2009年5月31日
(3)ケンブリッジ英検のライティング:article を書く
ケンブリッジ英検のライティングの課題、前回はEメールを取り上げましたが、今回は、article です。雑誌や新聞の記事の体裁をとった作文です。
そもそも article と essay とどう違うのかと思われるでしょうが、一般的には、新聞記事のように、客観的な立場から事実に焦点を当ててそれを伝えようとするのが article です。対するに essay は主観的な立場から、「自分はこの問題についてこう考える。根拠は・・・」と展開する「主張」と言えます。
それはともかく、まず課題文を見てください。
You have seen this announcement in an international magazine.
MY FAVOURITE TEACHER
Tell us about a favourite teacher of yours and say you
remember about him or her.We will publish the most interesting articles next month.
Write your article.
この設例に対して 120-180ワードで article をまとめるというのが受験生のタスクすなわち課題です。
★ 出題者が求めているもの
出題する方が何を期待しているのかを知っておく必要がありますが、Cambridge ESOL は、article とは何ぞやにつき、こう説明しています。
AN ARTICLE is usually written for an English-language
magazine or newsletter, and the reader is assumed to have
similar interests to the writer. The main purpose is to interest
and engage the reader, so there should be some opinion or
comment.
ある程度、書き手と同じような問題意識・関心を持っている読み手を想定しながら、「読ませる」一文を書けということであり、そのために多少なりとも「こうあるべし」とか「自分はこう感じる、こう思う」といった要素を盛り込むことになります。
Cambridge ESOL は実に親切に、試験対策まで目をくばっています。この種の article を書けるようになるためには、こうしろと言っています。
A successful article interests and engages the reader.
Descriptions, examples and anecdotes are often appropriate,
and effective answers will be lively and include some
colourful use of language. A personal angle usually works well,
and a catchy title will attract attention. The use of direct and
indirect questions also adds colour, and students should be
taught how to use these. Looking at examples from Englishlanguage
magazines may help.
この設例で言えば、「こんなこともありました」的な例を交えながら、自分が好きだった教師がどんな人だったのかを描写すべしということです。その際、ビビッドな描写を心がけよ、個人的な思い入れを前面に出した書き方がいいなどと具体的です。タイトルも「キャッチー」なのがいいとも言っています。おもしろいのが、疑問文を直接、間接を問わずうまく織り込むといいというご指南です。
こうした出題側の意図に応えている模範答案がどんなものかと言うと、こういう感じです。
A Fantastic Teacher!
Can you imagine a school where every people enjoy themselves? Have you ever
seen a funny teacher that transforms boring lessons into interesting ones?For me it was real.
I went to high school in bergamo and I really enjoyed every day.
I only have to thank my teacher.
His name is Allesandro and he teached me italian and latin: apparently two
boring subjects but not for me. Not with his way of teaching.Everyday when he came in the classroom he has something funny to say to
us. For example something about his last weekend or his private life. The
lessons always started laughing. I felt really well during his lessons.The he began to explain and the strange thing was everybody paid always
attention very well to him and he makes all interesting.His lessons were at the same time enjoyable, funny and interesting: that’s
wonderful.I’ll never forget him!
採点者はこういった答案につき6項目の評価を加えています。
内容はどうか? → 課題に即したよい内容となっている。
全体の構成はどうか、センテンスどうしはうまくつながっているか? → 構成が明確だ。
構文や単語はどうか? → センテンスを問題なく使いこなし、単語力も十分。
文法や言葉遣いはどうか? → 概ね正確だが、ややぎごちない表現もある。
言葉遣いのインフォーマル/フォーマルの加減はどうか? → 設例の状況に照らして問題なし。
想定される読者の知りたいことを盛り込んでいるか? → 十分な情報量だ。
こうした評価を経て採点者は、First Certificate of English が求めているレベルを上回っているという評価をしています。Band 4 ということです。
ちなみにBand 2 は要求を満たしておらず、このような答案では読み手とコミュニケートできないという判定です。それに対して、Band 3 は、FCEレベル合格ということであり、書き言葉を概ね効果的に使えると判定されるレベルです。具体的には、以下の4つの条件を満たせる人が FCE (ヨーロッパ共通参照枠で言うと B2)レベルの使い手ということになります。
✓ ごく普通のテーマであれば文章をまとめることができる
✓ 単調にならないようにスタイルを変えることができ、また、時には、選択を誤ることがあっても、語彙やイディオムを正しく運用できる
✓ 若干、文法や語彙面での失敗が見受けられるものの、長めの言い回しを使ったり、やや複雑な構文を使いながらコミュニケートできる
✓ 概ね筋の通った、長めのライティングをこなすことができる
★ 模範答案の研究
以上のことを念頭に、コメントを加えながら、もう一度この答案を「研究」してみます。
A Fantastic Teacher! ← キャッチーなタイトルになっています。
Can you imagine a school where every people enjoy themselves? Have you ever
seen a funny teacher that transforms boring lessons into interesting ones? ← 疑問文をつかっての「つかみ」が利いており、読み手を引き込む工夫に好感を持てます。
For me it was real. ← ここでは、"it" を通じて前のパラグラムをきちんと受け止める格好になっており、「ああ、この人は cohesion の何たるかをわかっているな」と評価できます。
I went to high school in bergamo and I really enjoyed every day. ← 固有名詞の bergamo がキャピタライズされていない点、accuracy から言えば問題ありです。しかし、次の一文ともども、For me it was real の内容を書き出しており、coherence が確保されているとわかります。
I only have to thank my teacher.
His name is Allesandro and he teached me italian and latin: apparently two
boring subjects but not for me. Not with his way of teaching. ← 前のセンテンスにある teacher を受けて、His で書き始め、cohesion が保たれています。頑張ってコロンを使っている点は,日頃、この種の英文を読んで研究していることを見て取れ、これも心証の面でのプラス材料となることでしょう。ただ、taught であるべきものが teached になっている上、italian と latin が小文字のままで、accuracy という点ではマイナスです。
ちなみに、コロンを使わない書き方はこうなります。ちょっと変な点も直しておきます。
His name was Allesandro and he taught us Italian and Latin. These two subjects may be apparently boring but not for me. Not with his way of teaching.
ここでは、Not with his way of teaching. のように動詞を含まない、非センテンスも使われていますが、これも雑誌などではよくあるスタイルで、書き手の勉強ぶりが伝わってきます。
Everyday when he came in the classroom he has something funny to say to
us. For example something about his last weekend or his private life. The
lessons always started laughing. I felt really well during his lessons. ← これが「試験対策」で触れられていた Descriptions, examples and anecdotes ということになります。たった三文ですが、パラグラフの基本に忠実で、一行目でそのパラグラフの内容をいており、第二文は例を挙げており、第三文はまとめです。英語の書き方がわかっていると言えます。もちろん、The lessons always started with laughter/lots of laugh. とした方が自然だとか、when he came into the classroom he had something funny to say にした方が時制がそろうといった細かな点はありますが、これで採点者が積極的に減点するかと言ったら、私はしないと思います。そこが holistic (総合的な)な採点法のいいところではないでしょうか。
The he began to explain and the strange thing was everybody paid always
attention very well to him and he makes all interesting. ← これも多少おかしな英語がまじっているものの、The[n] he began でうまく前の文を受け止めており、骨太の構成が浮かんできます。しかも、the strange thing was [that] というなかなかビビッドな表現も使っています。
His lessons were at the same time enjoyable, funny and interesting: that’s
wonderful. ← His lessons で先行する部分との cohesion を確保しながら、a, b, and c: that's ... という英語特有の三拍子を使い、しかも、コロンでまとめをつける「わざ」を見せています。水準以上です。
I’ll never forget him! ← タイトルとも呼応しており、内容のまとめにもなっており、申し分ありません。
★ さいごに
FCEはヨーロッパの学生であれば、だいたい高校生が受けるレベルです。実際、Cambridge ESOLによると受験生の大半が 15-17歳あたりの人で占められていると言います。しかし、わが国の高校生でこの模範答案レベルのライティングをこなせる人はまずいないというのが実感です。大学生でも、できる人は1割いないと思います。他面、ここで説明した要求水準を頭に入れておいた上で、全体の構成法、パラグラフの作り方、cohesion や coherence の確保の仕方を知っていれば、語彙力や文法レベルにおいてわが国の中学生レベルの方でも十分合格しうるテストでもあります。
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