2009年4月 9日
credentialsという単語
大学の授業の一つに Business Vocabulary 101 (ビジネス英単語入門)とでも言うべきものがあります。ビジネスの基本単語の使い方をマスターしようというもので、教科書として「仕事の英語 この単語はこう使う:仕事で使うキーワードとコロケーション」(桐原書店)を使っています。
昨日、水曜日がこの授業の初日だったのですが、早速、4人ずつのグループに分かれた上、取り上げたキーフレーズを組み込んだ会話例作りをやってもらいました。各グループの作品はまずまずでしたが、意外なことに、credentials が「問題児」であることに気づかされます。
"credentials" というのは、必ず複数形で使う名詞ですが、「ロングマン英和」では、「資格・能力について)信用を保証するもの、実績、業績」と説明しています。たしかに実際での使われ方をすれば、「信用を保証するもの、実績、業績」とも言えますが、The Pocket Oxford Dictionary は原義に忠実に、"certificates, references, etc., attesting to a person's education, character, etc." と言っています。つまり、「人の学歴、人物などにつき、こうだと請け合う証書、推薦状」だとしています。あとで説明するとおり、この単語は第三者的評価が前提になっていると言えるのですが、PODの定義のしかたはこのことをよく表していると感じます。
いずれにしろ、日本語で誰それさんの学歴がすごい、たいした経歴だといった話をしている場合は、それは人の credentials の話をしているということです。また、会社の人事の人たちが「この人の経歴は申し分ないね」などと話したりしますが、ここで言う「経歴」も英語なら credentials で、しかも「申し分ない経歴」に対応する、impeccable credentials という「定型」まであります。
上記の「この単語はこう使う」は、こうした意味を持つ credentials を実際に使うためには、以下のコロケーションが重要であることを紹介しています。
establish one's credentials 所定の資質を備えていることを証明する
forge credentials 経歴を詐称する
have credentials 資格要件を満たしている
study one's credentials 経歴等の資格要件を検討する
applicant's credentials 候補者の履歴
impeccable credentials 申し分のない経歴
leadership credentials リーダーとしての資質
授業ではコロケーションを主要なもの4つ程度に絞った上で、 credentials を織り込んだ会話例を作ってもらうのですが、出来上がったものを読み上げてもらっていたら、こういう使い方に出会う、とまどいました。
At the interview, we had a group discussion and I realized that I did't have any leadership credentials.
就職面接で、グループディスカッションがあり、そこで自分にはリーダーとしての素質がないことを認識させられたというのです。筋のいい一文なのに、惜しいかな、最後の leadership credentials がいけません。こういうことを言いたいなら、
I realized I am not leadership material.
になります。(have + なんとか material ではなく、be + なんとか materialになります)
また、別の会話例を作ったグループの「作品」中、就職面接という状況設定の中で、会社側の質問として、
Tell me about your credentials.
というのがありました。これも、普通は、
Could you tell us about yourself?
あたりでしょうか。
ところで、なぜ I don't have leadership credentials が不自然かと言うと、「人々の目にリーダーとしての素質を認めるに足ると映るような経歴、実績」が leadership credentials ですから、自分については言えないということではないでしょうか。人が第三者について、「あの人は leadership credentials がある/ない」を語るわけで、自分自身について語るときは持ち出しにくいということです。
つぎに
Tell me about your credentials.
というのは、相手に面と向かって、「あなたの資質を物語る経歴や資格について聞かせてください」と言っているようなもので、うまく言えないのですが、何か変です。思ったのですが、
Tell me about your work experience.
という質問だったら、相手は、自分の記憶にしたがって職歴のあらましを言えば済むのに対して、
Tell me about your credentials.
の場合、credentials 自体、当人ではなく、第三者による評価を前提にしている言葉であるがゆえに、Okay, let me tell you something about my experience. と応じることはできるのに、Okay, let me tell you something about my credentials. だと妙な響きになるのだと考えます。あたかも、「では、わたしの『評判』を説明しましょう」と言っているように聞こえます。
古い英語の言い方で紹介状を letter of credence と言うぐらいで、そこからわかるように、credentials は第三者評価が本質であり、自分のこととして語ったり、当人に説明を求めるような性質ではないというのが私の理解です。
本に「leadership credentials = リーダーとしての資質」とあれば、応用ということで、「自分にはリーダーの資質がない」と言いたいような場合に、I don't have leadership materials. という一文を作るのはごく自然なことです。したがって、本当なら、こういうことを見越して何かしら注記的なものを入れておくべきであり、この点、ちょっと反省させられます。他面、実際に手応えを確かめ、言葉の使い方をまさに体得する上で、会話例作りはやはり有効なのだという確信を深めもしました。
ちなみに、credentials という単語、英語での頻出度で言えば、13,000番台ですから、低頻出語彙に属するものの、ビジネス英語としてはよく使う方で、Longman、Oxfordのいずれの Business English Dictionary にも見出し語として入っています。感覚的に初級、中級、上級で分ければ、中級レベルのビジネス英単語と言ったところでしょうか。
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