2009年7月 3日
底入れvs底打ち
政府が6月の月例経済報告で「景気の底打ち」を宣言したのを受け、朝日新聞の時事用語解説コラムである「ニュースがわからん!」が「景気の『底打ち』とは何じゃ?」というタイトルで説明していましたが、おもしろかったのが、このくだり。
厳密に言うと、「底入れ」より「底打ち」の方がやや回復の兆しを強く見ている感じだ。
「厳密に言うと」で始めておきながら、おおざっぱに「感じだ」で終えているのが愛嬌ですが、それはともかく、「へー」と感心したのが、この区別。なるほどそうかも知れないと思いました。
ただ、この「厳密な」区別が果たして一般的かと言えば、そうではなさそうです。野村証券の用語解説集で見ると、語義はそれぞれ以下のようになっています。
「底入れ」
株式の市場用語で、相場が下落している状態のときに使われる。
相場が下がるだけ下がり、大底が確認され、相場が下げ止まったことをさす。「底を打つ」
株式の市場用語で、相場が下落している状態のときに使われる。
相場が下がるだけ下がり、大底が確認され、相場が下げ止まったことをさす。
見出し語としては別扱いなのに語義は完全に同じです。要するに金融や証券のプロの目から見ても、「底入れ」イコール「底打ち」であり、朝日新聞のコラム執筆者が強調する「厳密に言うと」はひとりよがりのようでもあります。
しかし、感覚的には、なるほど、ただの「底入れ」というのは底に達しただけのことなのに、「底を打つ」というのは語感として、底に達してからなにほどかリバウンドしている感じもあります。
そこでこの朝日新聞流の感覚で「底入れ」と「底打ち」を区別しようと言う場合、英語ではどうなるんだろうと考えてみたのですが、動詞の bottom と句動詞の bottom out の使い分けに対応させればいいんだなと気づきました。
例えば、「景気が6月に底入れしたようだ」と言いたいなら、
The economy seems to have bottomed in June.
ですが、
The economy seems to have bottomed out in June.
という言い方だと、「底入れし、かつ、上昇に転じている様子がある」というニュアンスになります。
おわかりのとおり鍵は、bottom と組み合わさっている out にあります。
この out 、実はさまざまなニュアンスがありますが、ここでは、その動詞が表す行為に「徹し、完了させる」こと、つまり英語で言えば、thoroughness and completeness を強調するツールです。
実際、動詞と組み合わさる事で、それが「徹底的に行われる」というニュアンスが付加される例を考えると、こういうのが思い浮かびます。
argue out(徹底的に論じる)
hear out (最後まできちんと相手の話を聞く)
think out(考えを尽くす)
talk out (徹底的に話し合う)
してみると、「天井をつける」という意味で使う動詞 peak も peak out という言い方だと下降局面に足を踏み入れている感じが強いのかなと思いつつ、Googleで peak out を検索したら、なんとこのビジネス英語雑記帳のバックナンバーに行き着きました。いわく
景気は2000年に底を打った。The economy bottomed out in 2000. [底を打ったという意味で動詞 bottom をつかうときは、bottomed out という形で使うのが多数派です。不思議なことに、peakの方だと out 付きが少数派なのに、bottomになると out 付きが多数派ということです]
2年前に書いた経済英語の腕試しというエントリーですが、何だかこのブログのネタ切れを感じさせる出来事で、ちょっとショックを受けました。あるいはこっちがモーロクしているのか・・・
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