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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2007年03月17日

(中)ボキャブラリー習得の常識

11 The “lexical bar” is(「単語習得上のハードル」というのは…)

A the Graeco-Latin words of English (英語の中にあるギリシア語/ラテン語系の単語)
B the high frequency words of English (英語の中の頻出語)
C the function words of English (英語の機能語=接続詞や前置詞などただの「つなぎ」的な単語)
D the discourse markers of English (ah, um, oh といった会話の中で使われる合図。詳しくは 「英会話とは何ぞや(その2):話し手が送る各種の合図」をどうぞ)
E don't know

答えはAです。Nation は、Corson の研究を引用しつつ、それを越えられるか否かで教育のある人間が使うボキャブラリーを習得するところまで行けるかが左右される、そういうハードルがあるのだと論じています。同じ 「始める」でも begin に対して、commence があるわけですが、Corson は、英単語は大きく分けて、普通の人が子どもの頃から使いつけているアングロサクソン系の単語と、中学高校レベルで初めてお目にかかる、抽象的な概念を表したり、特別なニュアンスのあるギリシア/ラテン語系の単語があるとグループ分けした上、後者は、頻出度こそ低いものの、教育のある人間と認められるためには習得が不可欠だとしています。


12 Teachers should deal with low frequency words by (低頻出語については、教師は次のように臨むべきだ)

A breaking them into prefixes, stems and suffixes (接頭辞、語幹、接尾辞に分解してみせる)
B letting learners guess them from context (学習者が文脈から意味をつかむように仕向ける)
C teaching the learners strategies to deal with them (どう取り組むべきかというアプローチを教える)
D providing varied and repeated opportunities to give attention to those words (使われる場面を変えながら繰り返し学習すべき単語を取りあげる)
E don't know


正解はCになります。低頻出語というのは、最頻出上位2,000にも、大学レベルで要求されるacademic vocabulary(ワードファミリーで数えて570語)のどちらにも区分されない単語です。ある経済学の教科書を分析したところ、テキストに占める低頻出語はわずか8.8%だったそうです。少なくとも最初のうちは力を入れるなというたぐいの単語です。こういった単語については、教師の役どころは、意味を文脈から推理する、単語を接頭辞、接尾辞などに分解して覚える、単語カードを使う、辞書を使うなど、学習者として取りうるアプローチを紹介するに留まるべきだとされています。


13 Which of these most helps vocabulary learning? (次のうち、語彙力習得の上で一番助けとなるのは…)

A meeting or using the word in a new way (その単語につき、新たな場面で出会い、あるいは新たな使い方に出会う)
B having its meaning explained (その単語の意味を説明してもらう)
C meeting the word in context (その使い方がわかる文脈の中でその単語に出会う)
D searching for the word in a dictionary (その単語を辞書で引く)
E don't know


答えはAです。これは今、自分自身、ドイツ語の単語を勉強しているから実感があります。単語カードを繰り返すほか、会話集、さらには別の音声教材という具合に場面が違ったところで、既習単語に出会うつど、「知ってる、知ってる」とうれしくなりますから。出会うつど、より深く埋め込まれて行く感じです。


14 Definitions of unknown words are most effective if (未知の単語の定義が最も効果的に伝わるようにするには…)

A they are short (定義を短くする)
B they contain plenty of useful detail (定義に役立つ事項を種々盛り込む)
C they are written as complete sentences (完全なセンテンスの形で定義を示す)
D they are accompanied by grammatical information (文法上の約束事を定義と一緒に示す)
E don't know


答えはAです。Nation は、定義は簡潔であるほど単語をおぼえるのに有効だとする Ellis の研究、逆に丁寧で細かな説明をする定義だとかえって学習者には邪魔だとする Chaudronの研究を引きながら、定義は短いほどいいと説き、また自国語で語義を説明された方が学習効率はいいという実証研究もあると強調しています。


15 Most learning of vocabulary used in oral communication tasks involves words([会議英語を練習するためのロールプレイといった]会話のための演習で単語力が増えたとした場合、増加部分のほとんどを占めるのは)

A whose meanings are negotiated in the task (演習の中でその意味が直接取りあげられ、検討の対象となっていた単語である)
B whose meanings are not negotiated in the task (演習の中でその意味が直接取りあげられ、検討の対象となっていなかった単語である)
C which are in the written input to the task (配布教材のテキストの中に出ていた単語である)
D which are not in the written input to the task (配布教材のテキストの中に出ていなかった単語である)
E don't know


答えはB。予めこの方面の資料を読んでいないと「演習の中でその意味が直接取りあげられ、検討の対象となっていなかった単語」というのがどういうものか、ちょっとわかりにくいと思います。ここで言っているのは、例えば、会議英語を身につけるための演習をやりましょうと言った場合、取りあげている会話例の中で直接 agenda (議事日程、議題)といった言葉が出て来なくても、やり取りの中から、「なるほど、こういうものが agenda というのか」と理解した言葉の方が頭に残るということです。言葉はある「何か」を伝える外形でしかありませんが、私なりの理解で言えば、外形を直接取りあげて論じるより、むしろ、その「何か」がどういうものであるかを説明するという逆方向からのアプローチがかえって有効ということのようです。

追記:この部分の解説は自分なりの解釈ですので、学術的に正確なところが気になる方はコメント欄の中田先生の解説を合わせてお読みください。


16 A “book flood” involves (「集中豪雨型の読書」という言葉が意味するのは)

A doing a lot of intensive reading in class (授業で精読を集中的に行うこと)
B setting a lot of intensive reading outside class (授業外の課題として精読を集中的にやらせること)
C replacing a large part of the class work with extensive reading (授業内容において多読が大きな割合を占めるよう図ること)
D encouraging extensive reading outside class time
E don't know


正解はC。どの程度をもって多読とするかにつき、Nationは graded reader(使われる単語のレベルが限定されているリーダー)を毎週一冊といった目安をあげています。こういった graded reader は単純な語数計算 (running words)で言えば大体一冊当たり20,000ぐらいになります。1年35週で計算すると70万語に触れることになります。

単語のレベルが違うので質的には違いますが、アメリカの中学生は年平均100万語を読むと言いますから、少なくとも量的にはいい勝負になります。わが国の高校生が触れる英単語は単純語数で20,000から40,000で、しかも、大部分が純然たる読書の材料と言うより、和訳の素材という限界がありますから(Alan Hunt & David Beglar. A framework for developing EFL reading vocabulary. Reading in a Foreign Language, Volume 17, Number 1, April 2005)、英語に触れ、学んだ単語を定着させるためには役立つのかも知れません。


17 The “Lexical Frequency Profile” is a way of (Lexical Frequency Profile と呼ばれるものは…)

A measuring productive vocabulary use (みずから発信に使えるレベルの単語がどれだけあるかを測る)
B deciding what will be classified as high frequency words (どれが高頻出単語に区分されるかを決める)
C comparing the frequency of selected words (抜き出した単語の頻出度を比べる)
D diagrammatically representing vocabulary growth (習得語彙の増加率を図示する)
E don't know

正解はA。これは表形式で学習者が習得している単語の種別(高頻出語彙に属するか等)の分布を見るものです。具体的には、最上位頻出1,000単語、その次に頻出度が高い1,000単語、大学レベルの単語 (academic words)、どれにも属さない(分類不能である)単語という4つの項目を見出しとして縦に並べた上、そこで取りあげる素材(例えば英語の教科書)において学習者が触れる単語がそれぞれどの項目に該当し、割合はどうかを調べます。これにより、学習者の触れている単語の質的差異(高頻出か否か)とその分布がわかります。おもしろいのは、Nationらの研究によると、大学レベルの単語が登場する割合の高い資料を読むような人は、低頻出語に触れる機会が多く、その結果、低頻出語をどれだけこなせるかが勝負の分け目となる語彙力テストでのスコアも高いという相関関係があるそうです。

なお、この研究の前提には、こういう発想があります。書き言葉のおよそ8割が最上位頻出2,000単語で占められている一方、大学レベルの教育で出会い、習得される単語がおよそ900単語あるが、習う順序あるいは触れる回数の多さに応じて、人は一般に最頻出上位1,000単語、次の1,000単語というふうに、使いこなせる単語の範囲が決まって来る。典型的には、様々な素材を通じて、「偶然の出会い」により、こうした単語を習得するのが普通であり、そうである以上、学習者の単語力も、いわば階層状になっており、そこにおいて一番厚みがあり、自由に使えるのは最頻出上位1,000 レベルで、大学レベルの単語となると、手薄になってくる、と言うのです。

英語を勉強している読者の皆さんにも役立つ話だと思いませんか、この約3,000単語をひとまとめにし、先回りしておぼえてしまう方がいいに決まっています。道理で、Vocabulary in Use の編著者として有名な Michael McCarthy を初め英語の専門家たちが、口をそろえてまずは最上位頻出単語を覚えるべきだ、これを覚えてもいないうちに他に手を出しても効率が悪いと強調するはずです。


18 Quickly providing meanings for unknown words while listening or reading (聴き取ろうとし、あるいは読み取ろうとしている学習者に対し、未知の単語の意味を簡単に説明することによる効果は…)

A has little effect on comprehension of the text (テキストの理解にあまり役立たない)
B upsets comprehension of the text (テキストの理解をかえって妨げる)
C greatly increases the amount of vocabulary learned (習得語彙数が大幅に増える)
D results in little vocabulary learning (あまり習得語彙の増加につながらない)
E don't know


答えはC。実証研究によると、物語の朗読を聴かせる授業の場合、予めキーワードとなる単語を黒板などに書いておき、その言葉が登場するつど、物語の筋を離れて、そのキーワードにつき一つの単語として取りあげ、説明し、また物語に戻るといった教え方をするのが、習得語彙数を増やすのに一番効果的だとされています。


19 About what percentage of the low frequency words of English comes from French, Latin or Greek? (低頻出英単語においてフランス語、ラテン語またはギリシア語に由来するものが占めている割合は…)

A 20%
B 40%
C 60%
D 80%
E don't know


答えはCの60%です。ここで言う low frequency wordsとは12番で述べたとおり、基本的に最頻出上位2,000単語と academic vocabulary の枠に収まらないような単語を指しています。経験上言えるのは、たしかに教育ある人はこの手の単語を自由自在に使いこなしていますが、感心するのは、ここぞという所で繰り出してくることです。「始める」一つ取っても、普段の会話、特に子どもなどに対しては start を使っている人でも、出る所に出れば、initiate を使ったりするのです。ただ知っているということで闇雲に出して来る日本人の英語使いと大きな差があります。

なお上位2,000までの高頻出語においてラテン語またはギリシア語に由来する単語が占めている割合は55%だそうです。


20 How many closely related members does a typical English word family have?(英語のワードファミリーを一つ取りあげた場合、密接な関係にあるとして、ひとまとめにされている単語は典型的にはいくつぐらいあるのか)

A 3
B 5
C 7
D 9
E don't know


答えはCの7個です。ワードファミリーというのは第1回で説明したとおり、speak という動詞なら、辞書の見出し語に使われる原型を含め spoke, spoken, speaking といった動詞の活用形ならびに speech, speechless等の派生語をひとまとめにしたものです。




[最終編へ]


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Comments

> ここで言っているのは、例えば、会議英語を身につけるための演習をやりましょうと言った場合、取りあげている会話例の中で直接 agenda (議事日程、議題)といった言葉が出て来なくても、やり取りの中から、「なるほど、こういうものが agenda というのか」と理解した言葉の方が頭に残るということです。

> 言葉はある「何か」を伝える外形でしかありませんが、私なりの理解で言えば、外形を直接取りあげて論じるより、むしろ、その「何か」がどういうものであるかを説明するという逆方向からのアプローチがかえって有効ということのようです。

設問15はNation (2001)のp. 65に書かれている内容を元にしたテスト問題であると思います。Paul NationはNewton (1995)の実験結果を根拠に挙げ、「学習者が習得した語の多くはnegotiationの対象にならなかった語である」と主張しています。

したがって、設問15の答えはNewton (1995)の研究結果をふまえた上で解釈すべきではないかと思います。

Newton, J. 1995. Task-based interaction and incidental vocabulary learning: a case study. Second Language Research 11: 159-77.

「外形を直接取りあげて論じるより、むしろ、その『何か』がどういうものであるかを説明するという逆方向からのアプローチがかえって有効」という日向先生のご説明は、Nation (2001)の書籍には見当たらないように感じました。

私が申し上げるまでもありませんが、先生がご紹介されている「ボキャブラリー習得の常識」テストは、Nation (2001)の書籍の内容に基づくものです。ですから、あくまでも書籍の内容をふまえた上で解釈する方がより妥当ではないかと思います。

[返信]

コメントありがとうございます。「ということのようです」という書き方からもおわかりのとおり、自分の意見であることは客観的に明示してあります。加えて、Nationの本に、negotiationのくだりで「気づき」の大事さが指摘されていたので、「ああ、そういうことか」と自分なりの理解をし、それを言葉にしたつもりでもあります。そういう理解が違うのではないかということであれば、意見が違うということに帰する話かと思います。

日向先生 ご返信いただき、どうもありがとうございました。

私の書き方がまずかったのだと思いますが、日向先生の個人的なご意見として明示されている部分だけではなく、

「ここで言っているのは、例えば、会議英語を身につけるための演習をやりましょうと言った場合、取りあげている会話例の中で直接 agenda (議事日程、議題)といった言葉が出て来なくても、やり取りの中から、「なるほど、こういうものが agenda というのか」と理解した言葉の方が頭に残るということです。」

という前半部分もNation (2001)の内容と若干ずれているように思いました。

(この前半部分には、「私なりの理解で言えば」や「……ということのようです」といった断り書きはありませんので、日向先生の私見ではなく、Nation 2001に記述されている内容を先生が要約された部分と解釈してよろしいでしょうか?)

Nation 2001(p. 64-65)では、Newton (1995)・Ellis, Tanaka & Yamazaki (1994)の例を挙げて、タスク中におけるnegotiationが語彙習得に与える影響について論じています。

Newton (1995)・Ellis, Tanaka & Yamazaki (1994)の研究では、「タスク中でnegotiationが起こった単語は、そのようなnegotiationが起こらなかった単語よりも定着率が高かった」という結果が得られています。

(例えば、タスク中に出てきて、「この単語はどういう意味ですか?」と学生が尋ねた単語の方が、タスク中に出てきたにもかかわらず、そのようなnegotiationが起こらなかった単語よりも定着率が高いということです。)

ここまで読むと、設問15の答えはBではなくAではないか、と思ってしまいますが、これは早とちりで、Nation (2001)をさらに読み進めると、以下のような記述があります。

In the Newton’s study it was found that although negotiated items were more likely to be learned than non-negotiated items (75% to 57%), negotiation only accounted for about only 20% of the vocabulary learning. This is probably because only a few items can be negotiated without interfering too much with the communication task.

ついでながら、Nation (2002, p. 40-41)にも、以下のような一節があります。

Newton (1995) found that although negotiation is a reasonably sure way of vocabulary learning, the bulk of vocabulary learning was thorough the less sure way of non-negotiated learning from context, simply because there are many more opportunities for this kind of learning to occur.

すなわち、

・ negotiation が起こった単語のほうが、negotiation が起こらない単語よりも定着率は高い。
・ しかし、negotiationには多くの時間がかかるため、negotiation は現実の会話ではめったに起こらない。
・ したがって、negotiationにより習得される語は全体的な割合としては少数派である。

ということです。

また、日向先生は、「negotiation of meaningが起こらなかった単語(”words whose meanings are not negotiated in the task”)」のことを「会話に出てこなかった単語」と解釈されているようです。

しかし、「negotiation of meaningが起こらなかった単語」というのは、「会話に出てこなかった単語」のことではなく、「会話に出てきたものの、意味のnegotiationが起こらなかった単語」のことを指すと思われます。

例えば、agendaという単語が会話に出てきたものの、学習者が「agendaとはどういう意味ですか?」と尋ねたりせず、自分で文脈から意味を推測した場合、agendaは「negotiation of meaningが起こらなかった単語(”words whose meanings are not negotiated in the task”」に分類されると考えられます(Nation, 2001, p.123-124)。

* この点に関しては、Newton (1995)・Ellis, Tanaka & Yamazaki (1994)などの原典にあたっていただくのが確実かと思います。どちらの研究でも、「タスクに出てきて、negotiationが見られた単語」と「タスクに出てきたが、negotiationが見られなかった単語」の定着率を比較しており、「タスクに出てこなかった単語」は比較対象にはなっていません。

ついでながら、”negotiation of meaning”というのは、第2言語習得研究における専門用語で、comprehension checks、clarification requests、confirmation checks等のことを指します。

具体的には、「この単語はどういう意味ですか?」、「この単語の意味はXXということですか?」、「もう一度説明してもらえませんか?」と学習者が教師に尋ねたり、学習者同士が対話を行うことを”negotiation of meaning”と呼んでいます(”negotiation of meaning”については、以下のサイトなどもご参照ください http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~hirai/kenkyu/Ellis2003.htmでもnegotiation)。

以上を考慮しますと、「取りあげている会話例の中で直接 agenda (議事日程、議題)といった言葉が出て来なくても、やり取りの中から、『なるほど、こういうものが agenda というのか』と理解した言葉の方が頭に残るということです」という日向先生のご説明は、

1) 単語の定着率だけに着目して考えれば、negotiationが起こった単語の方が、起こらなかった単語よりも定着率が高い。

2) 「negotiation of meaningが起こらなかった単語(”words whose meanings are not negotiated in the task”)」というのは、「会話に出てこなかった単語」のことではなく、「会話に出てきたが、意味のnegotiationが見られなかった単語」のことである。

という2つの点において、Nation (2001)とずれているように感じました。

以上がNation (2001)・Newton (1995)およびEllis, Tanaka & Yamazaki (1994)に関する私なりの解釈ですが、何か勘違いなどありましたらご教示いただけましたら幸いに存じます。

[返信]

ありがとうございます。該当部分に、このコメントを合わせ読んでくださるよう、注記を入れておきます。

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