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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年3月21日

前置詞を克服するには

前置詞は英語を勉強している人たちにとり鬼門です。

日本語に前置詞がないわけではありません。6時から9時までという意味で使う「自6時至9時」がそれですが、これはやはり例外で、基本的に日本語は「後置詞言語」です。多くの人が苦手意識を持つのも当然で、その分、理屈抜きで「習うより慣れろ」と強調されるゆえんです。

では前置詞を使う言語を話す人々は英語の前置詞を楽々とこなすかと言うと、これまた違います。例えば、スペイン語で「何々において、その中で」を表すのはすべて en la casa (家の中で)のように en ですが、英語だと、範囲の大きさないし抽象度の高さに応じて、at, on, in を使い分ける必要があります。加えて、アメリカ人が内線番号を言うときは、at 1234 と言うのに、イギリス人は on 1234 と言うわけで、英米間での違いもあります(もっとも、基本的にはそうは変わらないという調査がある上、今ではイギリス人も書類に記入することを fill out という具合に「アメリカ化」が進んでいるという事情もあります)。

さらに言うと、前置詞とは名詞と組み合わさって前置詞句という形で同一センテンス内の他の要素を修飾するものであり、まさに名詞の「前に」置かれるものを言い、wind up (会社などを解散する)での up のように、動詞の「後に」置かれる particle (不変詞)とは区別されるべきものです。ところが、実際には、そうはきれいに切り分けることができません。例えば、in addition to のように前置詞自体複数の単語から成るものが出てくると to だけが前置詞のようにも見えますし、その一方、put up with (我慢する)のように動詞+不変詞+前置詞などというとんでもない組み合わせまであります。

ですから、英語を母国語としない人々に英語を教えている専門家の間でも、前置詞は冠詞の次にやっかいな文法事項だとされています。そこで、今回は、こういった専門家が指摘する前置詞のむずかしさを通じて、その克服法を考えてみたいと思います。

まず Marianne Celce-Murcia と Diane Larsen-Freemanの二人が書いた The Grammar Book: An ESL/EFL Teachers Course という外国語としての英語教授法のロングセラーを見ると、前置詞でつまずく学習者の間違いを分類すると、以下の三種類に集約されるとしています。

第一に、My grandfather picked the name on me. (祖父が私の名前を選んでくれた=名付け親だ)のように、本来、on ではなく、for を使うべきなのに、それを間違ってしまうケースです。

第二は、必要な前置詞を落とすケースです。例えば、I served the Army until 1964.(1964年まで陸軍にいました)のように、served に続けて in を入れるべきなのにそれを落とすという具合です。

第三は、余計な前置詞を入れるケースです。I studied in Biology for three years. (私は生物学を3年、勉強しました)のように、本来 studied Biology でいいのに、余計な前置詞を入れてしまうのです。

これら第一から第三点までを見て思ったのは、結局、前置詞は、英語が母国語か否かに関係なく、反復練習で身につけるセンスの問題ということです。繰り返し練習することで、必要なものが欠けていると、あるいは余計なものがあると「あれっ、何か変だぞ」という感覚が働くようになるのであり、実際、そのレベルに達しないことには話になりません。千本ノックの世界です。と言うのも、1877 年に出ている子供向けの英文法の本、Higher Lessons in English を見ると、まさにこの三点に対応する形で、(全部で168課あるうちの)第98課は、Great care must be used in the choice of prepositions. という注意書きに続けて、43題の練習問題で間違っている前置詞句を訂正させるようになっています。

最初の3題を挙げておきます。

1. This book is different to that.
2. He stays to home.
3. They two quarreled among each other.

続く第99課は、Do not use prepositions needlessly. と「余計な前置詞を使うな」と注意した上で、以下のような練習問題を28題並べています。

1. I went there at about noon.
2. In what latitude Boston is in?
3. He came in for to have a talk.

そして同じ99課の後半は、Do not omit prepositions when they are needed. と「必要な前置詞を落とすな」と注意を喚起してから、以下のような練習問題を10題出しています。

1. There is no use going there.
2. He is worthy our help.
3. I was prevented going.

これをもとに学習者としての対策を考えますと、要するに反復練習で正しい組み合わせと前置詞の要不要を覚えるしかないということです。おそらく全部で500も知っていれば用が足りるでしょうから、Loretta S. Gray の Idiomatic English (Passport Books) 等の練習帳形式の参考書で間違えなくなるまで主なものを繰り返し練習することです。

あと、前置詞の要不要を判定する上でかなりのウェイトがあるのは、こと動詞と前置詞との組み合わせに関しては、その動詞が自動詞か他動詞かを意識して調べるよう心がけると、discuss about something のような基本的ミスを避けられるということです。(自動詞と他動詞の話に関してはこちらの記事をご覧ください)

一方、Richard Firsten と Patricia Killian が Troublesome English: A teaching grammar for ESOL instructors で提示する処方箋はもっとストレートで、第一に、up をやったら down もついでにという具合に対照的なコンビに注目しながらまとめていけという手法です(この人たちは前置詞と不変詞をひとまとめに扱っています)。こういったアプローチによる場合、お勧めしたいのは、Collins COBUILD Dictionary of Phrasal Verbs と別売りの Workbook です。特に秀逸なのは辞典のうしろのほうにある、不変詞 up や down の個別の説明です。正面から前置詞を扱っているものとしては、Collins COBUILD English Guides 中の Prepositions があったのですが、絶版となっており、惜しまれます。

第二に、Firsten たちは、前置詞に続けて動詞を使うなら ing 形を使えというルールを機械的に適用せよとしています。たしかに例外はありませんから、大賛成です。もちろん、前置詞の目的語としては、I look forward to your reply. というふうに名詞を持ってくることもできますが、動詞を持ってくるなら、I look forward to hearing from you. と、ing 形を使えということです(ちなみに I look forward to に関しては動詞で続ける方が一般的です)。

この点、I used to like spinach. だとか、They aren't able to fly. のように、to のあとに原形の動詞が来る場合もあるのだから、何でも ing 形というのは乱暴じゃないかと言えそうですが、こうした批判に対して、Firsten たちは、こういった場合の to は、助動詞に準ずるものの一部であり、純然たる前置詞 to とは違うのだから、前置詞に続ける動詞はすべて ing 形にすべしというルールを貫けると説いています。

なるほど、以下のように同じ意味を持つ助動詞で置き換えができるものは、最初から ing 形ではなく、すべて助動詞の場合と同じく動詞の原形で受けるのだと処理してしまえば、簡単です。

He is able to go = He can go
He is about to go = He will go
He is supposed to go = He should go
He is to go = He must go
He is going to go = He will go
He used to go = He would go
He has to go = He must go

以上をまとめると、前置詞をマスターするためには、第一に練習問題を通じて、何が必要とされる前置詞なのか、about なのか in なのかといった点をきちんとおさえておく一方、要らない前置詞を入れたり、逆に要る前置詞を落とさぬよう気をつけることです。100年以上前の文法書が、しかもネイティブスピーカー向けの文法書が同じことを言っているわけで、なにごとも基本はそうは変わりません。第二に、前置詞のあとに動詞を続けるときは迷わず ing 形を使うことです。この二つを守れば、前置詞に対する苦手意識がかなり解消されるのではないでしょうか。



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Comments

早速の返信ありがとうございます。

"do" was found as a prepostion or particle in 2 Phrasal Verbs: は次のサイトから見つけたものです。 http://www.usingenglish.com/reference/phrasal-verbs/search.php

先生のお考えをお知らせいただけたらありがたいです。

[返信]

機械的に仕分けている結果としてそうなっているのであって、doが前置詞であるとか不変詞であると言っているのではないと考えます。

前置詞について更に知識を深めたいと思っていろいろなサイトを見ています。
そんな折 "do" was found as a preposition or particle in 2 Phrasal Verbs:
1) I could really do with a cup of coffee.
2) There's no coffee, so we'll have to make do with tea.
を見つけました。

先生にお聞きしたいのですが"do" は本当に前置詞もしくは不変詞になれるものなのでしょうか?とても意外な感じがします。先生がおっしゃられるように前置詞はないがしろに出来ないものですね。

[返信]

わたしにも意外です。それより、"was found as a " という英語の方が気になります。不思議な英語です。

前置詞に関する記事、大変参考になりました。2005年9月1日、2008年3月14日付け記事とあわせ読むともっと理解が深まります。
Particle (不変詞)について、この記事を読んだため、次のことが解りました。

The plane took off an hour late. ('off' changes the meaning of the verb but is not linking words or expressing direction, location, time or possession, which it would if it were acting as a preposition. Hence many people prefer to call words like this particles in phrasal verbs.)

先生がおっしゃられるように前置詞(後置詞や不変詞もあるのですね)と冠詞は練習問題を積んで理解を深めなければならないんですね。 早速私自身 練習問題に取り組むことを始めました。きっかけを作っていただきありがとうございます。

[返信]

コメントありがとうございます。認知心理学の先生が著書で climb up の up を「前置詞」と言っていたので指摘したところ、「この種のもの」を何と呼ぶのかまだ定まっていないと、激越な反論を頂戴して閉口したことがあります。しかし、この up は、動詞に対して「後置」であり、また、「前置」されるべき名詞がないわけで、前置詞とは言えませんよね。不変詞、言い得て妙だとこの訳に感心します。なお訳の出所は「ロングマン英和辞典」です。

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