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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年4月19日

Nonetheless を味わう:Bonesの一シーンから

テレビドラマの Bonesを観ていて、実にうまい具合に会話の中に nonetheless を登場させて、笑いを取っていました。

主人公のFBI捜査官 Booth (男性)と、FBIのコンサルタントして捜査にいつも協力している法人類学者 Brennan (女性)の会話です。法人類学というのは変死体の骨を鑑定して個人を識別する科学捜査の一分野で、そこから、Booth がどうかすると Brennan を "Bones" と呼んでからかったりもします。

それはともかく、場面は事件の捜査が一段落し、BoothがFBIの自分のオフィスで、Brennan と何やら強そうな酒を紙コップに注いでは飲み干しながら、しみじみ事件を振り返っているシーンです。

この事件、Brennan の勤務している研究所(スミソニアン博物館をもじったジェファソニアン博物館)から犯人が出たのですが、当初、関係者が身内が犯人と思いたくない意識からさかんに外部の殺人鬼説を強調していたことに触れて、Booth が研究所関係者を「研究所のみんな」と言ったところで、Brennan が「みんなって?」と応じると、Booth は、you all という意味で「おまえも入れてのみんなだよ」と答え、Brennan が「どうして私が入るの」と尋ね、こんなやり取りをします。

BOOTH: One of you. You were all offended that it was one of you.(自分たちの中のひとりってことだよ。仲間のひとりだったからみんな気分を害してるんじゃないか)

BRENNAN: You know what? I am offended.(いい、わたしは不愉快よ)

BOOTH: I just said that. (pours another shot) (だからそう言ったじゃない)[ここでもう一杯注ぐ]

Nonetheless という思いっきりフォーマルな単語が出てくるのはこのあとです。

BRENNAN: I'm offended! Because . . .(気分悪いわよ!何たって・・・)

BOOTH: Because you were betrayed by one of your own.(何たって、身内に裏切られたんだもんな)

BRENNAN: Yes. Are you going to betray me?(そうよ。あなた、裏切ったりしないでしょうね?)

BOOTH: No. (they toast) (いいや)[ここで二人で乾杯]

BRENNAN: Nonetheless, I shall be vigilant. (they take the shots) (とは申せ、気を抜かずに目を光らせておりますからな)[ここで二人でカップを飲み干す]

BOOTH: “Nonetheless”? (they laugh) (「とは申せ」かよ)[二人で笑う]

このくだり、なぜ nonetheless で笑っているかと言うと、普通だったら、all the same か even so を使って表す「そうは言ってもね」という意味を、同じくフォーマルな書き言葉である nevertheless より一段とフォーマルな nonetheless で言っているからです。実際、wordcountでチェックすると、nevertheless が 1424番目によく使われる単語なのに、nonetheless は 5877番目と、ずっと頻度が落ちます。(ちなみに両方とも会話の中で使う人がいますが、もったいをつけていたり、あるいは、硬い書き言葉であることを知らずに使っているケースがほとんどだと思います。少なくとも、自分では会話の中で使ったりしません。そういうたぐいの単語です)

加えて、I shall...というフォーマルかつ old fashioned な言い方がスパイスになっています(shallがold fashioned な言い方であることについては、以前に「絶滅危惧種としてのSHALL」という記事を書きました)。

日頃から、Brennan は仕事柄、学術文献を読み上げているかのような物の言い方をすることが多く、Booth に突っ込まれたりもしているので、気の合っている二人だけに、Booth の「注意喚起」に思わず笑ったということです。

こういうフォーマルな言葉を巧みに織り込んでの遊び心には感心します。脚本を書いたのは、Christopher Ambrose という人ですが、こういうセンスが光るものを書けるというのは本当にうらやましいことです。日頃、地味な辞書のエントリーばっかり書いていると、自分がいかにも冴えない物書きに思えてきて、なぜか一生エンドウマメを数え続けた、あのメンデルにわが身を重ねてしまいます。

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Comments

Bonesはしばらく見てないのですが、これを見てまた興味が出てきました。

営業トラックバックとかに思われたくないので、URLなしでこちらに書きます。

BOOTH: “Nonetheless”? (they laugh) 

で笑うのは、上記の通りのフォーマルな意味のほかに、ボーンズがブースを信用していないという表明を(Tongue-in-cheekな冗談で)して、ブースがそれに答えて「ひどいなあ」という意味で言葉を鸚鵡返しにして・・・という文脈があるのでは無いでしょうか??

翻訳の難しい言葉遊びで、とあるドラマで、昔付き合っていた男女が敵対する関係になって、

男「(女に向かって)Screw you!(くそったれ!)」
女「You've already done that.」

という会話を思い出しました。

上記の会話も含めて、こういうのの翻訳って大変なのでしょうね・・・・。

[返信]

こんにちは。コメントありがとうございます。おっしゃるような見方もできるのでしょうが、日頃のボーンズは自分の個人的な感情をさしはさむ前に、感情に動かされる自分を別のところから見ているメタ認知的なものの言い方をするのが身上の人物として描かれていますから、やはりボーンズのロボティックと言うか、無機質な言い方にブースがあっけに取られたと見る方が自然だと感じています。

日向先生のブログ、いつも楽しく勉強させていただいております。今日は、我家でもハマっているBonesがテーマに登場し、興味深く拝読しました。Bonesは使用される言葉に専門用語が多く、とても私のリスニング力では全て理解できませんので、日本語字幕で理解しています。日本語でも「あそこの骨がどう」とか「ここの骨がこうなった」とか難しいのですが、ドラマとしてはとても面白く、日向先生もご覧になっているとはうれしく思いました。今後のエントリーも楽しみにしています。

[返信]

こんにちは。同好の士とうかがい、わたしもうれしく思います。

Bones、たしかにむずかしく、専門用語は全然わかりません。でも、あの丁々発止とわたりあうメンバーどうし、あるいは Brennan と Boothのやりとりが面白いですよね。読者のみなさんにもお勧めします。

日向先生。
コメントの連続投稿、申し訳ございません。
フレンズ3-18 にも、nonetheless が登場しました。拙ブログでつい最近、フレンズ3-18 を解説したばかりなのですが、何とも残念なことに、nonetheless が使われたセリフの解説を省略してしまっています(!)。
今回の Bones での使われ方と通じる部分があると思ったので、長文になりますが、こちらでそのセリフについて語ることをお許し下さい。(ちなみに、ネットスクリプトでは、none the less と3語に区切ってあるのですが、DVD英語字幕では、nonetheless と1語になっていました。)

フィービーの義弟のフランク(18歳)が、家庭科の先生アリス(44歳)と結婚するというので、フィービーは反対しています。フィービーがアリスに「弟と別れて欲しい」と頼んだ結果、二人は別れることになるのですが、フィービーが二人を別れさせたことを知ったフランクは大激怒。
そこで、フィービーは、別れた事情をフランクに納得させるために、アリスの口から直接説明させようとします。

アリス: Phoebe's right, Frank. I know it's hard to hear, but it would've been wrong to go through with it. (中略) (to Phoebe) Is that it, is that what it is? (フィービーは正しいわ、フランク。聞くのが辛いのはわかるわ。でも、結婚をやり通すことは、悪いことだっただろうと思うの。(中略) [フィービーに] そうよね? それが言うべきことよね?)
フィービー: Yes, but not just that. (そうね、でもそれだけじゃなくて。)
アリス: Right, not just that. Umm, even though we love each other as much as we do, nonetheless.... (そうよ。それだけじゃなくて、うーんと、たとえ私たちがどれだけ愛し合っているとしても、それにもかかわらず…)
フィービー: Nonetheless. (それにもかかわらず。)
アリス: Nonetheless. Umm, you're too young to, to really know what you want. (それにもかかわらず、うーんと、あなたは自分の欲しいものが本当にわかるにはまだ若すぎるのよ。)

アリスは自分の正直な気持ちを伝えているはずなのですが、少ししゃべった後、フィービーの方を振り向いて、Is that it, is that what it is? と言って、フィービーに確認しています。
このセリフで、フィービーとアリスがあらかじめ、フランクに何と言うかを打ち合わせしていたことがわかります。
フィービーは、「まだ言い忘れていることがあるわよ」と、次のセリフを付け足しています。そのフィービーの導きのままにしゃべっているアリスのセリフに、nonetheless という言葉が入っているので、「感情をそのまま正直に吐露している言葉ではなくて、明らかに事前に練られた文章である」ことがよりはっきりわかる仕組みになっているように思います。

恋人を納得させるというこの状況で、nonetheless という単語はあまりにもフォーマルでそぐわない、そういう言葉を使っていることから、これが「作られた言葉」であることがわかるし、nonetheless 以降の文章を忘れてしまったかのようなアリスに、Nonetheless で止まってないでちゃんと続けて、と促すフィービーも面白いです。アリスが、nonetheless で言いよどんだために、nonetheless という単語が合計3回出ていますが、そういうわざとらしく違和感のある単語を3回繰り返すことで、このセリフの不自然さ、「作られた感」を出しているのでしょう。
義弟のフランクは、かなり変わった(weird な)キャラクターで、これだけ見え見えのセリフなのに、それがフィービーの入れ知恵であることに全く気づいていないところも、フレンズらしいところです。

私が調べたところ、フレンズでは、nevertheless は使われたことがなく、nonetheless (none the less) も、この 3-18 の1回だけです。ですから上のフレンズの例も、「会話では使わないフォーマルな言葉を巧みに織り込んでの遊び心」なのだと思います。本当にアメリカのドラマの脚本はよくできていますよね。

長文、失礼いたしました。また、いろんなドラマを取り上げていただけると嬉しいです。

[返信]

おっしゃるとおり、ここでの nonethelessは、いかにも出来レース的な「作り物」であることを強調するために使われている感じがします。こうやって見ると、たった一語なのに置き所次第でずいぶんいろいろな効果を出せるもんだと感心します。

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