2007年5月26日
NHKの講座を担当していたときのテキストが本になりました
ようやくNHKラジオ「ビジネス英会話」(2004年前期)のために書いたテキストが本になりました。書店には来月の10日ぐらいから並ぶとのこと。価格は税込み 2,205円。出版社は当初もっと高めのことを言っていましたが、私が大学での教科書に使うというので、学生のことを考え、低めに設定してくれたようです(もちろん、こちらも低めの印税率を呑んでこれに協力しています!)。
追記:おかげさまで、売れ行き好調で、DHCさんからの報告によると、発売早々、丸善丸の内本店と八重洲ブックセンターでは語学書売り場のトップセラーになったと言います。ありがとうございます。
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タイトルはご覧のとおり『即戦力がつくビジネス英会話』。NHKという名前が入っていないのは、それを入れるとNHKが名義使用料(?)をよこせと言い出し、ややこしくなるからです。事実、某出版社が昨年、NHKの名前入りで出そうとしたところ、高いことを言われて出版を見送ったといういきさつがあるぐらいです。名前を使わせてやる代わりに上納金を出せというどこぞの世界と変わりません。いずれにしろ日向清人という名前よりNHKの方が知名度があるに決まっていますから、版元であるDHCさんにしてみればNHKと入れたかったことでしょうが、自分にとっては、名前より中身なので、気にはなりません。
ところで、今回のこの本、末尾でご紹介する「はしがき」でも書いたとおり、仕事で使う英語における基本的要素は何かを念頭におきながら、知識と経験のすべてを盛り込みましたので、ビジネス英会話の基本書として一つの水準を示し得たのではないかと思っている、自信作です。加えて、担当された編集者が実に読者思いの方で、ここは一般の読者にはわかりにくいとか、初心者には不親切だということで数えきれないほどの修正を求められました。正直、一度はテキストとして出版されたのだからいいじゃないか、「助けてくれ!やめてくれ!」と思ったぐらいです。しかし、そのおかげで語句注がひどく充実したものになっており、辞書をいちいち引かなくてもいいぐらいの親切な作りになっています。
中身は、そこでのテーマにそった長めの、しかも平均的に3人ぐらいの人が登場する会話例と、その場面で頻繁に使うキーフレーズの練習が二本柱になっています。ビジネス英語に慣れない方からすると、特に中盤以降の会話例が難しいかも知れませんが、こういった会話例は聴いてわかればいいという程度のもので、当初は、自分自身がこなせるようになる必要はありませんから、「ああ、こんな感じでやりとりするのか」とわかれば十分です。それより大事なのはキーフレーズの方で、こちらは、英語を使って仕事をしようという以上は、何気なく口を突いて出てくるぐらいに反復練習する必要があります。
ご参考まで、はしがきと目次は以下のとおりです。「はしがき」という名のご挨拶なぞ、これの1/3程度でいいと思うのですが、分量は紙面の配列を考えて編集者が指定するのでどうしようもありません。こちらもプロですから、何字と言われたら、いくらでも書けてしまいます。また、たいていの人は日向がどういう人物なのか、英語がちゃんとできるのかもわからないのだから、子供の頃から英語ができ、したがって普通の人以上に英語が「できる」ということを織り込んでくれとも言われ、どうして英語ができるのかといった、いちいち、ひとさまに説明したくないことまで書く羽目になっています。売文稼業のつらいところです。
はしがきこの本は、2004年の4月から9月にかけて自分が講師を務めた NHKラジオ「ビジネス英会話」の番組用テキストを基にしています。本物志向というアプローチに徹しながら、職場での実際のやりとりに含まれている基本的要素をすべて盛り込んでありますので、学習を通じて、仕事で英語を使う際の標準語を身につけていくことができます。このことを指して、タイトルも「即戦力がつく」とうたっているわけです。
本書の英語タイトル The Nuts and Bolts of Workplace English の the nuts and bolts は構造物の要所をとめるための「ナットとボルト」で、辞書には「基本」という意味が載っています。構造物に使われるツールにも、材質、大小など様々なものがあるわけですが、本書では、みんなが普通に使っているナットとボルトのように標準的なものを、ビジネス英会話の「標準語」として扱うという意味でタイトルとしています。
全体は、「基礎編」「実践編」合わせて6章、それぞれ26レッスン、全52レッスンで構成しています。業種を問わず必須のコミュニケーションスキルを扱う「基礎編」は、初心者・上級者を問わずしっかりマスターしていただきたい分野です。会議・交渉・プレゼンに関わる言い回しを扱う「実践編」は、関心のある部分どこからでも取り組んでいただけます。ビジネスの現場で英語で作業をこなし、かつ、状況に応じた話題をこなしていく能力をつけることを目標に、仕事の現場で見聞きする「本物」の英語を、目標への最短距離となるよう体系的に整理してご紹介しています。
「本物」にこだわるのには訳があります。自分自身、父親が外交官だったという家庭環境から英語に不自由はないのですが、ことビジネス英語に関しては独特の定型的言い回しが多く、自分で勝手な言い方を作ってはいけない世界なのだと痛感させられているからです。例えば「AさんはXさんの部下だ」と言いたいとして、なまじ英語ができる人は、“A is X's subordinate. ” で済ませたりもします。しかし、実際には、 “A reports to X. ” が標準的な言い方です。コミュニカティブ英語が強調するとおり、語彙力と文法の力だけではコミュニケーションに不十分であり、状況に合った言い方が求められるのです。
一方、NHK から6か月間「ビジネス英会話」の講師をやらないかと声をかけてもらった段階で、ビジネス会話ものを各種集めて目を通したところ、臨場感に乏しく、また紹介されている言い回しもそうかなと疑問に思うものが多いと感じました。例えば電話口で社名を名乗る場合、“This is xxx from ABC. ”が普通なのに、“This is xxx of ABC. ”と言えというご指南だったりします。筆者の実体験というより何かの資料の寄せ集めだからこうなるのでしょう。そこで、いわゆる「差別化」を期して、すべて自分が見聞きした現場のやりとりを思い出しながら書く、というアプローチによることにしました。
したがって、本書のはじめの方に出て来る自己紹介、同僚の紹介、お客さんとの食事の席での会話、出退勤時のあいさつ、アポ取り、電話での応答は当然として、社内でのいわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)のやりとりなども、すべて自分で使ったことのある言い回し、あるいはよく耳にする言い回しを用いています。後半の会議、交渉、プレゼンなどでの表現も、すべて一度は(議事録などで)目にしたり、耳にしたことがあるものばかりです。Lesson 18 の監督庁による立入検査の話も、米系大手証券に金融庁検査が入ったおりに翻訳を手伝ったときの経験が基になっています。Lesson 24 の企業内の不祥事に対する対応も似たような話です。要するにレッスン用の「作り物」がないというのが本書の特色です。
そもそもビジネス英会話はオトナ社会でのオトナ語の世界ですから、やさしく言い換えた「作り物」などは通じないのです。番組収録当時、NHKのスタッフから「むずかしい」というぼやきをずいぶん聞かされました。趣味で英語を勉強している人たちのことも考えて、もっと「やさしく」してくれということだったのでしょう。しかし、仕事で英語を使っている人たちの標準語なのですから、そうはいかないのです。
各レッスンは、DIALOG(会話)、FOCUS(基本フレーズ〈+応用フレーズも含む more〉)、CHECK UP(エクササイズ)で構成しています。まず DIALOG を聴いて、そこで使われているキーフレーズを基に FOCUS で基本フレーズを学ぶ形になっています。実務上の英語運用能力は、受け身でわかればいいというレベルのものと、自分の方からどんどん使えなければいけないものとに分けられますが、DIALOG は聴き取れて何を言っているかがわかること、FOCUS は聴き取れるだけでなくみずから使いこなせるようになることを学習の目標としています。
仕事の現場で実際に交わされる会話を基とした DIALOG には、初心者には耳慣れないイディオムなども入っているため、聴き取れて何を言っているかがわかるところまで行けばひとまず十分です。他面、状況別に基本フレーズをまとめた FOCUS、そして欲を言えば“more”で取りあげている応用表現も含むフレーズについては、みずから使いこなせるようになっていただく必要があります。
FOCUS で取りあげたフレーズには、むずかしく感じられるものもあるでしょうが、それで通っている以上は何としてでも使えるようになる必要があります。語学は千本ノックが基本で、ぱっと口を突いて出て来るようになるまで反復練習するほかありません。基本フレーズもこなせないのに背伸びして「かっこいい言い回し」を使おうとすると、状況に合った言い方にならず、かえってコミュニケーションが妨げられます。
以上を要するに、この本はすでに仕事で英語を使っている方々、あるいはこれから英語を使って仕事をしていこうと意欲を燃やしている方々のために、ビジネス英会話における基本レベルでの標準語を示しています。上から下までレベルがいろいろある標準語をありのまま伝えているわけで、ときには初心者には耳慣れないイディオムも入っている各レッスンの DIALOG がその上限を、FOCUS や more で扱う基本と応用フレーズがその下限を示しています。
本書を手にされた方々が、ひるむことなくごく自然に外国人と英語でわたりあうようになることを願ってやみません。
目次第1章 ビジネスコミュニケーション入門
スモールトークをこなす(1)
スモールトークをこなす(2)
食事に誘う、会食する
出退勤時のあいさつ
第2章 社外とのコミュニケーション
アポイントの段取り
電話での対応
クレームとその処理
面接への対応
第3章 社内でのコミュニケーション
依頼と指示
説明と見通し
イニシアティブの発揮
組織内での情報伝達
リスク管理
第4章 会議で使う言い回し
会議の開始
討議に入る
賛成と反対
会議の終了
第5章 交渉で使う言い回し
段取りの決定と条件提示
互いの主張を明確にする
合意への障害を取り除く
妥協点を見いだす
第6章 プレゼンテーションで使う言い回し
プレゼンテーション入門
小規模なプレゼンテーション
大規模なプレゼンテーション(1)
大規模なプレゼンテーション(2)
プロフェッショナルなプレゼンテーション
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- »宅建行書計13回受験親父「株式一太郎」の日記: 【8月の学習日記(15)】「即戦力がつくビジネス英会話」を買いました! - 2007年8月25日 07:46
今日、会社からの帰りに書店に寄りましたところ、入ってすぐのところにPOP付きで平積みにされているビジネス書を衝動買いしてしまいました。 「即戦力がつ...
Comments
先生こんにちは。
当初2ヶ月で読破することを目標にしましたが、結局3ヶ月近くかかりました。「会社で使う英語スキルアップゼミ」を4~5回読んでおいたので、自主トレは万全。本番の千本ノックに臨みました。基礎編は「捕球」も「送球」も確実で、「よーし、この調子で応用編も乗り切るぞ」とCD2に移ったのですが、内容の濃さに「捕球」はともかく「送球」はメロメロになりました。第6章の「プレゼンテーションで使う言い回し」に入って、やっと「送球」も安定しました。プレゼンに限らず、現場でのやり取りにいかに基本フレーズが重要なのかを改めて実感しました。
[返信]
こんにちは。おかげさまで、この本、上々の売れ行きです。kimura88さんのように、こちらのねらいどおり捕球と送球の練習をしてくださる読者の存在は、著者冥利に尽きます。基本フレーズに親しみ英語感覚が身につくと、不思議なもので、英訳の際にも英語がよりidiomatic になってきて、かっこよくなりますから、引き続き、頑張ってくださいね。
- kimura88
- 2007年9月11日 16:41
早速買いました。
ビジネスの場で、「あれ、この場合どういうのだっけ」と言った表現が、びっしり詰まっていると思います。当時私は聞いていませんでしたが、わずか半年の講座で良くぞここまで内容の濃いテキストを作られたものだと畏怖の念すら抱いてしまいます。
自己流英語を標準的なビジネス用に矯正するための辞書として使用することにいたします。いや、千本ノック用に使用します・・・・・
[返信]
おほめにあずかり、恐縮です。特に、konitanblogさんのような目利きに、千本ノック用になどと言われるとぐっと来ます。ありがとうございます。
- konitanblog
- 2007年6月18日 22:56
先生、こんにちは。
先週、名古屋は栄の丸善で買ってきました。通常なら上下2巻になりそうな内容が1巻にまとめてあり、小遣いが自由にならないサラリーマンとしては大変有難く思います。
全52レッスン、毎日30分ずつ取り組んで2ヵ月以内に一通り目を通したいと思っています。ビビッドなダイアログは学習者の意欲を駆り立てますね。次回は「即戦力がつくビジネス英語(リーティング・ライティング編)」を是非お願い致します。
[返信]
ご購入くださり、ありがとうございます。ライティング編については、今回のDHC本に載せきれなかったNHKテキストのライティング編を取り込んで、一冊の本にすべく作業を進めております。紙幅が限られていた関係で、要点が凝縮されており、それなりの存在意義があるかなとも思っています。ご期待ください。
- kimura88
- 2007年6月18日 15:30
早速購入しました。
実は私、日向先生が講師をされていた半年間のテキストだけは保存していて、折に触れて復習していました。好みの問題だと思いますが、あの半年間のテキストは私には非常に役に立っております。それが一冊の本になり、さらにはCD付きということで、私にとっては願ったり叶ったりです。ICレコーダに録音してしっかり身につけたいと思います。
[返信]
ご購入ありがとうございます。私が担当した期間は、教養とか時事問題とは無関係の、社内で実際に使う英語に焦点を合わせていたので、無味乾燥だったかも知れませんが、おそらくは50年経っても使える基本的なことがらです。しかし、飽くまで基礎部分ですから、早く次のステップに移れることを願っています。頑張ってください。
- tome
- 2007年6月16日 22:17
アマゾンで先生の「会社で使う英語スキルアップゼミ」を購入しようと思っていたのですが、新しい書籍を販売されるようでふと手が止まってしまいました。どちらから先に取り組むべきでしょうか。
[返信]
スキルアップゼミは、仕事で英語を使っていくに当たり、必要最小限の言い回しに絞り込んだ上、覚えやすいように冠詞の使い分けを中心に細かく説明してあります。奥行きがあります。新しく出る「即戦力がつくビジネス英会話」は同じように最低ラインを念頭に置いていますが、幅広くカバーしている代わりに、細かな用法上の説明がないという意味で奥行きがありません。広く、浅く、という感じです。また、書名どおりで、ライティング編がありません。
- taya
- 2007年6月 2日 02:00
ご出版おめでとうございます。私、関西生まれ、関西育ちの日本人としては、まあまあ英語に接してきたと思っておりましたが、確かに電話口で、"This is Konitanblog of ABC."と名乗っていたように、基礎的なビジネス英語力に関する知識の穴が一杯あることでしょう。
6月10日には必ずAmazonか書店でチェックして購入いたします。
[返信]
ありがとうございます。「NHKでやっていたのも3年前だし、日向って名前もどれほど通っているものだか」という話を聞かされているだけにKonitanblogさんのご予約、うれしい限りです。中身には自信がありますので、決して損はない買い物です。
- konitanblog
- 2007年5月28日 11:48
「ビジネス英会話」の刊行、おめでとうございます!
明日、書店で購入します。
目次を見る限り、TOEICで題材として使われる内容と重なる部分がかなりあります。
TOEIC受験者に薦めたいと思います。
[返信]
「明日」とおっしゃってくださっていますが、6月10日ぐらいにならないと店頭には並ばないようです。今しばらくお待ちください。いずれにしろ神崎先生のような有名な英語の先生に推薦していただき、光栄です。
TOEICと重なるというのは考えもしませんでしたが、どんな形であれ英語学習者に役立つというのはうれしいことです。
ちなみに神崎先生が洋販から出された「新TOEIC TEST ウルトラ語彙力主義」いいですね(あのピンクの表紙が書店でずらりと並ぶ姿には圧倒されました)。きちんと知りたい学習者の意欲に正面から答える、きめ細やかな語義解説にお人柄がにじみ出ていると感じました。巻末の切り取り式単語カードも実用的ですし。
いずれサインしてもらうべく、買って持っておりますので、そのおりにはどうぞよろしくお願いします。
- 神崎正哉
- 2007年5月27日 00:33

先生、遅ればせながら「即戦力がつくビジネス英会話」買いました。これ、とても良いです、本当に欲しかった本です。知らない表現と、自分の中であいまいだった表現のお手本の宝庫で、恐らく言い方のバリエーションがあるんでしょうが、少なくとも間違ってないという自信がつき、会話の声が大きくなっています。 ただ、英語ネイティブじゃない、アジア人の同僚に使うと「?」みたいな顔される時がありますが。
ところで、本書の質問Q&Aログのようなものがあれば、そこに書ければと思いながら
p.32 And send my regards to your staff, who put together all the research.
staffのあとのカンマって必要ですか? 実際に作業した部員を限定したstaff who putになるでは思ってしまったのですが、どうでしょうか。
[返信]
お買い上げありがとうございます。
アジア人の同僚に通じにくいという問題は考えさせられます。この点、国際英語ということが言われはしますし、いかにもネイティブっぽいイディオマチックな言い方に疑問をおぼえる向きもあることでしょう。しかし、インドや南米の人が書いたビジネス英語の本を見ると、結局、英語圏の人々が使う表現をメインストリームとして扱っているのがわかるわけで、ネイティブの英語と呼ぶかは別として、やはりみんなが共通して使う言い回しはあるんだから、その手のものは共通語と割り切って習得した方が意思疎通の効率化に役立つと考えています。
And send my regards to your staff, who put together all the research.
ですが、これは非制限用法で行くケースと解されます。というのも、your staff と言われた方は、そこでのコンテクストから、「ああ、今回、資料作成などで頑張ってくれたうちのスタッフ」のこととわかるわけで、your staff で十分 specify されています。その証拠に、who 以下を削除しても意味は通じます。
on Monday, when she arrives in
のように、既に特定されている名詞について補足情報を挿入するときは非制限用法であることを示すカンマを入れるのと同じ理屈です。