2007年3月20日
(下)ボキャブラリー習得の常識
21 During writing activities, learners use dictionaries most often to (ライティングに際して学習者が最もよく辞書を引くのは、次のいずれの場合か)A check spelling(スペルを調べるため)
B look up the meaning of a word (言葉の意味を調べるため)
C see if a word exists (言葉が実際に存在するかを見るため)
D find out about the grammar of the word (その言葉の文法上の使い方を調べるため)
E don't know
正解はA。
19-21 の復習
22 “Retrieval” involves (Retrieval という言葉が言わんとするのは…)A receptive learning (読み、聴くという受動的な学習)
B productive learning (書き、話すという能動的な学習)
C recalling an item (ある項目を記憶から引き出すこと)
D recognizing that two given items go together (二つの項目が一緒に使われるものであると認識すること)
E don't know
正解はC。脳の記憶を司る領域から収納されている項目を呼び出すことです。
23 The sentence “To be or not to be, that is the question” consists of ten (このセンテンスは10個の要素から成っているが、この要素の名称は以下のいずれか)A tokens
B types
C lemmas
D word families
E don't know
答えはA。ここで言う tokens は単純語数のことで、running words という言い方もします。次の types は、同一形式の単語は一つの type として区分し、二度数えない点で、tokens と違います。したがって、設例の文は、二度出て来る to be を1回しか数えないので、8 types から成る文となります。
24 A “lemma” is a base word and (一つの lemma は基本形プラスアルファだが、プラスアルファの部分は次のうちのいずれか)A all its derived forms (その派生形のすべて)
B all its inflected forms (その活用形のすべて)
C all its related forms (関連する形態のすべて)
D all its inflected forms which are the same part of speech (品詞分類上、同一区分に属するすべての活用形)
E don't know
正解はD。例えば、動詞 talk はレマ・カウントで行けば、現在形3人称単数の talks、過去形の talked 、そして進行形の talking は同一 lemma ということでひとくくりにされます。しかし、名詞としての talk は別カウントになります。区別する実益は、学習者の負担が違うことにあります。動詞の活用形は規則的に s をつけたり、ed をつけたりする程度なので、全部一緒にしても学習者の負担という見地からは大差ないが、名詞となると違うということです。
25 An “Academic vocabulary” is made up of words that (Academic vocabulary を構成する単語は次のうちのいずれか)A are only used in academic texts (専門文献でのみ使われる単語)
B are only used in a specialised field (特定の専門分野でのみ使われる単語)
C are found in a wide range of academic texts (専門文献の世界で一般的に頻出する単語)
D are found in a wide range of academic and non-academic texts (専門文献のみならず一般的な文献でも広く使われる単語)
E don't know
正解はC。「専門文献の世界で一般的に頻出する単語」という説明中、「一般的に頻出する」という部分がキーワードです。同じ、専門分野の話でも、例えば上で出て来た lemma といった単語は言語学特有の専門用語で「一般的に頻出する」わけではありません。これに対して、accumulate, achieve, compound, complex, proportion といった単語は専門分野の垣根を越えて、大学レベルの教科書で広く使われており、こういった単語をひとまとめにして academic vocabulary と呼んでいます。図式的に言えば、最上位頻出 2,000 単語の世界、academic vocabulary の世界、そして純然たる専門用語の世界という感じになります。
26 How many chunks of information can be held in shortterm memory at any one time? (短期記憶の領域で「それだけで意味が通る固まり」としての情報はいっぺんにいくつまで処理できるものか)A one
B about three
C about seven
D about ten
E don't know
正解はC。ここで言う chunk of information というのは、それだけで意味が通る固まりのことを言います。
例えば、虹の7色を波長の長い方から挙げて行くと、red, orange, yellow, green, brown, indigo, violet で、 「それだけで意味が通る固まり」という数え方をすると7つ並ぶことになりますが、Miller という研究者によると、人が一度に処理できる固まりは7つ(プラスマイナス2)なのだそうです。このことから、例えば単語カードで覚えようとする際は、7単語ワンセットで覚えて行くというアプローチも出てきます。
一方、工夫して、上の red から violet の頭文字を取り出し、ROY G BIV と暗記言葉を作れば、これ自体、「それだけで意味が通る固まり」になりますから、一つの chunk に集約できたことになり、効率的な記憶に役立ちます。
そして、この延長線上では、複数の単語の決まりきった組み合わせであるコロケーションも、構成要素である個々の単語がチャンクとされるのではなく、ぱっと見て全体から一つの意味が浮かぶチャンクと認識されるのだといった話が出て来るようになります。
27 The General Service List of English Words is a list of (このリストの内容は…)A 30,000 words and their frequencies (3万単語ならびにその出現頻度)
B the commonest collocations (最もよく使われるコロケーションつまり定型的な語句の組み合わせ)
C 2,000 high frequency words (最頻出上位 2,000単語)
D words that can be used to define other words (他の言葉を定義するために用いられる単語)
E don't know
答えはCです。General Service List というのは、1950年代に Michael West というイギリス人の英語教師がまとめた最頻出単語集で、内容は、 こちらのサイトで見られます。
ボキャブラリー研究の話をしていながら、この GSL を知らない人がいたらモグリです。いや、自信過剰か不勉強のいずれだろうと言わざるを得ません。こういうことを言うとまた、「おまいさんこそ自信過剰ないし不勉強じゃないのか」とねじ込まれてしまいそうですが、しかし、GSLが何であるかを知らないのにボキャブラリーだの最頻出単語がどうのと語るのは足し算ができないのに数学を語っているようなものです。
25-27の復習
28 To test learners' productive knowledge of vocabulary we must get learners to (学習者がどの程度、自分の語彙を書いたり話したりという発信に供せるかを試すためには…)A produce words in spoken or written sentences (話し言葉または書き言葉において、どれだけ単語をセンテンスの中で使いこなせるかを見るのがよい)
B produce spoken or written forms from a meaning cue (その単語の意味がわかるヒントがある限り、その単語を話し言葉または書き言葉の中で自分の方から持ち出して使えるかを見るとよい)
C produce or recognize spoken or written word forms from a meaning cue (その単語の意味がわかるヒントがある限り、その単語を話し言葉または書き言葉の中で自分の方から持ち出して使えるか、あるいは、それと認識できるかを見るとよい)
D produce a first language translation of words (自国語にその単語を訳せるかを見るとよい)
E don't know
正解はB。ヒントの助けさえあればみずから発信できるという程度でないと、自分の方からぱっとその言葉を発せるレベルではないということです。例えば、10,000単語レベルの語彙力、しかも自分の方から使って行けるだけの productive な語彙力があるかのテストでは、こんな問題が並びます。ヒントさえあれば、ぱっと浮かぶぐらいでないと駄目だということです。
The prisoner was released on par_______.
BとCの違いは、Cだと、文章の中にその単語が出て来たときに、「ああ、あれか」とわかる程度の力でもいいと、ハードルを下げている点です。
29 Vocabulary tests using different test formats tend to correlate with each other with a correlation aroundA 0.3
B 0.5
C 0.7
D 0.9
E don't know
答えはC。相関係数というのは要するに一致度ですから、0.7ということは7割かた重なるということになります。要するに世の中いろいろな語彙力判定テストがあるけれど、大体7割は似ているということです。
30 Coxhead's Academic Word List containsA 492 word families
B 570 word families
C 836 word families
D 1,000 word families
E don't know
正解はB。ワードファミリーを単語数に換算するのには、よく1.6倍するという簡便な換算法が使われますが、それによれば、単語数で言うと、おおざっぱに900単語ということになります。元になっているデータベースは35万語を擁するもので、これを Arts, Science, Law, Commerce の4グループに整理し、更に心理学、数学、歴史学など7つの下位区分に整理してありますが、そこでは、abandon, amend, automate, abstract といった単語が並んでいます。
最頻出上位2,000単語をマスターしたという場合、次の1,000単語のグループをマスターしても得るところはわずかであるのに、次のステップとして、この Academic Word List の 570単語(ワードファミリー)をきちんとおさえれば、専門文献に出て来る単語のおよそ95%はカバーされると言います。
★ さいごに
以上をまとめますと、単語力ないしボキャブラリーを強化するには、まずは英語の世界で登場する頻度の高いものをほとまとめにして覚えた方が得策だということです。ところが、おかしなもので、意外とこういったアプローチは英語教育のプロの間でも浸透しておらず、Nation 先生を嘆かすことになります。先生に言わせると、英語の教師も学習者もどうかするとイディオムの習得に力を入れるが、そんなものにかまけているより、もっと大事なのが頻出語彙のマスターなのです。例えば、字面からはまるで意味がつかめない本当の意味でのイディオムというのは100ちょっとしかなく、しかも、その中でも一番よく使われる by and large でさえ、1億語中487回程度しか出て来ないという頻出度なのに、その種のものに授業時間ないし学習時間を割くのはどうだろうということです。
一方、単語の習得は読書を通じて間接的にそれをやっていくよりは、もっぱら単語の習得のみを目的とした学習をした方が効率的だとされています。Nation 先生は、2003年にメルボルンで開かれた 16th Educational Conference でのペーパー、Research and Practice in Vocabulary Teaching: When will they meet? で、Beaton, Gruneberg and Ellis (1995) の研究を引用して、こんな例を紹介しています。10年前に350語のイタリア語単語集を暗記した人について、10年経って、どの程度を記憶に残っているかを調べたところ、スペルを間違えずに正しく書けた単語が 35%、一部間違っているものの、ひとまず書けたものが50% だったそうです。口で言う分には8割強、覚えていました。その後、復習の時間を1時間半与えたところ、全問正解しました。単にいろいろ読む中で単語を習得するというのでなく、単語を単語として意識的に取り込む作業がいかに重要かがよくわかる話です。
何だかすっかりコクヨさんの回し者ですが、単語の暗記はカード単位でやるべきだというのが結論です。そしてNation 流に従う限り、最初のうちは、英単語と和訳が同一面に書いてある単語カードを使い、次のステップとして、表に英単語、裏に和訳を書いたものを反復練習するのがベストだと言います。また,その後、じっくりこの教科書を読んでいたら、例文ごと覚えようとするよりは、単語だけを単体として習得する方が効率がいいとしながらも、例えば、independence という単語を覚えようという場合、記憶の手がかりとなる程度のもの、例えば、independence day 程度の用例は入れておいた方がいいのではないかとも言っており、ほっとしました。自分自身、ただ単語というより、典型的な用例が浮かぶ程度の短いものが一緒でないと覚えられないからです。
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Comments
後の方になるほど専門用語が増えるようになってるんですね。
21ですけど、そういえば日本語でも、漢字の筆画を調べるためだけに国語辞典を引くのはよくあることですね。
[返信]
言われてみればそうですね。もともと教師のタマゴ向けですから、当然なのでしょうが。
- jiangmin
- 2007年3月27日 02:36

上の方のコメントと関連しますが、
26の「chunk」も専門用語として説明を加えた方が、
学習者にはわかりやすいのではないかと思います。
[返信]
おひさしぶりです。北朝鮮非難決議の件、以来ですね。コメントしてくださった点、言われてみれば、わかりにくいですね。補充しておきます。ありがとうございます。