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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2010年1月28日

英語を話すための見取り図

春休みの課題である英会話本の骨組みができたので、ご紹介します。できたものを眺め直すと、本のタイトルは、

ディスコース・マネジメント:英語を話す人の頭の中

といったものにしたくなります。

なぜこんなものが重要かと言うと、英語を話す人たちどうしの間ではここにご紹介する段取りないし流れが共通の理解になっており、したがって、これを知らないで会話をするとなんだかぎごちなくなってしまい、思うように話せなくなってしまうからです。つまり、ターンテイキングなどのルールを知っていれば、話し手としての順番をいつ取りに行けばにつき見当もつくでしょうということです。

いつも感じるのですが、わが国で英語を教える人々は英語を学ぶことは英語文化を学ぶことでもあると口では言いながら、実際には、英語を使って暮らしている人々の社会でのルールがどのような形で会話に表れるのかを考えず、ひたすら文法と単語を、つまりは言語知識の側面ばかり見ながら教えています。その結果、何の疑問も持たずに日本語の流儀を英語で話すときにまで持ち込み、相手が何か言うつど、「ええ、ええ、そうそう」よろしく、uh-huh, I see を連発することにもなります。また、会議などでも、英語での「ひとまとまり」の話がどういうものかがわからず、切りのいい所で発言しようと思って待っているのに、結局、どこが切れ目かわからず、会議が終わってしまいます。

一方、学習上も、仕入れて来た言い回しにつき、「ああ、これはこういった局面で使うマーカーなんだ」とわかった上で整理して行けば、次に出会った際にも、実際に使える場面に出会ったときにも必ず役立ちます。脳内倉庫は整理されている方が検索も速いに決まっているからです。


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I. 英会話の世界の見取り図:対話であれ、三人以上の会話であれ、英語で話す場合の
構図は以下の5つの柱から成っています。

(1)待ったなしのリアルタイムで進む
(2)インターラクティブな共同作業である
(3)相手が誰か、状況はどうかを意識する必要がある
(4)当たり前とされている所定の手順・流れがある
(5)会話の流れ全体の中で自分の発言を位置づける

II. 会話は待ったなしのリアルタイムで進む。そこで・・・

 A. 話し手としての順番を持って行かれないように、Er, Um, Ohなどで、間を持た
  せる。
 B. 言い直したり、繰り返したりが許される(「正しい」センテンスを気にする必要がない)
 C. 決まった「固まり」が頻繁に使われる(コロケーション)
 D. やさしい単語が使われる(単語は2,000語レベル)
 E. 文法が書き言葉と違う(学校文法と違うので、フルセンテンスを組み立てようとモタモタしていると会話が成り立たない)

III. 会話はインターラクティブな共同作業。そこで・・・

 A. 代わる代わる話すというルールにしたがう(日本語のように共感を示す為に、相手が話しているときに割りこまない)
 B. 互いに合図しあって作業を進める
 C. 共同作業のプロセスが順調に行くよう保守点検をする
  1. 聴き取れなかった、わからなかったとき、話し手に確かめる(聞き手の役
   割)
  2. 通じているかを確かめる(話し手の役割)
 D. 相手への気遣いを示す。
  1. 会話という共同作業は見えない作業なので、気遣いを言葉で表して、いい関
   係を作ろうとする
 E. 沈黙は禁物。話すときも、ふた言以上にするよう努める
  1. 沈黙は禁物
  2. ひと言で終わらせず、ふた言以上になるよう努める

IV. 「相手が誰か、状況はどうかを考える」必要がある。そこで・・・

 A. フォーマルかインフォーマルかを判断
  1. フォーマルとは何か
  2. フォーマルかインフォーマルかは相手次第
 B. 状況に見合った言い方かを判断

V. 「会話には所定の手順・流れがある」。そこで・・・

 A. プレ・オープニング、オープニング、トピックの擦り合わせ、プレ・クロージン
  グ、クロージングといった基本的な流れを頭に入れておく必要がある
  1. プレ・オープニング
  2. オープニング
  3. トピックの擦り合わせ、転換
  4. プレ・クロージング
  5. クロージング
 B. 場面別の流れ

VI. 「全体の流れの中で自分の発言を位置づける」必要がある。そこで・・・

 A. 言おうとしていることが、先行する部分とどういう関係にあるかというロジック
  を示し、あるいは、どういう性質内容の発言かを明らかにし、常に自分の立ち位
  置を相手に知らせますが、具体的には、ロジックつまり話がどう組み立てられて
  いるかを明らかにするマーカー(標識代わりの言い回し)と、言おうとしている
  ことの性質・内容、つまり話の方向を示すマーカーとがあります。この中でも、
  ロジックを示すマーカーは、ひと言で終わらせず、ふた言にしていくために必須
  であり、きわめて重要です。
 B. ロジックを明らかにするマーカー
  1. 前へ前へと直線的に進めるマーカー
  2. 話に限定を加えたり、軌道修正するマーカー
  3. 一般的にはこうこうと言ってから、「これはどうなんだろう」と例外を際立
   たせる
  4. 何か言ってから、「それは違っている」「正しくは」「実は」と自分の理解
   を打ち出す
  5. 「一方で、他方で」とバランスを取りながら話をする
  6. 何かを言ってから、「時間的にいつのことか」「どちらが先か、後か」など
   を示す
  7. 「第一に、第二に」と、順番を示しながら話をする
  8. 「ところで、話は違うんだけれど」と横道に入る
  9. 「話を元に戻すと」と告げる
 C. 話の方向を示すマーカー
  1. 発言の位置づけをし、「こういう理解で聞いてください」と伝えるマーカー
  2. これから言うことに(客観的立場から)コメントをしておくマーカー
  3. 自分がどう思っているかを(主観的評価・感想)を伝えるマーカー

さいごに

いかがでしたか。これからの作業は、マーカー部分を中心に、Conversation Analysis や Discourse Analysis の本を読み返し、英会話の姿がくっくりと浮かび上がらせるようなコメントを増やす一方で、狩野みき先生が普段の自分の会話を思い出しながら「ロジックを明らかにするマーカー」に重点を置きながら会話例を入れて行く予定です。

会話における中級と上級の差は単語力だとか文法知識の豊富さといったことではありません。最大の違いは第一に、どうインターラクトしたらいいのかがわかっていることであり、第二が、インターラクションを滑らかにする上、厚みをつけることになる、接続表現、すなわち、上で言っている、「ロジックを明らかにするマーカー」と「話の方向を示すマーカー」を自在に使えることです。

このことをヨーロッパ共通参照枠は、中級の上であるB2+の到達水準として、こう形容しています。

Can use the language fluently, accurately and effectively on a wide range of general, academic, vocational or leisure topics, marking clearly the relationships between ideas. 一般的な話題、学術関係など大学レベルの話題、職業上の各分野の話題、日常的な余暇に関わる話題などの広い分野に渡って、つっかえたりすることなく、文法や用語において正確に、かつ、効果的にその言葉を使うことができ、しかも、その際、話の中の要点どうしを明確に結びつけていること。

ここで出てくる marking clearly the relationships between ideas がいかに大事なのかは、このヨーロッパ共通参照枠に準拠している唯一の英語検定であるケンブリッジ英検の尺度を見るとわかります。

各レベルをクリアするための要件中、ここに関わる部分を取り上げると、こうなっているのです。

B2 (FCE) の場合は、able to organise extended discourse

☞ ひとこと程度で終わらせず、ある程度の量のある、ひとまとまりの話 (extended discourse) をこなせなければならないという以上、当然、ひと言をふた言にするスキルが必要です。

C1 (CAE) の場合は、express ideas and produce discourse that is generally coherent

☞ 概ね筋道の通っている話を組み立てるという以上、これも当然、接続表現がものを言います。

C2 (CPE) の場合は、produce extended discourse that is coherent and always easy to follow

☞ ここでは C1 で求められるレベルが完成の域に達していることを要求しています。

以上でご覧のとおり、英語で話すためにはロジックや方向を示す接続表現ないしマーカーが重視されており、それをこなして(単に量があるだけでなく)筋道のとおった話ができるかが中級と上級の境目となっています。そして、その種のマーカーを的確につかいこなすためには、自分がどの局面にいるのかがわかる、英会話の全体図が必要なのであり、そのためにこそ、今、ガイドブックを執筆しているわけです。


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Comments

日向先生、こんばんは。

出版されるのが楽しみな本ですね。英会話の本はこれまでにもたくさん出ているでしょうけれど、既存の本とは発想そのものが違っているのですね。

日本人同士の会話では、話し手の言うことに聞き手が関心を持てないと会話はそれでおしまいです。でも英語での会話の場合、話し手が何か一生懸命言う限り、それに対して何がしか反応するというルールはなんとなく感じていました。

もちろん、英会話を続けるためには、会話というのものがどうやって膨らんでいくのかを知っておいた方がいいわけですし、その枠組みを解説・提供していただけるわけですね。

[返信]

おっしゃるとおり、既存の英会話本がいわばミクロの世界ばかりを扱っているのを見て、英語で話すということがどういうことなのかをマクロ的と言うのか、鳥瞰図をお見せしようと思い立ったわけで、片言をふくらますための案内図を作れたらを思っています。

励ましてくださり、ありがとうございます。頑張ります。

普段何気なく話していても
こうして図式?になり、ロジカルに解析されると・・・・
「なるほど!!!」となりますね。

出版にこぎつけるまで、色々大変かと思いますが
頑張ってください!

[返信]

励ましてくださり、ありがとうございます。普段、英語を教えてらっしゃる方とあっては、なおさらです。

すばらしいです、日向先生。

このご本、なるほど~そうやって英語での会話は進んでいくのだと、身繕いできそうです。
出版されたら「英語を話せるようになりたい」「どうしたらいいのか」と聞いてくる人々に強く推薦したいと思います。

(ディスコース・マネジメント、インターラクティブ、マーカー、コロケーションなどの用語がわかりにくいかも、と思いました)


そして、お願いです。
その続編で、「マーカーを言われたら、どう言ったらいいか、こう言おう!」があったら嬉しいです(笑)。定例文を覚えて言うのはいいのですが、反対に言われたら答え方が分からなかったりします(泣)。 出版社の方、是非ご検討をお願いしま~す。

[返信]

おっしゃるとおりカタカナ語はわかりにくいので、補足を心がけます。

相手がこう来たらどうしようというたぐいの話は落ち着いて考えれば、どうということもないわけで、ひとまず受け止めるためのマーカーを使って、あとは、自分なりの考えを、(宣伝で申し訳ありませんが)これまた、この本で取り上げるマーカーを節目で使いながら組み立てていけばいいのだと考えています。

ただ、よく言われるとおり、話すべき内容が先にない限り、いくら英語のリソースが整っていても意味がありませんから、日頃から、あれこれと知識にふれるつど、ものを考えるよう心がけている必要もあるかと思います。

日向先生こんにちは。

執筆されている本の内容は、私には初めて目にするものばかりで、読むのが非常に楽しみです。どのように気を付けて英語を話したらいいのか、しっかり身につけたいです。これからも、英語教育界での先生のご活躍をお祈りしています。

[返信]

なんだかご予約を頂戴したようで、うれしいことです。ありがとうございます。

ちなみに、内容は会話分析の本ではどの本も取り上げる、ごく普通のことです。それだけわが国の英語教育が時代遅れということなのでしょうね。

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