2008年10月31日
Profit vs Gain
英和辞典で "gain" を引くと語義に「利益」が入っています。ある辞典などはご丁寧に a pre-tax gain of $20 million (2,000万ドルの税引前利益)という用例まで示しています。となると、企業の決算報告で見聞きする earnings, income, profit(s) あるいは sales, revenue とどう違うのだろうと誰しも思うことでしょう。
この点、私の理解としては、企業の損益をはじき出す際の第一行に当たる売上高を言うためには revenue または sales が使われ(詳しくは売上高は英語で何と言うのかをご覧ください)、また、最終行にあたる「利益」という意味では、もっぱらearnings, income, profit(s) が使われ(詳しくは利益を表す三つの言い方をご覧ください)、したがって、gain の出番はありません。
では、gain はそもそもどういう場面で出てくるかと言うと、実質はたしかに利益ですが、収入から支出を引いて求める「利益」として使うのではなく、何かを売ったときに帳簿上の価格を上回る価格で売れたおかげで入ってくる「差益」という意味合いで使われています。
このことを Barron's Dictionary of Accounting Terms の邦訳である英文会計用語辞典(清文社)は、こう説明しています。
資産の売買や交換で得られる簿価以上の現金や資産の評価額。例えば、簿価より高い価格で固定資産を売却するときに生ずる。
そして、これが profit などとの違いを説明する最大のポイントだと思いますが、
利得は、偶発的で頻出しない営業取引に関わるものである。
と、このように営業取引の収支尻である earnings, income, profit(s) との違いを説明しています。
してみると、gain の訳としては、「利益」はなるべく避けて「利得」「差益」などと訳した方が安全だと言えそうです。
実際の使い方を見ると、gain が入っている言葉としては、まず capital gains という言葉があります。例えば、昔、10億で買った工場の敷地が100億で売れれば、capital assets(資本的資産)からgainがあったということで、capital gainsと呼ばれますが、これなどは「資産売却益」と言うのが普通だと思います。
また、長期保有株式を高値で売ったような場合は、「値上がり益」とも言えます。
特に gain が普通の損益計算と違うのだと感じるのは gain on disposal つまり「処分による利得=売却益」という定型的な言い方があることです。例えば、「当社は土地売却益としていくらいくらを手にした」と言いたいような場合など、よく、The Company recorded a gain on disposal of land in the amount of... という言い方をよく目にします。
一方、海外子会社のドル建ての利益を円が安い時に円換算すると「為替差益」が出ますが、これなどは、 translation gains です。
要するに、gain の訳として「利益」というのはどうもなじまない感じがあります。自分では、本業からの「儲け」は earnings, income, profit(s) であり、本業以外からの「臨時収入」ないし「利得」は gain なのだと理解しています。
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Comments
日向さんこんにちは。
ご指摘の通りですね。
当方の会社のPL(Profit & Loss Report)を覗いてみると、このGainはOther Income & Expenses(日本の収支表でいう営業外収益費用)の欄にあります。
PL項目を順番に記載すると
●Revenue
●Production Expenses
●Gross Profit
●Selling & Administrative
●Operating Profit
●Other Income & Expenses<------(営業外収益費用)
Misc. Income
Interest earned
Purchase Discount Taken
Gain/(Loss) on Exchange Rate
Gain/(Loss) Disp. Of Fixed Asset
●Net Income before Tax
●Income Tax Expense
●Net Income
さらには、在庫評価額の増減の時にも、Gain/Shrinkで使います。
Gainというのは英語の感覚からすると、“ある基準点からの増“のイメージの時に使いますね。Exchange Rateで言えば、XX円/$を基点に円安になれば、当方の業態(日本からの輸入部品がある業態)では、その期に差益(Gain )が出るという事になります。
英語の、一般のGainの使われ方もそんな感じです。アメリカンフットボールでは1プレー毎に陣地を進めるのですが、この時も進めばその攻撃時の基点から5Yard Gainという言い方をします。体重の増の時もそうですね。
[返信]
わかりやすいフォロー、ありがとうございます。きっと読者の方々も喜んでくださることでしょう。
最後のアメフトのくだりを読んで、株式市場での騰落銘柄を gainers, losers と呼ぶのを思い出しました。これなんか、同義語のadvance, decline をも考えると、おっしゃるとおり(前日引値という)基準点に比べてプラスという感じが明確に出ていますね。
- いちろう
- 2008年11月 1日 06:41
素人の感覚ですが、gainと聞くと「自ら取りに行くもの」というように感じます。incomeは「自然に入ってくるもの」、profitは「引き算した残り」、ですかね。gainは能動的で、profitは天から受け取るような、incomeは地から湧いてくるような受動性を感じます。earningsはgainに近い気がしますがよくわかりません。
もちろんcapital gainやgain on disposalは(処分価格ー取得価格)で引き算の結果なのですが、敢えて処分するという決断の単時性が言葉から感じられるのがgainの違いなような気がします。対してprofitは一定期間の経済活動のbottom lineで、継続的な時間感覚が内包されている引き算なような。
なのでgainは「敢えて手を伸ばす収入」、残りは「結果的な儲け」みたいなことでしょうか?(繰り返しになりますがearningsについてはわかりません。)
勘違いでしたらどうもすみません。
[返信]
興味深い分析、ありがとうございます。ただ、やはり無味乾燥な実務用語なので、使っている人間はこういったむずかしいことを全然考えずに漫然と使っているのではないでしょうか。
- 蜂の巣
- 2008年11月 1日 01:39
あ・・
下から8行目の「と血」は「土地」では・・。
[返信]
ありがとうございます。直しておきます。
- うし
- 2008年10月31日 13:23

日高さん、こんにちは。調べものをしているとよくこのブログにたどり着くのですが、今までなかなかゆっくり読むことができませんでした。みなさんのコメントも含めて本当に勉強になります。
gainについて見つけた例を紹介させてください。
Molgan Stanleyの損益計算書で
Net gain from discontinued operations
(非継続事業の税引前利益)
とあり、incomeとは明確に使い分けられていました。
これはいちろうさんのおっしゃる「基準時」とは別の例になるのかもしれませんが、やはり「継続を前提としない利益」だから、ということなんでしょうね。
[返信]
有益情報ありがとうございます。