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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年3月14日

なぜ I look forward to hear from you. はいけないのか?

よく、レターの締めくくりの決まり文句である、I look forward to hearing from you.(ご返事お待ち申しあげます)につき、これを I look forward to hear from you. というふうに、to +動詞の ing形ではなく、to + 不定詞で書くとなぜいけないのかと聞かれます。

誤用であるのは間違いないのですが、実際には、I look forward to hear from you. と書くネイティブがいるので余計混乱します。例えば、この英語学習関連の掲示板では、自分の会社(おそらくフランス企業)に英語のトレーナーとして応募してきたネイティブスピーカーがこういった間違いをしているという話まで載っています。この掲示板、おもしろいので読み進むと、ある時期のチェコでは信用できないのでネイティブには一切英文法の授業を任せないことになったなどとあります。結局、投稿者いわく、I look forward to hear from you. と書くからノンネイティブとは言えず、こと北米人に限って言えば、それは単に英語を知らないだけだという話だそうです。(どこかの国でもおおいにそういうことがまかりとおっていることでしょう)

なんであれ、なぜ誤用かとなると、だいたいが、ここでの to はto 不定詞の頭に来る to ではなくて前置詞なのだから、前置詞に続くのは名詞(句)か、それの代用品としての動詞の -ing 形であるというルールに照らして、hear ではなく、hearing にしなければならないという程度で終わっています。

文法書、例えば、Longman English Grammar のようなものを見ても、look forward to, object to, resort to などのフレーズでの to は前置詞なので、(普通は不定詞が続くところ)動詞の -ing 形が続くものだと、さらっと説明しているにとどまります。

この問題については、自分自身、それでおおいに納得しているので、Seth Lindstromberg の English Prepositions Explained (John Benjamins Publishing Company) での説明をよりどころにしています。Lindstromberg によると、前置詞の目的語が動詞の -ing 形である例を見ると、いずれも、一つの行為 (act) と言うよりは、一連の行為 (activities) ないしは一つの状況 (situation) だと言います。なるほど、例えば、He was fined for speeding. (彼はスピード違反で罰金を払わされた)という簡単な例を考えた場合、前置詞 for の目的語である speeding は、ギアを入れる、加速するといった単発的な行為 (act) というより、法定速度を超えた状態で走っていたという違反者自身が一瞬ながらも身をそこに置いていた一つの状況 (situation) です。

こうした視点で

I look forward to hearing from you.

をちょっと考えてみますと、まず文法的には、anticipate という一単語でも置き換えられる look forward to は、目的語を必要とする他動詞であり、したがって、

I + look forward to + SOMETHING

と見ることのできる一文です。そして、名詞(句)に代えて動詞を使うなら ing形が要求されるというルールが働くので、

I + look forward to + hearing from you

になるという理屈です。

この hearing from you というフレーズからは、「あなたからの連絡を受けるという状況」をイメージでき、当然、そういった状況に「身を置いてみる」こともできるというのが Lindstromberg の見方です。つまり、look forward to で示されている期待の内容は、act ではなく、a situation that one can be in the midst of ないしは being in the moment と表現できるようなものを ing形は表しているのです。

この点を補足して、Lindstromberg は、以下の二つのセンテンスを並べて、(a) では、being in the moment を観念できるが、(b) だと、そういったものを感じ取れないと論じています。

(a) I look forward to hitting the ball just one time. (一度でいいから球をとらえて打つのが楽しみだ)

(b) I hope to hit the ball just one time. (一度でいいから球をとらえて打ちたいものだ)

こうした視点で、前置詞 to が組み込まれており、したがって、動詞の -ing 形が続くとされている以下のケースを眺めてみると、なるほどねと納得できます。

√ He admitted to embezzling company funds. 彼は会社の金を横領していたことを認めた。 → 「会社の金を横領するという状況に身を置いていた」ことを自白した。

√ We are committed to (= have made a promise) offering quality products. 当社は、質のよい製品を提供することをお約束します。 → 「質のいい製品を提供するという状況に身を置くこと」を約束する

√ He confessed to telling a lie. うそをついていたことを自白した。 → 「うそをつくという状況に身を置いていたこと」を認めた。

√ Do you object to working overtime?  時間外労働をするのに異議ありますか? → 「時間外労働をするという状況に身を置くこと」に反対ですか?

√ I'm not used to driving in Tokyo.  東京での運転に慣れていない。 → 「東京で運転するという状況に身を置くこと」に慣れていない。

以上の例はいずれも to のあとを動詞の ing 形で受けると決まっているものばかりですが、こういった視点は、to の後にto 不定詞が来てもいいし、ing形で受けてもいい種類の動詞にも当てはまるように思えます。

例えば、以下の二つを比べてください。(a) は「その中に身を置ける状況」という感覚から、普段からそうなんだ、外出するよりは家にいるほうを一般的に好むという、general な situation が伝わってきます。これに対して (b) だと、具体的 (specific) で、一回的な act でしかないことがわかります。

(a) I prefer staying quietly at home.(うちで静かに過ごしている方が好きです)

(b) I prefer to stay at home. (家に留まる方を好みます=外出はやめておきます)

現に、Nigel Turton の ABC of Common Grammatical Errors では、hate, dread, like, love そして prefer などの場合、"when we are talking about an existing situation or something which happens repeatedly" は prefer + ING で、"when we are talking about an imaginary situation or a future event" は prefer + TO 不定詞 を使うと言っていますが、これなど、既存の状態や反復されている事柄であれば、「その中に身を置き」やすいけれど、仮定の状況や将来のこととなると、そうは行かないと言えそうです。

してみると、辞書などで to に続いて動詞の ing 形を使えという指示のある場合は、situation を語っているのであり、to 不定詞が続くなら to so something = act なんだという視点で整理すると、なるほどと納得がいくケースが多そうです。





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Comments

「prefer」の例では、ちょっと考えれば先生の意図が汲み取れますが、補足入れた方がいいかもしれません。

動詞とセットで覚えようとしても、本当に前置詞は難しいです。凄く勉強になりました。ありがとうございました。

[返信]

ちょっと考えてみます。ありがとうございます。

興味深く読ませていただきました。私としては納得行きませんでした。look forward to の toとprefer toのtoは語源的にみても用法の違うものです。ここで補足説明として、preferを提示することは逆に信憑性を欠くことになっているのではないでしょうか。

[返信]

書き方が不十分だったようで、look forward to のtoと prefer to のto をいっしょにしているつもりはありません。prefer -ing というときに使う ing 形は、look forward to -ing での -ing 形同様、その中身は、act というよりは、activities/situation であり、したがって、その中に身を置ける感じがしますねということを申しあげたかっただけです。

こちらを拝見して、やっと納得できる答えに出会えました。ありがとうございます。
「look forward to 動詞」で検索すると、ネイティブで使っている方もいらっしゃって、不思議に思っていました。

ちなみに、to が前置詞という事は、例えば、よくある
I look forward to seeing you.
という文章は
Seeing you is (my) lokking forward.
と置き換えられるのでしょうか??

[返信]

こんにちは。

I look forward to SOMETHING

という構成ですから、言い換えるとしたら、

SOMETHING is what I look forward to.

SOMETHING = seeing you

Seeing you is what I look forward to.

になるかと思います。もちろん、こんな変な言い方は実際にはしないわけですが。

になるかと思います。

私も、look forward to + ~ingが、なぜ~ingなのか気になっていましたが、be +p.p.+to+名詞(~ing)といった熟語は多く、そういうものだと納得していました。ところが、ある英文を読んだとき、このtoは、不定詞でなく前置詞なのだという考えが、合理的だと理解しました。
しかしながら、confess to + ~ing は、別の論点で気になっています。というのも、confessには、自動詞も他動詞もあり、confess+~ingで、「告白する、白状する」という使い方もあるからです。
to+~ingの使用における「being in the moment 」の感覚は、自動詞として使われている場合(自動詞である場合)に限って適用するものだと理解すればよいのでしょうか?
コメントいただければ幸いです。 

[返信]

考えたこともなかったので、うなってしまいます。ただ、I look forward to での look forward to は他動詞であるanticipate と置き換えることができるわけで、してみると、ことは自動詞、他動詞の別による使い分けというよりは、ing形がもたらすニュアンスと理解すべきようにも思えます。とすれば、being in the moment という感覚は何も自動詞の場合に限らないと言えるのではないでしょうか。

はじめて勉強させていただきました。
夫の転勤で在仏長いのに、外国語が苦手ということがいまだ抜け切らず、そうといって勉強もすることなく今まできてしまいました。娘の学校のことで本日どうしても英語で書かなくてはいけないレターがあり、娘に書かせてから私が文句をつけましたら、私の方が間違っていた。。。というありさま。これからはこちらのブログで勉強させていただきます。ありがとうございました。

[返信]

コメントありがとうがございます。Living Language の English for New Americans は移民向けの教材ですが、子供を学校に入れるときによく使う英語といった項目を設けています。問題意識をもって教材をながめると、ご自分のニーズとレベルにあったものを探すことができ、おもしろいのではないでしょうか。おとなの場合は、文法や単語より、決まった言い回しをおぼえてから、これは文法的にはどうなんだという順番で勉強した方がいいと思います。

やってしまっていました・・to hear from~と。
そして、toの後なのになぜ動詞の原型ではないの?
という英文に出会うことも多く、今回の記事は大変参考に
なりました。
ネイティブでも前置詞は一番最後に覚えると聞いたことが
あります。
前置詞を理解するにはより多くの英文にあたるしかないのでしょうか?

[返信]

agree to do something と agree to something なんか悩みますよね。でもよくよく観察すると、accept somethingという意味では、後者つまり前置詞としてのto +名詞または動名詞を使うというのがパターンであるのが見えてくる気がします。空間の位置関係を示す単純な前置詞とはひと味違う世界で、これまたおもしろい感じもあります。

今回の記事を読んで少し驚きました。と申しますのも刀祢雅彦氏著『前置詞がわかれば英語がわかる』を再読して、前置詞toについて同様の説明をされていたからです。前置詞についての疑問が解けました。

前置詞と冠詞についてもう一度掘り下げて理解しようと思ってた矢先 今回の記事を拝読できました。ありがとうございます。

因みに刀祢氏は先生に2005年9月1日付けの記事にたいしてコメントを寄せています。

[返信]

コメントありがとうございます。考えてみると、英語の前置詞は学習者にとってわかりにくい分野ですから、それにしぼって本を出された刀祢さんの眼力はたいしたものです。

非常に洞察力に富んだ内容で敬服しました。驚くべきはビジネスの実践知からの観点でこうした核心部分を突かれている点です。先生の注意力、洞察力には敬服致します。この種の記事は今後も楽しみに致しております。

[返信]

コメントありがとうございます。

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