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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年10月11日

身体知としてのスピーキング

中国人の留学生に、日本人の中国語学習者は中国語をしゃべるときの姿勢が悪い、その結果として発声が悪いと指摘され、はっとしました。きちんと体を使って話すスキルの問題という点、言ってみれば身体知(五感を総動員して体得した実践知)という点で、英語も同じだと。

せっかく個々の単語の発音がいいのに、日本語を話すときと同じ調子で、平板に話す (syllable-stressed)がために、さっぱり英語らしく聞こえないという人が実に多いと感じます。本来、英語が予め息を吸っておいてから意味のまとまりごとに、いわば、ファーッ、ファーッ、ファーッ、と勢いよく息を吐きながら発声していく言語なのに、そういった問題意識が希薄なため、息を溜めないまま発声する結果、途中で息もあがり、一定間隔でビートを刻むという英語を話すときの大原則が破られ、結局、英語らしさが消しとんでしまいます。

英語らしく話すスキルというのは、その意味でまさに身体知の問題です。わたし自身は、l と r の発音にこだわるよりも、英語らしいビートを刻む一方で、どこで切れるのか、息を継ぐとすればどこかを体で覚えておく方が大事だと思っています。

英語を話すようになるには、理解し,記憶するという「知識」ならびに、真似し、練習するという「技能」の二つが共に必要だというのは学習者の共通認識だと思いますが、わが国の場合、教室の外に出れば英語が使われていないということも手伝って、生の英語の音がどういうものかに相応の注意が向けられていないと感じます。

その名も Speaking という名著を書いた Martin Bygate は、そもそも英語を話せるようになるためには、話の相手との関係で「何を言うのか」「どのように言うのか」といったことをこなす interaction skill に加えて、その言わば前段階として、どのように体を動かして言葉を発するかという motor-perceptive skill が必要だとしています。何が motor-perceptive skill かと言うと、Bygate はこう言っています。

Motor-perceptive skills involve perceiving, recalling, and articulating in the correct order sounds and structures of the language.

つまり、英語特有の音と作りがどういうものかを感じ取り、必要に応じて思い出し、それに即して口頭で再現する技能をいわば反射神経の域にまで高めて初めて英語を話せるようになるということです。

考えてみれば、アメリカ留学の経験がある知人は、アメリカに行った当初は「あごが疲れた」と言っていましたが、彼の場合は、観察の結果、息を吐きながら口を大きく動かさないと英語らしく話せないことに気がついたのでしょう。

逆に自分では口頭で英語の練習をしているつもりでも、日本語風に口をあまり開かずに発音しているようでは、進歩も限られます。シャドーイングなどで練習しているのに効果があがらないと言うような人に限って、テキストを読み上げてもらうと、ぼそぼそと、しかも日本語を読むかのようにすべての音節にアクセントを置きながら読んだりするものです。ひとことで言えば、メリハリのない息をセーブしたしゃべり方です。

Motor-perceptive skills とはよく言ったもので、たしかに、英語というのは意味のまとまりごとに息をスー、スーと吐きながら口を大きく開けてビートを刻むことから、運動神経の役割が大きいと感じる言葉です。

しかも1単語を発するのに72の筋肉を動かさればならないそうですから、単語の連続するセンテンスを外国語のビートに乗せて言うのはまさに反復練習あるのみです。

それでは練習のお手本として何がいいかを考えるに、オバマ演説などは一般の学習者には不向きです。というのも、演説の場合は、聴衆の様子を見ながら、時にはちょっとした演出のために敢えて長く間を取ったり、あるいは、We CAN and SHOULD...というふうに、普通なら強調しないものである助動詞を敢えて強調したりするからです。

素朴なきちんとした英語の話し方を研究するなら、本のテキストを朗読しているCDのたぐいがいいのではないかというのが私の考えです。じっくり聞き返していると、前置詞句全体をひと息で言っているなといったことがわかってくるものです。英語脳だとか英語耳というものがあるとは思えませんが、体で覚えるべき「身体知」があるのはたしかで、話し言葉の習得などはその最たるものでしょう。


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Comments

日向先生、はじめまして。いつも楽しく読ませていただいております。

 今回のコラムの最後の段落で「素朴なきちんとした英語の話し方を研究するなら、本のテキストを朗読しているCDのたぐいがいいのではないかというのが私の考えです。」と述べておられますが、これはいわゆるオーディオブックのことを指していらっしゃるのでしょうか。それとも書店で学習者向けに販売されているCD付きの教材のことでしょうか。よろしくお願いいたします。

今後とも楽しくも適切なアドバイスを期待しております。

[返信]

こんにちは。舌足らずで失礼しました。オーディオブック(CD入りのものまたはダウンロードする形式のもの)のことです。

息についてのお話、興味深く読ませていただきました。
私は長年吹奏楽に携わってきましたが、そこで教わったことが英語に役立っています。それは、「息のスピード(圧力)」という考え方です。
会話(音読)練習の際、大きな声を出す必要はありませんが、ある程度、息のスピードがないと、またそれを自分でコントロールできないと、音読は上達しませんし、書いたものを上手に読めなければ、impromptuで話すことなど無理です。
このようなことは、ネイティブに言ってもなかなか理解してもらえないのですが。。。

[返信]

なるほど、息のスピードという説明のしかた、わかりやすくていいですね。ただ、息を溜めてからコントロールしながら吐き出すことをやった人でないと言われてもちょっといピンと来ないと思います。

ネイテぃブは教わらずとも自然にやっているわけで、特別なことではないので、言われてもわからないのでしょうね。

大切な単語の母音を、少しのばし目に発音するだけでそれらしく響くようになるんですけれど、たいていの人はチャカチャカとできるだけ早口で話そうとしますね。その方がごまかしが効くと思っているのでしょう。

[返信]

世の中、そういったごまかしでいいと思っている人も多いようで、中国語を取った学生が、速くしゃべった方がぼろが出ないといったわけのわからんことを言っていましたが、これも同じですね。

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