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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年1月26日

ひとまず通じるレベルとしてのCEFR-B1の研究

EU加盟国の政府、教育関係者、語学検定実施団体はCEFR(ヨーロッパ共通参照枠)を言語運用能力の共通尺度として使っていますが、長期滞在ビザに必要な語学力で見たとおり、CEFRのB1が「ひとまず通じるレベル」として、一つの水準と目されています。このことは、 CEFR 自体、Bより下位のAレベルをbasic user と呼び、上位のCレベルを proficient user と呼ぶ一方で、Bレベルを independent user と称していることにも示されています。

B1レベルというのは、その言葉が使われている外国に行っても1人で食事を注文したり、交通機関を利用できるという具合に、何とか独力でコミュニケーションが取れ、また、その国の人と自国で出会うような場合も、話題が平凡で定型的なやりとりで済むものである限り、いちおう会話らしきものをこなせる程度とされています。

ただ、これだけでは具体的な姿が浮かんできませんから、もう少し掘り下げたくなります。そこで、CEFRそのもの(Cambridge University Pressから出ている欧州評議会編 Common Framework of Reference for Languages)と、レベル分けをCEFRの6レベルに合せて24種の語学検定を実施しているALTE(Association of Language Testers in Europe 。ヨーロッパの6つの著名な語学検定実施機関の連合組織)が公表しているガイドラインを元に、どのような人を指してB1レベルの人と言うのかを浮き彫りにしたいと思います。

まず、私が、Common Framework of Reference for Languages をはじめとする各種資料から知り得たB1レベルというのは、こういうものです。

➩ B1は、ケンブリッジ英検で言えば PET (Preliminary English Test) に相当し、通常、このレベルに達するには平均して350時間から400時間の学習時間を要するとされています。IELTSでのスコアに置き換えた場合は 4.0前後とされます。語彙力で測った場合は、最高レベルのC2での語彙が5,000単語とすれば、B1は、3,000単語レベルとされます(すぐ下のA2は2,500単語レベル、すぐ上のB2レベルは3,500単語です)。また、フランス語ならDELF B1、ドイツ語なら Zertifikat Deutsch (ZD)を取得できるレベルです。

➩ B1レベルのコミュニケーションをこなせる人は、その言葉が使われている外国に行った場合、あるいはその国から来た人に出会った場合に独力で最低限のコミュニケーションができるとされていますが、Common European Framework of Reference for Languages では、一段低いAレベルとの比較において、B1は二つの特色があるとしています。

一つは、やりとりを途切れさせずに何とか続けられ、また、自分の言いたいことを伝えられることで、もう一つは、日常生活の中で出会う場面であれば、臨機応変に対処できることです。具体的にはこういうことです。

A 会話の流れが途切れないようにすることができ、また、伝えたいと思っていることをうまく言うことができる (able to maintain interaction and get across what you want to

 • 相手の話し方が明瞭で、しかも標準語である限り、やり取りが長くなっても主要な点をおさえながら話に付いて行くことができる

 • 友達との気楽な会話の中で自分の考えを述べたり、人の意見を尋ねたりすることができる

 • 最も強く言いたいことを相手にわかるよう伝えることができる

 • 簡単な表現を種々使いながら言いたいことは大体言える

 • 会話を続けることはできるが、時おり、言いたいことがうまく言えなくなり、そのために相手も理解するのに苦労するような場面がある

 • 明らかに文法を正確に使おうとし、または、言葉を探して、そうとわかる程度はっきりした間が空いたり、言い換えがあったりはするものの、相手がわからなくて困るといった事態を招かずに話を続けられる

 • 文法上の間違いはあるものの、何を言いたいのかがわからなくなるようなたぐいのものではない。

 • 語彙力は、ときには(語彙力不足から)同じ単語を何度も使う場面はあるものの、家族や趣味、仕事など身のまわりのことを話すために十分な語彙力を備えている。

B 日常生活の中で出会う場面であれば、臨機応変に対処できる (able to cope flexibly with problems in everyday life)

 • 交通機関の利用上、日常的とは言えないような状況が生じても対処できる

 • 旅行会社を通じて旅行の手配をしたり、あるいは実際に旅行をしているときにありがちな場面なら大体は対処できる

 • 身近な話題であれば、わざわざ準備をしなくても会話をこなせる

 • クレームをつけることができる

 • 面接などにおいて新たな話を自分の方から切り出すこともできるが、基本的には相手のイニシアティブにことを委ねる結果となる

 • 相手の言っていることがわからない場合に、不明な点を質したり、もっと詳しく説明してくれと言うことができる

なお、すぐ上のB2レベルは以下の点でB1と違うとされています。

A 効果的に自説を展開できる (a focus on effective argument)

B 相手にふりまわされることなく、一定時間以上の会話を続けることができる (able to more than hold your own in social discourse)

C 言葉に対する感覚がより鋭い (a new degree of language awareness)(誤解が生じていると認識し次第、自分から間違いを正せる。やりがちな間違いを自分でも気をつけるようにし、話しながらも点検を怠らない。自分で気付く限り、ちょっとした間違いでも訂正するよう努める。話の内容を組立て、かつ、相手との関係を見極めながら、どのようにそれを表現すべきかを予め考えてから口に出す)

D 目立つような文法ミスはあまりない上、あったとしても、誤解を生じさせるほどのものではない

E 語彙力は、自分の専門分野その他一般的な話をするために十分なものがある。同じ単語の反復を避けるため同義語を活用できる程度の語彙力があるが、時にはしかるべき単語を探したり、それが間に合わず同じ言葉を繰り返すようなことがある。

➩ B1レベルに到達するまでの平均的学習時間はゼロから初めて350-400時間とされています。わが国の中学校での英語の年間授業時間数を100時間、高校でのそれを180時間とした場合、高校1年でクリアできる計算です。残り360時間あれば、余裕で上のB2レベル(ケンブリッジ英検で言えばFCE=First Certificate of Englishのレベルで、平均500-600時間を要するとされています) をクリアでき、うまくするとC1(700-800時間)まで行けるはずです。それが現実にそうなっていないのは、何かがおかしいということでしょう。

ちなみに、英ガーディアン紙は、南米チリの英語教育は、小学生レベルで CEFRの basic user つまりAレベルをクリアすることを目標にしていると報じています。また、同紙は、ある日の中国で、12万人を超える7-12歳児が ケンブリッジ英検 (YLE=Young Learners of English) を受験したと報じていますが、このYLEは、実施団体みずからCEFRでのAレベルであるとうたっているものです。

ということは、こういった国々では中学からB1、B2を目指して組織的な英語学習を行える素地がととのっているということです。わが国では、いまだに大学の偉い先生たちが小学校英語教育に反対などとやっているありさまです。なるほど、実際上は、こういった反対論をよそに、9割近い小学校が何らかの形で英語を導入してはいます。しかし、どこもお遊びの域を出ず、とても小学校卒業までにAレベルなぞ望めません。もう結果は見えています。日本は駄目です。

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