HOME英語ニュース・ビジネス英語
 
 


日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年4月10日

12,345ではなく12 345と書くべしという国際ルール

小数点の話でいろいろと教えてくださったみなさん、ありがとうございます。勉強になりました。自分の「既成概念」を是正することができ、よかったことです。

そこで改めて数字の表記法や言い方を調べていたら、(技術系の方々にとっては常識なのでしょうが)メートル条約に基づく国際度量衡総会(CGPM=Conférence Générale des Poids et Mesures) という専門団体が国際単位系というものを定めており、世界的にSIで通っていることを知りました。

そして今更ながら「へーそうだったのか」と感心したのが、実は数字の表記法につきあれこれときちんとしたルールが定められていたことです。例えば、小数点をはさんで、左に12345、右に67891という数字の場合、三桁ずつの区切りを含め、みなさんはどう表記されますか。

自分だったら、ものも考えずに

12,345.67891

と書くところです。

ところが、国際文書第8版 (2006) 国際単位系(SI)という名のルールブックでは、

第9回CGPM(1948,決議7)及び第22回CGPM(2003,決議10)において,桁の多い数を表す場合には,読みやすくするために,半角の空白(thin space)を用いて3桁毎のグループに分けてもよいことになった.3桁毎のグループの間に点「.」やカンマ「,」を挿入してはならない.

としています。

いうことは、小数点の左側に関して言えば

× 12,345.67891
○ 12 345.678 91

ということです。普段、「千万単位」とかいう、三桁ごとにカンマを打ってくれる電卓を重宝しているだけに、ちょっとしたカルチャーショックです。知らぬ間に時代に取り残されてしまった気持ちがします。

しかし、ここで改めて上の決議の原文であるResolution 7 of the 9th CGPM (1948)を読んでみると、2003年の決議は1948年の決議を再確認しているだけで、そこに何と書いてあるかと言うと、こうなっています。

Numbers may be divided in groups of three in order to facilitate reading; neither dots nor commas are ever inserted in the spaces between groups.(読みやすくするため、数字を三つごとに区切ることが認められる。グループどうしを区切る空間にはドットもカンマも一切入れない

1948年と言えば、自分が生まれる前の話です。知らぬところで厳然と国際ルールが通用していたわけです。ただ、上の文言からわかるとおり、三桁ずつ区切る場合にスペースを使えと強制しているわけではなく、「スペースで区切ってもいいよ。その場合、カンマやドットは抜きだよ」と言っている程度の話です。

しかし、任意的なものとは言え、その方面のひとたちはけっこうこだわっており、例えば、産業技術総合研究所という機関が出している国際単位系(SI)は世界共通のルールです」というパンフレットなどは、冒頭に、

メートルは、1秒の 299 792 458 分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである。

という記述があり、299,792,458分の1と書く人々と一線を画しています。

これがアメリカの国立標準技術研究所 (NIST = National Institute of Standards and Technology) となると、「カンマではなくスペースで区切る」というルールを明確に打ち出しており、SI Unit rules and style conventions Check List for Reviewing Manuscriptsでは、Digit spacing という項では、こう言っています。

The digits of numerical values having more than four digits on either side of the decimal marker are separated into groups of three using a thin, fixed space counting from both the left and right of the decimal marker. Commas are not used to separate digits into groups of three. (小数点の左であるか右であるかを問わず4桁を超える数字が並ぶ数値は、小数点を起点に3つ一組にしては半角スペースを入れることで区分けされる。3つ一組にする際、カンマは使われない)

proper: (適切な表記例)
 
15 739.012 53

improper: (不適切な表記例)

15739.01253
15,739.012 53

ご覧のとおり、...may be separated into groups of three... といった言い方ではなく、...are separated into groups of three...という言い方であり、当然の原理であるかのような姿勢で臨んでいます。


ところで、妙に細かい話で「うーむ」と思ったのが、

小数点の前後にある4桁の数字を表す場合には,1桁だけ分けるための空白を挿入しないのが普通である.

例: 3279.1683又は3 279.168 3

今までだったら、3,279.1683 と書いていたわけですが、カンマを使うなという、このSIに従うと、ひとまず 3 279.168 3 になるものの、ぽつんと一桁だけ切り離されるのもなんだし、3279.1683 でもいいよということなのでしょう。

一方、ちょっとわからないのが、このルールブックにいい例と悪いとして、次のようなものが載っているのですが、いい例の方の最後のカンマが意味不明で不気味です。ただの誤植なのでしょうか。どなたかおわかりの方がいらっしゃったら是非教えてください。

例: 43 279.168 29,

不適例: 43,279.168,29

ところで、このルールブックを斜め読みして、もう一つ発見がありました。われわれが

0.01

と書くものをフランス人やドイツ人は英語の文書の場合でも、

0,01

と小数点の所に自分たちの流儀を押し通してカンマを打つので、昔から違和感があったのですが、国際度量衡委員会の結論は「どちらでもいい」というところに落ち着いていました。つまり、

第22回CGPM(2003,決議10)において,小数点は点「.」 又はカンマ「,」の何れかで表することと決められた.どちらを選ぶかは関連する文章やその言語の習慣によるものとする.

というのが現行ルールであり、当面、われわれは外国人とやりとりする文書に出てくる数字につき、

123 45,678 91 と 123 45.678 91

の両方を目にするということです。どうせなら、スイス人をはじめ一部ヨーロッパ人がやるまぎらわしい

1'234'567.89

なんかやめさせてほしいものです。まあ、文化の問題なのでそうも言えませんが、どうも落ち着きません。落ち着かないという点では、実害はないものの、

1,234,567·89

と、小数点が日本語のナカグロのように宙に浮いているのも、どうもなじめません。あれはどういう流儀というのか、どういう文化的背景があるのだろうかと知りたくなります。

そうそう、もう一つ、このルールブックで歓迎すべき改善点がありました。よくアメリカ人って、

 0.05

 .05

というふうに小数点の前のゼロを省略しますよね。例えば、Merriam Webster's Guide to Punctuation and Style を見ると、a .22 gauge rifle (22口径のライフル)という例を載せているぐらいですが、これも、上のルールブックはこう定めています。

数字の値が+1と–1との間にある場合,小数点の前には常に0(ゼロ)を置くものとする

例: 0.234,
不適例: .234

相手の文書上、小数点の前のゼロがないのに、いちいち付けて返すのも何だかいやみだし、相手に合わせてこちらもゼロを省いて書いたりしていますが、何か中途半端な感じでいやなものです。

ただ、おかしなもので、a .22 gauge rifle のたぐいを見慣れていると、a 0.22 gauge rifle だと何か特殊な精密機械みたいで、「鉄砲らしさ」が失われてしまう感じもあります。

表記法というのはなかなか人間心理と深く結びついているようで、あなどれません。小数点をカンマにするのか、ドットにするのかで長年もめているのもわかろうというものです。



__________________________________________________





hand_right.gif人気ブログランキングが励みになっていますので、一票、どうぞよろしくお願いします。人気blogランキングに一票

Trackbacks

Trackback URL: 

Comments

以前の職場で、ドイツのある顧客から来る注文書に$1.234,56のような表記があり、はじめて見たときは「せんにひゃく…」なのか「いちてんにさんドル…」なのか分らず戸惑ったことがあります。
しかしドイツの大半の、およびスイス、デンマーク、フランス等々の顧客からは日本と同様に$1,234.56と表記されていました。これらの国を、「EU」とひとくくりにして見てはいけないなぁ、と当時は思いました。

[返信]

たしかにビジネス関係はみんな標準的な言い方、書き方を意識しますね。ひと昔前は、billionと言ったらアメリカでは10億、イギリスで1兆だったものが今は世界的にアメリカ式になっているわけで、不思議なものです。

小数点を「, 」で書く人がいて、どうしてかなあと思っていたのですが、そうですか、フランス式ですか。納得です。

[返信]

でも、日本人でもコロンとセミコロンの見分けがつかない人もいますからね・・・

Name欄に入力したつもりが反映されていなかったようで、失礼いたしました。翻訳者のはしくれです。日本語の「トン」がtonで通るんですね。すっきりしました。ありがとうございます。

小数点第X位の表記に関する記述を拝読して、仕事を始めたばかりのころに、この表現で冷や汗書いたことを思い出しました。日常表現の範疇のはずなのに、私のようなドメドメで英語を身につけた人間には盲点となっている表現って結構あるんですよね。

これからも鋭い記事やけんてーごっこをよろしくお願い致します(けんてーごっこでつまづいた表現はエクセルに落して、活用させていただいています)

[返信]

同感、同感。法律事務所で小数点がやたら出てくる文書に何度も出会い、日本語での標準的な言い方はなにかと調べたりし、さらにそれを英語とすりあわせる等苦労したものです。

私も初めて知りました。技術系では、こういった表記がすでにスタンダードなのでしょうか?このブログを読んでいなかったら、今後そういった表記を見たときに「誤植??」と思ったに違いありません。

数字関係で、便乗で質問させていただきたいのですが、「トン」の英語表記はtons なのでしょうか、tonnesなのでしょうか?私はこれまで、日本企業の報告書等ではmetric tonsの意味でtonnesを使っていたのですが(印刷物だと、日本語版と同じレイアウトに流し込むため、できるだけ字数を節約したいので)、参考にクライアントさんの同業他社の報告書等をみるとtons と示しているところがかなりあります。本文の訳語も変なところならまだしも、英訳がきれいと思えおそらくプルーフリードをしっかりいれているだろうと思われるものでも、tonsを使っているののが多いのです。tonsでもmetric tonsの意味として使えるのでしょうか?仮に表記ミスだとしたら、単位が単位だけに、実体とかなりかけ離れた報告をしていることになってしまうと思ったのですが。。。前から結構気になっていたことなので、教えていただければ幸いです。よろしくお願い致します。

[返信]

技術系でこの表記がスタンダードなのかはわかりかねます。ただウィキペディアを見ると、「日本では、1991年に日本工業規格 (JIS) が完全に国際単位系準拠となり、JIS Z 8203(国際単位系(SI)及びその使い方)に規定されている」とのことです。

Oxford Business English Dictionary 、Longman Business English Dictionary のいずれを見ても、tonsとtonneは別物です。イギリスだと2240 pounds (=1016 kg)で、アメリカ式では 2000 pounds (=907.2 kg) で、メートル法上のトンとは重さ自体違います(これって、long ton vs short ton の話ですよね)。また、複数形はtonsまたはton。一方、メートル法による tonneは当然 1,000 kg のことで、複数形は、tonnes またはtonne。

tonsでもmetric tons という意味で使えるのかというお尋ねですが、Webster's Dictionary of American Englishでtonを引くと語義の2で METRIC TONとありますから、それで通るようです。

コメントフォーム
Remember personal info?