2009年11月11日
He never gave up Ichihashi
市橋容疑者逮捕を報じる英文ニュースを読んでいて、「ああ、tail 」だと気づきました。
市橋逮捕後、会見に臨んだ父親は、コメントの中で、執念で逃げまくった市橋容疑者に言及し、こう言っています。
He never gave up, Ichihashi. He ran away from the scene of the crime, he was running away today when he was caught. 彼はあきらめることなく、逃走を続けていました。この市橋は。犯行現場からも逃げ、きょう、捕まった時も逃げている途中だったぐらいです。
He never gave up, Ichihashi.
のくだりはBBC News などは、カンマをあまり使わないイギリス流を反映して、
He never gave up Ichihashi.
と書いているぐらいで、へたをすると
「彼は決して市橋をあきらめなかった」と訳す人がいそうですが、これは、本来、
Ichihashi never gave up.
と言ってもいいのものを、敢えて話し言葉特有の流儀で、Ichihashi の「代用品」である He をアタマに持って来る一方、肝心の Ichihashi をシッポ (tail) の部分に回して
He never gave up, Ichihashi.
という言い方に仕立て上げたという話し言葉に特有の言い方です。
考えてみれば日本語でも似たようなもので、例えば、日本語でも、食べたステーキがうまかったと人に話すような場合、
「ステーキ、柔らかくてうまかったよ」と言う人もいれば、
「柔らかくてうまかったよ、ステーキ」という言い方をする人がいるのと同じで、英語でも、
(a) The steak was tender and delicious.
と言ってもいいし、
(b) It was tender and delicious, the steak.
とも言えるわけですが、ただ、おもしろいもので、英語の場合は、(a) なら書き言葉で使ってもおかしくないのに、(b) の方はずっと話し言葉っぽい感じがしますし、事実、書き言葉としては使えません。
以上をまとめると、tail というのは、センテンスの冒頭で一度出て来た単語をもう一度あとになって取り上げるパターンで、通常どおりの語順に比べて、話し言葉らしいインフォーマルな感じを醸し出します。
特に、こういった tail は、話し手本人による、いいとか悪いといった評価が前面に出る場合に、スポットライトを当てたい単語を際立たせるためにつかいます。ここでは、Ichihashi がネガティブな評価の対象であり、the steak がポジティブな評価の対象となっています。
わが国の英語教育はもっぱら書き言葉の英文法ばかり取り上げており、こういった話が取り上げられることはまずなさそうです。一方、洋書の文法書も、やはり書き言葉に焦点を合わせていますから、事情は似たようなものですが、そうしたなかにあって光っているのが、ケンブリッジ出版から出ている Exploring Grammar in Context です。
話し言葉ないし discourse の研究で知られている McCarthy らがまとめただけあって秀逸です。そうは言っても、DVDや映画などを通じて実際の英語のやり取りに触れた経験が相当ないと理解しにくい話が多く、ケンブリッジ英検で言えば、上から二番目のCAE 以上からでないと使いこなせないと思います。ただ、そのレベルの人には「そうだったのか」と納得させてくれる説明が満載です。
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御紹介の文法書を是非読んでみたいと思いましたが、Amazonで調べたところ、本のタイトルは
Exploring Grammar in Context
ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。間違っていたらすみません。
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大変失礼しました。書名はおっしゃるとおり
Exploring Grammar in Context
です。