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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2009年11月19日

企業「収益」or「利益」?

企業会計では売上を意味する「収益 = revenues」 と、そこから原価や人件費などの費用を差し引いた数字である「利益 = profits 」とは区別されています。したがって、こういった企業会計の常識を心得ている人は、収益と利益を混同しないよう気をつけるものです。

一方、ややこしいことに、アメリカの経済指標の一つに商務省が企業の「利益」 profits を集計しているものがありますが、その和訳となると「企業利益」だったり、「企業収益」だったりします。

そもそも、ここで言う corporate profits なるものは、商務省自身の定義によれば income earned by corporations from current production, before tax liability ですから、「税引前利益」のことです。

となると、理屈から言えば「企業利益」としたくもなるわけで、現にロイターや朝日新聞は「企業利益」という言い方をします。ところが日経は「企業収益」です。

お役所を見ると、例えば、経済企画庁の後身に当たる内閣府のウェブページは「企業収益」で通しています。

この点、マクロの指標の場合は「収益」でいいんじゃないという姿勢がうかがわれておもしろいのが小峰隆夫著『アメリカ経済指標入門』(東洋経済新報社)で、「企業収益」の項を見ると、「生産活動を通じて生み出された所得のうち、企業部門に帰属する部分(営業余剰)を表したもので、企業収益 (Corporate Profits) をマクロ的にとらえた指標である」と説明しています。

どういうことかを考えるに、結局、企業「利益」も、マクロの問題として取り扱うときは企業「収益」と呼ぶのが慣行になっているということでしょう。例えば,三菱総合研究所が出している資料などは、「企業収益とは、企業の売上げからコストを引いた「利益」のことである」と明快です。したがって、この資料からもうかがわれるとおり、財務省の「法人企業統計」で言う企業収益も中身は、会計で言う収益ではなく、経常利益つまり税引前利益のことです。

こういう背景に加え、自分では、是非はともかく、日本経済新聞が「ビジネス・ジャパニーズ」の標準語だと思っていますので、「企業収益」という言い方をしています。これを別に主張するつもりはないのですが、ただ、実際上、主張せざるを得ないときもあります。原稿に「企業収益」と書いてあると、出版社の校正者がわざわざ「企業利益」に直してくれるのです。こういった場合、いちおう考えた上で「企業収益」という言い方を選んでいるわけですから、こちらも負けじと「企業収益」と訂正し直す羽目になります。おかしな話です。

それにしても気になる用語の違いなので、来月半ばに発売される『経済・ビジネス英語2万語辞典』の corporate profits の項には、企業会計では profits は収益から費用を引いた「利益」を指すけれど、こういったマクロ指標の場合は、profits という言葉は使われていても、「企業収益」と訳すのが一般だという説明を入れておきました。

なお、最終利益を意味する net profit が net income と呼ばれたり、net earnings と呼ばれることについては、こちらの記事をどうぞ。

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