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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年01月31日

日本人の語彙力(英単語力)

大学生を初めとして、われわれ日本人の平均的語彙力はどんなものなのでしょうか。日頃接する大学生を思い浮かべた場合、受験英語のおかげなのか、普段から英語を使っている人でも一瞬たじろぐような単語を知っているのに、日常的な雑談はまずこなせないというのが普通です。それだけに、どこかが間違っていると感じています。

そこで今回は、大学生の語彙力をひとまず日本人一般の語彙力と捉えて、それがどの程度の水準で、どのように形成されるのかを見てから、問題点を考えてみました。

★ 大学生の語彙力

大学生が平均的にどの程度の語彙力を有しているかに関しては、01年度外国語教育メディア学会関西支部の研究報告会で、大学入学時の平均的な認識語彙サイズは約2100~2600語、表現語彙サイズは約1900~2300語程度というデータが発表されています。認識語彙というのは receptive vocabulary のことで、読んだり聞いたりしたときにその意味がわかるという意味です。表現語彙は productive vocabularyつまり自分から会話の中でぱっと使ったり、ライティングに際してもすぐ出てくる語彙のことです。

Schmittという人の研究によると、発表語彙というのは、受容語彙のプラス20%あたりということですから、この見地からもなるほどと感じる数字です。

同志社大学の研究グループが発表している資料でも、360人の大学2年生を対象とした調査の結果、認識語彙ベースで、2000から2500ワードファミリー( speak なら speaks, spoke, spoken, speakingといった「活用形」をひとくくりにして1個の単語とするのがワードファミリー)だと推定しています。

ワードファミリーで数えた単語数で高頻出2,000単語知っていれば話し言葉の9割、書き言葉の8割がカバーされることになりますから、ひとまず十分なレベルと言えるはずです。語彙力習得には単語をいくつ知っているのかという「広がり」と、コロケーションや反対語、同義語まで知っているかという「深み」の二つの側面から考える必要がありますが、少なくとも「広がり」という見地からは大学生の語彙力は合格水準にあるかのようです。

ただ、これは最低限のレベルということであり、大学レベルの教科書を読みこなすには、ワードファミリーで数えて4,000 から5,000は必要とされていることを考えると、使い物になるレベルではなく、基本的には貧弱だと言わざるを得ません。

なお、アメリカで勉強している外国人留学生(スペイン、韓国、日本、中国の4ヶ国)173名を対象にした語彙力調査では、一番出来のいい学生グループで、表現語彙が4,000単語(ワードファミリー)に達しているというデータがあります。

★ 中学高校での語彙力形成

ひとまず大学生の平均的語彙力は2,000単語強だという数字を前項で見ましたが、これは中学高校での英語教育で取り上げる単語数に照らし、まあそんなものだろうという感じます。と言うのも、中学で覚えるべき単語数は900で、これに高校レベルで 400から900追加されるからです(英語1/オーラルコミュニケーション1で400、英語2/オーラルコミュニケーション2で500、この他リーディングで900。英語1とオーラルなんとか1の違いは読解用の素材が多いのに、後者はリスニングとスピーキングを意識している点です)ただ、これだけの数がいわば学習課題として配当されているというだけで、それを習得する為の仕組みづくりは別問題です。

それでは、中学高校レベルでどんな形でボキャブラリー習得の「しかけ」をしているのかというと、全国語学教育学会が出している The Language Teacher という会報的な雑誌にその説明が載っています。2005年の7月号に、明治学院大学付属高校のJohn Fujimoriという先生がオーラルコミュニケーションの教科書としてよく使われているもの2冊を語彙習得の見地から分析されているのです。

それによると、この二つの教科書 Hello There! と Sailing の語数は、重複しているものを省かず単純に数えて各々15,000前後。Fujimori先生も指摘されていますが、テキストを読んで認識語彙力をつけていくとなると、年間100万単語に触れる必要があるとされているのに、絶対的にエクスポージャーが足りません。第二の問題点は、使われている単語の9割前後が高頻出2,000単語で占められているのはいいとして、かなりの数の単語が6回以下しか登場せず、中には一冊の中で1回とか2回しか登場しない単語もあります。この点、Fujimori 先生は、Nation等の研究結果を引いて、ある単語を覚えるためには10回は触れる必要があること[但しNationは5回という数字を挙げています]、また、Kachrooの研究によると、教科書中1回または2回しか登場しない単語の半数は忘れ去られてしまうといことを指摘しています。

あと、これは Fujimori先生のレポートを見ての私見ですが、高頻出2,000ワードファミリーがどれだけカバーされているかという見地からチェックすると、どちらの教科書も862とか927で、半分も取り上げられていないのが気になります。と言うのも前回ご紹介した単語力チェックの V-check のサイトに、この無料テストを通じて収集したデータの分析が載っており、そこでは、語彙力が3,000強を超える学生なのに、高頻出2,000単語中400以上を知らないというケースがよくあると報告されているからです。単語を幅広く知っているのに、肝心の基本単語の固まりに空白部分があるという冒頭で述べた平均的な大学生の姿が裏づけられた格好です。

ところで、この3,000単語強という数字ですが、たまたま目にした「語彙力と実用コミュニケーション能力の関係」と題された実証研究例によると、以下のとおり、TOEICで909点取れるレベルとされています。(ここでの語彙力は高頻出5,000単語リストの上位1,000レベル、3,000レベル、5,000レベルで区分されています)



TOEIC%20and%20vocab%20level.jpg


「3,000単語以上の英単語を知っている、TOEICのスコアも900以上ある、それなのに電話のやりとりができない」といった、ありがちなTOEIC受験者像を考えるとなかなか味わい深いグラフです。また、このペーパーによると、1,000語の語彙力(7語に1語の割合で知らない単語にぶつかるレベル)でも「正答率が 82.0%で、コミュニケーション能力はBレベルではあるものの、トータルスコア790点が得られた」としています。で、このBレベルのコミュニケーション能力がどういうものかと言うと、TOEICの主宰団体の説明によると、この能力は、「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」と形容されています。

TOEICの730以上と言えば、よく企業が海外出張の条件にしていますし、たしか文科省も英語教員の目標値としています。それを1,000単語程度のボキャブラリーで取れてしまうというのは、730以上というレベル自体がその程度のものなのか、または、1,000単語程度のボキャブラリーでも「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」ことを請け合いますとTOEICが大風呂敷を広げているかの、どちらかになるのではないでしょうか。何であれおかしな話です。

(なお昨日ご紹介したThe Linguist では750をクリアするためには、単語数では7,000-8,000は必要だとしていますが、根拠は示されていません)

追記: 上の資料はTOEICの日本法人が作った表と対照しながらTOEICのスコアがどういうコミュニケーション能力を意味するかを論じていますが、しかし、TOEIC米国本社が作成したデータをもとに比較表を作ると以下のとおりまるで違う様子が浮かび上がります。TOEIC730はCEFRではB1どまりです(B1のコミュニケーション能力がどの程度なのかはこちらの記事をご覧ください。少なくとも「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」というレベルではなく、何とかコミュニケートできるレベルです)


TOEIC%20vs%20CEFR%20table.jpg

なお、この表はヨーロッパ向けに発表されたものですが、アメリカのサイトにある資料では、TOEIC スコアの合計点とCEFRのレベルを簡単に比較できないようになっており、しかもTOEIC990より上のレベルがあるとまずいのか、CEFRの最高レベルであるC2が省略されています。TOEIC990でもCEFRだとB2どまりであるのがはっきりしてしまうとマーケティング上具合が悪いからなのでしょう。巨人TOEICの姑息な一面がうかがわれ、微笑ましくもあります。


★ 問題点

語彙力ないしボキャブラリーを習得していく上で大事なのは、単語数だけではありません。もちろん認識語彙数が増えれば本などを読むのは楽になります。しかし、そういった数量における「広がり」に加えて、単語を実際に使うための周辺知識つまりコロケーションはどうなのか、同義語と比べてのニュアンスはどうなのか(インフォーマルなのかフォーマルなのか等)といった質的な「深み」との兼ね合いが重要だと思います。

「けんてーごっこ」での「ビギナー向け英単語検定」に、「アカデミックや教養単語の方の成績はいいいのに、どうしてこちらでは振るわないのだろう」という感想が数多く寄せられましたが、ビギナー向けの方は単語自体はたいていの人が知っているものだけれど、問題自体が知識の「深み」を問うものだったために、虚をつかれたのです。(「ビギナー向け英単語検定」はこちらのアーカイブの下の方にあります)

このあたりの「日本人的ボキャブラリー感覚」とでも言うべきものについて、竹蓋幸生先生は、『日本人英語の科学』(研究社出版)の中で、(数の数え方にもよるが)基本的に日本人の表現語彙数がネイティブに比べて「あまりそん色のない数字」だとした上で、続けて、こう指摘されています(同書 103頁)。

それにもかかわらず表現語いの方も含めてその学習がきわめて不十分であると結論せざるを得ない理由がある。それは、日本人の学習する「意味」の幅が極めてせまく、同じ単語を原語話者の何分の一かの割合でしか使えない(松村 1979)・・・[この問題につき]Steever (1980) が次のようにいって、簡潔に、しかし明快にそのへんの事情を指摘している:"Their vocabulary is large and shallow and useless."

続けて竹蓋先生は、日本人が作成した学習用語彙リストとアメリカで作成された同種のリストとの比較をし、punctualといった600万語に一度も現れない(www.wordcount.orgでチェックしたらpunctual は頻出順で12,540番でした)ものを初め、極端な低頻出語が「国産」リストに入っていること、加えて、高校の教科書を調べても100万語に1回以下しか登場しない単語が22個もあるとした上で、

「日本人の単語を学習する態度が何でも丸暗記をして語いの「数」を増やすことや、同じことを言うのでも、知っている単語のうち少しでも「むずかしそうに見える単語を使うこと」と英語力とを混同しているふしのある」

ことが日本人独特の英単語のセンスに結びつき、それがネイティブスピーカーには不思議なものと映るのではないかと述べられています。

★ まとめ

書店で英単語の本が並んでいる棚を見ると、大体が何千単語といったものをうたい、あるいは1万いくつなんてのもあります。ところが中身は、意味と例文が載っている程度で大したことがありません。こういうものをやっても、"large and shallow" で終わってしまい、したがって useless だということになるのではないでしょうか。

ものには順番があるわけで、ビギナーレベルの場合、まずは「広がり」を高頻出2,000単語におさえることではないでしょうか。その上で、個々の単語につき第一に、少なくとも5種以上の例文に触れ、第二に、その単語が名詞なら、普通いっしょに使う動詞は何か、形容詞はどうかとコロケーションを確認し、そして、第三に、同義語は何か、そして、同義語間のニュアンスの違いは何かと、「深み」をつけるのが基本だと思います。このように高頻出単語についてきちんと「深み」をつけておけば、むずかしい単語は知っているのに、基本単語でつまずくようなことを避けられるはずです。

用例はどうするんだと思われるでしょうが、今の時代、Google等で、いくらでも用例を検索できる時代ですし、ともかく、初出の単語については5回以上触れることを目指して努力することです。

いつまでも2,000単語レベルでもたもたしていたくない、どんどん学習単語数を増やしていき達成感を味わいたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、以前、ジップの法則でご紹介したとおり、人は既出の単語を繰り返し使ってコミュニケートするのが普通なのであり、そのゆえに、コミュニケーションにおいては常に繰り返し使われる単語が大きな割合を占めていると言えます。

例えば、よちよち歩きの子供が発する言葉の96%が繰り返し使われる25単語で占められています(Balandin, Susan & Iacono, Teresa. (1999) Adolescent and Young Adult Vocabulary Usage, Augmentative and Alternative Communication (AAC), Volume 14, No. 3, September)。大人の会話に関しての研究でもたいてい一定数の単語が会話全体で使われた語数の8割弱を占めると報告されています。特殊と思われがちなビジネス英語の世界もやはり8割以上が平凡な語句で占められているというのが実感です。

日本語に関する研究は知りませんが、こと英語に関しては、結果の8割は、その要素の2割に基づくという 80-20 rule(「にっぱちの法則」と呼ぶ人もいます)が当てはまるようで、われわれは持てる語彙力の2割で日頃言っていることの8割をまかなっているのではないでしょうか。少なくとも頻繁に使われ、したがって語彙力の中核を担うコア・ボキャブラリーとでも呼ぶべき「固まり」があるのは確かです。そうとすれば、語彙力に関しては、まずはこの部分を意識的に勉強して整えるというのが合理的というものでしょう。これをきちんと固めないまま先を急ぐのは、砂上の楼閣を築いているに等しいものがあり、結局は損するというのが私の考えです。



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Comments

面白い記事。私の意見は詳しく英語でこちらで書きました。
http://thelinguist.blogs.com/how_to_learn_english_and/
日本語ではなくってすみません。

[返信]

日本語でお書きになっていないからと気になさる必要はありません。互いに自国語で書いているのに、こうやって意見を交換していることの方が重要ですし、おもしろいことだと感じています。

いずれにしろ書かれた記事は、私とは見方が違いますので、その意味で示唆に富んでおり、「ビジネス英語雑記帳」の読者のみなさんにもお読みになることをお勧めします。

また、むずかしい単語や言い回しを使わずにレベルの高い話ができることを如実に示している点でも、Kaufmannさんの書き方は勉強になります。

http://thelinguist.blogs.com/how_to_learn_english_and/2008/02/how-many-words.html

Since I am adding posts to my blog, I though I would leave the link to the relevant blog post here. If I understand correctly, you do not mind me leaving my comments here in English. This makes it much easier for me. However, if you or your readers prefer I will comment in Japanese.


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TOEICのコミュニケーションのレベルに関する記述は随分と大風呂敷なのでしょう。私はTOEICで970点ですが、DIALANGのVocabularyとReadingではそれぞれCEFR B2で、これはcan do statementによる自己判定とも一致します。この程度の語彙力で満点近いスコアが取れるのです。
Listeningに至ってはB1にも関わらず、TOEICのListening Sectionでは満点の495点が取れます。
言い換えると、TOEICで測定できる限界がB1からB2のあたりにあるのでしょう。その程度のテストだと思っています。英語学習の初級者から中級者を母集団としてベルカーブを作ったのではないかとも思います。

[返信]

DIALANGをご利用なさったんですね。あれはかなり精度が高いとされていますが、B2というのはまずまずで、逆に自信がついたのではないでしょうか。

その後の進捗のチェックには

http://www.eaquals.org

を使ってみるのも手だと思います。

ところで、本文で引用した日本語のコミュニケーション能力の記述はTOEICの日本支部が作ったものですが、アメリカの本部がTOEICのスコアとCEFRを対照させたものでは、TOEIC970だとCEFRのB2となっています。

http://www.ets.org/Media/Tests/TOEFL/pdf/4271_flyer_V6.pdf

この資料、日本で公表すると「何だTOEIC990ってその程度」とわかってしまい営業政策上まずいので、強いて表に出していないのかなと思っています。

考えてみたら、このデータ、本文でも紹介しておくべきですね。あとで、補充しておきます。ありがとうございます。

TOEICとCEFRの対比表はなかなか興味深いですね。Listening 495点の私はC1レベル?! でも実際は、字幕なしの映画はほとんど理解できないB1ですよ。英米人とのビジネスでは、話について行くのが精一杯で、相手に主導権を握られっぱなしです。。。

[返信]

12月24日の記事で取り上げた7000人アンケートでも、「話について行くのが精一杯で、相手に主導権を握られっぱなし」という形容による自分の英語力の評価が出ていました。一つの典型例のようですね。

IQと同じで、単一のスコアで人間の能力を測ることに無理があると思いますので、CEFRのように多角的に能力を挙げてレベル判定をする方が合理的なのではないでしょうか。一度、www.dialang.orgでの自己査定を試されると多角的評価を体験でき、おもしろいと思います。

語彙力といっても、認識語彙(文脈中で単語の意味が辞書なしでわかる・判断できる)と運用語彙(会話やライティングで自分で自由に使いこなせる)の大きく2つにわかれます。前者は、洋書・英字新聞・雑誌・参考書やリスニングなどを通して、辞書で意味を確認しながらおぼえていく方法です。これに対して後者は、英文レター(e-mailも含む)、論文、エッセイ、かつ外国人との通常の日常会話から仕事・ボランティアなどを通しての会話及びプゼンテーション・ディスカッションなどで、意識的に使って行くことを目的としたボキャビル方法です。認識語彙と運用語彙の相関関係は、人によって意見が分かれますが、一般的には、認識語彙>運用語彙 という見解で一致しています。

TOEICの試験の語彙のレベルは、TOEFLや英検一級に比べると全然低く、問題の95%以上は、3000-5000語レベルのボキャビルで容易に解ける問題で固まっています。多少難しい語彙も出題されることもありますが、それでも6、7000語レベル(英検準一級レベル)です。出題されるとしてもせいぜい4-5問程度で、仮に全部不正解でも、大きなスコアの変動を引き起こすことはありません。

ただし、ここで重要なのは、TOEICで出題される問題の語彙の大半は、仕事・日常・ボランティアを問わず、英語を日常に使う人の間では、頻繁に使われるものばかりだということです。つまり、単に認識されているだけではなく、当然のことながら会話やライティングでも常識として当たり前のように使われているというものが殆どです。従って、彼らにとっては5000-7000語レベルという語彙は、単なる認識語彙ではなく運用語彙で、実際に英語を中心とした総合的なやり取りをするには、少なくともそれだけ問題なく使いこなせることが最低条件なのです。そうでなければ、国際的ビジネスパーソンなど勤まる筈がありません。

一方、日本人の多くは、高校や大学受験での対策の影響からか、でる単やシケ単のような単語集を中心とした詰め込み勉強からまだ完全に脱却しきれていません。その殆どは、英和・和英辞典で引いた意味だけ覚えて、コロケーションや例文は一切読まない・音読すらしないというケースです。従って、大学入試や時事英語などに出てくるハイレベルな語彙を頭でわかっていても、用法やフォーマル・インフォーマルの度合い、使う状況における制約等が解っていないがために、全く使いこなせないか間違って使うという最悪な結果に陥ることが多々あります。また、日本語での会話でも使う使用頻度の高い表現を、2000語レベルの基本動詞ではなく、時事英語や大学入試などで出てくるハイレベルな単語をピントの外れた使い方をして、全然意味が通じないというケースもよくあります。

英検1級だと、難易度の高いボキャビルと長文に挑むには、10,000-15,000語レベルの認識語彙が必要になりますが、合格者の平均の運用語彙は、最大でも約4割の4000-6000語程度(実際には運用語彙が極めて少ない合格者人もいる)だそうです。これに対して、アメリカ・カナダなどの大学学部と院の両方(文系)を終了した日本人の場合、最低でも7、8,000語、多い人だと10,000語レベルまで楽に使いこなせるようになると聞いています。これは、ただ単に授業を受身で聞いて、テキストを受身で読むだけではなく、数多くのペーパーやエッセイを書き、ディスカッションやプレゼンテーションをこなし続けていくという学業知的訓練によって、語彙が豊富になり、高度で切れのある表現が書け(話せる)ようになるという成果から来ています。

最後に結論に入りますと、初級者であれば、先ずは2000-3000語レベルまでの単語を英英辞典を引きながら用法・ニュアンスを学び、実際にe-mailや会話で意図的に使う習慣を普段からつける。中級者であれば、5000-7000語レベルまでの単語のボキャビルを同じような方法で行う。上級者やさらに上を狙う人であれば、Time, Newsweek, Economistなどの洋雑誌・洋画などを活用しながら、10,000語レベル以上の高度な語彙の使い方をしっかり学ぶ、などレベルに応じたボキャビル法が必要でしょう。いずれにせよ、ボキャビルで一番大切なのは、単に学んだ語彙を頭で覚えるだけでなく、ニュアンスや用法・コロケーションなどを正しく知った上で、意図的に会話やライティングで使うことです。日本だと、ただでさえ実際に使う機会が限られていますから、意識的に訓練として行なっていく必要があります。継続的に続けていけば、ボキャビルは運用語彙となって確実に身につき、その分、応用範囲も広がっていくと思います。

[返信]

緻密な分析、ありがとうございます。大変、勉強になりました。特に「大学入試や時事英語などに出てくるハイレベルな語彙を頭でわかっていても、用法やフォーマル・インフォーマルの度合い、使う状況における制約等が解っていないがために、全く使いこなせないか間違って使う」というくだりは、実際、そういう学生や社会人に多く接しており、身を以て体験しています。

後半の学習ガイドも学習者がみんなこういう現実に立脚した方法論に目覚めてくれればいいのですが、普通は、こういう話を聞いてもそうなんだで終わってしまいます。どうも語学というのは多くの日本人にとり4技能をバランスよく練習で会得するスキルというよりは、勤行的音読がけっこう流行っていることに見られるとおり、一心に「修行」を続ければ、いつのに日にか身につく芸事と認識されているようです。

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