2011年2月15日
英語のallusion
Twitter で、チョコレートのGodivaの発音、英語音ではゴダイバなのに、ブランド名はゴディバで、不思議だとつぶやいたところ、そういえば IKEA は、英語圏ではアイケアだといった「余波」を含め、けっこう反響がありました。
そうした中、こちらのつぶやきへの返信という形で、こういう投稿がありました。
その「ゴダイバ」のロゴ、裸の女の人が馬に乗っている絵柄です。さてその由来は?(私も最近知ったのですが・・・) RT @hinatakiyoto バレンタインで売れまくっているであろうチョコレートのブランド、Godiva。英語的には「ゴダイバ」なので、いつも不思議。
投稿者のSThenshubu 、まさかと思いながらプロフィールを見ると、ジャパンタイムズが出している週刊STの編集長と称している方。でも、英語のプロが Lady Godiva を知らないというのも、変ですし、仮にも、ものを書いて給与を得ているような方が、「裸の女の人が馬に乗っている絵柄」という芸のない日本語表現をするとも思えず、ニセモノと判断し、こう返事しました。(個人的な趣味と言われるかも知れませんが、「裸の女の人」という形容、ひどく耳障りで、かっか来ます)
この話題のスレッドでrhb4さんがLady Godivaに言及してらっしゃいます。STつまりジャパンタイムズの社員がこの程度知らないはずがありませんから、詐称と判断し、ブロックします。
Lady Godiva ぐらい知らなくていいじゃないと思われるかも知れませんが、わかりやすいものに自分の言いたい抽象的なことを託して例示するのは英語ではallusionと言い、上級者レベルでの必須科目のひとつです。
と言うのも、英語は話したり、書いたりする人は、allusion を使うことで、長々と説明することを省けるという意味でコミュニケーションの効率を上げられますし、表現が豊かになり、読み手や聞き手も話を楽しめるというものです。だからこそ、英語を勉強した人はネイティブを含め、ひととおりの allusion は心得ているわけで、そうとすれば、翻訳や通訳に携わる人々はもとより、英字新聞に携わるような人も英語のプロとして普通の人以上にこういうものを知っていてしかるべきだというのが私の考えです。特に有名な英字新聞で学習者向けの刊行物を担当しているとなれば、対世的にそれなりのクレディビリティーがあるわけですから、人々の信用を裏切らないだけの英語力が求められて当然ではないでしょうか。
ところで、具体的にどんなものが allusion かについてですが、以下のようなものが頭に浮かびます。
It's a typical Catch-22 situation. [Joseph Heller の同名の小説から。経験者じゃないと就職できないと言うけれど、就職できなきゃ経験者になれないじゃないかというディレンマの代名詞。ちなみにこの小説、自分には退屈でした]
They're living a Romeo and Juliet story. [言わずと知れた、シェークスピア劇]
At the risk of sounding like Scrooge...[ディケンズの小説、クリスマスキャロルに登場するドケチ]
Hosni Mubarak has failed to read the writing on the wall.[聖書から]
Thanks to a good Samaritan, we managed to find our way to... [これも聖書から]
あとは、HIrsch らのThe New Dictionary of Cultural Literacy: What Every American Needs to Know とその子供版、The New First Dictionary of Cultural Literacy を、特に文芸編に注意を払いながらひととおり読むのが最善の策だと思います。
ちなみにツィッターの世界、meemeetanという英語の先生が「このチョコレートの話題が出たりお土産で頂いたりすると必ず(英語の場合)初めに「ゴウダイヴァ」次に「ゴディヴァ」と二回発音して相手に合わせていました。自信なく。=^-^=」と発言し、これに対して、rhb4という並の英語教師より勉強熱心なsuper learner が、「いやー、素晴らしいですよ。人間関係があってこその言葉なわけですから」と返したりします。みなさん、コミュニケーションがメッセージ本位のtransactional な側面と聞き手(読み手)本位のinterpersonal な側面のあることがおわかりなわけで、いたって気持ちのいい環境です。その上、現役の英語の先生のつぶやきも多く、勉強になります。まだの方、Twitter の世界にへの参加をお勧めします。
わたしは毎日、英語学習をしている方々を意識しながら何かしらつぶやいており、おかげで10月に始めて以来、フォロワー(hinatakiyotoのつぶやきを継続的に購読するよう登録している方)が800人を超えました。
フォローしてくださる場合の手順はこうです。
1)Twitter のサイト/ に行く。登録がまだの方、右の方に「登録する」というボタンがあります。簡単な手続ですので、それを済ませてください。
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3)どの記事でもけっこうですので、冒頭にある hinatakiyoto の部分をクリックするとプロフィールが現れるので、そこにある「フォローする」というボタンをクリック。フォローをやめたいときは、同じ画面に行くと「フォローを解除する」というボタンになっているので、それをクリック。
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Comments
今回もおいしいお話ですね。
USでは東のゴダイヴァ西のシーズ(See's Candies)
後者は1921年起業。USで最初に高給ブティック チェコを製造販売した会社ですが、シーズのロゴは気負うことなく、というのか「グランマのチキンスープ」ののりなのか、レシピを提供した老婦人(創業者家族三名の内の一人Mrs. See)の写真です。
本題のアリュージョン。英・米語では聖書を知らないとピンとこないものが実に多いですよね。
先日米人がI'm from Missouri, と言ってにやり。
言われた日本人の顔は??? 私が「彼はダウティング・トーマスだから」と助け舟。発言者も回りもこのカタカナ名の英語ですぐ理解して爆笑。でも件の日本人には通じない!英語でそこそこ仕事ができる人だったので、私のほうがちょっと驚きました。
この場面ではMissouri は Show-Me state という背景知識か聖書の知識があれば理解できたわけです。
日本文化の能楽を楽しむには源氏や伊勢、平家といった物語の素養が必要ですが、それらは直接の題材の話。
英語文化では絵画や演劇の題材として登場する以外に、会話や本でのアリュージョンは半端ない。
イソップ、聖書、ギリシャ神話とシェイクスピアを最低抑えておかないと英米人との会話の楽しみが半減すると思っています。教養、素養は深く広く。。。そこがまたおいしいく楽しい、と感じる次第。
[返信]
本当、おっしゃるとおりですね。しかも、ご存じのとおり、教育のある人ほど(気恥ずかしさも手伝って)そのままでは使わず、a veritable bull in a china shopとか、as it were the proverbial...と「崩す」ので油断ならないですよね。このあたり、名言格言を一生懸命覚えて使おうとする人にわかってほしいところです。
- 花水木
- 2011年2月19日 00:59
いつも楽しくて(←ここが大切)ためになるお話、楽しみにしています。
ゴダイバ夫人が何ゆえロゴなのかそういえば考えたことがなかったです。mierintaさんへのご説明(「...qualities of passion, style, sensuality and modern boldness...」)でとてもすっきりしました。
恥ずかしながらLady Godivaの話を知ってはいても、その奥にある精神がチョコレート屋さんの心意気に通じる故の表現だと結びつけることをしていませんでした。allusionというモノの見方を学びました。
[返信]
www.godiva.comに行き、about Godivaのページにある同社沿革の項をご覧になるとわかりますが、おそれいるのは、創業者が自分のチョコレートを chocolates of "extraordinary richness and design, a collection of passion and purity" と感じ、その上で、これを体するイメージを探したという話。心意気というのか、自信というのか、あっぱれです。
- なるほど!
- 2011年2月18日 16:06
日向先生、お久しぶりです。プーリアの内山です。昨年後半は起業でバタバタしていたこともあり、あまりブログを拝読する時間が無かったのですが、最近は落ち着いてきまして再び愛読させていただいております。今後ともよろしくお願いいたします。
allusionについて。イタリア人は詩が大好きで、有名な詩をそらんじて会話や文章に引用することが多いように思います。日本だと“キザなやつ”なんて言われてしまうのかもしれませんが、私はイタリア人のそういう一面、けっこう好き・・・ただ現在の話し言葉のイタリア語とは異なる表現も多いですし、文化的側面も違いますので、100%理解するのは難しいこともありますが。
少し話は変わりますが発音やアクセント関連で・・・日本のTVや書籍等ではあまりにも間違ったイタリア語の発音が氾濫しており、それが定着してしまっていることが多いなーと思い、3日ほど前に拙ブログで取り上げたところです。旅行番組やガイドブック等ですらそんな調子なのが残念です。
[返信]
おひさしぶりです。「イタリア人は詩が大好きで、有名な詩をそらんじて会話や文章に引用する」とは知りませんでした。なんかイタリーのインテリって憎めなくていいですよね。申し訳ないけれど,今、オックスフォードで勉強しているというイタリー人に会ったりすると、すごい違和感をおぼえます。やっぱりお天道様と詩があふれるロケーションが似合っているなと感じる訳で。
- 内山 奈美
- 2011年2月15日 20:24
日向先生、こんにちは。
いつも興味深く拝読しております。
allusionの表現については普段から見聞しているつもりですが、ここで日向さんがTwitterで使われたというallusionがしっくりときません。例示されている英文のほうは違和感は覚えませんでした。昔から感覚的に英語を使っているせいか、時折論理的な説明に戸惑うことがあります。今回は私の教養不足が原因かとは思いますが、もう少し噛み砕いて説明していただければ幸いです。
また、ふと気になったのですが、SThenshubuさんが実際に週間STの編集長さんであった場合は、非礼になってしまうと思うのですが、その点についてはどういう考えをお持ちでしょうか?
拙い日本語ですが、ご容赦下さい。
[返信]
allusionは、直接そのことを言い表すことなく、そのことを指す別に事象をもってそれに言及することですが、ゴディバのロゴになっている、一糸まとわぬ姿で馬に乗っているLady Godivaは、全裸での騎馬姿に意味があるのではなく、それに託されている qualities of passion, style, sensuality and modern boldnessという要素に意味があるわけで、その意味であのロゴは allusion になっていると解されます。Godiva社としては、あのロゴを通じて、客に、自分たちの商品は、qualities of passion, style, sensuality and modern boldnessを体現しているんだよとアピールしているわけです。
SThenshubuさんが仮に本物の編集長さんだとしても、有名な英字新聞社が出している学習者向け週刊誌の編集長ならば英語のプロであり、それなりの信用が寄せられる方です。したがって「『ゴダイバ』のロゴ、裸の女の人が馬に乗っている絵柄です。さてその由来は?(私も最近知ったのですが・・・)」と、既にLady Godivaがallusionであるとわかって話をしている人々の輪の中に入って来て、自分がそれがallusionだとは知らなかったと言ってのけるのは英語のプロに求められる水準に達していなかったことを認めているわけで、よろしくないとは思われませんか。わたしが週刊STの読者だったらがっかりします。
言い換えれば、英語のプロが期待される水準に達していないという事実を指摘しただけですから、先方が恥じ入るならいざ知らず、こちらが恥じたり、非礼を働いたということで詫びなければならない筋合いではないというのが私の考えです。
ちなみに数年前、STに連載コラムを持ったことがあり、どういう媒体であるかはよく知っているつもりです。学習者にいろいろと英語指南をする雑誌ですから、編集担当者は英語好きなどでは務まらず、高い英語能力とそれを支える教養を有していてこそ有償で購読している読者の期待に応えられるのであり、今回のような気の抜けた論評はプロとして許しがたいと感じています。
- mierintai
- 2011年2月15日 11:58
日向先生、こんにちは。
チョコレート屋さんの呼び方、ずっと疑問にしていました。
電子辞書(ジーニアス英和大辞典)で調べたら、Godivaとしてわざわざ二つ項目を立ててありました。1は「ゴダイバ夫人」なのに対し、2は「商標、ゴディバ(ベルギーの高級チョコレート)」と書いてあります。発音も聞ける辞書なのですが、1、2とも同じゴダイヴァに近い発音でした。ベルギーではどちらなのでしょうか。日本では、この辞書にならって「ゴダイバ」「ゴディバ」を使い分ければ、誤解がなさそうですね。面白い話題をとりあげてくださり、ありがとうございます。
[返信]
おそらく本国ではゴディバだと思います。パリ在住の友人もそう発音していましたし。
- susie
- 2011年2月15日 09:48
チョコのgodivaはベルギーチョコなので、フランス語読みなのでは?
[返信]
そうなんでしょうね。ただ、仏文の資料もDame Godiva でなく、Lady Godivaとしているのがこれまた不思議です。創業者たちもイギリス色を臭わせたかったんでしょうね。
- 井上大輔
- 2011年2月15日 09:17

連続で申し訳ありません。
おっしゃるとおり、名言格言を「そのまんま」言う教育のある米人はいないですね。むしろ、元の話や表現の中から人名のみとか、極限られた部分のみ使うことが多く、かなり文学や文化に通じていないとすぐその場でピンとこない。だからこそ知的好奇心旺盛な英語上級者にはallusionは楽しいんじゃないでしょうか。
名言格言、スラング、4 letter words、いずれも聞いてわかるために知っておく必要はあっても、英語学習者はかなりの上級者でさえも、自から積極的に使うものではないと思うのですが。
(居合わせたこちらが赤面する経験を持つ身としてバイアスはあるかも。。。)
[返信]
このあたり教える方も意識しているようで、1990年代に出たCouncil of Europeの教材は、これは知っているだけで十分という言い回しにreceptive only を意味する R をつけていました。ただ、日本では実用英語と教養英語がごっちゃになっているので、こういう発想は通らないようです。