2010年4月14日
CAに必要な英語力はどの程度なのか
操縦席内で機長らが見張り義務そっちのけで記念撮影したり、社長が機長の判断に横やりを入れケンカしたりとデタラメ続きのスカイマーク社に対して、4月6日、国土交通省が業務改善勧告を出したと報じられていましたが、その中に以下のような一項があり、なんだろうと思っていました。
先任客室乗務員以外の客室乗務員に英語力が不足しており、外人運航乗務員との間で意思疎通に支障があった事案があったにもかかわらず、適切な対策が取られていない。
こうなると、どういう事案があったのかと気になります。それで調べてみたら、6日付けの産経新聞の「『英語に自信なく…』客室乗務員インターホン取らず スカイマークに業務改善勧告」という記事があり、
国交省によると、複数の客室乗務員の英語力が不足しており、パイロットとの意思疎通に問題があった。英語が苦手なために、操縦室の外国人機長がインターホンで客室を呼び出しても受話器を取ろうとしないケースも確認されたという。こうした行動は社内でも問題視されていたが、具体的な対策は取られずに放置されていた。
と説明されていました。その昔、当時の四大証券に務めていた人から、国際部門なのに英語の電話をうっかり取ってしまった新人君が「外人だ!」と受話器を放り出した話を聞いたことがありますが、まだこんな状態なんですね。
ちなみに、この一件、昨日、13日、スカイマーク社から改善計画書が出されましたが、国交省の注文に対する会社側の対応はと見ると、以下のとおりでした。

[注記:上の画像を見てわかるとおり、提出されたスカイマークの報告書の現物にはどこにもTOEICが出てこないのに、14日付の朝日と日経はともに「外国人パイロットと客室乗務員の意思疎通がうまくできていなかった問題については英検準2級・TOEIC500点以上の英語力を持つ客室乗務員を1機あたり2人以上搭乗させる」ことになったと報じています。ちなみにTOEIC500レベルというのは、まずは話せないのが普通です。長くなるのでやめておきますが、乗客の生死を左右しかねない乗務員の英語能力を測るのに、受験者どうしのコンテストでしかないTOEICをを持ち出すこと自体、不見識な話です]
いかにも泥縄的な「客室乗務員の業務に必要な英語力の基準を設定し」というくだりにはびっくりします。まあ、国内線だから大した英語は要らないと安心していたら、低賃金で働いてくれるということで、まるで日本語のできない外国人パイロットを採用するようになって、一気に問題が表面化したのでしょう。一方、外国人パイロットたちにしてみれば、航空業務の公用語は英語ですから、客室乗務員は英語を話せると期待して当然ですし、現に機内アナウンスは英語でもやっているわけで、ますますそう思っていたことでしょう。
考えてみれば、わが国の場合、客室乗務員については、アメリカのように航空当局が管掌している資格制度(アメリカの場合、定期航路のCAを対象にセキュリティーの確保を主眼とする資格制度を定め、証明書を発行しています)があるわけではなく、また、英語力についても、関係者から以前聞いた話では、TOEICで 600程度あれば入社試験には支障ないということでした。(そもそも客室乗務員は国が定める資格要件を満たさねばならない「航空従事者」かという議論があるようです)
となると、いったい「客室乗務員の業務に必要な英語力の基準」とはなんぞということになりそうですが、こうした航空業界で求められる基準については国際民間航空機関(ICAO)がレベルを定めていて、2008年からパイロットと管制官はICAOの定める指標上、「レベル4」をクリアしていなければならないとしていますから、ひとまず、このレベルが業務上必要な英語の水準を示していると言えます。レベル4から上が operational (業務適格性あり)と呼ばれているのに、下は、pre-operational (業務適格以前の段階)、elementary(基礎)、pre-elementary(基礎以前の段階)と区分されているからです。
どの程度の英語ができれば、航空業界で通用するのか、また、CEFRやケンブリッジ英検と比べるとどのぐらいなのかと興味もありますので、ちょっと調べてみることにしました。具体的には、レベル3つまり不合格とされるレベルとの対比で、レベル4をクリアするための条件を見ていくことにします。
つづく
追記:日本語では客室乗務員を指して CA で通っているので、タイトルに入れましたが、英語としては、flight attendant という言い方の方が普通です。
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この報道にはびっくりしました。というか唖然でした。
客室乗務員の英語力向上っていうから客とのやりとりをもっとスムーズにする程度かと思ってよく読んだら、、全操縦士らと全客室乗務員がまったく意思疎通できず、機長がインターフォンで指示をしようとしたら誰も応じなかったということもあったという報道でした。
これじゃあ、とてもとてもいざというときの安全なんて確保できません。
しかもその英語力について、2人がTOEIC500程度または英検準2級程度の英語をクリアしておけばよく、あとはそれ以下でいいわけで、そんなので、いざというときの意思疎通問題が解消されるはずはありません。
[返信]
何から何までおっしゃるとおりで、これもおっしゃるとおり、ショッキングです。
- いしだて
- 2010年4月14日 18:26
私は現在英語勉強中です。以前は適当に外国人と会話ができることで満足しておりましたが、以前、時事記事などを読んだ際、ほとんど理解ができない事に衝撃を受け、再度真剣に勉強に取り組むことにしました。
勉強すればするほど知らない事、分からない事が多いことにくじけてしまいそうですが、「やれば必ず」を信じ頑張っています。
毎日パソコンを開いて複数の英語記事を読むことを自分に課していますが、一通りの作業が終わり、最後に先生のコラムを息抜きに読んでいます。
様々な話題を取り上げ鋭い意見をお持ちでいらっしゃり、大変勉強になります。
話がそれましたが、今後様々な英語資格試験に挑戦し、英語を使った仕事ができればと夢見ている私にとって、今回の話は非常に興味ぶかいです。
客室乗務員に必要とされる最低英語力とはどのくらいなのでしょうか。
自分の英語力確認の目安にしてみたいな。と思います。
[返信]
CAに必要な最低ラインは同時に業種を問わず、仕事で英語を使う上での最低ラインと重なるでしょうから、その意味でいい刺激になりそうですね。期待に応えられるよう、続編、頑張ります。
- chika
- 2010年4月14日 16:09
日向先生こんにちは。
ブログを毎回楽しく読ませてまた勉強をさせていただいております。
さて件のニュース、自分も昨日テレビで見ておりました。ニュース映像で「英語力が乏しく云々」の部分が放送された時にとっさに頭に浮かんだのが「ビジネス英語雑記帳で記事になるかも」でした。
我が国における英語関連の認識の甘さ、疎さを露呈するかのような今回のニュース、いつもながら残念です。
続き、心より期待しています。
[返信]
おっしゃるとおり、英語関連のニュースというのは何か力が抜ける感じのが多いですね。他面、先読みして期待までしてくださる読者がいるとなると、頑張っていかねばと力が入ります。頑張ります。
- roland
- 2010年4月14日 12:44
どういう展開になるのか? 楽しみ、楽しみです。
しかし、「客室乗務員の業務に必要な英語力の基準を設定し・・・」? 何とでも解釈できますよね。 「3歳のアメリカ人の子供が望む飲み物を提供できるか?」 とか。今まで、turbulence (s はつきませんね!)に巻き込まれたとき、どうしていたんでしょう?
輸送機関という点では、アキオちゃんも笑われものになりました。お客様の安全管理を担う者として、こんなことでは「喝」です。
責任ある立場の人は、先生の本を丸暗記して、その場その場に適切な表現で、誤解なく顧客にメッセージを伝えられるようにならないと。
[返信]
こんにちは。毎日読んでくださっているんですね。多謝。
基準について、ICAOは「何歳ぐらいのネイティブ」という方式ではなく、発音、構文、語彙、流暢さ、理解、イーンタラクションの6つの評価項目を設けています。この中でも目を引くのが発音をいの一番にしていることです。ですから、仮にわたしが航空英語の本を書いて丸暗記してくれても発音が駄目だったらアウトです。
たしかに乗客輸送の場合、発音は大事ですよね。この前、日本籍の船に乗ったときなど、避難訓練の放送、何を言っているのか、まるでわかりませんでした。録音ものにすればいいのに。
- めいけんとパパ
- 2010年4月14日 06:43

「天下りに重要なJALの再建には税金は使うけど、低コストなライバル会社はJAL再建の邪魔だから撤退してね」by 日本政府
という気がしてなりません。
そりゃあ客室乗務員にも英語力は必要ですが、ならばスカイマークに基準を作らせるのではなく日本政府なり国際資格なりを使って、「全航空会社に対して」公平に義務づけるのが筋というもの。
「英語力が不足」とか「適切な対策」というのは恣意的に運用するための方便に使えるので、あまり適切な用語とも思えません。
国交省が「ICAOの定める指標上、「レベル4」以上を取得すること」とかの基準を『全航空会社に対して』提示していただいて、たとえばJALのCAの何%がクリアできるのか楽しみですね。
PS。
TOEIC500レベルが論外というのは同感。700点台でも難しい話題になると、同等に厳しいです。
[返信]
JAL再建のため低コスト航空会社をいじめるという話はよく聞きますが、どうなのでしょうね。証拠がないことには。
国内線では規則があるのか英語のアナウンスをやっていますから、それを考えると全社に対してICAOのレベル4というのはきわめてオーソドックスかつ安全優先の考え方だと思います。そのうち客船業界みたいにCAがほとんどフィリピン人という時代が来てもおかしくないわけで、そうなるとますます英語のレベルの確保が重要になりますもんね。