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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2010年1月 9日

(続)勝間和代さんの英語

勝間和代さんのブログに「Twitter 創業者、Biz Stoneさんへのインタビュー動画」というのがあり、前回の記事「勝間和代さんの英語」(2009年12月25日)の時と同様、またまた聞き入ってしまいました。

前回は、勝間さんがインタビューされる側でしたが、今回はインタビューする側にまわっており、聞き役です。したがって、「あいづち」が多くなるのは予想できました。ところが、日本人どうしのコミュニケーションにありがちな、こちらが何か言うつど「えー、えー」「そうそう」と相づちを打つスタイルがそのまま英語の世界に持ち込まれていたのには、びっくり。

勝間さんは雑誌か何かで「語彙力がないのに発音だけいいと子供っぽく聞こえるので、あえて自己流アクセントで通している」という趣旨のことをおっしゃっているようですが、頻繁に大きくうなづきがら相づちを打つ方がよほど幼稚な感じがします。加えて、見当違いなところで、いちいち uh-huh が入ると、英語的なリズムが乱されるためでしょうが、聞いている方はかなり辛い思いをします。(私が特殊な感覚を持っているわけではなく、ブログ「イギリスで暮らそうっと!」の mistletoe さんも同様のことを指摘されており、こうしたインタビューの動画につき「残念ながらイギリス人の友だちは、聞きづらくて見るのを途中でやめてしまったらしいです。天才!の方は相づちが不自然という話も・・・」と書いてらっしゃるぐらいです)

外資系の有名どころを渡り歩いたことで知られている方ですが、実は、職場で英語を話すような環境ではなく、業務で使う英語が書き言葉に限られていたのかも知れない、などと余計なことまで考えてしまいました。

なんであれ、上のビデオクリップをご覧になればわかりますが、最初の質問に対して Biz Stone が答えている、およそ30秒の間に、uh-huh が派手な首の縦振りともども4回もあります。研究者たちがあいづちの一種に数えている「笑い」も入れたら、6秒に1回、あいづちを打っている計算です。

同じく勝間さんの別の英語インタビュー(勝間さんが訳された『天才!成功する人々の法則』の原著者Malcolm Gladwell へのインタビュー )を見ても、およそ6秒に1回のペースで uh-huh が出て来ます。[このインタビュー、uh-huh を数えているだけでも一興です。ただ、ちょっと悲しかったのは、本の原題である Outliers の発音が間違っていることです]

これが多いのか少ないのかですが、英語を話す人間から見る限り、間違いなく、異常に多いと言える使い方で、勝間さんが日本語を話すときの流儀をそのまま英語を話すときにも持ち込んでいることがわかります。日本語会話と英会話でのあいづちの出現頻度を調べた研究から、日本語では英語の3倍も多くあいづちの使われることがわかっていますが、そのようにあいづちを多用する日本語のスタイルを英語の世界に持ち込んでしまってはコミュニケーションがうまく行きません。

この3倍という数字は Maynard という研究者が On back-channel behavior in Japanese and English casual conversation (Linguistics 24, 1079-1108) で指摘していることですが、同様に、White という研究者も、Backchannels across cultures: A study of Americans and Japanese (Language in Society 18, 59-76) という論文で、アメリカの大学に留学している日本人学生の英会話をアメリカ人のそれと比較すると、あいづちが3倍多く使われていると報告しています。

また、もう一つ、英語でのコミュニケーションがどういうものか研究してらっしゃらない「証拠」があります。あいづちと一緒に首を上下に動かす「縦振り」です。英語で人と話したことのある方は気づいてらっしゃるでしょうが、友だちどうしのどうでもいい話ならともかく、インタビューのようなフォーマルなセッティングでは、あいづちは要所要所で限定的に使われ、しかも首の動きはあまり目立たないのが普通です。

これは実証研究でも裏づけられており、泉・K・メイナード著『会話分析』(くろしお出版 1992年)では、「米会話では頭の動きのみがあいづちとして使われる率が日本語より高い[中略]しかし、頭の動きが短い表現に伴って使われた頻度は、米会話の場合[中略]日本語の場合より少ない」としています。

あいづちが多いことぐらい愛嬌だからいいじゃないと感じる方もいらっしゃるでしょう。私に言わせれば、三つ問題があります。第一に、普通に英語を話す人間からすれば、音的に、あまりに非英語的でけっこう辛いのです。むやみやたらとあいづちを打つと、コンスタントなビートを持つ英語固有のリズムが損なわれるからです。第二に、専門家がback channelと呼ぶ uh-huh などのあいづちは、始終挿入される話し手にしてみれば、自分の固有の領分を侵されていると感じられ、おもしろくありません。この点、バックチャネルを研究しているテキサス大エルパソ校の Nigel Ward は、こう指摘しています。

Obviously one can back-channel when the other person has the floor, but back-channeling just anytime can be rude. もちろん、聞き手は相手が話を続けている間バックチャネルを使えるわけだが、好き勝手にこれを差し挟むとあっては失礼にもなりうる。

第三に、上の第二点と表裏一体を成す話ですが、日本語会話の流儀に従ってのあいづちの打ち方は、英語によるコミュニケーションの枠組みになじみません。すなわち日本語の場合は聞き手が察することが当然とされており、その意味で会話によるコミュニケーションにおいては聞き手が責任を持つのに対して、英語の場合は、話し手が聞き手に頼ったりせず、自分の責任でコミュニケーションを担うという枠組みで会話が進められますから、こうした見地からすると、英語で話している際、聞き手がのべつ幕なしに uh-huh とやるのは、コミュニケーションを妨げもします。このあたりを Haru Yamada は、Different Games, Different Rules の中で、こう説明しています。

[B]ecause speakers are entitled to take center stage in American communication, listeners are more conservative in their use of back-channels...This more spartan use of back-channels in American conversations occurs because in American terms, instead of being supportive, overusing back-channels can raid a speaker's right to talk and take command. アメリカ型のコミュニケーションでは、話し手が主役になって当然なので、聞き手はバックチャネル(うなずいたり、あいづちを打ったりのフィードバック)の利用を控える傾向にある。こうしたバックチャネルがアメリカ人の会話において抑制されるのは、アメリカ型コミュニケーションという見地からすれば、バックチャネルを使いすぎることは、話し手に対するサポートになるどころか、話し手に付与されている発言を続け、また[話し手の交代などにおいての]イニシアティブを取る権利を侵害することにもなりうるからだ)

以上を要するに英語でもあいづちは打つけれど、日本語などと比べると、普通の会話でもあいづちなどは控えめに使われるということであり、そうである以上、インタビューのようなフォーマルで、しかも、話し手の話に主眼がある状況では、なおのことあいづちは控えられることになります。インタビューする方は相手が話している間、黙って聞いているものです。

論より証拠ということで、先に登場したMalcolm Gladwell のインタビューをご覧ください。ただし、こちらのインタビュアーは、Charlie Rose という、この方面では知られた達人です。


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Comments

Charlie RoseのMalcolm Gladwellとのインタビューを見ましたが、二人のやり取りから英語学習者が学んで得るものは沢山あると思います。intervieweeの話を聞きながら、切れのある質問をするところがまさに見所です。彼以外にも、Tavis SmileyやBill Moyerなど、この方面で第一人者として長年知られている方々も、やはり同じようにして注意深く聞きいるという姿勢をとっています。 

ちなみにRoseとのインタビューに参加したGladwellはOutlierとBlinkという二冊の洋書を出しており、どちらもアメリカ国内で評判が高く、英語学習者にとっても読む価値のある本と言えます。

[返信]

おっしゃるとおり、まともなインタビューは学習者のためになりますよね。ポイントは、英語によるコミュニケーションが生身の人間を相手にしていること、そのゆえに切り返し方や共感の示し方が勉強になることに気づくかではないでしょうか。逆に、相手のことなどおかまいなしに、ある程度英語ができるのをいいことに言いたいことばっかり言っているのは、本質的には寂しいモノローグでしかありません。

かなり古い記事へのコメント失礼します。
検索した際、グーグルで記事内容一覧のようなものが出ていたので、古い記事ですが、拝見させて頂きました。
英語での相槌は、私も悩んでいた点なので、大変参考になりました。結果的に、私は、相槌を控えめにしていたので良かったのですが、(多様するのは変に感じていたので)、でもそれでいいのか、相槌が少なすぎないかと不安を感じていました。でも、この記事を境に、自信を持って相槌は少なくていい、と思えるようになりました。相手がずっと話し続けている際は、日本人としては、相槌を打ちたくなりますが、我慢してじっと黙って聞いている(せいぜい黙ってうなづくぐらい?)、というのが英語の世界では普通、と捉えて良いのですね?
映像、拝見したいのですが、現在、パソコンの関係で見れないので、映像を見ればわかることかもしれませんが、ご返答頂ければ幸いです。これから、ニュースなどのインタビュー場面も、相槌に注意して見るようにしたいと思います。
uh-huhというのも、なんだか馴れずに、余り使わず(使えず)にいますが、なんだか、偉そうに聞こえる気がしてしまう、というのもあるのですが、それ(偉そうか否か)は余り関係ないのでしょうか?

[返信]

相づちはともかく控えめにというのが無難だと思います。自分でも英語で話しているときは、普段の日本語の流儀が出ないように意識して頭を抑えているような気がします。

uh-huhは I see の代わりという感じで時々、入れ、それ以外は、mmm で通せばいいのではないでしょうか。

filler words (you know, well, umなど) 、相槌なんかは簡単に覚えられるし、一応は英語ですから乱用されがちですね。確かに日本語の習慣の影響も否定できないと思います。
そういう目であらためて大前研一さんのビデオを見ると彼はとても洗練されていると気づかされます。

http://www.youtube.com/watch?v=AzW8DMX0QFY
大前さんがコリア大学で講演をやって、その後、インタビュー形式で学長と話をしているビデオです。途中30秒ほど音声が途切れます。

[返信]

ありがとうございます。「マッキンゼーにいた」という意味では同格なのに、こうも違うのかと驚きます。英語に触れるときの問題意識と観察力で歴然たる差があるからだと説明したくなります。

日向先生、ご無沙汰しております。

今回の記事を拝読して、自分の留学時代を思い出しました。ホストマザーがtalkativeであったので、私は聞き手役になることが多かったのですが、ある時私がuh-huhを連発していたことに苦言を呈されました。

良かれと思ってやっていたことが、相手をuncomfortableにしていたことに、ショックを受けた覚えがあります。

文化やspeech situationを把握して、適切なコミュニケーションをしていきたいと思います。

[返信]

こちらこそごぶさたしています。ご家族も増えたようで、おめでとうございます。

fukkenさんの場合は(おそらくは、たまりかねた)相手の忠告で歯止めがかかったからいいものの、勝間さんクラスの大物になると、まさか相手も面と向かって、「そのuh-huh、ほどほどにしといた方がいいですよ」なんて助言したりしないでしょうから、ずっと続くのかなと心配です。

日向先生

いつも興味深く、ためになる話題を提供いただき、ありがとうございます。

残念ながら「Twitter 創業者、Biz Stoneさんへのインタビュー動画」は見られませんでしたが、Malcolm Gladwell へのインタビューは見ることが出来ました。

先生がご指摘されるuh-huhという相づちと、時折はいるI see.という言葉が時折不自然に感じされるのが判ります。

これは私の推測なのですが、勝間さんは恐らく英語でエイティヴ(この単語が適切かどうかは疑問ですが・・・)の方と話すのに少し不安を持っているのではないかと思います。

uh-huhという相づちとI see.というコメントを出していないと、相手に自分が理解できていますよということを伝えられられないのでは?という心理が働いている気がします。

勝間さんはインタビューをする側なので、相手の言うことを理解できないと話にならないのと、録画されているプレッシャーもあるかもしれません。

ディスコースマーカーで、「You did.」とか「Is that so?」とかがありますが、こられを使いこなすには、先生の言われる千本ノックてきなトレーニングをかなり積まないとできないと感じています。

勝間さんは、外から指摘されないと自分が機械的な相づちやコメントを挟んでる不自然さが解らないと思うので、これを機に意識して直されると良いと思います。

自然な(自然に見える?)英語のコミュニケーションは、私たち英語学習者にとって難しいと感じます。

これからも私のような駆け出しの学習者にを刺激になる話題を与え続けていただけたら有り難いです。

[返信]

勝間さんのサイトへのリンク、修正しました。ありがとうございます。

さて、ご指摘のとおり、たしかに緊張、不安、プレッシャーという要因が働いていると善意に解釈する余地もあります。他面、世間で自信家とされている上、著作のタイトルからも自信を持つことが美徳と説いているようでもあり、画面のお顔を拝見していても、緊張のゆえにこわばっているのか、はたまた、元々自信家としての素顔がああなのかが判然としません。日頃からニコニコしている方だったら緊張していることがわかったでしょうに・・・

ところでディスコース・マーカーはおっしゃるとおり、練習を積む必要があり、そのためには、各種海外TVドラマをスクリプトといっしょにじっくり繰り返し見るといった「研究」と、自分だったらこんな感じでという「脳内リハーサル」が重要だと思います。

インタビューでの聞き手の相づちの使い方もディスコース・マーカー同様、研究すればわかるようになりますネットでいくらでも有名な人のインタビューを見て研究できるわけであり、その意味で、今回のインタビューは、はしなくも調査/研究の不足を露呈したと思っています。そうでないとすれば、英語のインタビューも、普段、日本語でやっていることを英語に置き換えればいいという自信過剰が裏目に出たのでしょう。

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