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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年8月26日

phase と stage の異同

このところ近々DHCさんから出させていただく『即戦力がつくビジネス英単語』の原稿の再確認に追われています。具体的には編集者の指摘やら助言に合わせて加除訂正をしています。

こういう編集サイドのチェックは本当にありがたいもので、DHCさんの場合、常に読者の立場に立って、手に取ってくれた読者が疑問に思いそうなことを先取りしては、「おお、そうかも知れない」「そりゃそうだ」といった指摘をしてきます。

例えば、 phase (局面、段階)の項の解説欄は現時点ではこうなっています。

[解説]月齢に応じての三日月、半月、満月のように、連続するプロセスでの各局面ないし段階を指す言葉です。

この解説につき、編集者の書き込みは、「別にある項目 Stage とのニュアンスの違いは?」というもの。

たしかに英単語を熱心に勉強している人は誰しもこういうちょっとしたニュアンスの違いが気になるもので、今回の原稿でも work と job の違い、pay と salary/wage の違い、それに responsibility と liability の違いなどを新たに書き加えたぐらいです。

考えてみれば、おかげさまで25刷5万部を超えている『即戦力がつくビジネス英会話』のときも編集者のTさんが次々と読者向けの注釈を入れろと注文をつけてくれたおかげで、あれだけ濃厚な内容になり、ビジネス英語を勉強しようという人の支持を得ることができたのでしょう。(当時は、一度はNHKのテキストとして市販されたのだから、いいじゃない、勘弁してくれという気持ちもあったのですが、今はつらい追加の作業をこなしてよかったとTさんのプロ意識に感謝しています)

話を元に戻して、なるほど stage も phase も step という意味あいでは共通しており、実際にも普通は入れ替えて使うことができます。例えば、原稿の phase の項にある最初の用例は、

We believe we are approaching the

final phase of the negotiations
. われわれとしては交渉の最終局面に近づきつつあると思っている。

となっていますが、これにつき、Googleで phase と stage のヒット数を比較してみると、こうです。

final phase of the negotiations 4,620
final stage of the negotiations 5,120

簡単に言ってしまえば、どちらでもいいとわかります。

他の用例についてもキーフレーズだけの抜き出した上でヒット数を確認してみましょう。

complete the second phase of 45,200
complete the second stage of 3,930

いくつかの人為的な区切りを設けながら進むプロセスの中のひとつの区切りを取り上げるときは phase の方が一般的だとわかります。

enter a critical phase in 384
enter a critical stage in 61,300

おそらくは phase というのは一つのプロセスの中での位置づけとしては基本的に第1フェーズ、第2フェーズといった感じで順番はついても、どれが重要 (critical)という角度からは phase があまり取り上げない様子がわかります。

a consolidation phase 831,000
a consolidation stage 1,070

これだけの差があるのはコロケーション(定型的組み合わせ)としてこうなっているのだと理解した方がよさそうです。つまり、consolidation と step という意味あいの言葉を結びつけるときは、stage よりは phase 選好されるのでしょう。

at the initial phase of the project 2,740
at the initial stage of the project 5,530

これは微妙だなと感じました。昔訳したプロジェクトマネジメント関係の書類は、例外なく、stage を使いたいようなところがすべて phase だったからです。

プロジェクトマネジメント関係での phase というのは、資金や資材の関係からいくつかのタスクをひとまとめにした上、プロジェクトの都合で順番をつけるので、自然な順序に従っている stage とちょっと違っています。例えば、通常の工程なら最後に仕上げる部分であり、普通の英語の感覚で言うなら final stage と形容するようなものでも、そのプロジェクト固有の事情で最初に持って来るようなことがあります。このような場合、例えば豪華客船を作る場合だとして、通常は内装などは最後の最後でしょうが、何かの都合で豪華客室の階だけを船体より先に作ってしまうことになったとすれば、このプロジェクトではこの作業が phase one になるでしょうが、普通の感覚では first stage とは言いにくいということです。

以上のことを念頭に、Phase の項の冒頭の解説は以下のものと差し替えるつもりです。

ともに本質的な意味が step ということにあるので、 phase も stage も基本的には入れ替えて使うことができます。ただ、stage という言葉の場合、一定の順序で生成発展するプロセスの中の一段階というニュアンスであるのに対して、phase は本来の順序と関係なく人為的に設けた区切りという意味合いが感じられます。特にプロジェクトマネジメントの場合はそういう傾向が強く、医薬品開発における臨床試験が第一相試験(フェーズ1)、第二相試験(フェーズ2)、第三相試験( フェーズ3)の三つの段階に分けられているのもプロジェクトマネジメントの流儀にならっているのだと解されます。

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Comments

ステージをさらに分割するとフェーズになるんじゃないかと思って調べてみたら、そいういう例文がたくさん出てきました。
The embryonic stage can be broken down into five identifiable, developmental phases: Idea, feasibility, verification, demonstration, and commercialization.

してやったりと思ったのですが、念のためにその逆、フェーズを分割するとステージという単位になる場合も調べてみると、これもたくさんあるんですね。
LEAP/E2020 has defined 4 structured stages within this phase II. These four stages could overlap and will spread out all along phase II ....

どちらも他方を包含できるということで、なかなか両者の違いを単純化できないようです。

[返信]

なかなかディープですね。でも、見ていると、「フェーズは作り物」で、ステージは自然な区分という仮説を立てたくなります。

ぼくの当てにならない語感で恐縮ですが、フェーズの方が厳格で細かく区切ってあり、ステージの方は大まかで長い時間を区切っているような印象を持っています。
たまたま自分のブログでもそのうち取り上げようと思っていた文にフレーズが含まれていたので、興味深く読ませていただきました。
Flexibility in the pelvis during acceleration phase of pitching motion

[返信]

たしかにフェーズの方が人為的・作為的な区切りである分、場合によっては偉く細かいといったことがあるかも知れませんね。

その後も気になって調べているのですが、"project management" と "phase is defined as" というフレーズで検索すると勉強になる資料がヒットし、楽しめます。

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