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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2007年9月 9日

可算のAgreement、不可算のAgreement

英語の冠詞の使いわけを勉強していく上で、可算用法と不可算用法の両方がありうる名詞は鬼門です。中級以上になれば、具体的なモノ・コトを指しているなら可算で、抽象的なら不可算とはわかっていても、いざ使い分ける場面になると迷うものです。

そういった名詞の一つが今回取り上げる agreement です。なぜこれかと言うと、実は、今朝、オンライン版 The Wall Street Journal を読んでいたら格好の素材があったからです。まずは、そこでの agreement の使われ方をざっと見てから、基本的な使いわけを振り返り、まとめてみたいと思います。

記事は、オーストラリアで開かれているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の温暖化対策会議のことを報じている9月7日付 AP 電で、APEC Nations Appear to Reach Agreement on Global Warning という見出しがついています。(ここでも agreement が出てきますが、見出しでは冠詞をつけないので、ここでは取り上げません)

この記事の中に5回、agreement が登場します。まずはざっとご覧ください。問題の agreement には下線を付し、また、冠詞がないことを強調するため ø という記号を入れておきます。

(1) Pacific Rim nations on Friday reached ø agreement on a joint statement on global warming... (アジア太平洋諸国首脳は金曜日に地球温暖化対策に間する共同声明につき合意を調えた)

(2) One official involved in the talks...said the draft statement included ø agreement on setting an "energy intensity" reducing target...(会議関係者の一人は、共同声明案にはエネルギー利用効率の改善目標を設けるとの合意が含まれているした)

(3) He stressed that...nothing in the agreement was cast in stone.(同人は、今回の合意に含まれている事項はいずれも確定しているわけではないとした)

(4) Another Southeast Asian official...confirmed that ø agreement had been reached among officials.(別の首脳国関係者は、実務担当者レベルでは合意が調っていることを確認した)

(5) 会議開催に合わせて開かれたオーストラリアとロシアとの首脳会議で、オーストラリアのウラニウムをロシアに供給する協定がまとめられたことに関して・・・ While the agreement forbids Russia from...(この協定はロシアが・・・することを禁じているが・・・)

上の (1) (2) (4) では冠詞なしです。(3) と (5) では定冠詞がついています。この区別がどこから来ているかがきょうのテーマですが、まずは学習者向け辞典の一つ、Macmillan English Dictionary for Advanced Learners of American English で agreement の使いわけを確認しておきます。

この辞典で agreement を引くと、可算と不可算の二つの場合があるとした上で、可算の agreement は、an arrangement or decision about what to do, made by two or more people, groups, or organizations (下線は日向)となっていますから、要するに mutually agreed arrangement (互いに合意した取り決め)という「具体的なもの」を指しているということです。

次に不可算の方は、the situation when people have the same opinion or have made the same decision about something (下線は日向)となっていますから、ひとことで言えば、mutual understanding (相互理解)という「抽象的な状態」です。

実はこの項目の説明では典型例として、reach an agreement と reach agreement がそれぞれボールドで示されており、例文も入っているのですが、上で説明した、「可算=mutually agreed arrangement 不可算= mutual understanding」という図式で考えるとすっきり区別できます。つまり reach an agreement については、Management announced that it had reached an agreement with the unions. という例文が出ていますが、これは、Management announced that it had "entered into a mutually agreed arrangement" with the unions. と読み替えることができます。この場合、mutual understanding 程度のものでは、締結 (enter into) したりすることができませんから、ここでは置き換えられないことがわかります。

一方、reach agreement というボールドで示されてコロケーションのあとには、The committee finally reached agreement on two important issues. とあります。two important issues についての合意を明文化すれば an agreement = mutually agreed arrangement ですが、ここではその前段階としての相互理解が前面に出ています。したがって、The committee finally reached "mutual understanding" on two important issues. と読み替えてもおかしくありません。

繰り返しますが、「可算=a mutually agreed arrangement 不可算= mutual understanding」という図式で見て行くとどちらの話かがわかるということです。これが本日の「お持ち帰り」ですので、是非、頭に刻みこんでください。

実際、この手がかりを用いて、不可算名詞としての agreement が使われている上の (1) (2) (4) につき、該当部分を mutual understanding で置き換えてみるとこうなります。

(1) Pacific Rim nations on Friday reached mutual understanding on a joint statement on global warming... (アジア太平洋諸国首脳は金曜日に地球温暖化対策に間する共同声明につき合意を調えた)

(2) One official involved in the talks...said the draft statement included mutual understanding on setting an "energy intensity" reducing target...(会議関係者の一人は、共同声明案にはエネルギー利用効率の改善目標を設けるとの合意が含まれているした)

(4) Another Southeast Asian official...confirmed that mutual understanding had been reached among officials.(別の首脳国関係者は、実務担当者レベルでは合意が調っていることを確認した)

どうでしょう。いずれも不自然な感じがありません。すとんと収まっています。対照的に、mutually agreed arrangement を入れると違和感があります。まだ具体的な arrangement に達する以前の状態を取り上げているからだというのが私の解釈です。

最後に、定冠詞が使われている (3) (5) は冠詞検定などで再々言及している定冠詞をつけるための二大条件すなわち (a) 特定のモノ・コトを指していること (b) 相手もそうとわかっていること、という二つの条件が満たされているかという視点から見ると、なぜ定冠詞なのかがわかります。

(3) He stressed that...nothing in the agreement was cast in stone.(同人は、今回の合意に含まれている事項はいずれも確定しているわけではないとした)

これは、まとまりつつある合意の話をしたあとで、再びその合意のことを持ち出しているわけで、端的に言えば、二度目の言及であるがゆえにどの agreement であるかがわかっていますし、相手つまりここでは読者にもそのことがわかります。ですから、上記の二大条件が満たされているということで the がつきます。

ここで the を付けて然るべき場面だということの傍証として、the の本質的意味を共有している that を入れても変な響きにならないことを挙げることができます。

He stressed that nothing in that agreement was cast in stone.

としても問題はありません。(この this/that/those を入れて the を入れても大丈夫かを確認する方法は便利なのでお勧めできます)

(5) While the agreement forbids Russia from...(この協定はロシアが・・・することを禁じているが・・・)

これも前段で Separately, Russian President Vladimir Putin and Australian Prime Minister John Howard signed a deal to export Australian uranium to fuel Russian nuclear power plants. と説明してあるのを受けての agreement ですから、「特定の agreement であり、相手もそうとわかって」おり、したがって定冠詞がつくのだと説明できます。

ちなみに、前段では deal という言葉になっていますが、意味は agreement で、しかも、これは mutually agreed arrangement のことですから、 an agreement つまり可算の agreement です。

ですから、(3) と (5) は両方とも定冠詞が付いており、同じものかのように見えるけれど、the が付く前の「前身」という見地からは、(3) は不可算の agreement をもとにしているのに、(5) は可算の agreement をもとにしているという違いがあります。

なお、まるで視点を変えて、「ここからここまでという輪郭がなく、部分と全体という関係も見いだせない」ものが不可算で、「明確な輪郭があり(したがって、このXと他のXという識別ができる)、部分と全体という関係がある(したがって椅子の脚の部分だけではもはや椅子と言えなくなる)」ものが可算だという図式を頭に入れながら、不可算の agreement と 可算の agreement を吟味してみると、納得できるはずです。

こうした不可算と可算の区別が気になる方は、バックナンバーの「可算名詞と不可算名詞を分けるものは何か」という記事をご覧ください。

まとめておきますと、例文の (1) (2) (4) はいずれも不可算の agreement であり、第一に、これについては「可算=a mutually agreed arrangement 不可算= mutual understanding」という図式で考えるとわかりやすいと言えます。第二に、mutual understanding という当事者間の抽象的な「相互理解」などは、抽象的なものである以上、輪郭がなく、したがって、ここまでが「相互理解」で、ここから先は違うといったことが言えませんし、また、具体的な取り決めや契約と違って、部分と全体というものを観念できないのだということを思い起こしながら、これらの例文をながめて行くと、不可算名詞の正体が見えてくるはずです。



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