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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年3月15日

弟妹ブランド、親会社・子会社、祖父条項

今回はビジネス英語に登場する、親兄弟、そして祖父の話です。

3月12日付朝日新聞朝刊の経済面に、「『妹ブランド』不況で大人気」というコラム記事が載っていました。小見出しに「本家より安く気軽、通販も」とあり、「衣料品や雑貨で、「本家」に比べ価格を抑えた「妹ブランド」「弟ブランド」が不況のなか、勢いを増しているというリードが続きます。

読みながら、ああ、sister brand ね、と思ったのですが、次に、「弟ブランド」のところで、英語じゃ brother brand とは言わないよなと気づきました。

ビジネス英語では、親兄弟になぞらえた言い方がけっこうありますが、それが日本語になるとき、必ずしも英語そのままではない反面、日本語にも対応していないことがあります。

例えば、上の「妹ブランド」には sister brand が対応しているものの、「弟ブランド」に対応する brother brand というのは私自身は聞いたことがありません。

同様に、日本語では「兄弟会社」という言い方はしますが、英語では、姉妹会社とでも言うのか、sister company はポピュラーでも、brother company というのは滅多にお目にかかりません。実際、Longman Business English Dictionary や Oxford Business English Dictionaryを見ると、sister companyは、「どういつの親会社を持つグループ企業」といった語義解説ともども、独立した項目として取り上げられているのに、brother company という項目は出てきません。

どうもビジネス英語の世界では、関連のある企業をひとまとめにして呼ぶ場合、女性、特に姉妹として扱う「クセ」があるようで、例えば、1970年代のなかばぐらいまで世界の原油市場をとりしきっていたいモービル、シェルなどの7大石油会社は、Seven Sisters と呼ばれていました。不思議です。なぜ、Seven Brothers じゃいけないのだろうと。

一方、親会社、子会社という言い方も、日本語と英語を比較すると、面白いことに気づきます。株を持っており、経営を支配している親会社は英語でもそのまま parent company ですが、傘下にある子会社は、決して child company ではなく、subsidiary または subsidiary company です。

また、日本語では、子会社のそのまた子会社を「孫会社」と言ったりもしますが、これも英語では、grand-child company などとは言いません。昔、どこかの大企業の英文資料で、何やらもっともらしい硬い英語で書かれた資料なのに、突然、XYZ's grandchild company と出てきて仰天しましたが、これは一般的な言い方ではないというのがわたしの理解です。じゃあ、どう言うんだとなると、くどくなるけれど、"XYZ's subsidiary of a subsidiary" と書くか、"XYZ's second-generation subsidiary" でしょう。ちょっと凝った言い方だけれど、a subsidiary twice removed という表現も見たことがあります。そう言えば,何かの訴訟の書類で、"a four-time removed subsidiary of XYZ" とあり、なんのこっちゃと思いながら図を書いたおぼえもあります。

幸い、自分では訳す羽目になったことはありませんが、「親会社のそのまた親会社」を英語で言うのもひと苦労しそうです。ひとまず "XYZ is the parent company of our parent company" と言えるでしょうが、正式の書類の上、あるいは話し言葉でも、改まった席では、"XYZ is our twice-removed parent company" の方が座りがよさそうです。

ところで、この親会社の親会社、つまり人になぞらえて言えば、 grandparent company になるのでしょうが、grandmother company, grandfather company ともども見聞きしたことがありません。じゃあ、grandなんとかはビジネス英語で使わないかとなると、grandfather clause という有名なテクニカルタームがあります。

直訳すれば「祖父条項」で、現に、有斐閣の「英米法辞典」や日経文庫の「ビジネス法律英語辞典」ではそうなっており、後者の語義解説は、「ある活動を規制する法律を導入した場合、それ以前からその活動に従事している者に対し規制を免除する規定」とあります。例えば、コンビニの24時間営業を規制する条例ができたとして、「ただし、平成21年1月1日現在の既存店舗についてはこの限りでない」という条項が置かれたとすれば、これが「祖父条項」に当たります。

個人的には「祖父条項」はないよな、悲惨だと感じます。せめて「グランドファーザー条項」か、意訳して「既得権者保護条項」ぐらいにして欲しいものです。

こう見てくると、親だの兄弟だの、果てはおじいさんまで登場するビジネス英語の世界、ほのぼのしているようでもある一方、気軽に「こんな感じなんじゃない」と訳したりすると大恥をかきそうで、こわくもあります。

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Comments

孫会社
second-tier subsidiaries
という表現をnativeの翻訳者の方が使われていました。
ご参考までに

[返信]

ありがとうございます。

こんにちは。

そうですね...。言われてみれば、 sister だったり daughter だったりですね、たしかに。

最近の日本のファッション雑誌やいわゆる「モノ(物)」雑誌では「ディフュージョンブランド」というカタカナが盛んに使われていて、なぜか「シスターブランド」という語を目にしません。

中学校で習う sister より、diffusion のほうがなんとなくカッコ良いからでしょうか。

カタカナ語は原義から離れていくし変化するしで、本当にやっかいだと思います。

[返信]

「かっこいい」「専門用語っぽい」というのが一つの鍵かも知れませんね。diffusion brandよりは、普通は、その方面の人たちもたしか、sub brandって呼んでいましたし。わからんものです。

ちょっと気になってドイツ語を調べてみると
英語のCompanyはGesellschaftで女性名詞
英語のbrandはMarkeで女性名詞
でした。
こういったのも関係ありませんか?

[返信]

わざわざ調べてくださって、ありがとうございます。関係があるかまではにわかに判断しにくいものの、興味深いことです。

ご参考になるかは分かりませんが、昔大学で言語学をかじった折に、この「sister」という概念が出てきたのを思い出しました。

例えばHe put the pen on the tableは、the penというかたまりとon the tableというかたまりが同等のウェイトでもってputという動詞と結びついている…従って既存の英文法でこの文を「第3文型」とし、on the tableをオマケの要素(副詞)と捉えるのは認知言語的には間違いであり、put A+BのA、Bはお互いにsisiterである、みたいな話です。

このバックグラウンドがあったおかげか、意外にもsisiter companyという表現はすんなりと自分の頭に馴染むものであり、具体的な「姉妹」という意味と同様、「系列」みたいな抽象概念がsisiterからは想起されます。

考えてみれば外交関係の文脈でHer company...というように言ったりもしますし、本を読んでいてNature(自然)の代名詞としてSheを使っていたケースも見たことがあります。

[返信]

ディープなコメント、ありがとうございます。sister、感覚的にご説明の理屈でよくわかります。

考えてみると、擬人化する際、なぜか船は女性ですが、あれも母なる大地と連続している大洋も女性で、その「系列」だからなのかなと考えてしまいます。

脱線しますが、男性が母国のために闘う場面で所属する国を指すときはだいたい fatherlandなのに、そうでないときは、motherlandという区別は何だろうと考えてしまいsます。

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