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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2010年4月28日

小沢幹事長のコメントを英訳する:やましくない、淡々とこなす

検察審査会が小沢幹事長は起訴相当であると議決したのを受け、朝から新聞やテレビが盛んに報じていますが、こういうときは、英文の各種メディアでわれわれ日本人がわかっている言葉の英訳が多数出てくるので、勉強の一大チャンスです。

例えば、小沢氏のコメントにある「何も疾しいことはない」とか「与えられた職務を淡々と全力でこなしていく」なんてのは英語でどう言うんだろうなと考えてしまいます。

この点、まず The Wall Street Journal は、「何も疾しいことはない」という発言を

I myself have done nothing wrong.

と訳しています。まあ、平易ではあります。つまり「何も悪いことはしていない」という和訳になりますから。しかし、踏み込んで、「疾しい」という日本語にずばり対応した訳としては、

I have nothing on my conscience.

だろうなと思います。これはたしか、聖書のどこかに出てくるはずで、そのぐらいポピュラーな言い方です。

次に「与えられた職務を淡々と全力でこなしていく」というくだり、同じく The Wall Street Journal は、

I intend to continue doing the work that I'm given one step at a time.

と訳しており、「淡々と」が "one step at a time" となっているのが目を引きます。どうして「淡々」が「一歩一歩、着実に」を意味する one step at a time になるのかと不思議です。

政治家や官僚が好きな「粛々と」(これ、いつか取り上げたい、面白い言葉です)のライト版という趣がある、この「淡々と」は、「小事にこだわらない」「関係することであっても、必要以上に注意を払わない」「かかずらわないようにする」ということですから、one step a time という英訳はどうかと思います。

ここでちょっと biglobe.ne.jp の辞書(三省堂「エクシード和英辞典」だそうです)で「淡々」の訳を見ると、以下のとおりで、いずれもちょっと違うなと感じます。

・~とした cool; disinterested; 《無関心な》indifferent.
・~とした態度をとる assume a disinterested attitude.
・~と話す talk dispassionately.

思うに、まず、「これからも全力で・・・」と言っているわけですから、

I will continue to commit myself fully to my duties. あるいはちょっと気取って、

I will will continue to commit myself fully to the duties of my office.

などと訳せます。

問題は、「淡々」の扱いです。要するに「小事に惑わされずに」「これからも全力で」どうのこうのと言っているのですから、「集中を妨げられてたまるか」という気持を表せばいいわけで、それなら、"regardless of any distractions" といったあたりでしょう。そこで、自分が訳すとしたら、

I will continue to commit myself fully to my duties regardless of any distractions.

でしょう。しかし、話し言葉としては、長過ぎますから、自分が話すのであれば、二つに分けることでしょう。ついでに、音が似ている attend と attention を使って響きをよくしておくと、こんな感じです。

I will continue to fully attend to my duties. Nothing will distract my attention.

英訳ということで言えば,もう一つおもしろかったのが、各社の「検察審査会」の訳です。ざっと並べておくと、以下のとおりで、思い思いの訳をしています。一番いいなと思うのは、名が体を表している WSJ の訳です。というのも、judicial という形容は、裁判所の判決までも審査対象とできるかのようで、誤解のもとです。また、inquest は、普通、「検死審問」のことを指しますから、しっくり来ません。

prosecution review panel (WSJ)
judicial review panel (Kyodo, Reuters)
a citizens' judicial review committee (FT)
inquest panel (Japan Times)

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Comments

ありがとうございます。
石田英一郎氏の書物を幾つか読んでみようと思います。

have a clear/guilty conscienceというのは聖書だけにある表現ではなくて、日常で結構使われている表現なのですね。機会があったら使ってみようと思います。ありがとうございます。

[返信]

どういたしまして。石田先生の本は、別の本で、石田先生の「東西抄」に、中国経由で日本に伝わらなかったものが二つあり、一つが鍵の文化、他が弁論術だという話が載っているとありました。それで東西抄を買ったのですが、どこを探してもそんな話はありませんでした。しかし、それはともかく、日本と西洋文化の対比という点ですばらしくためになる本でした。

「味わい深い英語表現」を教えていただき、ありがとうございます。ただ、独善的な小沢氏が、口頭で "I will continue to fully attend to my duties. Nothing will distract my attention." といった丁重な表現をするとは思えないですよね。

小沢氏的な表現だと、" I haven't done anything wrong. That's what I have explained everything to all of you. I will continue my work. Don't disturbe me. Go out! " といったところではないでしょうか。

(PC の調子が悪く、先生のところに何通も届いているようでしたら、申し訳ありません)

[返信]

コメントありがとうございます。小沢さん、よくよく聞いていると、ずいぶんと乱暴なことを言いながらも、形式的にはバカ丁寧で、慇懃無礼を地で行ってますから、意外と英語でも馬鹿丁寧なぐらいがけっこう合っているのかも知れません。他面、報道というのはおかしなもので、本人がけっこう乱暴なもの言いなのに、書き言葉の上では妙に丁寧だったりしますから、むずかしい問題でもあります。

本文中の
>>I have nothing on my conscience.
は、http://www.sacredbible.org/ にありましたが、多分、西洋人は、日本人は仏教徒という先入観があるため、この表現はあえて避けるような気がするのですが、いかがでしょうか?

最近、宗教教典等の英文と日本語文の読み比べを始めました。なかなか面白いです。例えば古事記の神の英語訳としては、deitiesになっていたりします。ところで、ここのコメント欄で、西洋と日本の事柄を三千(?)ぐらい比較していたという学者か何か専門家の方の名前が挙がっていたと思ったのですが、覚えていらっしゃったら名前をお教え願えないでしょうか?

あと、最近 伊藤サム氏の本を読んでいたら ジャパンタイムスの紙面上で「ノーパンしゃぶしゃぶ」をいかに英訳して載せたかということを紹介していました。今回の内容と合わせ、とても興味深いですね。

[返信]

仏教徒だから conscience を避けることはないと思います。わたしの理解ではconscienceはキリスト教、独自の概念ではなく、誰でも have a clear/guilty conscience という状況に置かれうるはずです。

あと、おっしゃる専門家、考えてみたんですが、自分で何か、その方面の人に触れたことがあったとすれば、石田英一郎という研究者かなと思います。

検察審査会ですが、法務省提供の「日本法令外国語訳データベースシステム」では Committee for Inquest of Prosecution となっているようです。
刑事訴訟法第二百六十七条の二(http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=15&vm=04&re=01)

「翻訳は公定訳ではありません」という断り書きもありますので、各社それぞれの営業努力で訳を工夫しているのでしょうね。

[返信]

ありがとうございます。そうでしたか。ま、of Prosecutionという限定がついていれば、inquest でいいような気がしますが、ただ、ネットで検索するとわずか20件で、一種の和製英語の観があります。

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