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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年8月28日

CollateralとSecurityの違い

前回の続きになりますが、編集者からの指摘と言うのか、リクエストと言うのか、近刊の『即戦力がつくビジネス英単語』の最終原稿につき、collateral と security の項で、それぞれ collateral と security とがどう違うのかを説明した方がいいという注文がありました。

なるほど、英和辞典を見ると、collateral は「担保」で、同意語を示す SYN といった記号と一緒に security が挙がっているというのが一般ですから、完全に同じなのか、あるいは、何か違いがあるのかなと思う方もいることでしょう。

どう違うんだと言えば、まっさきに頭に浮かぶのは、アメリカ英語なら、「担保」と来たら security よりは collateral でしょう、ということです。もちろん、担保という意味で security を使わないことはありません。ただ、やはりアメリカ英語の世界では、security と聞いたら、コンピューターセキュリティーのように外部からの侵害を防ぐ業務、それと証券を連想するのが普通です。言ってみれば、security は二の次という感じです。

例えば、アメリカで発行されたビジネスの教科書でも、「担保」という意味の security は存在感に欠けます。何冊か引っ張り出して索引を調べたところ、collateral は当然載っていますが、security の方は、索引に入ってはいても、それは証券を意味する複数形の securities や computer security や job security のことだったりして、担保という意味の security が載っていなかったりするのです。American Heritage Dictionary of Business Terms を見ても、security の項の語義の一は「証券」で、語義の二で「担保」という意味が出て来ます。

ところで、この collateral がアメリカ英語だというのは、イギリス側の資料から見ると明確で、旧版の The Economist Books の一冊、International Dictionary of Finance で collateral を引くとこうなっています。

Originally the U.S. term for security, now used more widely. (元来は security を意味するアメリカの用語だが、今は[イギリスでも]広く使われている)

一方、イギリス英語だと「担保」と来たら security であって、collateral ではありません。じゃあ、collateral はどうなんだとなると、同じ担保でも、息子の借財のために父親が自分の財産を担保として差し入れるといった「第三者による担保提供」を指して collateral とする区別があるようです。例えば、10年前の本ではありますが、The Economist Books シリーズの、Pocket Finance には、こういう記述があります。

The fine distinction between collateral (which is provided by a third party) and security (which is provided by the borrower) still exists in the UK. But in the United States the two words are virtually indistinguishable. (第三者が供する)コラテラルと(借入人が供する)セキュリティーとの間に存する厳密な意味での違いはイギリスではいまだに残っている。しかし、アメリカではこの二つの言葉は実際上区別がない)

もうひとつおまけに collateral と security の違いを言うなら、動詞形での意味の違いがあります。collateral を動詞にした collaterize は、そのまま「担保にする」という意味になります。ところが、 security を動詞にした securitize は、「担保にする」というのでなく、ちょっと特殊な「証券化する」という意味になってしまいます。(証券化というのは、住宅ローンや売上債権といった同種の金融資産をたくさん集めた上で、そこからの現金収入(ローンの返済金や回収した売掛金)を引当とする証券を作り、投資家に売りさばくという業務です)

ただ、法律英和辞典ならともかく、基本的なビジネス単語のコロケーション(定型的な動詞などとの組み合わせ)を覚えて使えるようになりましょうという趣旨の本で、ここまで技術的な話に踏み込むのもどうなんだろうと、ちょっと考えてしまいます。

そこで最終的に以上のことを念頭に置きながら、collateralとsecurityの解説はこのようにしました。

Collateral の解説

債務の弁済を確保するために予め債権者に差し入れておく担保はアメリカでは通常、collateral です。もちろん security でも通じますが、どちらかと言うと,アメリカ英語の世界では、securityは防犯(セキュリティー)や証券という意味で使われることの多い単語です。一方、イギリスだと担保を指して言うときは collateral よりは security という言い方の方が一般的です。不可算ですので、何かを担保として差し入れるときは、put up something as collateral とし、as a collateral とか as collaterals といった言い方は使わないの原則です。

Security(担保)の解説

債務不履行の場合に債権者が損害を被らないよう予め債務者が差し入れる担保は、イギリス英語では security です。アメリカ英語でも security は使いますが、ただ、collateral の方が通りがいいと言えます。なお同義語の collateral 同様、担保という意味では基本的に冠詞ナシで使う不可算名詞なので、a securityとか securities という形で使うことはありません。

ところで今回の『即戦力がつくビジネス英単語』では、各項目の大事なところ、つまり、大事だから固まりでおさえてくださいという部分を強調して表示するため、ボールドにする予定ですが、色との組み合わせで悩んでいます。以下の三つのスタイルのうち、みなさんのお好みはどれでしょうか。末尾にボタンをクリックするだけの簡単なアンケートを用意しましたので、答えていただけませんでしょうか。


A案 見出し語を含め覚えるべき固まり全部を黒のボールド

■ Unlike banks, which must repossess collateral, pawn shop operators hold the collateral until a borrower actually repays in full. 担保に供されているものを取り戻す必要のある銀行と異なり、質店の経営者は借り手が実際に全額返済するまで担保物を手元に置くことになる。
■ The founder-president was asked to put up her shares as collateral. 創業者社長は持株を担保として差し入れるよう求められた。
■ Receivables may serve as collateral for a loan. 売掛債権が融資の担保として使われることもある。
■ Some financial institutions take cash collateral (compulsory savings) as part of a loan contract. 一部金融機関は、融資契約の一環として現金担保(拘束性預金)を取る。[☞ 融資に際して一定金額を強制的に預金させ、返済までの担保とするものはわが国では両建て預金と呼んでいます]


B案 組合わさる定型的部分をブルー、見出し語を黒のボールド

■ Unlike banks, which must repossess collateral, pawn shop operators hold the collateral until a borrower actually repays in full. 担保に供されているものを取り戻す必要のある銀行と異なり、質店の経営者は借り手が実際に全額返済するまで担保物を手元に置くことになる。
■ The founder-president was asked to put up her shares as collateral. 創業者社長は持株を担保として差し入れるよう求められた。
■ Receivables may serve as collateral for a loan. 売掛債権が融資の担保として使われることもある。
■ Some financial institutions take cash collateral (compulsory savings) as part of a loan contract. 一部金融機関は、融資契約の一環として現金担保(拘束性預金)を取る。[☞ 融資に際して一定金額を強制的に預金させ、返済までの担保とするものはわが国では両建て預金と呼んでいます]


C案 見出し語を含め覚えるべき固まり全部をブルー

■ Unlike banks, which must repossess collateral, pawn shop operators hold the collateral until a borrower actually repays in full. 担保に供されているものを取り戻す必要のある銀行と異なり、質店の経営者は借り手が実際に全額返済するまで担保物を手元に置くことになる。
■ The founder-president was asked to put up her shares as collateral. 創業者社長は持株を担保として差し入れるよう求められた。
■ Receivables may serve as collateral for a loan. 売掛債権が融資の担保として使われることもある。
■ Some financial institutions take cash collateral (compulsory savings) as part of a loan contract. 一部金融機関は、融資契約の一環として現金担保(拘束性預金)を取る。[☞ 融資に際して一定金額を強制的に預金させ、返済までの担保とするものはわが国では両建て預金と呼んでいます]


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Comments

先生、こんにちは。

本記事に関連する分野で、morgageも良く見かけるのですが、collateralやsecurityと同様に使えるのでしょうか。

[返信]

mortgage(抵当)はcollateral/securityの一態様であり、下位の区分に当たりますから、家を抵当に入れるような場合は、We mortgaged the house as collateral/security. といった言い方をします。

日向先生、こんにちは。
今回のお話は専門外ですので、難しかったのですが、一カ所だけ誤植とおぼしき箇所がありましたので、ご報告致します。当方の勘違いでしたらご寛恕下さい。

>不可算ですので、何かを担保として差し入れるときは、put up something as collateral とし、as a collateral とか a collaterals といった言い方は使わないの原則です。

の部分の「as a collateral とか a collaterals」は「as a collateral とか as collaterals」ではないでしょうか。

[返信]

そのとおり、間違っていました。ご指摘、ありがとうございます。直しておきます。

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