2009年05月10日
(上)現在完了は「今」を語るツール
授業で4人一組になって会話例を作ってもらうと、英語では現在完了を使う場面なのに、過去形を使うという例を多く見受けます。おそらく「ここは現在完了」と自信をもって使えないので、ひとまず無難な過去形で行くのでしょう。
迷いを吹っ切るいい方法は、「過去の済んだ話をするなら単純過去形を使い、今の話をしているなら現在完了を使う」というルールで行くことです。以前、現在完了とはどういうものか:過去形との対比を通じて理解し、使いこなすためのポイントでも触れましたが、「過去形を使うか現在完了形を使うかは話し手の選択ないし視点の問題」なのです。このあたりの感覚をチェックするため、以下の三題につき、自分だったら、どちらを使うかを試してみてください。
a) There you are! [Where were you? Where have you been?] [I waited here? I have been waiting here?] for ages. (なーんだ、○○。いったい、どこにいたの?ずいぶんと長い間ここで待っていたんだから)
b) [Did you see? Have you seen?] my bag? I can't remember where I put it. (どこかでバッグ見ていない?どこに置いたのか思い出せなくて)
c) Oh, you [changed? have changed?] your hair. I like the way [you had it done? you've had it done?] (髪型変えたんだ。今回のスタイル、いいじゃない)
この例題は、Michael Lewis の Implementing the Lexical Approach という本に載っているもので、正解はすべて現在完了形です。
その「心」は、そもそも会話というもの自体、知り合いどうしの間でリアルタイムで交わされるものである以上、I was talking to a chap at work the other day...というふうに、過去の話ですよという断りをしない限りは、基本的に、「今」「ここにいる」私たちという状況設定を前提に話をするにきまっており、現在完了形はそのことを端的に表すツールだということです。
対照的に単純な過去形を使うと、以下のとおり、「今」から切り離された「済んだ話」という感じが前面に出ます。
a) の場合に、Where were you? という言い方をすると、単純に、済んだ話としてどこにいたのかを尋ねているだけになり、「待っていたのに、その間いったいどこにいたんだ」という現時点とのつながりを感じさせません。
b) も同じで、Did you see my bag? だと、「以前に、どこかで見かけたことはないか」という過去の事実の報告を求める感じとなり、「今探しているんだけれど、どこかで見ていない?」という現時点とのつながりが感じられません。過去形を使うと、心理的隔たりが大きくなるとも言えます。
c) You changed your hair. という言い方だと、「髪型を過去に変えたことがありますね」的な過去に起きたことを指摘するだけという感じになり、話し手にとっての現時点での関心事という色合いが出ません。You have changed your hair. だと、「髪型を変えたことについてちょっと言わせてよ」というノリの、いわば過去の事実を現時点での話のネタにするけどさという感じになります。
このように現在完了形というのは過去にあったことを「そんなこともあった」という心理的距離を置いた話としてではなく、過去の事実を現在に、いわば「ひきつけて」現時点での話し手の関心事として取り上げるときのツールと言えます。
ライティングでも、この理屈は貫徹されており、例えば、昔の話を現在の関心事として取り上げるようなときなどは、まずは現在完了形で導入し、「今の、わたしたちの話題」であることを強調して上で、そのあとは、「それでは過去の事実を報告しましょう」という感じで、全部過去形というのが一つのパターンでもあります。こんな感じです。
I have visited Hawaii many times. The latest visit was in December 2005, when we went there for a holiday. Unfortunately, our holiday was ruined by a spell of miserable weather. (ハワイには何度か行ったことがあります。最近では2005年の12月でしたが、休暇で行きました。ただ残念なことにひどい天気が続き、休暇は台無しでした)
以上を要するに「過去のことをネタに今の話をする」なら現在完了形を使うということであり、このことを指して、前掲書で Michael Lewis はこう喝破しています。
It [=the present perfect] is intrinsically a present tense. The traditional EFL contrast between present perfect and past simple was silly. 現在完了というのは本来は現在時制に属するものであり、英語を外国語科目として教える場合に現在完了と単純過去とを対比していた従来の手法は馬鹿げている。
しかし、一方で単純過去という似て非なるものがある以上、ネイティブスピーカーでないわれわれとしては、「過去の済んだ話をしている」だけなのか、それとも「今の話をしているのか」をもっと明確に意識できる手がかりが欲しいところです。次回はこの点にスポットライトを当ててみます。
つづく
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