2007年8月25日
整備ミスは error なのか mistake なのか?
先日の那覇空港での中華航空機の事故は、整備ミスが原因ということになりつつありますが、英語で言うなら maintenance error だよな、「いい加減な整備」ということなら、sloppy/shoddy maintenance とも言うな、さらに、過失責任が問われるたぐいなら negligent maintenance か、などと思いつつそういったニュースを読みました。そこでふと気づいたのは、日本語の場合、英語での error が訳されるときはなぜか、たいてい mistake に語源のある 「ミス」で片付けられていることです。
今回の「整備ミス」からしてそうですし、航空事故関係だけに絞ってざっと考えても、「パイロット・ミス」「設計ミス」「点検ミス」と、どれもこれもが「ミス」で片付けられています。ところが、英語では、これらの「ミス」はどれも mistake 扱いではなく、 error です。
実際、ちょっと絞りをかけておくため、"air safety" というフレーズを加えた上で、error と mistake のいずれと組合わさるのが普通なのかを Google で試したところ、こういう結果でした。
設計ミス
design error 107
design mistake 5
人為ミス
human error 27,100
human mistake 23
整備ミス
maintenance error 844
maintenance mistake 9
パイロットミス
pilot error 22,600
pilot mistake 148
このように日本語で言う「何とかミス」は英語だと基本的に「何とかエラー」であることがわかります。それも当然で、mistake とerror に関してはきちんと使い分けられているからです。
この点、以前、mistake と error のニュアンスの違いについて書いたことがあるので、その一部を引用させてください。
たとえば、この辞典 [Merriam Webster's Collegiate Dictionary]で error の項を引くと、error は、"suggests the existence of a standard or guide and a straying from the right course through failure to make effective use of this" と説明されています。この辞典は、例文として、procedural errors(手続ミス)を挙げていますが、姉妹書の The Merriam-Webster Dictionary of Synonyms and Antonyms は、One error in planning lost the battle.(作戦上のたった一つのミスで、その戦いに負けてしまった)という例も挙げています。つまり error は、一定の標準ないし手順があり、本来、それに従ってうまく進めるべきなのにそれを怠り、本来あるべき進路から逸脱してしまうようなことを指すと言うのです。
一方、mistake の方は、"implies misconception or inadvertence and usually expresses less criticism than error" だと言いますから、勘違いや偶然の事情が災いしたことが強調される言い方で、しかも、errorと比べて非難可能な度合いが低いということです。例文としては、dialed the wrong number by mistake(誤って違った番号に電話をかけた)というものが載っています。
要するに「一定の手順が前提になっており、それに従い損ねた」というのが error の本質ということです。
考えてみると、ビジネス英語/ビジネス・ジャパニーズの世界でも、A社がB社を買収すべく株式公開買付けを始めると、新聞などでは「AがBにTOBをかけた」といった言い方をしますが、これも英語では(イギリス英語の take over bid に由来する)TOB ではなく、 tender offer と形容するのが普通です。
してみると、何か英語から来ているような言葉でありながら、実は日本風にいわば換骨奪胎している例が多いと言え、へたにカタカナをたよりにそれを英語に直しても通じない、あるいは誤解をまねきかねないわけで、何だか日本語と外来語の微妙な関係をかいま見たような気がしました。
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