2007年3月26日
(6)英語族のための5ヶ国語リサーチ
今回は、こういうセンテンスを取りあげます。これを尋ねるような場面では、その救急患者は、痛みの度合いを知るため、相手に " 1 (not in pain) 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (chronic pain)" といったような、1から10まで番号が並んだものを見せられた上、指差すよう求められます。
What is your level of pain? ⇒ 痛みはどの程度のものですか?
この英語の疑問文は、疑問詞で始まっていますから、具体的な情報を引き出す場合に使うための聞き方をしていることがわかります。つまり、答えが単に Yes/No のいずれかで用が足りるなら、Are you in pain? (痛みはありますか)でいいわけですが、どの程度の痛みかを知る必要があるので、具体的に答えてもらうべく、What...? と聞いているわけです。
英語の疑問文の作り方を復習したい方は 「疑問詞で始まる疑問文での語順、あやふやじゃありませんか?」をご覧ください。
それでは、この英文につき、順次、フランス語、スペイン語、イタリー語、ドイツ語、そしてロシア語バージョンを眺めていきましょう。なお、今回が初めてという方の為にお断りしておきますと、私はフランス語とスペイン語はある程度わかるレベル、イタリー語は好奇心で取りあげているレベル、ドイツ語とロシア語はただいま勉強中というレベルです。
フランス語バージョンは…Quel est votre niveau de douleur ?
英訳付きで並べてみると、
Quel est (= what is) votre niveau (your level) de douleur (= of pain) ?
語順はまるで英語と同じです。イギリス人の大卒はだいたいフランス語をこなしますが、ここまで語順が似ていりゃ楽だろうなとうらやましくなります。
スペイン語バージョンは…Valore del 1 al 10 la intensidad de su dolor.
最初の valore というのは、動詞 valolar (= to value, to assess) の命令形です。そこで、英訳付きで並べると、こうです。
Valore (= assess) del 1 al 10 (= on a 1 to 10 scale) la intensidad (= the intensity) de su dolor (of your pain).
フランス語訳は英語同様、疑問文なのに、なぜかスペイン語は命令文です。翻訳のアプローチもいろいろであることがわかり、興味深いところです。
イタリー語バージョンは…Qual’è il livello di dolore che percepisce?
これは推測ですが、前半の Qual’è il livello di dolore は、what is the level of your pain と言っているのでしょう。オンラインの Italian / English 辞典などで見ると、後半の che percepisce は、that it perceives という訳になるようですが、今ひとつピント来ません。
ドイツ語バージョンは…Bitte geben Sie den Grad Ihrer Schmerzen an.
最初の bitte は、英語の please だから簡単です。次に、geben は本来 angeben (= to indicate) であるものの片割れです。そして命令形は丁寧な you に相当する Sie を使う限り、語幹 + en + Sie ですから、ああ、これは、命令形だとわかります。
ちなみに、この an + geben といった動詞は、英語では verbs with a prefix とか separable verbs と呼ばれており、ドイツ語の動詞の世界に特有のものです。たとえば、to come という意味の kommen に an を付けると ankommen = to arrive になるという仕組みになっています。英語で言えば、基本的に動詞+副詞的要素から成る句動詞の副詞が頭に付いているようなものという説明をよく見ます。
次に Grad は本来 der Grad という格好の男性名詞であるものが、ここでは、動詞 angeben という動詞の目的語になっているので、accusative (目的格)ということで、冠詞が den になっています(なんて偉そうに言っておいて、不安です。間違っていたら教えてください)
Ihrer Schmerzen の部分は、まず Schmerzen は、男性名詞 Schmerz の複数形であることが辞書からわかります。次いで、Ihrer は、英語の your であるのはいいとして、ドイツ語の場合、ここでの例のように、所有格の限定詞は、男性、女性、中性、複数の別に応じて、ihres, ihrer, ihres, ihrer と、語幹の ihre にプラスされる語尾が変わるのでやっかいです(ちなみに、私は、暗記のため、In the Genesis, snakes rattle, snakes rattle と覚えています)
以上のまとめという意味で英訳付きで並べると、こうでしょうか。なお、雰囲気を出すため、abgeben は、indicate ではなく、point out にしてみます。(なお英語の場合、一般にこのようなコンテクストでは pain は複数形では使いません)
Bitte (= please) geben (= point) Sie (= you) den Grad (= the degree) Ihrer Schmerzen (=your pains) an (= out).
例によって、ドイツ語の動詞は常に二番目のスロットなんだと印象づけられ、勉強になります。
ロシア語バージョンは…Как Вы оцените степень боли?
ロシア語の場合は、まずは読み下さなければなりませんが、この一文の読みかたはこうです。
Kak Vy otchenite stepen' boli?
おもしろいですよね。キリル文字は。ここでのポイントというか、推測がつきにくいのは、
ц → tch
н → n
с → s
б → b
п → p
л → l
というルールです。
最近、知り合いのドイツ語の専門家もロシア語が好きで勉強したという話を聞いたのですが、その方もキリル文字は午前中いっぱい使えば覚えられるとおっしゃっていました。言葉が好きな読者の方、ものは試しで是非どうぞ。
それでは、個別に訳していくと、
Как = what, how
Вы = you
оцените = estimate
степень = degree
боли = pains
なので、まとめると、こうでしょうか。
Как (=how) Вы оцените (=do you estimate) степень (= the degree) боли (pains)?
Вы оценитеと、複数形の2人称が -ите で終わるのは、「イ変化」の動詞ということでしょうか。あと、名詞の語尾を見て、ぱっと「これは何々」と言えるレベルに達しておらず、改めてもっと勉強しなければと思います。
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イタリア語バージョンに関してコメントを入れさせていただきます。
後半は che (Lei) percepisce (il livello di dolore)=that you perceive (the level of your pain ) という訳になります。
他動詞percepisceの主語は省略されているLeiで、目的語は先行詞のil livello di doloreです。
[返信]
ありがとうございます。新年度もまだイタリアで頑張ってらっしゃるんですね。
ところで、この percepisceが英語だとperceiveというのはちょっと意外です。英語で perceive はけっこう硬い書き言葉ですから、こんな単語が救急隊員の口から出て来たらびっくりしてしまいます。比較していると感心することばかりです。
なお誤植はご覧のとおり直しておきました。