2008年01月29日
必要なものから先にセンスよく単語を覚える
以前、「英語の勉強は文法より単語が先という話」で書いたとおり、英語の8割以上をまかなえるということで、まずは頻出単語中、最上位の2,000単語をおさえるべきです。(「ビギナー向け英単語検定」が最上位2,000単語に焦点を合わせているのも、こういう理由があるからです)
この点、University of Wales Swansea の James Milton は、欧州評議会が開いたセミナーで、フランス語を例に、ボキャブラリーと外国語能力との間には強い相関関係があるとし、縦軸にその言語がカバーされる割合、横軸に頻出単語数を取っている、以下のようなチャートを示しています。

ご覧のとおり、フランス語単語のうち頻出最上位6,000までわかっていれば、95-98%つまりほぼ完全にわかり、頻出最上位2,000単語をおさえていれば大体のことがわかる (gist comprehension) としています。そして、Milton は、イギリスでの学校教育におけるフランス語学習を研究した結果として、English and French are similar. と判断していますから、英語についても上のチャートは通用することになります。実際、上位2,000単語わかっていれば英語の8割がカバーされるというのは研究者間での通説になっていると言えます。
なぜここで頻出最上位2,000単語にこだわるのかと言うと、この種の単語がぱっと口を突いて出てくるぐらいになっているかで「英語が使えるか否か」が左右されるからで、このへんのことを意識しておかないとむずかしい単語を知っているわりに実際には英語が使えないという悲喜劇のもとになります。
例えば、TOEICコースの先生から聞いた話ではスコアで600というのはボキャブラリーで言えば、3,000単語以上ということだそうです。一方、The Linguistという外国語学習者のためのブログでは、TOEICを受けるなら750は取らないと意味がないが、750をクリアするためには、単語数では7,000-8,000は必要だとしています。
ところが、一方では、日本人で英単語を3,000以上知っているような(一般的には)単語力のある人が実は頻出最上位2,000単語中400単語つまり1/5を知らないというデータもあります(だから「ビギナー向けの英単語検定」の成績がぱっとしないのだとも言えます)。つまり英語を普通に話すために不可欠な単語をきちんとおさえないまま、「テスト頻出単語」の習得に精力を傾けている人々が多いのです。TOEICで自分の勉強の成果を確認するのは悪いことではありませんし、TOEIC頻出単語と基本単語はかなりの部分で重なっていることでしょうが、TOEICや英検それ自体が目的というならともかく、まずは基礎を固めるべく必要なものから先に勉強していくのが合理的というものではないでしょうか。
基礎がためというのは何でもそうで、有名な数学者のホワイトヘッドも数学教師たちに Do not teach too many things. What you teach, teach thoroughly. という言葉を遺しましたが、あらためてごもっともと感心します。
それはさておき、次に最初の2,000レベルをクリアしたとして、さらに上のレベルを目指して行く際の到達目標をどう設けていくべきかについては、Milton はこのような表を出しています。CEFRの各レベルと単語力との関係をこのような形で示したものは他で見たことがなく、なかなか貴重な資料だと思いました。

これで見ると、前回取り上げたCEFRのB1は3,000単語レベルになります。イギリスの就労ビザで要求されるB2なら3250-4500レベル(たしかオーストラリアの学生ビザでもこのB2が要求されているはずです)、C1なら3750-4500ということです。なお、自分の単語力をオンラインで簡単に調べることができるテスト(無料)としては、V-Checkがおもしろいと思います。語彙習得研究の大物 Paul Nation がその開発や運営に関与していますので、信頼できるテストでもあります。
こうした単語を勉強して行くにしても片端から市販の単語集をやっても効率が悪いことですから、このあたりについてどういった問題意識をもって取り組むのがいいのか見当がついていないようでしたら、2年前に書いたものになりますが、以下の記事をご覧ください。(「語彙研究の常識」としていたタイトルを今回「ボキャブラリー学習の常識」と変えました。また、「けんてーごっこ」を使った復習問題を新たに組み込んでみましたので、以前読まれた方にもちょっと楽しんでもらえるかなと思っています。
(上)ボキャブラリー習得の常識
(中)ボキャブラリー習得の常識
(下)ボキャブラリー習得の常識
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大変面白い記事。同感です。文法よりも単語!簡単に申し上げますと単語の数は最適言語能力を掴む要素です。しかし2,000単語では80%の単語を理解しても、まだ全体の意味がわかりません場合がほとんど。単語はもっとたくさん必要です。
そして頻度の高い単語はよく出てきますのでたくさん読み、聞き、自然的に覚えてくる。ただ、目標は流暢に話せるところに置くべきだと思います。結論はたくさん面白い内容を楽しく読む、聞く、その習慣自分につける必要があります。近道はない。
自分のブログ(The Linguist on Language) でもっと詳しいことを英語で書きました
[返信]
コメント、ありがとうございます。
ちなみに、The Linguist on Language のURLは以下のとおりですよね?勉強になるいいブログだと思っていますので、ビジネス英語雑記帳の読者の方にもおすすめできます。(特にこの方の mostly just listening というアプローチ、共感をおぼえます)
http://thelinguist.blogs.com/how_to_learn_english_and/
たしかに2000程度では十分とは言えませんが、日本人学習者の場合、この最低限の要請すら、きちんとおさえていないのが一般で、そのために最低限のコミュニケーションもままならないのが実情です。近々、この問題をとりあげようと思います。
なお、「ビジネス英語雑記帳」はアルクの軒先を拝借はしていますが、アルクのブログではありません。日向が書き散らしている雑文がアルクの見解あるいはアルクのレベルと思われてはいけませんので、申し添えます。
- 2008年01月31日 08:26
ビジネス英語雑記帳の事情よく解りませんでした。すみません。
2000単語に関しても、一般的にも、日本人の英語学習者達に対して言いたいことはこの次。日本の文化には徹底さは道徳であります。だから ”頻度高い2,000単語徹底的に勉強、全部完璧に覚えておく” などがすぐ言う。
それは言葉の勉強の場合には役に立たない。”徹底的に”よりも、”楽しく”。 楽しい内容、楽しく聞きましょう、読みましょう。しかし、たくさん、毎日、繰り返して、散歩の時,電車に乗るときに。しかし興味のある内容。。。
知らないうちに単語があたまに残る、使えるようになる。
[返信]
どうぞお気遣いなく。こちらも別に何のことわりもしていませんので、アルクのビジネス英語ブログと解されるのはごもっともです。
カウフマンさんのおっしゃるのは、わざわざ2000単語にばかり集中せず、他もやっていけば自然とその2000単語にも繰り返し触れることになるというご趣旨かと思います。
なるほど多読を通じてこのようなことも可能でしょう。また、コミュニケーションという見地からは楽しみながら学んだ方がいいに決まっています。
ただ、日本では大学受験のため2000単語のはるか先まで徹底的におぼえようとするので、結果として、基本が手薄になってしまうという事情があります。
たくさん単語をおぼえるのはいいことに違いないけれど、まず基本部分はしっかりやった方がいいと申し上げたいのです。
カウフマンさんも日本にいらっっしゃるとわかりますが、大学生は単語テストをやらせたら普通のアメリカ人があまり知らないようなabdicateといった単語の日本語での意味は知っているのに、decisionとセットで使う動詞はと聞かれるとmakeがすっと出てこなかったりします。
- Steve Kaufmann
- 2008年01月31日 13:39
言ううことわかります。頻度の高い単語は把握して、正しく使うのは大切です。問題は勉強のしかた。LingQでは単語は読んだ内容からセーブして、頻度による重要性を星(****)であらわす。重要性の高い順序でリストができる、Flash Card その他できる。
作文の時に重要性の一番高い25の単語がリストが出てくる。(覚えておくまでに)。
問題は意味だけではない。どの単語とあわせて使うべきが大切。だから見本も出てくる。しかし読んだ、聞いた内容、あるいはこれから勉強する内容からの見本。大部分の場合には記憶にすでに残っています。
あまり詳しいことがいえないですが、無料で利用できますのでLingQ をみってください。
ところで
Abdicate は普通のカナダ人が分かるたんごだと思います。にもかかわらず、LingQの図書館 (20,000単語以上)にはいていません。辞書調べたら、定義の80%の単語は頻度の一番高い2000単語からできています。しかし意味は全部残りの20%の頻度の低い単語から分かる。だから単語はたくさん必要ですと思います。。
Abdicate: to renounce or relinquish a throne right power claim responsibility or the like esp in a formal manner the aging founder of the firm decided to abdicate
renounce
relinquish
throne
founder
esp
decision に関して言いますと、LingQ では単語をセーブするときにphrase も自動的にセーブされます。この単語が使われているphrase 全部リストになります。
(Workdesk は勉強済みの内容 Storeはこれから勉強できる内容。)
examples from your Workdesk
[»] The decision is up to you ...
[»] then stick with your decision.
[»] I said, with decision, we will go ...
[»] the cost of that decision is not borne by ...
[»] you make that decision...
Examples from the Store
[»] on the processor’s decision, it adjusted the angle ...
[»] never make an important decision during Mercury retrograde.
[»] have to make a decision whether you want to ...
[»] But the decision to nurture groupies in ...
[»] must be an individual decision, and that implants may ...
[»] problem to solve or decision to make
[»] to making an arbitrary decision as to whether they ...
[返信]
懇切丁寧なご説明と有益なご助言を多とします。
ビジネス英語雑記帳 主人謹白
- Steve Kaufmann
- 2008年02月01日 08:55



こんばんは。勉強に来ました。
英語を解析すると基本単語2,000という話はよく耳にします。ミススペルなく書けるのか?と尋ねられると100%の自信はございません。
英検1級取得時に10,000語ぐらいの単語は記憶したと思いますが、それだけ多くの単語となると書いて憶えるほどの根性はありません。
英検1級でさえライテイングとリスニング、スピーキングで求められるのは難解な単語力ではありませんでした。ミススペルなく相手(試験管)を説得できるのかなのでしよう。私の経験では、英検1級のスピーキング試験の時でさえ中学生レベルの英語で受け答えしておりました。
先生がおっしゃりたい「通じる英語」から発展させ「交渉力」を身にてつけられれば最高です。
愛沙の「実践現代中国語単語集」
こちらにもお越しください。