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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2008年10月 7日

(1)英会話用モジュール

前回の記事で取り上げた「モジュール」を思いつくまま、いくつか取り上げ、その具体的な使い方を見ていきます。別段、ビジネス英語に特有ということはなく、普通の会話でいくらでも出てくるものばかりです。

こういったできあいのフレーズをそのまま覚えていくアプローチが効率的であることについては以前にも書きましたが、今回は、その中でも、発言の頭に振っていく独特のジャンルに焦点を合わせます。英語使いたちの会話を聞いていると、こういったものを要所要所で振り、いわば会話のテンポを創り出していることがわかります。その意味で「英語らしい会話」を進める上できわめて大事な小道具だと感じています。

ちなみに前回ご紹介した白井恭弘著『外国語学習の科学』(岩波新書)でも、「大人の学習者がネイティブのように話せるようになるには、ルールを覚えてそれを適用するよりも、膨大の数のフレーズを覚えて使いこなすことがより重要なようなのです<中略>言語の本質とも関わるのですが、我々の話すことのかなりの部分が決まり文句からなっている、という現実もあり」と説いていますので、一つのアプローチとして間違いがなく、また、効率的であるのは確かです。

なお、いっぺんにわーっと取り上げると読む方も大変でしょうから、7個ずつにしました。なぜ7個かと言うと、プリンストン大のジョージ・ミラーの研究により、人間の短期記憶は一度に7プラスマイナス2程度のかたまりしか処理できないというのが定説だからです。

▶ Be that as it may...

Be that as it may, I still think... まあ、それはそうかも知れないけれど、私はやはり・・・だと

「それゃそうかも知れませんけどね」という感じで、相手が言っていることをいったん受け止めながら、なおも自分の主張を続けるときの道具です。「それはそうかも知れないけれど」という言い方にに表れているとおり、相手の主張の是非は「ひとまず置いといて」という感じで、敢えてその是非には触れないスタンスが表れています。ただ、subjunctive を使った、ちょっと凝った言い方なので、あまり英語ができない人が使うと何だか取ってつけたような違和感を醸し出すでしょうから、ひとまず相手が言ったときにわかればいいのかなと思います。

もし、積極的に相手の言うことを受入れた上で、なおかつ自分の主張を足すなら、

I take your point, but I still think...

とするのが一般です。

▶ Let me put it this way...

Let me put it this way, it's all very well that X but don't we have to have another look at the issue of Y? じゃあ、こういうふうに説明させてください。なるほどXと言えるかも知れませんが、Yという問題をもう一度見直してもいいんじゃないでしょうか?

どうも相手がわかってくれている様子がないので、もう一度言い換えたいときに、「それではこういうバージョンでの説明はいかが?」と頭に振っておくモジュールです。

▶ I would have thought...

I would have thought the population of X is about half a million. Xの人口は約50万だとばかり思っていました。

丁寧に反対するときのツールで、こういうことを言う人はたいていの場合、自分の方が事実としては正しいのはわかっているけれど、敢えて論争を挑むような話でもないしという感覚でいるものです。

▶ I don't know about you but...

I don't know about you, but I always drink my Vodka ice-cold and straight up. みなさんはどうしているか知りませんけど、私はウォッカを飲む時はいつも良く冷やしてあるのをストレートで飲んでいます。

ここで言う I don't know about you は、「あなたはどう思っているか知らないんで、この際、教えて欲しいんだけれど」と一種の間接的な問いかけであるのが普通です。ですから、こういった場面では、たいてい相手も

Oh, I never drink Vodka. For some reason, it doesn't agree with me. I'm a Bourbon drinker. いや、ウォッカは絶対飲みません。どういうものか、合わないんですよ。私はバーボンですね。

といった感じで相手に合わせて自分の流儀や考えを説明し始めるものです。

ちなみに for some reason というのも、けっこう使えるモジュールです。

▶ Like I say...

Like I say, this may not be the best but it just works fine. そりゃさっきから言っているとおり、この方法はベストではないかも知れませんけどね、ともかくこれでうまく行くんです。

何かを繰り返し言うときに「さっきから言っているように」という感じで付け足すモジュールです。なるほど文法から言えば、過去形を使ってしかるべき場面なのでしょうが、Like I said ではなく、Like I say と現在形で通すところがポイントです。

これのバリエーションは、けっこうあり、例えば、there again というのをよく聞きます。意味は、「繰り返しになりますけれどね」とか「またまた同じ話ですが」と、同様の感じのものですから、上の例文をちょっと変えて、こうも言えます。

There again, I'm not saying this is the best solution, but it just works fine. さっきから申しあげているとおり、これがベストの解決策だというのではありません。ただ、ひとまず十分用を果たしてくれるんです。

これをひとひねりしたものに、Ah, here we go again というのがありますから、こう言っても同じです。

Ah, here we go again. I'm not saying this is the best solution, but it just works fine.

ただ、ここまで来ると、いかにもネイティブのものまねっぽくなるので、自分では使う気になれません。このあたりが悩むところで、ツールとしての英語もうっかりあまり普通でないツールを借りたりすると、ガイジンが和服を着ているようなチグハグな感じを(少なくとも私は)受けてしまいます。

▶ On a different subject/On another subject...

On a different subject, whatever happened to all those bulky CRT displays? I just wonder. 話は違うんだけれど、あのでっかいCRTディスプレーはみんなどうなっちゃったんでしょうね。何だか不思議で。

会話の中で、ふと思いついたり、思い出した話題を振るのに便利なモジュールです。メールでも使えます。「まるで」違う話なんだけれど、と強めて言う時は、前回の記事につきfavouriteさんがコメントで触れてらっしゃるとおり、totally を使ったり、あるいは entirely を入れて強めた上、subject(話題)に代えて、note(感じ、調子、雰囲気)を使って、こんなふうにも言えます。

On an entirely/totally different note, whatever happened to all those bulky CRT displays?

ちなみに、この note は、よく、positive, negative, cheerful などと組み合わさって、仕切り役が集まっている人たちにこんな感じで呼びかけるためにも使うのをよく見ます。

Now, I'd like to end this discussion with a more cheerful note. I've just had word from our attorneys and it seems that we're about to receive FDA approval for our diet food. それでは、この会議をもっと明るい感じの話題でしめくくりたいと思います。当社の弁護士から連絡を受けたのですが、もうじきうちのダイエットフードに対するFDA(連邦食品医薬品局)の認可がおりるとのことです。

▶ The question is...

The question is, Is the financial crisis really over?  問題はですよ、果たしてこの金融危機は峠を越しているのかという点です。

日本語でも、「問題なのは・・・」と頭に振ってから、話を続けますが、あれとまるで同じです。上の例では The question is に続けて疑問文を入れていますが、how や whether あるいは when, where といったたぐいの単語で受けて使うパターンもポピュラーです。こんな感じです。

The question is how, not whether, we withdraw from the market. 問題は、市場から撤退すべきか否かではなく、どうやって撤退するかです。

ここでも割と自由に副詞を入れることができ、こんな形で the question is を「変形」できます。

The big/obvious/most critical question is, is this meeting really necessary? 大/明々白々たる/もっとも大事な問題は、果たしてこの会議の必要性があるかという点です。



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Comments

日向さんこんにちは。

本ブログを、当方のブログに引用させていただきました。

英語圏で生活はしていますが、日本が(英語を話せない時代が)長かったためか、どうしても日本語のモジュール(フレーズ)が先に浮かんできます。

それを英語でどう言うか?に挑んだ大作(?)です。

「検討させていただきます」、「どっちゃでもいいよ」、「わっかる、わっかる」、「それに、だ!」等のオヤジ的フレーズを英語で言うと?を英語初学者のために取り上げました。

もし引用不可であればご連絡ください。

[返信]

引用不可どころか、歓迎しますし、感謝しています。

こんにちは。英語圏で生活していると、普段気にも止めていないフレーズたちですが、本当にこれらが無いと、会話がスムーズに流れない表現ばかり。

Guess whatは今でもUSではティーンズに限らずカジュアルな場面でよく聞きます。仲間内でうわさやスクープを切り出す場面や、自分に起きた出来事、共通の知人に思いがけず出っくわしたことを話したいときなど。少なくとも話し手本人がちょっと興奮気味とか得意げに使っています。

On that positive note~ を一番耳にするのは私の場合は会議です。だれかの前向き発言の直後に、司会者が、ではその前向きさを持って会議を終了しましょう、と切り出しますね。

Ah, here we go again.... 実りの少ない会議で議論がループし始めると必ず誰かがこれを言ってます(苦笑)
毎週会議で同席する米人スタッフの十八番は Allow me to interject my thoghts ... Let me see.... My take on this xx is..  I might say.... などなど。

話題を変えたいとき I hate to change the subject, but...をよく耳にします。loveやhateをやたら使うのはUSだけかもしれませんが、本当に花が咲いている話の最中なら、By the wayと言って話題をかえるよりは少し気を使っている印象でしょうか。

[返信]

浦島さん、こんにちは。役立ち情報、ありがとうございます。使われる背景までわかり、いいですね。さすがです。それにしても英語はすべてを言葉として外に出す文化が根っこにあるので、本当ににぎやかですね。SorkinのThe West Wing Script Book をぱらぱらと見ているのですが、達人は実に良くこういう会話の特色を捉えており、だからこそ、自然で、気のきいた会話を再構成できるんだなと改めて感心しています。

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