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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2007年3月 3日

InquiryとEnquiryは同じものなのか

問い合わせ、照会という意味の inquiry と enquiry はまるで同じものかのように扱われているのが一般です。しかし、私の理解では、アメリカ人にとっては inquiry が普通で、enquiry は綴りの上でのバリエーションでしかないという位置づけだけれど、イギリス人にとっては、どちらでもいいという話ではなく、「問い合わせ」は enquiry に決まっています。きょうは、こんな話をさせてください。

みなさんの手元の辞書を引いてみたら、おそらく、たいていは、inquiry イコール enquiry であり、どちらでもいいような書き方をしているはずです。せいぜいが enquiry がイギリス英語であると軽く触れている感じではないでしょうか。例えば「リーダーズ」でenquiry を引くと、inquiry を見よとなっています。Macmillan English Dictionary では、enquiry の項は、Another spelling of inquiry. となっており、inquiry の項へと誘導されます。

一方、Oxford Advanced Learner's English Dictionary で enquiry を引くと、見出し語の横に、Also inquiry especially in AmE. という注意書きがあり、inquiry がどちらかと言うとアメリカ英語の用法だとわかります。Longman Dictionary of Contemporary English では、enquiry を引くと、especially BrE とありますから、enquiry がイギリス英語っぽいとわかります。

これだけの情報だと、同じことを指すのにアメリカだと inquiry と書き、イギリスだと enquiry と書くのかで終わってしまいます。

おもしろいのはこの先です。Cambridge International Dictionary of English の enquiry の項には、Br dated and Am inquiry と注釈がついているのです。つまり、「問い合わせる」という意味の言葉は、アメリカでは inquiry と書くの普通だけれど、inquiry という書き方はイギリスでは古くさいやり方で、現代のイギリスでは enquiry と書くものだということです。この姿勢は徹底しており、enquire の項を引けば、BrE dated and Am for inquire. となっています。

ところが、The New Shorter Oxford English Dictionary で enquire を引くと、inquire を見よと誘導され、その項では、注記で、Recent UK usage tends to distinguish enquire = ask, inquire = make investigation; the distinction is not made in North America. と説明してあるのです。イギリスだと「問い合わせる」「照会する」という意味では enquire を使い、inquire の方は「調査する」という意味で使うということです。そこで、念のため、The Pocket Oxford Dictionary で inquire の項を見ると、なるほど、

1. seek information formally, make a formal investigation. 2. = ENQUIRE

とあります。イギリス英語では、少なくとも言葉にうるさい人々にとっては、inquire と言ったらまずは「調べる」「審問する」といったお上のやることを指すのだとわかります。実際、本人たちもこだわりがあるようで、知り合いが「この間メールでイギリス政府の担当者に問い合わせたら、わざわざ私の書いたスペルではないほうをタイトルにして返事がきた」とぼやいていたぐらいです。

たしかにイギリス英語だと使いわけがきっちりしているようで、Longman Dictionary of Common Errors は、

After making several inquiries, I finally discovered his address.(いろいろと問い合わせした結果、ようやく彼の住所がわかった)

という一文につき、この本が取りあげている他の誤用例と異なり、× とはせず、? を付けて、単に情報を求めるためのリクエストの場合は、enquiry を使うから、設例の場合は、inquiries ではなく、enquiries を使うべきだとしています。その上で、When you mean a 'full investigation or a long serious study', the usual word is inquiry だと説明し、例えば、court of inquiry (審判所)といった言い方をするでしょうと例を挙げています。また、もう一つ、There is to be an official inquiry into the cause of the crash. (衝突の原因究明に向け正式の調査が行われることになっている)という例文も挙げています。

それにしても、Shorter Oxford の "the distinction is not made in North America" という突き放した言い方がいいですね。以前、電話口で「誰々さんをお願いします」と言いたいときに、普通は、May I "speak to" 誰々と言うのが一般なのに、一部の人たちが May I "talk to" という言い方をするのが気になり、調べていたら、どこかの掲示板でこの問題が取りあげられており、そこでは、talk to という言い方につきイギリス人やらオーストラリア人たちが、Sounds North American to me. とか North American idiosyncrasy. などとばっさりやっていたのを思い出しました。

ちなみに、www.googlefight.com で単純に inquiry と enquiry の勢力分布を調べたところ、こんな結果でした。

inquiry  102,000,000

enquiry 44,600,000

圧倒的に inquiry 派が多いのは、やはり英語界におけるアメリカ英語の優勢を物語るのでしょうか。


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Comments

こんにちは。Googleしていて初めて記事を読ませていただきました。
ニュージーランドの会社で働いているので、私たちはイギリス英語なのですが、ウェブサイトのページを作っていて、[enquiries]と入れたら、スペルミスと出てしまい、「あら?」と思ってこの記事にたどり着いた次第です。
イギリス系のスペルを使う国では、その辺の使い分けを意識しているようですが、アメリカ人はほんとにアメリカ英語しか知らないので、会社のウェブサイトもアメリカバージョンを別に作らなければ、という話も出ています。
勉強になりました。どうもありがとうございます!

[返信]

おっしゃるとおり、アメリカ人は、自分たちの使う英語が標準と思い込んでいますから、辞書によっては、enquiry 自体、最初から見出し語として載っていないような例もあります。

ニュージーランドの人って、何人か知っていますが、温かみを感じるいい人たちですよね。

そうですね、この辺の違いを使い分けられるというのが本当の英語の使い手だと思います。私は"speak to"しか使いませんし、中高の教員でも"talk to," "speak to"の違いを良く分かっていらっしゃらないで教えているのは少し困りますね。イギリスでの英語の使用というのはこの辺が微妙で、この辺の繊細さと丁寧さが分からないと、「英語は直接的な言語だ」といった思い込みの発言が出てくるのだと思います。

[返信]

ありがとうございます。同感です。

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