の文字は
男性単数 -o
男性複数 -i
女性単数 -a
女性複数 -e
になります。スペイン語と似てるのでしょうか?

形容詞ではなく、過去分詞と言っているのは
ammalarsi (= become ill) という再帰動詞だからです。
再帰動詞は、主語の行為の対象が主語自身である或は主語自身に返ってくる動作を表します。

この文を直訳すれば

患者は患者自身の具合を悪くした。
→ 患者は具合を悪くした。

となります。
そしてこの文の動詞は過去形なので、再帰動詞を過去形にするには動詞essere (=be)を用います。

再帰代名詞(=主語の行為の対象=主語) のsi、
essereの3人称単数形のè、
ammalare の過去分詞 ammalato

の順に並べます。

文法は感覚として覚えているので、改めて説明するのが
これほど難しいとは思いませんでした。

もしフランス語やスペイン語にも同じ文法があって
ご存知でしたら、えらそうに長々と書いてしまってすみません!

[返信]

ありがとうございます。すごい文法の知識ですね。GINさんのブログの書き手が同じ方かと思うと、なんだか落差があるようで不思議な気持ちです。どうも文法とバンジージャンプが結びつきません。すみません、余計なことを。

この比較、おもしろいです!ドイツ語では確かに、話し言葉は完了形、と習いました。が、お書きのとおり、完了形にするとmouthful なことも多いですよね。

ドイツ語で興味深いのは、「動き」と「静止」の概念が文法上もはっきり分かれていることです。「~へ行く」と「~にいる」では使う格が違ってくるし、完了形を作るときの助動詞もたとえば「歩く」と「食べる」では違うとか。

似たような「文法上での概念の差」をもった言語はありますでしょうか?

[返信]

おひさしぶりです。ドイツ語で興味深いのは、「動き」と「静止」の概念が文法上もはっきり分かれていることです、というくだり、なるほどそうかと思いました。ありがとうございます。文法書を地をはうように読んでいると、こういった bird's eye view が欠けてしまいます。

「文法上での概念の差」をもった言語はありますでしょうか」という点、まだ修行中の身ゆえ、大きなことは言えませんが、ロシア語がそんな感じでしょうか。完了か未完了かをえらく気にするのですが、perfectiveないし完了形というやつは、1. A beginning. 2. An end. 3. The action is limited by time. 4. The action occurs one time. といった要素のいずれかがあるという意味で "marked or limited" であるとされ、この手のものは present tense とは両立しないと説かれます。つまりpresent tense は常に imperfective だということです。わかったようなわからないような気にさせられ、うなっています。禅問答です。

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