2011年4月20日
気になるGlobishの問題点
Globishの本が売れに売れています。関係者を存じ上げているだけに、ご同慶のいたりという気持ちです。
何でも、アマゾンや大手書店でのベストセラーらしく、印刷部数も語学書には珍しく、最初から数万部といった感じですごい勢いです。
しかし、こういったGlobish人気、二つ気になります。
ひとつの問題は、この Globish 、ネイティブにはわからない、通じないという問題点を抱えているのに、それが知られていないことです。Globishをわが国で熱心に推進している人たちですらこのことを知らなかったのには、こちらがかえって驚きましたが、このNYタイムズの記事 にあるとおり、Globishを使って二人の人がやり取りをしているとして、そばで聞いているネイティブにはまるでわからないのです。Globish がネイティブに通じないというのは、私の解釈でも主張でもありません。以下のとおり、NYタイムズの記者がGlobishをそう形容しているのです。
It happens all the time: during an airport delay the man to the left, a Korean perhaps, starts talking to the man opposite, who might be Colombian, and soon they are chatting away in what seems to be English. But the native English speaker sitting between them cannot understand a word...They don't know it, but the Korean and the Colombian are speaking Globish. よくある光景です、これは。飛行機の出発が遅れ、乗客が待たされる中、左に座っていた韓国人とおぼしき人が反対側に座っていたコロンビア人らしき人に話しかけ、英語のようなもので雑談に興じます。ところが、間に座っている英語ネイティブはひとこともわかりません。本人たちにそういう自覚はないのですが、この韓国人とコロンビア人が話しているのはGlobishです。
また、この記事にもあるとおり、"non-native English speakers have developed their own English, which native speakers cannot always understand" (ノンネイティブたちが自分たち独自の英語を作りだしているが、この種の英語はネイティブには必ずしも理解されない)というふうに見られており、ことの是非は別として、Globishをやるといずれ、ネイティブ英語に近づけるものでもないことには注意を要します。
この Globish、なるほど、ひとまず英語学習のとっかかりとしていいじゃないか、あるいは今迄さんざんいろんな英語学習法を試して来たのに、実らなかった人には魔法のツールのようにも思えます。しかし、結局は、英ファイナンシャルタイムズのコラム子が言うように、Globish は、a simple, dull, idiom-free version of English with a small vocabulary.(単純化され、退屈で、生き生きとしたイディオムを欠く英語で、しかも語彙が限られたもの)であり、この点、共感をおぼえます。
そういったいわば「低レベル」の英語を一生懸命やってどうするのと思ってしまいますが、それより気になるのは、熱心に Globish を勉強すればするほど閉鎖系の世界へと身を沈めることになってしまうことです。ネイティブ英語の世界から孤立してしまい、せっかくこれまで蓄積されてきた豊かな英語圏のリソースから切り離されてしまいます。例えば、MacmillanやLongmanが話し言葉までカバーしている素晴らしい英英辞典を学習者向けに出しているのに、そういったものを役立てようがありません。もったいないことです。
この点、TOEICは、TOEIC英語という狭い、独特の世界での言語知識に片寄っており、その結果、TOEICを勉強すればするほど、実社会でのコミュニケーションに要求される英語から離れて行く結果になっていますが、同じことがGlobishを通じて起こりはしないかと心配になります。
もうひとつの疑問は、Globish がうたう 1500 単語の世界です。いかにも英語でコミュニケートするために不可欠な基礎単語集のような印象を受けますが,実は、特殊な単語の多い、独特のリストです。
これは創始者のネリエール本人が言っていることですし、グロビッシュ本にも書いてありますが、Globish で使う 1500単語は、VOA の単語リストの引き写しです。
それがどういう性質のものかと言うと、語彙分布を調べる VocabProfilerにこのVOAの1500単語を放り込んでみるとわかります。このソフトは、英語の基本単語リストとして有名な General Service List 上の2000単語を判定の基準としているので、当然 VOA のリストも100% 、基本単語で占められているだろうと思いたくなりますが、実は、そうではなく、以下のとおり、初学者の英語コミュニケーション能力を左右する基本単語のシェアが 77% しかありません。これでは「使用頻度の最も高い基本単語集」とは言えません。

赤字で示されている単語数は、General Service List に載っておらず、また、教養単語と言える Academic Word List にも載っていない、いわば低頻出の難語ですが、これが14% も占めているのには驚かされます。
その一覧は以下のとおりです。
abuse activist aggression airport album alcohol ally ambassador ammunition anarchy ancestor anniversary announce appeal archeology artillery astronaut astronomy asylum atmosphere automobile award balloon ballot ban barrier betray biology bomb boycott budget bullet cabinet campaign cancel cancer candidate capture career ceasefire celebrate champion chase chemistry civilian clash clergy climate coalition compromise condemn congress conservative continent corruption crew crisis criticize curfew dam deficit delegate democracy denounce deplore deploy detain dictator diet diplomat disarm disaster dispute dissident donate drug ecology embassy embryo emergency emotion evaporate execute exile expel extremist fertile fireworks flee fluid fog fuel genocide goods guerrilla halt headquarters helicopter hero hijack horrible hostage hostile huge humor import incite infect inflation inject innocent insane internet invade jail jury kidnap laboratory launch leak lightning magazine mate mathematics mayor microscope militant militia missile mob mourn movie navy negotiate nominate oppress orbit oust overthrow parachute parade parliament passport physics pilot planet plastic plot pollute port pregnant professor propaganda protest radar radiation raid rape rebel recession reform refugee repress revolt riot rocket rural sabotage satellite senate shrink skeleton smash spy stab starve statue submarine subversion suicide supervise suppress surplus surrender tank telescope television territory terror terrorist theater torture traffic tragic treason treaty troops truce truck urgent vacation vaccine vegetable veto victim video visa volcano web withdraw wreckage zoo
ざっと見て、ammunition, artillery, asylum, coalition, genocide, curfewなど、軍事、政治用語が目立ちますが、これは VOA の性格を考えれば当たり前です。VOA は元々は対共産圏の政治宣伝を目的に始まった放送ですから、当然、軍事や政治に関係したニュースや論評を流すわけで、いきおいその方面の単語が多く使われることになります。
訂正:コメント欄で白崎氏からGlobish 1500とVOA 1500は同じではないというご指摘を受け、改めて、Globish 1500 を Vocabprofilerにかけたところ、低頻出の難語は以下のとおりでした (2011. 4. 25)。ammunition, artillery, denounce, betray, bomb, boycott, clash, deploy, disarm, dissident, evaporate, exile, hostage, hostile, oust, radiation, revolt, riot, sabotage, suppress, vetoなどは日常的なコミュニケーションではまず使わないわけで、こういったものを入れるぐらいなら代わり入れるべき基礎単語はいくらでもあります。まだ改善の余地はあるなあと感じます。
activist aggression airport album ally ammunition anarchy ancestor anniversary announce appeal artillery astronomy atmosphere automobile award balloon ballot ban barrier betray biology blanket bomb boycott brake budget bullet cabinet campaign cancel cancer candidate capture cash celebrate champion chase chemistry civilian clash climate compromise condemn congress conservative continent crew crisis criticize deficit democracy denounce deploy dictator diet diplomat disarm disk dispute dissident drain drug ecology embassy emergency emotion evaporate execute exile fertile fist fluid fog fuel halt harmony headquarters helicopter hijack horrible hostage hostile huge humor import infect inflation inject innocent insane invade jacket jail jury kit laboratory leak magazine mayor mist mob movie muscle navy nerve nominate oppress oust pants parade parliament passport pilot plastic pollute port potato pregnant professor protest quit radar radiation raid recession refugee revolt riot rocket sabotage satellite senate shrink skeleton smash sneeze spy starve statue supervise suppress surrender television territory terror theater torture traffic treason treaty troop truck urgent vegetable veto vicious victim withdraw
惜しいと思うのは、せっかく、世界の共通語として簡単な英語でのやり取りに徹しようと始めたのですから、どうせなら、英語の基本単語集として専門家が激賞する General Service List を土台にすればよかったのにということです。
ただ、Globish を手がかりに、これまで苦労してきた英語の壁を乗り越えるというのは結構なことです。してみると、要は、上の二つの問題点を念頭に置きながら、自分の中できちんと位置づけをすることではないでしょうか。つまり、いつかは Globish という補助輪を外して、自由自在に英語で動き回れるレベルを目指すというのが、ひとつの選択。もうひとつの選択は、Globish でいいよということで、それ以上はやらないということです。高きを望まないというのも当然、ひとつの選択としてありうることでしょう。
結局,国際共通語としての英語は、必要悪としての低レベルの英語の存在意義をひとまず認めるのか、それとも、低レベルながらも通用性があることを重視して、ひとつの亜種としての独自の英語を認めるかの問題だとも言えそうです。ただ、困ったことに、亜種とは言っても、いまだに内容が確定されていないものなど勉強のためのモデルになり得ないことが見過ごされています。
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cannot always understand
とありますが、常に完全に理解される言語を使うことは可能
なのでしょうか?
コメント中
>発音がかなり違くて
という方がいますが、「ちがくて」って何語でしょうか?
>功罪相半ばしていると考えて大目に見てやってもいいかなとも思うのですが
ネットは障害者の方が音声化して聞いていることもありますが、
きっと1回では通じないですよね。
「それなりに」通じればいいのではないでしょうか?
母語ですら完璧に使うことは無理です。私のこの書き込みの
他の方も書き込みも、日向先生のご意見も、日本語的には
問題だらけです。
でもそれでいいと思います。
globishも同じです。
英語学者になるための教育ではないのですし。
- ひでさん
- 2011年12月20日 09:32
>「そこに閉鎖性あるいは排他性はなく」とおっしゃる点、わたしが言う「閉鎖系」はGlobishがネイティブに通じない英語であり、その意味で発展性がないことを指しています。
ネイティブに通じた方がいいのは当然ですが、通じなくても致命的ではないと思います。GlobishはEnglishではないので、英語ネイティブもGlobishを学ぶ必要があるのです。もし閉鎖性というなら、Globishを学ぼうとしないネイティブが閉鎖的なのでしょう。
ネイティブに近づくことは学習者の目標として高すぎます。外交官や翻訳者など専門家以外は、そんなだいそれた目標のためにリソースをさけません。世界のほとんどの人にとって、英語は意思疎通ができれば十分、言語の豊かさなど求めていないのです。
それよりは、英語ネイティブより圧倒的多数の非ネイティブ同士の間で通じるリンガ・フランカを築き上げた世界のためというのがGlobishの理念であり、世界はそうならざるを得ないと思います。
- aoyama
- 2011年11月 1日 17:52
グロービッシュだけでなくTOEICの特殊性というか閉鎖性について見事に表現されているのに感動しました(それにしても、近年のTOEICブームは想像を絶するものがありますね)。まあ、TOEICについては功罪相半ばしていると考えて大目に見てやってもいいかなとも思うのですが、グロービッシュについてはあまりにも安直すぎて弁護の余地が見いだせません。
特にご指摘のように単語リストについてはビジネス等の実用コミュニケーションに不可欠な単語が含まれておらず、これでネイティブに歩み寄ってくれというは虫がよすぎるとしか思えません。
例えば、「inquiring about availability of people or things」というはビジネスのコレポンの基本中の基本ですが、グロービッシュの単語リストにはavailable/availabilityもinquireも含まれていません。まあinquire はaskに言い換えるとしてもavailabilityはないとビジネスではかなり困るという気がします。ビジネスのコレポンには既に定型的な慣用表現が多数あるのに、それらを更にグロービッシュで置き換えて、というのは非合理的です。
賛成派の人はグロービッシュの理念に無条件で賛同する前に、もっと実務に即して具体的に内容を検討したほうが良いのではないでしょうか?
[返信]
おっしゃるとおり実務という視点からはなアナだらけで、宣伝されているような即効性はないものの、ただ、内容が流動的なわけで、もう少し長い目で見た方がいいのかなと思います。
なおTOEICについては、雑誌「選択」の4月号に似たような視点の批判的記事が載っています。
- 無印英語(反対派)
- 2011年10月16日 10:53
韓国人とコロンビア人が会話して分かりあえるのが素晴らしいと思います。
確かに英文学小説をよみその素晴らしさに涙するのはできないとおもいますが、個人的にはそれより大切なことを教えてくれそうです。
- 賛成派
- 2011年10月12日 21:38
グロビッシュって要はイディオムの羅列で
会話しろといってるわけですよね。
removeと書けばいいのをget rid ofといい
obtain といえばいいものをgetを使う。
getという単語がどれだけ難しいのかは
英英辞典を見ればわかる。
obtainは、数行程度の解説しかない。
その理由は第三文形以外での用法がなく、
後続の前置詞によらず「得る」という意味を成す
といった具合に簡単だから。
一方getは、後続の前置詞や語順、はては前後の
アクセントでいかようにでも意味を変遷させる。
ゲルマン系の動詞は10覚えれは前置詞との
組合せだけでいかような意味でも作れる
ラテン語系の動詞なら100~200も覚えればだいたいの
事実関係の説明ができる。
どっちが簡単な英語なんでしょうね?
結局、ゲルマン系で行く限り、行きつく先は
イディオムの暗記になるわけで…。だってイディオム
の正体は「ネイティブの自然な英語の断片」
なわけだから。
それで、意図しない意味にならないように注意しなければいけないから、使わないものまで覚える必要が出る。
ラテン系の動詞と関係詞をぐじぐじ使って
特許の明細書のような英語で
会話するのが、ノンネイティブにとっては楽で
ネイティブにとっても、ノンネイティブと仕事で話をする限りそっちが楽でしょう。
- 理系人
- 2011年8月11日 14:08
私はGlobish賛同派です。
問題はNYタイムズの記事にもあるように、ネイティブスピーカーが理解出来ない、いや理解しようとしないことにあると思う。
今や英語はネイティブスピーカーの物だけに非ず
彼らはいつまでネイティブスピーカーだ、というだけで胡坐をかいているつもりなのか・・・
彼らの多くは、他の言語を習得することがどれだけ大変なのかがわかっていない
少しは歩みよる努力をすべきは、ネイティブスピーカーのほうだ!
そのうちGlobishが普通に受け入れられる日がきっと来る
- アポロ草祭り
- 2011年7月23日 12:51
英語をお金と時間をかけて苦労して勉強した人は、
「簡単」というフレーズに生理的嫌悪感を感じるようですね。
[返信]
たしかにそういう傾向もあるようですが、他面、自分のやり方は非効率だったのではないか、もっと大事なところだけ重点的にやれる「簡単」な方法もあるのではないかという不安があり、そこにつけこまれるようでもあります。
- 英語
- 2011年7月20日 10:34
Mtyanさん
日本語をもっと勉強しましょう。子どもが書くような文章です。
↑
このコメントは匿名子によるもので、日向が書いたものではありません。「おまえらしくもない」というお叱りのメールを頂戴したので、念のため。
- 匿名
- 2011年5月25日 15:44
ネイティブがわからなかったという記事は言い過ぎだと思います。先生みたいにすこしネガティブな意見を言いたい人が大げさに書いた記事だと思います。たしかに豊富な英語を学ぶのは良いことだと思います。でも日本人ならもっと深い日本語を学ぶほうがビジネス的にも、自分の内面にも良いと感じます。英語をまなぶ非ネイティブは、英語に支配されたり、英語を全くできずに世界とのコミュニケーションがとれない、そういう両極端になるのを防ぐ必要がある。大げさですが、英語を深くやる必要があるのは英語でベストセラーになるような小説を書くような目標を持つ人たちであって、必要な英語という意味ではGlobish はいい指標だとは思います。もちろん完璧ではないので他の勉強は必要です。
他のコメントを読んで、「買わなくてよかった」とか「読まなくてよかった」という否定的なコメントするようなイメージを植えつける必要のある内容のものではないと思います。問題が20~30%あっても、他の全然効率が悪く、英語文化も全然わからないような学習法よりは良いと僕は考えます。
話がそれますが、先生のように多くの優秀な方が否定的な文章を書いてしまうのが日本の問題点であり、否定的に見せといてこれを超えた解決を提示したり、何といえば良いかわかりませんがポジティブに受け止められる空気を日本人皆で作る必要があると思います。皆でやらなければ変わりません。
しかしながら、先生のGlobish に対しての指摘は十分に良かったと思います。ありがとうございました。
- Mtyan
- 2011年5月25日 07:04
日向さんのご指摘も分からんでもないが、そもそも解決すべき問題点の持ち方が違っています。勿論、理想とするのは日向さんや仕事としてやっている英語教育の英語を日本人がマスターすることです。しかし、いままで日本の英語教育はうまくいっていません。なぜか。難しいからです。ここで方法は2つに分かれます。一つ。頑張れ、がんばれ、苦しいけどマスターするのだ。マスターできない人は落ちこぼれで、困ったものだが、本人が悪いのだから仕方がない、という方法。今までの日本の英語教育です。もう一つ。英語のレベルを下げてみようということで、簡易英語を学ばせて最低限それレベルはマスターさせるという方法です。グロービッシュは後者なのです。しかし、グロービッシュは前者を否定しているわけではなく、普通の英語を学びたい人はやればよいのです。グロービッシュはネイティブに通じないとありましたが、極論です。グロービッシュでなくてもネイティブに通じない英語はたくさんあるし、ネイティブ同士がお互いに通じないこともあります。また1500単語の中身を検索してVOAだの何だの言うのはどうでもよいことです。重箱の隅の話です。
[返信]
日本の英語教育が難しいのはそのとおりです。コミュニケーションとは無縁の低頻出の難語や英文解釈で知られるnot only X but also Yのようなものに片寄っています。そもそもコミュニケーションは言語知識に加え、社会言語能力、さらに話し言葉/書き言葉を状況・目的・相手に応じて運用する能力が要求されるのに、これまでの日本では、言語知識のことばかりが取り上げられるわけで、この点を是正する必要があると考えます。つまり、会話の90%以上はM. WestがまとめたGeneral Service List上の2000単語でまかなわれていることがわかっているのですから、こうした有用度が実証されている単語リストをベースに、コミュニケーションに必要な最小限の文法、具体的には中学英文法で言語知識は十分なわけで、これをおさえたら、あとは社会言語能力ならびに言語運用能力の向上です。
この点、Globishの試みは、放っておくと際限がなくなる英語学習につき、単語はこの程度で十分だよと明示したわけで、General Service Listと軌を一にしており、評価できます。ただ、基本単語リストを提示する以上は効率的学習に資する、つまりは、頻出する単語であり、習得すると言語運用上大きな力になるものであることを要します。その意味で提示された単語リストがどのようなものであるかを検討することは当然の要請であり、「VOAだの何だの言うのはどうでもよいことです。重箱の隅の話」と言ったりするのは断定的判断というものでしょう。
一方、「グロービッシュはネイティブに通じないとありましたが、極論です」とおっしゃる点もちょっと雑な論法です。理由としてグロービッシュでなくてもネイティブに通じない英語はたくさんあるし、ネイティブ同士がお互いに通じないことだってあるではないかとおっしゃいますが、ピジンイングリッシュが存在するということと、グロービッシュがネイティブに通じるか否かは別問題です。わたしがネイティブに通じないと指摘したのは、Globishがネイティブに通じないということは閉鎖系の英語であるということを物語っているわけで、そういった既存リソースとの連続性が断たれた(例えば既存のいい英英学習辞典が役立たない)英語を勉強しても発展性がないことをGlobishに手を付ける人は知っておくべきだと考えます。
願わくばがGlobishがGeneral Service Listのような有用度ないし汎用性が確かな単語リストを拠り所に再出発して欲しいものです。
VOAのリストであれ、Globishが自分たちのサイトで公開しているリストであれ、学習すべき単語としてammunitionのような出現頻度が9000番台の単語が入っているようなリストはその有用性が疑わしいと言わざるを得ません。
- 須藤康夫
- 2011年5月11日 10:17
Globishの単語リストに対するご意見ありがとうございました。大変参考になりました。
「世界のグロービシュ」本で確かに原著者はVOAとvery much likeとは言っておりますが、現実にはかなり相違があります。例えば、ご指摘のAcademic Word List にも載っていない、いわば低頻出の難語のうちAについてチェックしますと、
Globish VOA
abuse x x
activist x o
aggression x o
airport x o
album x o
alcohol x o
ally x o
ambassador x o
ammunition x o
anarchy x o
ancestor x o
anniversary x o
announce o o
appeal o o
archeology x o
artillery x o
astronaut x o
astronomy x o
asylum x o
atmosphere x o
automobile x o
award o o
であります。またammunition, artillery, asylum, coalition, genocide, curfewなど、軍事、政治用語が見られますがとありますが、Globishの場合には1500語として採用していません。すなわち、原著者のvery much likeと言う表現が誤解を与えたように思いますが如何でしょうか。当然、1500語の改善は行うべき要素とは理解しますが、あえて今後のためにご質問します。
[返信]
こちらの Globish 1500
http://www.jpn-globish.com/file/1500motsGlobish.pdf
を見ると、ammunition, artillery が必須単語として取り上げられています。
いずれにしろ、Globish 1500 と VOA の単語は必ずしも同じでないという点、わかりました。ありがとうございます。
なお、やはり単語リストは出発点ですから、イギリスやアメリカのコーパスにおける最頻出上位2000単語やGeneral Service List とのすりあわせをやられた方が実効があがると思います。是非ご検討ください。
- 白崎善宏
- 2011年4月25日 08:35
日向さん、
先ほど、投稿したのですが、一か所テニオハが間違えており、下記と差し替えていただきたく。
(お手間ですみません)
浜地道雄
Globish(Global English)を取り上げて頂き、感謝します。
「発展途上」どころか「スタート台に立った」もので、これから肉付けが不可欠です。
Globishの提唱者、ネリエール氏(フランス人、元IBM)をはじめ、日本で推進する私たち(GHDJ)は国際ビジネスのベテラン組です。若い頃に、とにかく社命で海外に放り出されて、そこで、英語を中心に四苦八苦しながら商売をしてきました。
「ネイティブ英語」に憧れを持ちながら、しかしその体感・経験から、実務的にはGlobishを「核」として磨き、「ペラペラ信仰(劣等感)」から脱皮しようという運動です。日向さんの強調されるDiscourse Competence、あるいはBusiness Protocolです。勿論、巷の宣伝によくある「楽(らく)してうまくなる方法」とも「ブロークンで事足れり」とも違います。
そこに閉鎖性あるいは排他性はなく、Globishという概念・ツールから、皆さんがご自由に幅広く展開していただくことを願ってます。
それぞれの分野の「専門性、専門用語」を加え、場合によっては、文化的要素を加えて頂くこともありましょう。その前段階の「礎(いしずえ)」です。
そこでは非ネイティブの対話者同士が、お互い「母語でない」がゆえに、お互いの立場を尊重し、思いやりをもつということも大事な要素です。
今回発刊(東洋経済)したのはいわば「Globishとは何か」という導入であり、今後、上述趣旨に沿って、教材作成、方法論確立、指導者要員といった展開を図ります。
私たちは言語学者ではなく、日向さんのようなご専門家のアドバイス(辛口も含めて)なしに発展はありません。今回も1500語のリストの件、感謝します。
それから、NYTの記事の情景。二人が「Globishを無意識のうちに話してた」というのはこの記者の独断であり、要するに「会話の内容」が分からなかった、ということでしょうか。
私たちが推進してるのは(日常会話というより)ビジネスを念頭においた「核」言語ですから、「Globishがネイティブに理解されない」ということには直結しません。
[返信]
「そこに閉鎖性あるいは排他性はなく」とおっしゃる点、わたしが言う「閉鎖系」はGlobishがネイティブに通じない英語であり、その意味で発展性がないことを指しています。
NYTの記事、普通に読めば、言語表現はわかったけれど、内容はわからなかったという書き方でないとわかります。Globishがネイティブに通じないとは信じられないお気持ちは十分わかりますが、いささか希望的観測が強すぎるのではないでしょうか。
なんであれ、VOAの1500語リストから脱却し、GSL (General Service List) に軸足を移すことをお勧めします。
- 浜地道雄
- 2011年4月24日 20:55
現在シンガポールに住んでいます。表現もそれなりに違うところもありますけど、発音がかなり違くて(元々飛びぬけて英語ができるわけではないので)まだ慣れるには少し時間を要する感じです。
また、全体的にブロークンな英語を話す人も少なくないので、自分も変に慣れてちょっと手抜きの(?)英語を話すようになってきました…。
もしかしたら本稿のグロービッシュとは少し趣旨が違うかもしれませんが、今日ふと、映画のリザーブ席に別の方が座っていたので、代わりに別の席に移動したら今度は私が注意されてしまいました。
その折、
The seat is already taking a different customer!
叫んでしまい、何て妙な英語を口にしてしまったのだと今日たまたま考えていたところでした。
そして、その表現は問題なくこの国では通じてしまいます。
もちろん、発音は違くても正当な英語を話す方もかなりいますが、ネイティブ同士だとけっこう適当で更に中国語なんかもたまに混ざってくるので、こういう意味でのグロービッシュには慣れてしまいました。
[返信]
結局、ブロークンでいいじゃない、通じるからという立場で行くか、ブロークンだと本式のコミュニケーションに困るという立場の選択の問題だと思います。シンガポール政府自らSinglish追放に躍起になっているのを見ると、やはり後者がまっとうな感覚なんだろうなと思います。
- 匿名
- 2011年4月22日 00:52
ありがとうございました。悩みが解決した感があります。以前、GSL の単語を全部チェックしましたが、知らない単語は10 程度でした。これからは、GSL の単語の活用(短文作成練習)、get by, get out などのidiom (GSL の単語の組合せ)や、決まり文句の習得、そして語彙を制限せずに増やすことを目標に頑張ります。
ただ、それだけでコミュニケーションスキルが高まるとは思っておりませんので、「知られざる英会話のスキル20」に書かれている表現を覚え、自分の考えをひとかたまりにして相手に届ける練習も続けていきます。
グロービッシュの本、アマゾンで購入してしまったので、研究はしてみます。
[返信]
ありがとうございます。ただ、GSLは何十年も前の書き言葉のデータベースを基にしていますので、priest, mass, rejoice, defendantといった日常会話とは縁の薄いものがけっこう入っています。
今度のGSL本ではこういったものを外して、ひとまず会話に必要なものをすべてカバーするようにしてあります。
早く仕上げて、「めいけんとパパ」さんに堪能してもらわねばと力が入ります。頑張ります。
- めいけんとパパ
- 2011年4月21日 20:56
グロービッシュ、書店で平積になっているのが目に入り立ち読みしました。
英語を使えるようになりたい人(私)にはとても魅力的に映りますね。
けれど本当にグロービッシュを学んでいいのか疑問だったところ、先生のコメントがあったことを思い出し、手を出さずに済みました。
私は先生の新刊を楽しみに待つ事にします。
[返信]
なんだかグロービッシュを蹴落としたみたいで気が引けますが、やはりGeneral Service Listのような「古典」は信頼できます。
- kyou
- 2011年4月21日 10:26
今日たまたま寄った書店で入り口近くの目立つところにグロービッシュの本が置いてあったので、手に取ってみました。
延々と説明があったわりには実例がほとんどなく、グロービッシュと英語がどう違うのか今一つよくわからなかったのですが、文法比較のくだりで時制の説明のところに、過去完了と未来完了はない、と明記してあり、愕然としました。
過去完了はただの過去形、未来完了はただの未来形にするのでしょうけれど、この一点だけでも表現の幅が狭まりすぎるだろうと嘆かわしく思った次第です。
私が見かけた本とNYタイムズの記事を見る限りでは「普通の英語」と「グロービッシュ」が「学習されるべきもの」として並列に置かれているように見えることに、やや抵抗を感じます。グロービッシュをわざわざ学ぶくらいなら、ちゃんと英語を習えばいいのになあ、と。英語をある程度習って使おうとしている人がsimplifyした結果がグロービッシュ、というならわかるのですが。
[返信]
時制で言いたいことを立体的に組み立てられるなくなるし、語彙も特殊だし、ともかくグロービッシュは簡易版の英語と言うよりも、発展性のない低レベルな英語なわけで、「ひとまず始めるのにグロービッシュでいいじゃない」と言う人がいるのもわかりますが、問題は、そういう人たちがグロービッシュの問題点をよくわかっていないことだと考えます。
ただ、グロービッシュ自体、発展途上なので、今後は、普通の英語との整合性を考えたり、語彙リストもGeneral Service Listに準じたものにするなど、手を入れさえすれば、けっこういいツールになるとは思います。そうでなく、「これさえやれば」という姿勢で臨むとみずからの将来性に上限を設ける結果となることでしょう。
- maki
- 2011年4月21日 01:24

グロービッシュは敢えてmakeやhaveのような、
イディオムや熟語を作りやすい動詞を使いたがるが、
この点が解消されない限りネイティブに
通じるはずがないと思います。
ネイティブが精一杯歩み寄ったとして、
*なんか魂のぬけた”英語”をしゃべっとる
*じゃぁ字面で解釈するか
*んっ?これはこういう連語だからこういう意味だよな?
*あれ、全然意味が通じない
となってしまう。
そもそも、受験英語でイディオムとか
熟語とか言われているものは、ネイティブに
言わせれば自然な発話なわけです。
この自然な発話の発想が理解できないから、
イディオムや熟語というものを無理やり切り取って
受験英語ができた。
ところがグロービッシュでは、ネイティブが感性
で使ってる単語を「誰もが存在を知ってる単語だから」
という理由だけで敢えて使おうとする。
通じるわけがない。
逆に技術英語は、そういう激戦区を避けて
ラテン語系の単語を使っているわけだが…。
これだと、かたっくるしいかもしれないが、
一応通じる。