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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年9月29日

「ごね得」の英語を考える

中山国土交通大臣の辞任劇の一因となった「ごね得」。成田空港周辺の地主の一部が(必ずしもお金のためでないものの)今なお抵抗していることを指して言ったわけですが、自分だったら、

They're just making noise to get more compensation.(補償の積み増しを期して騒いでいる)

程度で済ますと思いますが、この一件を報じている英字新聞はどうだろうかとちょっとチェックしてみました。

まず毎日デイリーの9月28日付の記事(オンライン版)はこうです。

...his assertion that the lack of progress on plans to expand Narita Airport could be blamed on local residents who held out against expansion for personal gain.

単に「個人的な欲得のために抵抗している」という程度のニュアンスで、あまり「ごね得」にあるネガティブな感じが出ていません。

続いてデイリーヨミウリの9月29日付け論説の英訳は、こうです。

...his description of those who have engaged in years of struggle against the expansion of Narita Airport as "squeaky wheels."

抵抗している地主たちを指して、squeaky wheels と形容しています。「キーキーと、きしむ音をさせている車輪」です。

同じく、共同電も

He had called them "more or less squeaky wheels...

というふうに、squeaky wheels を使っています。

この squeaky wheels 、見てすぐ、ああ、It's the squeaky wheel that gets the grease (or oil). (キーキーと音を立てている車輪だけが油を差してもらえる=黙っていると損をする、言ったモン勝ち)のことかとわかる必要がある、allusion 、つまり「ほのめかし」「引喩」です。

こういった言い回し自体は、hackneyed phrase (使い古された決まり文句)である一方、何だか妙にネイティブ志向で、日本人読者も多い新聞には向いてないような気がします。"making noise" でいいじゃないと思ったことでした。

実は、この "make noise" という言い方、思い出があります。大昔、イギリスの投資銀行でちょっと働いていた頃、採用されて支店長に挨拶に行ったところ、部屋を出るところで、何か言いたいことがあったら、"make some noise" と言われて、思わず笑ってしまいました。なるほど外資では黙っていると損なんだ、向こうがわかってくれる、察してくれるなどと期待してはいけないんだと再認識させられたことです。

そして、実際、外資では黙っていると損なんだということを改めて痛感したのがその後働いていた別の会社である部門がリストラされたときで、同じ日本人社員でも、君の退職金はこれだけと提示されてそれで満足というグループがある一方で、自分はこれだけ会社に貢献してきたんだからと資料をあれこれ並べて、まさに「ごねる」人々がおり、結局、会社も早くけりをつけたいものですから、その種の「ごね得」がまかりとおっていました。

これを権利と言うかは別として、英語の世界では、いちいち自分の言い分は口に出して言わないとコミュニケーションが成立しない例だとも言えます。

追記:この記事を書いたあと、ふと、「ごね得 英語」で検索してみたら、そのものずばりで、デイリーヨミウリ記者のコレって英語で? 「ごね得」という記事がありました。それによると、「この表現にぴったりなのが grease for the squeaking wheel」。ところが、ネットでこのまま検索するとわずか12件。ちょっと考えてしまいます。また、「実際は a case of を伴って次のように使います。 The president gave complaining employees a slight raise in salary. It was probably just a case of grease for the squeaking wheel.(社長はいつも不平を言っている社員の給料を少し上げてやったが、ああいうのをごね得と言うんだろうな)」とあったので、どの程度使われているものかと、"a case of grease for the squeaking wheel" で検索すると、わずか2件で、両方ともこのデイリヨミウリの方の記事のこと。なんだかなあです。ちなみに私自身は、元ネタの It's the squeaky wheel...は知っていますが、"grease for the squeaking wheel" には初めてお目にかかりました。



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