2010年10月 2日
中国人は listener talk なのか
このブログでも何度か触れていると思うのですが、Haru Yamada の Different Games, Different Rules (Oxford University Press) に感化され、日本人のコミュニケーションスタイルが「察し」を旨とするものであるのに対して、アメリカ人のコミュニケーションスタイルが何から何まで話し手が自分の責任で述べ、相手に解釈を委ねないものだという、listener talk vs speaker talk という枠組みが頭に入っています。そこで、先日の仙谷官房長官の「漁船員と船体をひとまず返せばわかってくれると思っていたのに・・・先方の司法過程への理解がここまで違うことにもっと習熟しておくべきだった」という発言が報道されたときは、とっさに、中国人はもしかして speaker talk であり、したがって、「察してくれよ」というアプローチが通用しないんだろうなと思いました。
そこで、中国人のコミュニケーションスタイルはどうなんだ、speaker talk なのか、listener talk なのかと調べたところ、ひとまず解答がありました。
A Comparative Study of Commu icat ion Styles among Japanese, Americans, an d Chinese: Toward an Understanding of Intercultu ral Frictionという論文(英語)で、Teruyuki Kume (Rikkyo University), Atsuko Tokui (Shinshu University), Noriko Hasegawa (Hokusei Gakuen University), Keiko Kodama (Okinawa University)という4名の研究者の共著になっています。
この論文は先行研究 (Gao, G. & S. Ting-Toomey (1997) Communicating Effectively with the Chinese. Beverly Hills, Calif. Sage Publications.) を引用して、中国人は "listener-centered" だとしています。ただ、Yamada が言う、相手が察してくれることに依存するコミュニケーション・スタイルとは視点がやや異なっており、誰が一番しゃべるかはそのグループの中での上下関係で決まるとか、長幼の序が重視されるとか、あるいは、仕事場では人の言うことに耳を傾けるのが重要とされるといった説明になっていますから、個々人が積極的に言いたいことを言うカルチャーではなく、基本的にコミュニケーションではみな聞き役に徹することが求められるということのようです。
その一方で、同じく Gao & Toomey の研究を引いて、中国がハイコンテクスト文化つまり同質的社会であるがゆえに暗黙知が多い分、いちいち言葉に出して表現する部分が少なくなる文化である証拠に、"Not saying all that is felt." (「思ったことをすべて口に出すのではなく、一部は腹の中に収めておく」)、あるいは、"More is meant than meets the ear." (「口で言っていることだけからはわからない言外の意味があるものだ」)といった言い回しが種々あるとしています。
そして、きわめつけとでも言えるのが、この研究者たちの結論。いわく、
...the most desirable communication practice in China is to let things speak for themselves. (中国におけるコミュニケーションのあり方として実際上,最も好ましいとされるのは、事実をして語らせよというアプローチだ)
考えさせられます。格別理由も告げないまま,わかっているだろうなと言わんばかりの態度で、各種交流行事をキャンセルし、日本人社員を逮捕し、あるいはこちらからの働きかけを黙殺するという、今回われわれが経験した中国の流儀。なるほど、「事実をして語らせるアプローチ」とはこういうことだったのかと改めて感心します。
結局、一番最初で紹介した listener talk vs speaker talk という構図では捉え切れないのが中国人のコミュニケーション・スタイルということのようです。それにしても厄介な隣人です。
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迅速かつご丁寧なお返事ありがとうございました。早速2冊取り寄せて取り組みたいと思います。
[返信]
あと、ネットでスクリプトを入手できますから、自分の好みのドラマをレンタルなどで入手し、英文字幕とこのスクリプトを使いながら繰り返し見ることで、日常の英語に早く溶けこめた人を何人か知っています。試されたらいかがでしょう。熱心な日本人学習者ほどむずかしい単語を知りすぎており、2000単語レベルのやさしい単語を自在に使い回すスキルに目がいかないというケースが多いようです。これでは英語での生活が楽しくないに決まっています。
- YT
- 2010年10月 4日 09:37
アーカイブ拝見。
(これは便利です。)
ということは3日に2本、記事を書いておられるのですね。それも一つ一つが本当に深い。
筆力、というよりも、知識量に圧倒されます。
今後とも楽しみに。
[返信]
ありがとうございます。時間のあるときに書き溜めるようにしています。
- 浜地道雄
- 2010年10月 4日 05:48
早速お返事をいただき感激いたしました。ありがとうございます。
ブログの文面から、本気の学習者に対して誠実に向き合っていらっしゃるご様子が伺われ感じいることしばしばです。
現在米国にいるものの、このブログを拝見して是非先生の著書を購入したいと思い至りました。ただ、自分の現在のレベルやニーズに照らして、複数ある御著書のうち、どれが最も効果的であるのか判断するため、アマゾンで中身のサンプルを拝見したりレビューを読んだり研究中です。お忙しいとは思いますが、御推薦をいただければ幸甚です。以下が私の状況です。
・日本生まれ日本育ち、過去の海外在住経験は25歳の頃1年間英語圏で業務研修したのみ
・国立大学商学部卒業後、総合商社にて海外営業7年、財務部2年勤務
・TOEIC960点、TOEFL106点
・今年8月から米国ビジネススクールへ留学、今後2年間MBAプログラムを履修予定
・ビジネススクールでの講義は7割程度は理解できるが、発言するほどの自信が持てずにいる
・ケース等の読み込みに非常に時間がかかり、平日の睡眠時間が一日2時間程度
・クラスの友人との日常会話が苦手。相手の言っていることが頻繁にわからない。自分も少し込み入った話になると表現が不自然になり時間もかかる。
まずは2冊、と考えています。「知られざる英会話のスキル20」は是非購入しようと考えていますが、もう一冊は何が宜しいでしょうか?ご著書以外でもお勧め書籍がもしございましたらご教示いただければ幸甚です。
[返信]
資料を読める英語力があるなら、計画されているとおり、まずは「知られざる英会話のスキル」で話し言葉の「継ぎ目」をしっかりやることでしょう。また、当面は話し言葉をマスターという視点から言えば、「即戦力がつくビジネス英会話」、特に各章の冒頭にある会話例を聞き取れるまで繰り返すことが大事だと思います。並行して、Longman Advanced American Dictionary 中、ボックスになっている Spoken Phrases に焦点を合わせ、毎日、どこかでチャンスを捉えて無理矢理使って行くと自信がつくのではないでしょうか。これは不自然な感じもしますが、receptiveではなく、productiveな学習法の方が残るという意味では合理的で、実際、留学経験者がけっこう実践しています。いずれにしろ、当面はやさしい単語の組み合わせでしかないコロケーションを中心にやられた方が即効性が得られて、自信がつくはずです。頑張ってください。
- YT
- 2010年10月 4日 03:32
現在留学中の社会人です。英語に関する悩みのつきない学習者として非常に参考になる記事ばかりで、大変興味深く拝見しております。
さて、この記事に関するコメントではないのですが、先生のブログにて、エントリーの件名を一覧するようなことはできないのでしょうか。参考になった記事を再見したいと思った際に、延々と「前の記事へ」をクリックしなければならず、大変時間がかかってしまいます。当方で忘れずブックマークをすればいい話ではあるのですが・・。
先生ではなくアルク社にお願いすべきことでしたらご放念下さい。
[返信]
読んでくださっているとのこと、ありがとうございます。
エントリーを一覧するためには、このブログのトップページの左下にある過去のアーカイブをクリックすれば出て来ます。念のため、URLは
http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/archives.html
- YT
- 2010年10月 2日 19:22

返信が遅くなり大変失礼いたしました。さらなるアドバイスありがとうございました!これまでドラマや映画を使った学習はしたことが殆どなかったので試してみたいと思います。