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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2011年8月11日

Representations and Warrantiesの話

ちょっとした英文契約書に大体入っているものに、Representations and Warranties という見出しの付いている条項があります。内容は、契約締結の背景ないし前提となる事実関係につき、当事者が「間違いありません」と請け合うものです。

表明保証条項が定訳になっており、業界人の中には「レプワラ」と呼ぶ人もいます。

これ、法律事務所で翻訳をやっていた時代は、特別興味もなく、この部分に来れば、Seller represents and warrants that を自動的に「本件売主は以下の事項につき、これを表明し、保証する」と訳してさっさと片づけていたものです。

ところが、ふと、あの正体は何なんだと気になり、調べてみました。

★ Representations, Warranties は何を意味するのか

契約書上はいっしょくたにして、represents and warrants というふうに使うぐらいですから、基本的には当事者の契約締結時点での認識につき「右に相違ない」的なことを言っているわけですが、一般に、representation は、過去からその表明を行なう時点までの事実を守備範囲としているのに対して、warranty は、将来の話を守備範囲にしているとされます。

この点、Black's Law Dictionary という法律家にとってのバイブル的辞典は、representation をこう定義しています。

A presentation of fact—either by words or by conduct—made to induce someone to act, esp. to enter into a contract. (言語または行為に基づく)事実の表明であって、ある人が一定の行動(特に契約の締結)に出るよう仕向けるもの)

この言い方自体、過去からその表明が行なわれる時点までの事実を念頭に置いているいることがうかがわれます。

そしてアメリカ法曹協会 (ABA) の商事法部会が作成し、公表している、株式の売買を目的とするモデル契約書と資産の売買を目的とするモデル契約書上は、

representations are statements of past or existing facts and warranties are promises that existing or future facts are or will be true (表明は、過去のまたは現在存する事実を述べるものであり、保証は、現在存するか将来生ずる事実が真実であり、または、真実と合致する旨の約束である)

というふうに、表明時点を境にそれより前のことを representation が受け持ち、後のことを warranty が受け持つのだという認識を前面に出しています。すごくわかりやすい切り口です。

そもそも warranty は、何かを買った際に付いて来る保証書に見られるとおり、製品には欠陥がありません、今後何年間にわたり、万一故障したら無償で直しますというふうに、将来に向っての約束というのがその内容です。

ですから、契約書では、過去から表明・保証時点までの間の事実をカバーする「表明」とその先をカバーする「保証」をセットで使って、万全を期しているのだという説明にも説得力があります。

しかし実際問題としては、将来の事項に関する representation が取りざたされるのはごく一般的なことで、必ずしも representation は過去の話を対象にするのだと言い切れません。実際、判例の中には、"representations about Waste Management's future earnings" (Waste Management 社の将来の利益)という言い方をしているものがあるぐらいです。

一方、warranty の方も、その本来の意味は、目的物の数量・品質あるいは権利関係に関わる売主による買主に向けての一定事実の積極的確認であって、売買の動機づけとなるものを言う訳ですが、その目的物の製造年月日のような「過去の事実」を対象外とする合理的理由がありません。warranty だって過去の事実を扱えるということです。

★ representation と warranty を区別する実益

前項で見た representation と warranty の意味合いとその守備範囲ないし射程距離に神経を尖らせたところで、裁判所の方が格別こだわらないのであれば、意味がないということになります。

たしかに、保証したのに話が違うとして訴えを起こすような場合、その請求の原因となっている被告による契約締結時の事実確認が「保証」という題目の下で行なわれている場合にのみ保証に違反したという理由で裁判を起こせるということであれば、保証だったのか表明だったのかは大問題です。

同様に、不実表示だ、つまり一定事実の表明があったのに、それが事実と違うということで訴訟を起こす場合、その請求の原因になっている被告による事実確認が契約書上、「表明」という見出しの下で行なわれていることを要するというなら、やはり表明か保証かを区別する実益があります。

実際、17世紀のイギリスの判例にはそのあたりにこだわるものがあったようです。

しかし、現在は、裁判所自体、「売主はその保証において資産につき、こうこう、こういう表明をしている」と判示している例があるぐらいです。

統一商事法典も表明か保証かという文言にこだわっておらず、明示的な保証があったかを判断するに際しては、正式に warrant や guarantee という言葉を使ったか、あるいは、保証をするという具体的意思があったかを問う必要はないという姿勢を見せています。

たまたま、当事者が契約に関わる事実につき、represents ないし represents and warrants という文言を使わず、warrants という言葉を使ったがために、そのことを理由として、相手の不実表示の責任を追及できなくなるというのも、合理性を欠くという指摘もあります。

★ まとめ

いずれもアメリカでの話になりますが、第一に、representation と warranty を比べた場合、前者は過去のことを、後者は将来のことを守備範囲としていると説かれるものの、実際にはそう厳密なものではないと言えます。第二に、契約書上、represent/representation としたか、warrant/warrantyとしたかで、紛争となった場合の救済方法が左右されるものではありません。


参考文献

"A lesson in drafting contracts: What's up with 'representations and warranties' ?” by Kenneth A. Adams, published in Business Law Today, Volume 15, No. 2, November/December. 2005 й 2005 by the American Bar Association

Translating the Business Deal into
Contract Concepts: Part 1

某法律事務所の翻訳者さんから,以下の資料の紹介がありましたので、併せて,掲載します。

M&A契約における表明保証条項を巡る実務課題の検討

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