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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2007年12月24日

実社会が求める英語力のレベルはどの程度か?

先日、明海大学で行われたセミナーで、寺内一先生という高千穂商科大学の先生が国際業務に携わっている現役のビジネスパースン、7,354人を対象にしたアンケート調査の中間発表をされ、おおーっと思いました。全国紙のアンケート調査で大体2,000人規模ですから、すごい規模です。しかも、TOEIC800点以上の人がおよそ3割、700点以上で区切れば5割を占めるという母集団です。そういった人たちが「実務で必要な英語力はどのぐらいか」という問いに対して、ヨーロッパ共通参照枠 (Common European Framework of Reference、以下 CEFRと呼びます)上、できれば、C1、少なくとも、そのすぐ下のB2は必要だと回答しているのです。

そこで、今回は、会場で聞きかじった程度ながら、この7,000人アンケートの調査結果を念頭に、仕事で必要な英語力とはどのぐらいなのか、世界最大の経済圏 (EU) で通用している外国語運用能力のデファクトスタンダードに引き直すとどうなるのか、それに対してわが国の企業の意識、あるいは大学で英語を教えている人たちの意識はどうなのかをちょっと考えてみました。

★ 仕事に求められる英語力はC1

アンケートは、明海大学の小池生夫先生が中心となって文科省の補助金によるプロジェクト形式で進められていますが、その小池先生によると、アンケートから導かれる「求められる水準」は、CEFRで言うC1またはB2レベル相当とのことです。

驚きました。かなり高いレベルです。そうは言っても、後述する英内務省が就労ビザの申請に際して要求している英語力も、このC1ですから、このレベルぐらいでないとそもそも「英語が使える」とは言えないでしょうというコンセンサスがあるかのようでもあります。

いずれにしろ、先に、「イギリスで英語力が就労ビザの取得条件に」という記事で、このC1レベルの内容を取り上げましたので、ここに改めて引用します。

リーディング能力: Can understand a wide range of demanding, longer texts, and recognize implicit meaning.

B2と異なり、長文までも読みこなせなければならず、しかも、語句等の表面からはすぐに出てこない、行間の意味までも読み取る必要があります。

スピーキング能力: Can express himself/herself fluently and spontaneously without much obvious searching for expressions.

B2と異なり、「えっと、あれ何て言ったっけ」と時折り言葉に詰まったりするレベルを超えていなければなりません。

ライティング能力: Can use language flexibly and effectively for social, academic and professional purposes. Can produce clear, well structured, detailed text on complex subjects, showing controlled use of organizational patterns, connector and cohesive devices.

状況に応じて、普段のおつきあいでの英語、大学レベルの英語、仕事場での英語を使い分ける力があり、しかも、何かものを書く場合も、英文としての構成が整っていなければなりません。また、複雑なテーマであっとも、きちんと自説を展開することが求められます。形式的にも論理の流れが明確で、接続詞など、文章全体の体裁を整える小道具をしかるべく使う能力が問われます。

要は、C1レベルでは英語らしく話したり、書いたりすることが求められるということです。つまり十分な量の単語や言い回しを知っているので、話すときに詰まったりせず、自然に流れ、また、ライティングでは全体の構成、パラグラフの構成などの英文ライティングの約束事をおさえている、そういった人がC1レベルをクリアできるということです。

日頃、英語で仕事をされている読者の方でしたらわかるでしょうが、海外に進出している大手企業でもこのレベルの人はそうはいません。ところが7,000人強の回答者中3割近くがこのレベルに到達していることが必要だと見ているのです。ちょっと譲っても、70%近い回答者がB2レベル以上は必要だとしています。[追記:ケンブリッジ英検を実施しているブリティッシュカウンシルによると、一般にB2まで達するのに必要な学習時間は正味約400時間だそうです。また、コメントしてくださった神崎先生はご自分の経験に照らし、B2からC1にランクアップするのに学習時間としては900時間、日常的に英語に触れる時間まで計算に入れると1,800時間になると報告してくださっています。貴重なデータです]

ところで、このCEFRって何だろうと思われる方もいらっしゃるでしょうが、GDPでアメリカを抜いて世界一になっているEUが域内の共通指標として使っている言語運用能力の判定基準であり、ひとことで言えば、世界最大の経済圏での外国語能力のデファクトスタンダードです。EUとは別組織の欧州評議会 (Council of Europe) が開発し、整えた体系ではあります。しかし、今ではEU自ら積極的に普及を後押ししているほか、ケンブリッジ英検、DALF, DELFで知られる仏語検定、あるいはゲーテ協会の独語検定などのテスト実施団体の連合組織も公式に採用し、各種テストをCEFRの6段階評価で示せるよう換算表の整備を図っているぐらいです(例えば最近のフランス語の教科書には A2 準拠といった表示がしてあります)。また、実際上も欧州評議会加盟国の教育当局は、CEFRに基づいて外国語教育の指導要領やテストを作成するようになっています。わが国も加盟国ではないものの、これは使える指標だということで国際交流基金が中心になって、外国人向けの日本語教育に導入しており、何でも、2009年からは毎年60万人も受験する日本語能力検定がCEFRベースになるのだそうです。

機会を改めて取り上げますが、このCEFRは、Can-do statement(「私は簡単な手紙が書けます」といった能力記述文のこと)が並ぶ、6段階の言語運用能力判定基準ばかりが取り上げられていますが、実は外国語学習とは何か、それを教えるとは何かまでカバーしている包括的な文書です。コミュニケートするとはどういうことであり、そのためには「何ができるようになる必要があるのか」を示すと共に、コミュニケートするための言語活動をこなすためにはどういう知識とスキルが必要かも示しています。言語を学び、あるいは教える人のすべてが一度は読んでおく価値のある、そういう文書だと思います。(邦訳が「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」というタイトルで朝日出版社から出ています。訳書が2,800円なのに、原書 Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment は4,923円です。)

いずれにしろ、欧州評議会が最近行ったアンケートでも、加盟各国は大多数が実に役立つと評価しているぐらいですから、少なくとも欧州域内では事実上の標準になりつつある上、先の国際交流基金に加え、台湾の教育当局が導入しているという具合に域外にも浸透しつつあります。

CEFRがデファクトスタンダードになりつつあることを示すいい例は、イギリス政府が政策運営上の指標としていることです。イギリスは入国審査の簡素化を図るため、申請者を Tier 1 から Tier 5 まで5つに区分した上、この Tier の申請者には何ポイント必要と配当し、申請者は、予め決まっている基準に基づいて、審査項目ごとに自分は大卒で、年収いくら以上だからとポイント数を計算し、それを申請書に記入するという方式を取っていますが、来年から、審査項目に「英語能力」が加わり、しかも判定の指標が CEFRであると明示されているのです。

すなわち、STANDARD OF ENGLISH という審査項目が Tier 1 と Tier 2 について適用され、ここでは、The migrant should have a competent standard of English language. The migrant will be assessed against the Council of Europe’s Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment (CEFR)...For Tier 1 of the Points Based System, the test will be required to meet level C1 on the CEFR. (当該移民は、英語力が十分な水準にあることが求められる。当該移民は、欧州評議会のヨーロッパ共通参照枠 (CEFR) にしたがって能力評価がされる。ポイント制の第一階層の場合、テストは、CEFRのC1に準拠しているものであることを要する)と定めています。

ここで言う、Tier 1 は高度技能者と称される区分でイギリスで働こうという弁護士、会計士あるいは会社役員を言いますから、きちんとした仕事をしようという人はこのぐらい求められて当たり前というスタンスを見て取れます。

なお、英内務省は、「C1レベルに準拠したテスト」という言い方をし、現在、この基準に適合しているかを審査すべくテストを作成している業者からの認定申請を受け付けているところですが、当然、スピーキング、リスニング、ライティング、リーディングの4技能がきちんと総合判定されているかが審査されるので、TOEICは認定を受けられないと見るのが自然です。

★ 企業や大学にとっての「求められる英語力」

わが国の企業は社員たちの英語力の判定基準を一般にTOEICに求めていますが、今でこそオプションでスピーキングとリスニングのテストを受けられるようになったものの、第一に、英語を話す人々がマークシートでコミュニケートしていない以上、択一でコミュニケーション能力を測ろうという方法に無理があります。第二に、テストの性質自体、他の受験者との比較でその人の位置づけを割り出そうというもので、本来、選抜のための標準テスト、いわゆる足切りに使うためのものです。(こういったTOEICの限界についてはアーカイブにある「TOEICのはなし」をご覧ください)

この違いは、飛行中のアナウンスで、「当機の機長のパーセンタイルは 70(つまり上位30%内)です」と言われるのと、「操縦技能テストに合格しています」と言われる場合との違いに匹敵します。ちゃんと操縦できるのかできないのかという実際の技能が問われる場面では、間接的に測った上、統計技術で推計すると「このぐらいだろう」とする判定よりは、直接的に能力の有無を判定するテストの方が説得力ないし安心感があるということです。現に、実社会で英語を使っている人々の意識や、そういう実用に耐える英語の力をテストしようという側(たとえば上の英内務省)の意識においても、常に、スピーキング、リスニング、ライティング、そしてリーディングの四つを水準以上にこなせるかが問題とされます。マークシートで写真の説明がどうのとやっている牧歌的世界とは違うのです。

ですから、一般に企業はTOEICで730以上なら昇進させてやるとか、海外に派遣してやるといったふうにTOEICスコアをよりどころにしていますが、実際に求められる英語力から見た場合、別世界と言わざるを得ません。

これは大学も似たようなものです。能力判定テストではないのに、TOEICのスコアで単位を認定するといったお粗末な発想の大学は論外として、一般に英語の教員自身、実際に使える英語とは何かについて問題意識が希薄です。ですから、出世のワンステップとして非常勤講師の身分に一時的に甘んじている英語研究者は、だいたいが任された英語の授業で浮世離れした英語を一方通行で流して事足れりとしていたりするのです。また、世情にうといのも一つの特徴で、ここで取り上げているCEFRについてすら、あるアンケート調査によると、専任の英語教員の5人に1人が聞いたこともなく、「聞いたことはあるけれど、よく知らない」という回答まで含めると、およそ半分がCEFRのことがわかっていないと言えるのです。限られたサンプルとはいえ、英語の専門家として学生に英語を教えている教員の2人に1人が、外国語でのコミュニケーションのために何が必要かという問題に対する解答の集大成である CEFR を知らないという数字には愕然とします。

ところが、先の7,000人アンケートの集計結果では、回答者の半数以上が口頭でのやり取りでの力不足に悩み、また8割以上もの回答者がプレゼンをこなす能力の必要性を痛感しているのです。実社会で求められる英語と大学で教える英語との違いが如実に現れている例だと感じます。(なおCEFRは Speaking を一般的な会話を意味する Spoken Interaction とプレゼンや講演など話を組立てるスキルが問われる Spoken Production とに分けて評価しており、実際に仕事で外国語を使う人のニーズ、問題意識を先取りしており、感心させられます)

一方、国際競争に耐えうる日本人の英語コミュニケーション能力向上のために掲げられる解決策が列挙されている項目につき、回答者の7割以上が「実社会ですぐに対応できる英語教育を大学で行う」ことが必要と捉え、同様に、7割以上の人が「学校教育の中でディベートとスピーチする力の向上を目指し、自分の主張を相手に説得できるような教育体制を整える」ことが必要と考えています。実際のニーズをつきつけられた経験のある人々が大学を含めての学校教育における英語のあり方に不満をつのらせている様子がありありとしています。

★ まとめ

7,000人アンケートの回答を見ると、意識しているか否かは別として、回答者がいずれもコミュニケーション能力を日々問われている立場にあることがわかります。つまり、単語や文法といった言語運用能力、フォーマル・インフォーマルを使い分けられるかといった社会言語的運用能力、そして、会話であれ書面であれ話をきちんと組立てられるか、自己紹介、依頼やその拒絶、反対・賛成の表明等での類型的表現を使えるかという語用論的/機能的言語運用能力という三つの側面を持つコミュニケーション能力の有無・程度が問題となる状況に身を置いているのであり、それだけにこうした臨場感が反映されて、求められる能力の水準はどのぐらいかという問いに対してCEFRのC1という形で具体的に答え、また、英語を話せる人間がつきつけられるニーズに関しても、プレゼン、ディベート能力をポイントとして挙げるというふうにどこまでも具体的です。

ところが、企業の方は個々の社員の意識とは裏腹に、TOEICがどういうものかを知らないまま、これを基準に社員の英語力を測っており、ギャップが生じています。アンケート調査の対象者の半分がTOEICスコアで700点以上の人で占められているのに、回答者の半分が「相手の話についていくのが精いっぱい」「自分の言いたいことが言えない」「自分の発言がうすっぺらで、クレディビリティーにおいて不安だ」と悩んでいることが何よりの証拠です。

大学を見ても英語をフルタイムで教えている教員の半分近くがCEFRをあまりよく知らないという例に見られるとおり、実社会と距離があります。だからこそ、アンケート調査回答者の7割以上もの人が実社会対応型の英語教育を大学に求めたりすることにもなるのです。(大学の教員にとっての英語力がどういうものであるかについては、「英語力とは何か」をご覧ください)

以上を要するに現場の人にとっての、したがって、実社会という見地からの「求められる英語力」と企業や大学にとっての「求められる英語力」には落差があります。問題意識が高い社員を擁しているのに、その社員の集合体である企業となるとTOEIC一辺倒というのはよくわからない現象です。大学に関しては、英語教員が世間を知らないか、自分たちの教える英語が直接実社会で役立つものでなくてもいい、自分たちの教える英語はもっと高尚なのだと勘違いしているからだと思われます。もはや大学は自分たちの中だけで、知識・スキルを再生産していればいい時代ではなく、私立大学と言えども、巨額の補助金が投入されているのですから、社会に向かって生産された知識・スキルを提供してこそ社会の一員としての責務を果たしていると言えるはずです。こういう勘違いは、例えば実用性の高い英語を企業が大学に求めるという「圧力」など外部の力で直して行くほかなさそうです。


CEFR(ヨーロッパ共通参照枠)のあらましについてはこちらの記事をご覧ください



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Comments

どうも新年あけましておめでとうございます。明海大学のセミナーいらしてたんですね。僕は時間がなかったので、小池先生と寺内先生の発表だけ聞いたのですが、非常に興味深かったです。30分と時間が短く、つっこんだ話が聞けなかったのが、残念でした。しかし、フランス語教育の学会だとCEFRはよく取り上げられるのですが、英語だとあまり知られていないようですね。

ところで、TOEICの点数は小刻みに出るからモチベーションが出やすいと言うことですが、個人的にはこれこそが受験生がTOEICの点数に一喜一憂してしまう一番の理由だと思っています。日本人の場合100点満点のテストになれてることもあり、TOEICで100点差とか50点差って言うと、すごい実力の違いがあるように感じてしまうんですよね。実際は、TOEICの100点差は、100点満点のテストの10点差にすぎないなんですが。

個人的には、TOEICのスコアは下一桁を取って、99点満点で考えると感覚的にちょうどいいのではないかなと思います。これだったら、恐らく細かいスコアの違いに一喜一憂することもだいぶなくなると思います。なによりも、日向先生の言っているような考え方を受け入れるときの認知不協和がだいぶ減るのではないでしょうか?個人的には、TOEICを99点満点にするだけでも、だいぶ現在のTOEIC熱は収まるのではないかなと言う気がします。

[返信]

こんにちは。あの会場にいらっしゃったのに、握手の一つもできず、残念なことです。ところで、CEFR、考えてみたら、ともに本国でCEFR仕様の外国人のためのフランス語やドイツ語のマニュアルが完成していることもあり、ドイツ語やフランス語の先生たちは詳しいですね。他面、英語を教えている人の中には、「やつら生き残りがかかっているからね」などと訳のわからないことを言って、非英語族のCEFR熱をヤユする人もいるわけで、何たることだとがっかりもさせられます。

99点満点というお話、冷静な立場に立っての一つの名案と感じましたが、なにせパーセンタイルが何のことかいっこう気にしないで受けている人がほとんどであることを思うと、どうだろうかとという気持もします。

日向先生

大変ご無沙汰しております。TOEIC Blitz Blogの神崎です。いつも楽しく拝見しております。今回の記事ではTOEICのことに触れられておられるので、TOEIC業界に身を置く者としてコメントさせていただきます。

まず、実社会では話す・書くのプロダクティブスキルが求められているのに、TOEICはそれをテストしてないので実用的ではないというご指摘、全く同感です。TOEIC対策コースでは話す・書くの訓練をしないので、英語学習の大事な部分が欠けていると私も常日頃感じています。

ただし、TOEICも他の英語の試験に比べれば実用的です。大学入試の英語の試験に出るような誰も使わないような文法は試されませんし、英検1級の語彙問題のような使用頻度が極めて低い難解な語句も出題されません。

テスト形式は別にして、TOEICでテストの題材として使われる英語自体はきわめて実用的です。先生のお書きになられた「仕事の英語 この単語はこう使う!」に収録されている単語とコロケーションはどれもTOEICで頻出です。また、「即戦力がつくビジネス英会話」中の会話にもTOEICのリスニングセクションでよく耳にするフレーズがたくさん含まれています。TOEICを目指した学習を進めることで、実践で役立つ語彙、collocation chunks、 基本文法などが身に付き、また英語の音声になれることもできます。それがプロダクティブスキルを習得する際、役に立つと思います。

もちろん、Common European Framework of Reference に基づいたケンブリッジ英検の方がTOEICよりもはるかによいテストです。私も日本の英語を学ぶ人たちにもっとケンブリッジ英検を受けてもらいたいと願っています。TOEICを目標にするのではなく、ケンブリッジ英検を目標に勉強すれば、日本人の英語力はもっと伸びるでしょう。

ただし、ケンブリッジ英検はタフなテストなので、多くの学習者は尻込みしてしまうのではないでしょうか。TOEICの良さは手軽さにあります。マークシートなのでたとえ正解がわからなくてもとりあえず、どれか答えをマークすることはできるので。CompositionやInterviewではそういう訳にはいきません。

それから、CEFRはレベル間の幅が広いので自分の英語力がどのくらい伸びているのかをチェックする目的には有効ではありません。私はCambridgeのFCE(CEFRのB2レベル)からCAE(CEFRのC1レベル)まで1年、次のCPE(CEFRのC2レベル)までもう1年かかりました。その期間、イギリスで英語学校に通い、1日授業3時間+自主学習3時間を週5日、年間30週していました。年900時間の計算になります。それに加え日常生活でも英語に囲まれていたので、英語に接した時間はおそらくその倍の1800時間はあったはずです。それだけやってようやく1レベルアップです。

その点、TOEICは点数が5点刻みで出るので、進歩が目に見える形で示され、モティベーションの維持に役立ちます。このこともTOEICブームの要因だと思います。やったらやっただけスコアが上がる試験の方が1800時間やって結果が出るかどうか分からない試験より受験者にとってはとっつきやすいと思います。

現在のTOEICブームは確かに異常な面もありますが、TOEICをきっかけに英語学習を始めた、TOEICがあったから英語の勉強が続けられたという学習者も多くいます。TOEICには日本国民全体の英語に対する関心を高めたという功績はあると思います。

今、たくさんの人がTOEICに対して学習熱を上げています。そのエネルギーを正しい方向、実践的な英語力を身に付けるのに役立つ方向に導くのが私の使命だと感じています。例えば、私はよく「この単語はこう使う!」を生徒に薦めます。「この本に出てくる単語、コロケーションで覚えたらTOEICでも役立つし、実践でも使える!」と言うとみんな、一生懸命覚えます。TOEICを目標にした学習も、実用英語につなげることは可能だと思います。

長々とすみません。この辺で終わりにします。
今年は大変、お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは良いクリスマスとお正月をお過ごしください。

[返信]

こんにちは。ご自身、TOEICやケンブリッジ英検を受けられ、また、実用英語をご指導されているだけに、考えさせられるコメントでした。

おっしゃるとおりTOEICにに出題される内容にも実用性があり、それなりの知識やスキルもつくことでしょうし、点数が小刻みで励みになることでしょう。しかし、それは飽くまで択一的なピンポイント的知識であり、一度はライティングというプロセスを経てそれらの点を線にする経験をするとか、反論する、同意するといった一つのタスクをこなすための言語行動の中で使う経験をしない限り、なかなか使いものにはならないわけで、TOEICばかりを目標にしているとそこに目が行かず、知識が知識で終わるのが困ると思っています。

一方、神崎先生の「新TOEIC TEST ウルトラ語彙力主義」(IBC)を拝見すると、単語のニュアンスの違いまで詳しく説明されており、TOEICのスコアアップだけのための "teaching to the test" ではないことがわかります。是非、このセンスを活かして、TOEIC単語の点としての知識が線となり、面となるようライティング向けの教材を出してください。

何であれ、神崎先生のような眼力のあるコーチがつけば、TOEICを素材に実用英語のセンスは身に付くでしょうが、それは全体の流れの中では失礼ながら小さな部分でしかなく、功罪を考えると、なるほど断片的ながら単語等の知識が増える、とっつきやすい、英語に目を向けるきっかけになるといった「功績もあるでしょう。しかし、その本質が受験者間のランキングであり、受験者のコミュニケーション能力はおろか、英語能力を判定するものではないのに、TOEICで英語力が測れるとの誤解を敢えて放置していること、こうした誤解の放置により、国民全体としてのリソースをあらぬ方向に向けてしまっていること、特に受験者の8割以上が日本人と韓国人なのに「世界基準」と誇大広告しているTOEIC自体の姿勢を併せ考えると、罪の方が大きいというのが私の認識です。

なお、英検1級の語彙問題がおかしいのは同感です。先日、1級の教材を勉強している知り合いがいたので見せてもらいましたが、opulent といった知らなくてもコミュニケーションに困らない単語が取り上げられていますし、ひどいのは、ubiquitous vending machines のように、通常名詞の頭に付く格好で使い、主格補語として使うことのない ubiquitousを素材にした設問で、Mini-skirts are...に ubiquitous を入れると正解というのがありました。自分では英語を使わない人が作った問題としか思えません。ひどいということは聞いていましたが、ここまでひどいとは思いませんでした。

CEFRだと評価のステップに幅がありすぎて、ステップアップが大変という点ですが、なるほどTOEICが5点きざみだというのは学習者にとっては励みになるかも知れませんが、もともと30点程度の統計上の誤差が織り込まれているわけで、この5点にどれほどのありがたみがあるのだろうと思ってしまいます。

一方、CEFR は飽くまで枠組みであり(枠組みである点、アメリカのACTFLのガイドラインのような「強制力」のある、つまり現場の人間の判断で変えられない指標と異なっています)、教育現場では、例えば、イギリスのLadder のように、子供たちが小刻みに実力アップの目標を自ら定め、また、目標をクリアした達成感を実感できるよう、A2といった初歩レベルをA2.1, A2.2, A2.3 というふうに細分化しています。また、お聞き及びかも知れませんが、教育へのCEFRの応用に当っては、European Language Portfolio というモデルが用意されており、CEFRによる評価をベースにした学習上は、導入する方で年齢に合わせて工夫して、評価のレベルを増やすのが一般です。

釣られてこちらも返信が長くなってしまいました。でも、神崎先生とこういった形でやりとりできるのはうれしいことです。これからも意見交換をして行きましょう!

追伸:ライティングの本、是非、お願いします。30分で書けるエッセーにTOEIC頻出単語が盛り込まれている千字文のようなお手本が多数載っているのがあったら多くの人に勧めることができ、助かります。

感動的なレポートです。

折しも、私も物理学者(小柴博士)、化学工学者(小宮山東大総長)の「英語力の必須性」についてのお話に感銘を受けたところです。


知識の「受容」と「発信」のための英語力
http://www.news.janjan.jp/culture/0711/0711276344/1.php

「イノベーション」には英語力が必須なのです。


それは日本でよく広告にある「ペラペラに!」とは異なります。


「英語教育界」と「ビジネス界」の連携が期待されます。


実例として「驚くべきインド」の発展は「英語力」があってのことです。

驚くべき「インド工科大学」フォーラム、見聞記
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711195840/1.php


[返信]

ためになるリンクとコメントありがとうございます。

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